- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041096994
作品紹介・あらすじ
貪るように本を読み、平井呈一、紀田順一郎などの師匠たちに師事した学生時代から、六十歳を超えついに現実世界で出会った「目に見える妖怪」の記憶まで、日本を代表する知の巨人が人生の軌跡を振り返る初の自伝!
感想・レビュー・書評
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知の巨人・荒俣宏はいかにして作られたのか? そのすべてがわかる!
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いまどき二段組で、500ページ近い大著の自伝である。
そんな大部になったのは、著者が〝自分の人生のエピソード〟と同じくらい、〝自分がその時々に夢中になったこと〟について熱く綴っているから。
両者の割合は、半々どころか、むしろ〝夢中になったこと〟の記述のほうが多いくらい。
たとえば、人魚に夢中になった時期のくだりでは、世界各地にある人魚のミイラや図版などについて、延々と綴っている。
そのような構成は、通常の自伝なら〝話の脱線〟でしかないわけだが、「荒俣宏の自伝ならアリかな」という気がする。
ただ、私自身が興味のある事柄(平田弘史の劇画に夢中だった話など)ならいいが、興味のないことについて延々と書かれるのはつらく、そのへんは読み飛ばしてしまった。
なお、終盤には《いざ書いてみると人生の思い出なんぞは大した量にもならなかった》との一節もある(407ページ)。
自伝なのに自身のエピソードが少ない異例の構成になった理由を、問わず語りに説明するかのようだ。
荒俣宏ほどの知名度があっても、『帝都物語』が大ベストセラーになってメジャーブレイクするまでは、ずっと貧乏だったらしい。
もっとも、その貧乏は、お金ができたらすぐに本をたくさん買ったからだろうけど……。
《少年期から七十二歳になる現在まで、わたしには「優雅な暮らし」と言える時期がなかった。何時もあくせくと、何かに熱中していたので、眠る時間が勿体ないと、いつも考えていた。》371ページ
著者はそう述懐する。
「優雅な暮らし」ではなかったかもしれないが、傍目には〝まれに見る幸福な人生だ〟という印象を受ける。
いつも何かに夢中になっていたということは、「フロー」状態が人生の基調になっていたわけだから。それほど幸せな人はめったにいないだろう。
著者の師匠の一人・水木しげるとの交友エピソードなど、面白い話も多く、荒俣宏の本が好きな人なら楽しめる。
ただ、前妻に当たる故・杉浦日向子について、たった一行しか記述がない(※)のは、杉浦ファンとしては寂しい。
※筑摩書房の編集者・松田哲夫が、「最初の結婚相手である杉浦日向子さんと知り合いになるきっかけを作ってくれた」という、268ページの記述。
いまの奥さんへの配慮なのだろうが、自伝なのだから、もっと紙数を割いてもよかったと思う。 -
ぼくは一時期荒俣宏にはまっていて、『世界大博物図鑑』数巻まで買ったことがある(今は売ってしまったが)。なにしろ、当時は平凡社に泊まり込んで何年もその仕事をしていたらしい(結婚は二度しているはず)。だから、ちょっと不思議な人だと思っていた。その人の伝記がでたのでぼくは文句なく買ったが、すこしめくってみて、伝記にしてはなにか異質なものを感じた。ふつうなら、自分のことがどんどん出てくるのに、この本は最初から不思議な話ばかりがでてくるのである。思わず、読むのをやめようかと思ったが、この書き方の中にこそ荒俣宏がいかにして『世界大博物図鑑』をつくったかということがわかるのである。その荒俣さんは最後の到達点として、自分のコレクションを角川武蔵野ミュージアムに結実させた。ここへいけば荒俣さんが生涯に考え、体験した奇怪なものどもがすべて見ることができるというわけだ。
