バチカン奇跡調査官 王の中の王 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041097922

感想・レビュー・書評

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  • バチカン奇跡調査官シリーズの20冊目。
    ロベルトと平賀コンビでの奇跡調査本編としては16冊目。

    今回の舞台は、オランダです。

    オランダ、今ではあまり意識することのない国ですが、江戸時代、鎖国体制のもと、出島での出入りを許された国がオランダでした。
    コップやスコップ、ガラスやレンズ、コーヒーやビールなど、日ごろお世話になっている言葉にもオランダからやってきたものが多くあります。

    バチカン奇跡調査官シリーズでは、奇跡が起こったとされる各国、各地へ調査に赴くわけですが、その国の歴史や文化などにも話がおよび、とても興味深いです。

    オランダでは、大麻などソフトドラッグが合法化され、世界有数の性の解放区といわれるなど、カソリックの司祭にとっては頭を抱えるような現状だとか。
    ユトレヒトの教会の司祭エイクマンも、そんな想いを強くもっています。
    この地のカソリック教徒には、差別や迫害を受けた過去があるからです。この協会も、そんな苦難を厚い信仰心で耐え続けた人々のための隠し教会であったのですから。

    そんな中でおきた神の光の奇跡。
    信者十数人が、光を見ています。
    預言を聴く、天国の門を通る、亡くなった家族に会ったり声を聴く、認知症の父親が記憶を取り戻す、イエスと共に歩き脚の痛みがおさまる、体が踊るように動いた、など、おのおのが光と共に不思議な体験をしました。

    ところが、奇跡を認定してもらえるかと思いきや、バチカンからやってきたふたりの神父は、あれやこれや長さを測ったり、X線透過検査装置やらを教会内に置いてみたり、隠し階段の上の隠し部屋にこもって何やら読み耽っていたり。
    平賀にいたっては、教会の宝である聖釘(キリストが磔にされた際に使われた釘)の入った木箱を開けて見せてくれとまで言ってくるしまつ。
    聖釘の入った木箱を開けて見れば目が潰れると言い伝えられ、木箱を納めたステンドグラスで彩られたガラスケースさえ、開けられた事がないというのに。

    ロベルトの取りなしで無事調査が進められますが、平賀の周りの空気を読まなさ加減、人の機微がわからないアチャーな様子は、巻が進むにつれひどくなっているような⁉︎


    奇跡調査と同時に、殺人事件に巻き込まれることも多いのですが、今回それはありません。

    奇跡についても、平賀なりの結論には辿り着くのですが、それが正しいのか、科学的な理屈のこじつけなのかは、はっきりしません。
    ただ、聖釘については、ロベルトがみごと解き明かしました。
    こちらの経緯については、かなり興味深く読むことができました。
    その中に登場する貴族の名前は、ネットで見つけることはできませんでしたが、ロベルトが調査のために立ち寄ったらしい博物館は実際にあるようです。


    奇跡ということの意味にもよりますが、それぞれの人が、素晴らしい体験をした事こそ、奇跡と言っていいのではないか、とも思ってしまいますけれどね。


    そういえば、ロベルトがおもに平賀のために作る料理は、いつも美味しそう。
    作る手順もかなり書いてあるので、作ってみたくなります。
    わたしは密かに、美味しいもののレシピのある小説Bestではないかと思っています。

  • 今回は王道の奇跡調査でした。

    他の方も言ってるがもはやそれは奇跡でもいいのでは、と言いたくなるが、ストーリーより今回はロベルトと平賀の関係性がとても微笑ましかった。
    ここ最近冷静平賀と普通の人と化してしまうロベルト、が多かったけど今回は大人で優しさと寛大さをもつロベルトの魅力と、ピュアで子供のようなところのある平賀のバランスがいい具合にでてたと思うのでそれが良かった!

