僕の神さま

著者 :
  • KADOKAWA
3.36
  • (10)
  • (61)
  • (89)
  • (16)
  • (1)
本棚登録 : 626
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041097786

作品紹介・あらすじ

亡くなった祖母が最後に作った桜の塩漬けをダメにしてしまった僕は、同級生で「神さま」と呼ばれる名探偵の水谷君に相談する。学校中のみんなから頼りにされる、何でも解決してくれる水谷君。彼の答えに決して間違いはない、だって水谷君は「神さま」だから……。彼から新しく作ることを提案されるが、桜の季節にはまだ少し早く……。(「春の作り方」)。学校で抜きんでて絵がうまい川上さんが図工の時間、クラスメイトの少女から筆洗い用の水をぶちまけられた。彼女はいったいなぜそんなことをされたのか。(「夏の『自由』研究」)。秋の体育祭、冬の怪談話、そしてまた春。小学校を舞台に四季を通じて描かれる、切なく残酷な連作ミステリー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 意外、を見た一冊。

    小学生といえば無邪気なイメージ。
    高学年とはいえそれを見事に覆す意外な小学生を見た作品だった。

    一話目は他作品で既読、あの時のあの子達か…と懐かしさと温かい涙も束の間、その後彼らがこんな謎と重さに対峙していたとは。

    皆から頼りにされる水谷君。慕う僕。

    神さまだから…。神さまなんかじゃないよ…。

    この思いが交錯する中で浮き彫りになるお互いの胸の内はもちろん小学生が直面するにはつらい重さに心がチリチリ。

    君たちには今はただ楽しみだけを背負って欲しい、そんな願いを口にしたくなるせつない読後感。

  • 最近この著者の作品をよく読むようになった。
    真綿で首を絞めていくようなミステリ、というのか……。
    優しさの奥に隠れている昏さ、明と対になる暗。
    そんな雰囲気が好きだ。

    さて、本作の主人公たちは小学生。
    彼らはどんなに頭が良くても、どんなに頑張っても、「子供」だ。
    それがある種の絶望感を持って迫ってくる。
    もちろんお話とわかっている。
    でも、本作のような内容を読むと、ああ、私は、
    子供たちを助ける仕事、強制力を持って彼らの生命身体を脅かすような者と戦える人になりたかった のだと思う。
    それを一番感じるのが、「夏の「自由」研究」。
    ずっと心に引っかかり続ける後悔、そして無力感。
    ズキズキと痛む傷は、彼らの心から消えることはあるのだろうか。

    逃げてもいい、子供なんだから、そう水上君は言う。
    そう、子供なんだから、助けを求めていい。
    人生のほとんどが大人の時間なのだから、たった20年ぽっち、ましてや小学生なら、助けを求めていい。
    もちろん、現実世界は、そんなに甘くなくて、助けを求める術を知らない、奪われた、助けてもらえなかった、そんなこともある。
    大人が受け止めきれないこともある。でも。
    水上くん、君もだよ。
    君だって子供なんだ。
    どんなに大人ぶっても、どんなに賢くても、君だって助けを求めていい。
    誰かの人生を背負うには、まだまだ経験値不足だよ。

    歳をとることは夢を捨てることだ。
    キラキラは消えていく。
    老いは怖い。
    でも、自分では輝けなくても、なりたい自分になれなかったとしても、だから、次代がいるんじゃないか。
    キラキラを残してあげられるんじゃないか。

    子供は、宝物だ。

  • 小学校が舞台、彼らにすれば不可解な出来事をその都度、名探偵コナンのように「水谷くん」が分析、解決していく。
    水谷くん、何事もはっきりしなきゃいけない性格なのかな?どこか大人びていて、とっつきにくい印象。深堀りしていないから謎。

  • 主人公の「僕」の同級生には、「神さま」というニックネームを持つ水谷くんという少年がいる。彼はどんな謎も紐解き、だれからも頼りにされている。もちろん、「僕」もその例外ではない――そんな彼らの一年間のエピソードをつづった連作短編集です。

    どこかほのぼのとした出だしから、やがてぐっとアクセルを踏み込むように状況の深みが増し、小学生には重すぎる事実が立ちはだかっていきます。そうして彼らはどうするか――その選択を、決断を手放しに誉めることはできません。

