長く高い壁 The Great Wall (角川文庫)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • KADOKAWA (2021年2月25日発売)
3.35
  • (5)
  • (41)
  • (37)
  • (13)
  • (2)
本棚登録 : 543
感想 : 30
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784041098622

作品紹介・あらすじ

1938年秋。従軍作家として北京に派遣されていた探偵小説作家の小柳逸馬は、軍からの突然の要請で前線へ向かう。
検閲班長・川津中尉と赴いた先は、万里の長城・張飛嶺。
そこでは分隊10名が全員死亡、しかも戦死ではないらしいという不可解な事件が起きていた。
千人の大隊に見捨てられ、たった30人残された「ろくでなし」の小隊に何が起きたのか。
赤紙一枚で大義なき戦争に駆り出された理不尽のなかで、兵隊たちが探した"戦争の真実"を解き明かす、極限の人間ドラマ。

みんなの感想まとめ

戦争の真実を追求する姿勢が鮮明に描かれた作品で、従軍作家としての主人公が、万里の長城・張飛嶺で発生した不可解な事件に挑む姿が印象的です。日本軍の負の側面を浮き彫りにしながら、兵士たちが直面する理不尽さ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 支那事変が拡大する中、万里の長城の要衝、張飛嶺を警備する守備隊の10名が悉く毒殺されてしまう。従軍作家として北京に滞在中の売れっ子探偵作家、小柳逸馬は、急遽、事件の捜査に駆り出される。小柳を探偵役として、日本軍の負の面を描いた戦場ミステリー。

    本作、著者の自衛隊時代の経験がふんだんに盛り込まれていると感じた。繰り返し出てくる「星の数より飯の数」という慣用フレーズも、確か著者が自衛隊時代に身に染みた言葉じゃなかったかな。

    茫洋で殺伐とした中国大陸の雰囲気を描くのは、さすがに上手い。ミステリーとしては今一つかな。

    小柳のセリフ「しかし僕は、嘘つきで見栄坊の人間を醜いとは思わない。だからこ美しい。それは天然の一部分としての、人間の営みに違いないから。」が印象に残った。

  • (いっつもレビュー書いては保存しようとして消してしまう…PC版で必ずやってしまう…私のあほ…)

    久々に浅田次郎が読みたいな〜と買ってきた本作。
    ページを開いてすぐ、文体大丈夫かなと心配したんですが(苦手っていうより時間がかかる)とっても面白かったです!

    あらすじと帯を読んで読み始めてみたけど、いや、ミステリーだった!!
    けど確かに人間ドラマでもあった!!(ちなみに人間ドラマは最後なので、ほぼずーっとミステリーです)
    侵略戦争だとどうしてもこういう面が出てきてしまうのかな…悲しい。

    そしてこのコンパクトだけどいろいろ詰まってる作品をギュッとさらに濃縮して展開させて芳醇にさせてる、さすが大御所…!
    面白かったです!


    @手持ち本

  • 浅田次郎の中で書きたい核のところがあったのだろうが、そこまで理解ができなかった。
    解説を読みたいな。

  • 実力・実績の著者ならではの、情景描写のクオリティだが、結城昌治の戦争小説の名作「軍旗はためく下に」の劣化版コピー作品と評価されてもしょうがない作品。少し残念であった。


  •  日中戦争は、「なんのために始まり、なぜ終わらないのか」が分からぬ、不可解な戦争だったと言われているそうです。
    
     大義のない戦争で、色々な境遇の兵士が集まった時、何を正義とし、何を悪とするのか。軍隊という組織の中では、何をよしとするのか。
    
     私は今まで、大戦中の兵士というのは、「お国のため」という大義名分のもと、一丸となって戦っていた、悲しいくらい真面目な人の集まりだと思っていました。THEサムライというような…。
    
     でもそれは綺麗事。生活やお金のために仕方なく戦地に赴くことが普通。そこで真剣に取り組むか、適当に取り組むか、やりたい放題に堕落するか、それは各々の人間性に依っていたようです。それは、現代と何も変わらないし、人間というのは普遍的なものなのだと実感しました。
    