    2023.5.2
    72

  • 今作も本当に面白く、また、オランダについて色々と知ることができた一冊でした。
    サウロ大司教がどういう判断を下したかは気になるところですが、個人的にはもはや奇跡と呼べるのではと(短絡的にも)思ってしまう・・・
    加えて、ロベルトがミッフィーちゃんのマグカップをちゃんと使うのか、という点も非常に気になるところです(どうでも良い)。

  • 今回はいつも通り奇跡調査のお話。
    オランダの礼拝堂での奇跡体験への調査。

    ストーリーを読むと毎回思うけれどバチカンがへ「奇跡」申請する内容のバリエーションって、
    そこまで多くなさそうなのに毎回違う切り口を生み出す知識と発想力、そして作者様の努力を尊敬します。

    今回も、正直平賀の説明は文系の私には理解しきれなかったけど、
    きちんと論理的・学術的な根拠・仮説があって発生する「現象」であって「奇跡」ではないっていう証明がされていく過程がすごい。
    毎回、本の末尾にたくさんの参考資料の記載があるのできちんと裏を取りながらストーリーを作ってくださってるのがわかって頭が下がる思いです。

  •  奇跡の顕現から聖徒の座の説明、平賀&ロベルトの紹介という、初見さん向けかと思うような丁寧な冒頭に始まり、もはやここまでくると奇跡だろと言いたくなるトンデモ自然現象を最後に畳みかけて収束する、ザ・バチカン奇跡調査官です。いや~……今回もトンデモだった……(笑) 視覚的な奇跡は、登場した瞬間に薬か病か脳の異常を疑うしかなくなりつつあります。
     人死や派手な怪奇現象もなければ、アクションも無く、ローレンやガルドウネに関して大きく展開することもないので、シリーズとしては「ちょっと一息」という印象。

  • 久々の奇跡調査回。
    またしても教会の地下に真相があったので安心。
    鉄板で覆われた長大な地下道を経由して、落雷の電流が教会に到達し、なんやかやで巨大な光球が生じたり、信者の足が治ったり、信者の認知症が一時的に治ったりした。
    途中の暗号解読パートが読めば読むほど味わい深く、wikipediaから丸ごと剽窃していたりして(※参考引用文献にwikipediaの記載なし)、このあたりはそろそろ編集・校正さんがまじめに指摘した方が良いと思った。

  • もうそれは奇跡でも良いのでは? と思って仕舞いますね。

  • 化学で解明できることを、UFOかもしれないとか、一方的なこじつけかもと言える平賀の柔軟性が凄いなあと思います。でも、そう考えた方がロマンがあって面白いですね。
    聖遺物は、真相は真相で凄く興味深い。

  • オランダ、ユトレヒトで起きた「奇跡」と聖遺物に関する謎解き。まぁ奇跡も聖遺物も本物ではないのはお約束として、どう科学的に解明するのか。電気刺激によって脳が云々というのはまだ想定内として、聖遺物の正体は思いもよらないものでした。確かにオランダといえば……ですが。オランダがイギリスに次ぐメシマズ国だというのは初めて知りました。行くことがあれば(多分ないけど)食に関しては気を付けます。

  • オランダの隠し教会が舞台の奇跡調査だった。
    オランダは多国籍で多宗教の地域で、かつテロなども起こる危険があるところで、それそれ宗教を理由に争いが起きている。

    奇跡申請としてはいつもどおり平賀神父とロベルト神父が解き明かし、聖釘の真実についても明らかになった。それを教会側に伝えたのか、伝えなかったのか。信者に公にしたのか、大司教に相談ということだったけど、どうだったんだろう。

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著者プロフィール

大阪府出身。1998年『陀吉尼の紡ぐ糸』でデビュー。ミステリーや伝奇など、多岐にわたるジャンルで活躍する。「バチカン奇跡調査官」シリーズは累計140万部を突破するヒットとなり、アニメ化もされた。他の著書に「朱雀十五」シリーズ、「陰陽師 鬼一法眼」シリーズ、『太古の血脈』など多数。

「2022年 『バチカン奇跡調査官 秘密の花園』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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