荒俣さんは生涯多くの師をもとめた人だ。その最大の師は平井呈一だろう。平井は中学校の先生をしながら、ひたすら自分の好きな本の翻訳をした。この人の名は紀田順一郎さんの本でも出てきた。ラフカディオハーンの翻訳もしたが、それはおそらく東大の教授陣にひっさらわれてしまった(だれかはわかる)。そういう意味では在野の悲哀を充分味わった人である。だから、荒俣はこの人の書いたものの文献目録をつくろうとした。紀田順一郎も荒俣に大きな影響を与えた人である。この人もまた在野の人である。わたしも好きな作家の一人である。あと、水木しげるさんにも荒俣は師事し、いっしょにいろんなところへ行っている。人が好きになるのか、荒俣が好きになるのか。どちらにしても、多くの人の愛を受けてそだってきたのが荒俣宏である(小さい頃の思いでは同年代のぼくとだぶり、多く共鳴するところがあった)。 -
アマノジャクの荒俣氏らしい、子ども時代から破天荒でパワフルな様子と目的に向かってまっしぐらなところなど、笑わずにおれないエピソード満載。
平井呈一先生への深い思いに、両氏の人柄が偲ばれる。
分量は多いが 怪奇に関するあらゆることへあちらこちらと案内され、最初から最後まで楽しく読んだ。 -
この方はどのような成分で出来ているのか。鉄道好きの方が鉄分で出来ているように、養分ならぬ妖分か。不思議な存在の荒俣宏、その人の自伝だ。
いかにして、博物学、妖怪、幻想文学など多岐にわたるジャンルに興味をもち、今まで生きてきたか。
好奇心旺盛なのはもちろんだが、色々なジャンルの師匠がいたのは荒俣宏を作り上げた1つの要因だ。中学入学から「師匠探し」をしていたというからすごいものだ。昔の本には今では考えられないが著者の住所が載っていたので「ファンレター作戦」を取ったと述べている。
もうこんな人は登場しないだろうなあ。唯一無二の存在なので興味深く読んだ。 -
荒俣宏の自伝。2段組で450頁超というボリュームに驚く。自伝で何をそこまで書くことがと思って読み始めると、南方熊楠ばりの脱線ぶりで序盤の幼少期の部分はまだ自伝の体をなしてはいるが、後半はとりとめのない回想から広がっていく薀蓄と当時並行して取り掛かっていた師である平井呈一年譜作成の取材ノートとなる。何せ最初の結婚相手である杉浦日向子に関しては松田哲夫の紹介がらみで1行に満たない記載があるだけだし、2番目の結婚相手の記載もほぼない。平凡社で寝起きし8年かけて作り上げた「世界大博物図鑑」や古書収集についての具体的な苦労話的なものもない。
そういう訳で一般的な自伝を期待すると残念な思いをすることになるが、70を過ぎ、蔵書も処分した上で自分の人生の総括としての書としてはすこぶる面白い。ある意味、自身の仕事の集大成とでもいえる内容。
一気呵成に読了したが、できれば中学生の頃に読みたかった。であれば、その後の人生も少しは違ったものになったと思う。 -
・幼少期からすでに荒俣さんがアラマタであったことがわかる。とにかく個人のエピソードに付随する興味のあったことの類がずらずら出てくる。さすが「知の巨人」知識欲と行動力が尋常ではない。しかし、私のような平凡な人間がただ自伝として読むには情報が重すぎる。記憶力と教養のなさが悔やまれる。
・若い頃から、美しいもの不思議なもの怪しいものを見つけると行く先に必ず現れる荒俣さん。
私より20歳位年上でむしろ母と歳が近いことに驚く。
・また、コロナ禍と転居と重なり「妖怪伏魔殿2020」を見落とし行くことがなくて後悔した。
https://kadcul.com/event/21
・直近の自分の生活範囲に荒俣さんの幼少期があり、そこここの場所に興奮する。
幼少時で実名で出てくる人物に知った方がおり、荒俣さんとお知り合いとは存ぜず、知っていればお伺いしたのにと口惜しい。
----(まだ、成人前あたりまでしか読んでいないが、感想など長くなりそうなので一度投稿する) -
角川武蔵野ミュージアムに行ってみたい。
著者プロフィール
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