    「神さま」の選択としてなら、きっと正しく「冴えたやり方」だったとなるのでしょう。ただ、神さまと他社から称される少年もただの一人の子どもであるのは終盤の彼自身の台詞で少し読み取れます。けれど描写上彼の内面には踏み込んでいない、あるいはあえて踏み込ませていないので、神さまとされている水谷くん自身の苦渋がどの程度かわかりません。そのため、彼が抱えざるをえない責任の重さを思うと、じりじりとした感覚に囚われもしました。

    事件そのものの性格もあり、じっとりと重く、やるせない。そういう読後感を残した物語でした。

  • 頭脳明晰でどんな謎でも解決させる水谷くんは、クラスメイトから"神さま"と呼ばれている。
    そんな水谷くんを慕っていて、困ったことがあれば何でも相談する主人公の佐土原くんや、パチンコ依存症をもつ川上さん、運動会を目前に悩んだ様子の三橋くん。
    ままならない小学校生活を送る少年少女たちの日々を描く、芦沢央さんの連作短編集。

    第一話「春の作り方」を読んで、あれ?ほっこり日常の謎系?と拍子抜けしたのも束の間、二話からちょっとずつ不穏さが漂い始めて、そこから最終話までシリアスな展開だった。小学生だって、いや無力な小学生だからこそ、人生いろいろあるよね。。
    この間読んだ伊坂幸太郎や米澤穂信っぽさも感じるかな。
    小学校が舞台のサスペンスやミステリーってすごく好きなジャンルだと気付いた。

    と言っても実はタイトルを知った当初は、引っ込み思案な主人公が、神さまというあだ名で呼ぶほど崇めるクラスメイトを盲信しすぎるあまり、何か命令や洗脳を受けてとんでもない事件を引き起こしてしまうバッドエンドなイヤミスを勝手に想像してしまってたのだけど、さすが全然そこまで残酷な話では無かったですね…。笑
    (でも読んでみたいから誰か書いて欲しい!)

  • 人気ミステリー作家が、創作の裏話を語り尽くす!最新作『僕の神さま』発売記念「芦沢央リモート読書会」開催決定‼|株式会社KADOKAWAのプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000007325.000007006.html

    僕の神さま 芦沢 央:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322004000165/

  • 芦沢さんの作品は久しぶり。

    主人公は小学生の僕。友達の水谷君は鋭い洞察力を持ち、何でも解決まで導く通称”神様”。この僕の気持ちがよく分かる。自分にもそんな頼りになる友達がいた。そしてそんな”神様”の存在が生まれる正体を、その水谷君本人がひも解くのだった。その解説に納得させられる。

    芦沢さん、いつもながらそんな意識しない所を突いてくる。だから余計にドキッとさせられる。さすがだなぁ。小学生が主人公の作品は基本的にあまり好みではないけど、この本は面白かった。巧みな謎と構成にサクッと読了。

    • Tessyさん
      水谷くんの背中を見て、成長してゆく主人公。子どもの頃しか、気づかない視点で、ぐいぐい切り開いてゆく水谷くんに憧れてゆく。神さまのように、ピタ...
      水谷くんの背中を見て、成長してゆく主人公。子どもの頃しか、気づかない視点で、ぐいぐい切り開いてゆく水谷くんに憧れてゆく。神さまのように、ピタリと推理してゆくように見える水谷くんだが…
      この結果は、好きですねぇ。これが、ただの推理小説に終わらなくて、、よかった、と思います。「子どもの成長」が前に出てて、このラストで良かったです。
      2020/10/09
    • gemiさん
      確かにただの小学生推理小説じゃないところがいいですよね。水谷君が自分とボクの関係を分析して戦争の大量虐殺が例えに出されたところに驚きました。...
      確かにただの小学生推理小説じゃないところがいいですよね。水谷君が自分とボクの関係を分析して戦争の大量虐殺が例えに出されたところに驚きました。余談ですが同著「汚れた手をそこで拭かない」も面白そうです♪
      2020/10/10
  • このお話のカテゴリはなんだろう。ミステリ、児童書、青春。そういう要素が入っているけれど、このお話は、私にとっては誰かと向き合うとはどういうことなのかを、切実に語ってくれる本だった。