     読み終えた時、これが最善だったと思いました。それなのにどこか心が重くなる、とても考えさせられる話でした。
    
     浅田次郎の現地取材と資料調査により、今まで私が考えていた戦争と、実際の戦争の違いがたくさん知れて、とても勉強になりました。

    
    
    ハッと、心に残った言葉(ネタバレになります)
     「海野さんが悪いのではなく、海野さん以外の人がみな悪い。悪人から見れば、善人が悪人。だとすると、海野さんを悪人だと思っているみなさんこそが、実は悪人ということになりますがね。」
     

  • 1938年、中国へ進軍していた日本軍の一部小隊で、兵士10名が死亡する事件が発生する。調査のために現地を訪れたのは、探偵小説作家と日本軍の中尉。彼らは生き残った兵士や、中国人の医者、料理屋の主人など、事件に関わる可能性のある人物たちへ次々とインタビューを行い、真相を追っていく。

    物語は一見するとミステリー小説のような雰囲気で進むが、結末に至ると「推理劇」というよりも、むしろ戦争そのものが人を狂わせていく過程が描かれていたのだと気づかされる。

    読後には「なるほどね」と言いたくなるような、少し掴みどころのない感覚が残る。ただ、それは決して悪い意味ではなく、不思議と納得感を伴う余韻として残る読書体験だった。

  • 20220218

  • 日中戦争のさ中、万里の長城・張飛嶺でみつかった10名の兵士たちの死体。これは戦死ではなく殺人。やがて明らかになる真実に、作者が描いたものはトリックではなく、嘘で塗り固められた戦争の姿だと気づきました。

  •  2021年11月20日(土)にジュンク堂書店 三宮駅前店で購入。11月22日(月)に読み始め、24日(水)に読み終える。

     浅田次郎の作品を読むのは、『壬生義士伝』『地下鉄に乗って』に次いで3作目(だと思う)。泣かせるような話ではなかったけど、とてもよかった。

     何かに関わるとか、その原因になるとはどういうことなのか、特に最後の部分で考えさせられる。

     涮羊肉(シュワンヤンロウ)を食べたくなる。

    59ページに「長く高い壁である。」
    244ページに秋口に採れたきのこもまだたっぷりとありますと。

    【以下、再読記録】
     2025年1月22日(水)に再読を始め、2月24日(月・祝)に読み終える。2月24日の第54回文学カフェのため。1回目に読んだときほどの衝撃はなく、星3つとしたけど、いい作品。

     2・26事件(1936年2月26日)が物語の背景にあって、2月24日に文学カフェでこの作品について話ができたのには、なかなか感慨深いものがあった。

     22章と24章の視点はほかの章と比べてやや特異。賛否両論あろうかと思う。

     老陳を山村大尉が殺したことについては、どうしてもしっくりこないところ。

    ■1938年当時における軍隊の階級(巻頭より)
    ===将校ここから===
    将官
     大将、中将、少将
    佐官
     大佐、中佐、少佐
    尉官
     大尉、中尉、少尉
    ===将校ここまで===
    准士官
     准尉
    下士官
     曹長、軍曹、伍長
    兵卒
     上等兵、一等兵、二等兵

    ■旧制の教育制度
     1938年当時の義務教育は尋常小学校(6年)まで。尋常小学校を卒業したあと高等小学校(2年)に進学して就職するか、尋常小学校のあと旧制中学校(5年)に進学して就職する。旧制中学卒業は当時としてはエリートだが(本作で言えば山村大尉)、さらに旧制高校(3年)に進学して帝国大学(4年)を卒業するのは成績上位0.5%ほどで、トップエリート(本作で言えば川津中尉)。

     ちなみに、川津中尉は高文試験(高等文官試験)に落第し、出版社の入社試験も通らず(18頁)、甲幹の将校(33頁)という設定。小柳逸馬は高等小学校卒(271頁)で小説家になったという設定。

    ■軍隊組織
    大隊、中隊、小隊(3分隊で30人)、分隊(10人)

