- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041097922
感想・レビュー・書評
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バチカン奇跡調査官シリーズの20冊目。
ロベルトと平賀コンビでの奇跡調査本編としては16冊目。
今回の舞台は、オランダです。
オランダ、今ではあまり意識することのない国ですが、江戸時代、鎖国体制のもと、出島での出入りを許された国がオランダでした。
コップやスコップ、ガラスやレンズ、コーヒーやビールなど、日ごろお世話になっている言葉にもオランダからやってきたものが多くあります。
バチカン奇跡調査官シリーズでは、奇跡が起こったとされる各国、各地へ調査に赴くわけですが、その国の歴史や文化などにも話がおよび、とても興味深いです。
オランダでは、大麻などソフトドラッグが合法化され、世界有数の性の解放区といわれるなど、カソリックの司祭にとっては頭を抱えるような現状だとか。
ユトレヒトの教会の司祭エイクマンも、そんな想いを強くもっています。
この地のカソリック教徒には、差別や迫害を受けた過去があるからです。この協会も、そんな苦難を厚い信仰心で耐え続けた人々のための隠し教会であったのですから。
そんな中でおきた神の光の奇跡。
信者十数人が、光を見ています。
預言を聴く、天国の門を通る、亡くなった家族に会ったり声を聴く、認知症の父親が記憶を取り戻す、イエスと共に歩き脚の痛みがおさまる、体が踊るように動いた、など、おのおのが光と共に不思議な体験をしました。
ところが、奇跡を認定してもらえるかと思いきや、バチカンからやってきたふたりの神父は、あれやこれや長さを測ったり、X線透過検査装置やらを教会内に置いてみたり、隠し階段の上の隠し部屋にこもって何やら読み耽っていたり。
平賀にいたっては、教会の宝である聖釘(キリストが磔にされた際に使われた釘)の入った木箱を開けて見せてくれとまで言ってくるしまつ。
聖釘の入った木箱を開けて見れば目が潰れると言い伝えられ、木箱を納めたステンドグラスで彩られたガラスケースさえ、開けられた事がないというのに。
ロベルトの取りなしで無事調査が進められますが、平賀の周りの空気を読まなさ加減、人の機微がわからないアチャーな様子は、巻が進むにつれひどくなっているような⁉︎
奇跡調査と同時に、殺人事件に巻き込まれることも多いのですが、今回それはありません。
奇跡についても、平賀なりの結論には辿り着くのですが、それが正しいのか、科学的な理屈のこじつけなのかは、はっきりしません。
ただ、聖釘については、ロベルトがみごと解き明かしました。
こちらの経緯については、かなり興味深く読むことができました。
その中に登場する貴族の名前は、ネットで見つけることはできませんでしたが、ロベルトが調査のために立ち寄ったらしい博物館は実際にあるようです。
奇跡ということの意味にもよりますが、それぞれの人が、素晴らしい体験をした事こそ、奇跡と言っていいのではないか、とも思ってしまいますけれどね。
そういえば、ロベルトがおもに平賀のために作る料理は、いつも美味しそう。
作る手順もかなり書いてあるので、作ってみたくなります。
わたしは密かに、美味しいもののレシピのある小説Bestではないかと思っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今回は王道の奇跡調査でした。
他の方も言ってるがもはやそれは奇跡でもいいのでは、と言いたくなるが、ストーリーより今回はロベルトと平賀の関係性がとても微笑ましかった。
ここ最近冷静平賀と普通の人と化してしまうロベルト、が多かったけど今回は大人で優しさと寛大さをもつロベルトの魅力と、ピュアで子供のようなところのある平賀のバランスがいい具合にでてたと思うのでそれが良かった!
2023.5.2
72 -
奇跡の顕現から聖徒の座の説明、平賀&ロベルトの紹介という、初見さん向けかと思うような丁寧な冒頭に始まり、もはやここまでくると奇跡だろと言いたくなるトンデモ自然現象を最後に畳みかけて収束する、ザ・バチカン奇跡調査官です。いや~……今回もトンデモだった……(笑) 視覚的な奇跡は、登場した瞬間に薬か病か脳の異常を疑うしかなくなりつつあります。
人死や派手な怪奇現象もなければ、アクションも無く、ローレンやガルドウネに関して大きく展開することもないので、シリーズとしては「ちょっと一息」という印象。 -
もうそれは奇跡でも良いのでは? と思って仕舞いますね。