    僕は小学生で、僕のクラスには水谷くんという少年がいる。彼はみんなに神様と呼ばれている。水谷くんは本当は名探偵と呼んでほしいそうだけど、僕もやっぱり水谷君は神様だと思う。水谷君に困っていることをはなすと、必ず解決してくれる。だからみんな困ったことがあると水谷君に話にいく。「ねえ神様」そう話しかける。
    僕はそんな水谷くんのそばで彼に相談を持ち掛けてくる人たちのことを見ている。そして僕自身も彼に助けを求めることがある。
    おばあちゃんの最後に作った桜茶をダメにしてしまった時。野良猫を見つけてしまったとき。図工の時間にあった女の子同士の諍いの結末の解説。一人の少女から相談事。彼女の一件からあとの運動会での騎馬戦の必勝法。図書館で噂される呪いの本。弟がいなくなったとやってきた転校したはずの級友からの依頼。そしてその後の夏休みの水谷君視点。
    水谷くんという少年の事実が語られる。彼は物をよく知っているけれど、少年にかわりなく、真摯で、誠実で、思慮深くあろうとしているけれど、やはり少年の残酷さをもってもいる。そんな彼の人間としての核に触れてしまうラスト。私はとても好きだった。
    この本の帯に書かれる、「一話で読むのを止めておけばよかった」という文句とは対照的に、柔らかく、この作者のやさしさにも触れた気がした。この少年たちにまた会いたいなと思う。

  • この本の主人公は11歳の小学生の男の子。
    彼には「神様」と呼ぶ、クラスメートの少年がいて彼と身の回りの問題を紐解いていくという話。

    「春の作り方」
    主人公の少年は、亡くなった祖母が作った桜の塩漬けを落としてしまう。
    それは最後のひとつで祖父が大事にしていたもの。
    困った少年はクラスメートの頼りになる少年にどうしたらいいか相談する。
    彼らは桜の塩漬けを再現し、うまくいったかに思えたがー。

    「夏の「自由」研究」
    主人公のクラスメートで絵のうまい少女がいる。
    彼女はパチンコ依存症の父親がパチンコ屋に行かないようにする方法はないかと相談してきた。

    「作戦会議は秋の秘密」
    運動会の騎馬戦でやる気のない態度をとってクラスメートから責められる少年。
    主人公の友人である「神様」はその理由をすぐに察知する。

    「冬に真実は伝えない」
    主人公の学校で都市伝説的な話が流行る。
    それは亡くなった少女の怨念が本にとりついていて、すべて読むとあちらの世界に連れて行かれるというもの。
    バカバカしい話かと思いきや、図書館の本に次々と恐ろしい書き込みが見つかってー。

    「春休みの答え合わせ」
    自分の事を神様と呼ぶ主人公に「神様」が語り始める。
    あの時はこうだった、ああだった、という種明かし的な話。

    最初の話を読み終えて、全てこんな風に小学生を主人公にして、その周囲に起きた小さな出来事を読み解いていく話、割とほのぼのした話が続くのかと思った。
    すると2話目も同じ主人公、彼が神様と呼ぶ少年が登場し、今度は「殺」なんて物騒な漢字が出てくる。
    個人的には最初の雰囲気で進んでいった方が良かったと思う。

    途中、これは成立するのか?どうもイメージできない、というのもあった。
    いくら絵がうまいと言っても布に描いたものをそれと見せかけるというのがどうも想像できなかったし、本の事もイマイチ分からなかった。
    それは単に私のイメージ不足だと思う。

    主な登場人物として主人公含め三人の子供が出てくるけど、一人ひとりの性格がもっと分かる場面があれば誰かを好きになれたかもな・・・と思う。

    ラストのしめくくりの文、「誰かの人生を背負う事がなんてできない」
    それは当たり前だろって。
    まだ小学生なんだから。
    と大きく突っ込んで終わった読書だった。

  • 神さまと友達に呼ばれるほど、頭が良く観察眼もあり行動力もある、すごい水谷くんがみんなの悩みを解決してくれる。川上さんは父親からの虐待から逃げられず悩んでいた。私は嫌いじゃないなーこの作品。水谷くんがスゴすぎたっていいじゃん。川上さんも水谷君も悪くない、悪いのは自分勝手な大人や意地悪な奴らだと思ってしまうよ。本の中くらい、こんな名探偵コナンみたいな子いていいと思うよ。スカッとするじゃん。最後の本の落書き…誰なんだろう…。

全72件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

芦沢央(あしざわ よう)
1984年生まれの作家。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『罪の余白』は2015年に映画化された。その他代表作に、2016年版「週刊文春ミステリーベスト10」第7位、「このミステリーがすごい!」2017年版第5位、第38回吉川英治文学新人賞候補『許されようとは思いません』、そして第32回山本周五郎賞候補および本屋大賞ノミネート作となった『火のないところに煙は』など。2019年8月28日、『カインは言わなかった』を刊行。

芦沢央の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

僕の神さまを本棚に登録しているひと

ツイートする
×