    ■時代背景
     最初に「1938年当時における軍隊の階級」が付されていることや、「つい先ごろ、支那の戦線にある下士官が、みごと芥川賞を受賞したという事実も」(20頁)という記述から(これは1937年下半期の火野葦平『糞尿譚』と思われる)時代背景は1938年のことだろう、と思って読み進めると、事件は本文の記述から1938年11月初旬のことだとわかる(298頁)。事件の時点で10月27日に武漢が陥落したという情報を山村は得ている(311頁)。

     当時の貨幣価値について、ChatGPT o1に1938年当時の1円が現在(2020年代で計算しているもよう)の貨幣価値でどれぐらいになるのか推測させたところ、CPIを基にした推計で数百円~数千円程度、賃金水準を基にした推計で1円あたり3,000円前後になるケースが多いとのことだった。

    ■舞台
    北京と司馬台長城(作中では長城の張飛嶺という架空の場所)

    ■内容
    50頁、高粱飯(コーリャンめし)を食ってみたいな。

    山村大尉も支那語ができるところがミソだろうか、と思っていたら182頁で尋問のあとに山村大尉がめしを食いに行く(と描写されている)場面があり、示唆的。

    234頁、涮羊肉(シュアンヤンロウ/シュワンヤンロウ)

     ところで、津山30人殺しも1938年に起きた事件。犯人の都井睦雄は、1937年5月22日に徴兵検査で丙種合格になったことがきっかけで人間関係がこじれていき、1938年5月21日未明に事件を起こしている。

  • 小手先のやっつけ仕事
    演出家のメモ付きの舞台脚本でも読んでる気分だった

    浅田次郎はこの頃戦時下を舞台にした犯人当てミステリーでも読んだのか?
    浅田次郎って、ときたま「俺ならこう書いてやる」と言わんばかりに、その時読んでいたと思われる小説の亜流を書くことあるからな。

  • 日中戦争を舞台としたミステリー。従軍作家として北京に滞在していた売れっ子推理作家に下されたのは万里の長城で起きた事件の調査。

    関係者への聞き込みを進める際に、それぞれの軍関係者の一人称視点で語られる。事件の解き明かし自体は大したことはなく、事件の真相も安直すぎる。

    ただし、大正の軍縮時代と昭和初期に入ってからの大陸での戦争遂行状態で兵役というものが全く異なっていたこと、それに伴って世代によって兵隊の資質が異なっていたことを知れたのは収穫。

    また、士官学校出身の将校と、兵卒からのたたき上げの下士官の関係性を描いた作品は数あれど、最初の兵役満了後に一般社会人として生活をしたあと、予備役招集で再び大陸に送られた当時の日本人男性たちの姿の描写はリアルだった。このまま坂を転がり落ちるように太平洋戦争が始まり何百万人もの普通の男たちが戦争に絡め取られていく未来があったことが悲しい。

    一方で、日本軍、国民党軍、共産党軍が群雄割拠している状況にあっても中国の来週、それも食生活が豊かであったという描写は興味深い。

  • 期待していたような内容ではなかった。

  • 浅田次郎氏曰く、「面白い作品が書けた。」そんな作品です。

  • 日本の軍人の致命的な性格を評した一節。規模の大小にかかわらず理想の戦果を特定しそれに向かって作戦を立案する癖。負の要素を想定せず希望的観測よってのみ戦争を遂行する。

    これは日本人全てに言える事だ。コロナ対策に於いても、いつか収束する、という楽観が何処かに潜み対応が中途半端且つ後手になる。経済活動も然り。いずれかつての高度成長が戻るという根拠のない希望的観測により20年もの歳月が空虚に費やされた。

    我が身にも常に肝に銘じておきたい一節なり。

  • 満州時代の万里の長城を舞台に起きた殺人事件のお話。
    軍人と従軍作家の立場から、必ずしも本音が言えないという時代背景と、真実を解き明かさなければいけない正義感の狭間にいる主人公達。
    浅田先生の小説は非常に面白いのですが、設定の深いところをもっと知りたくなってしまう。
    蒼穹の昴や中原の虹あたりの話も見え隠れして、繋がりがあるのが面白い。

  • 昭和13年暮、中国張飛嶺を舞台にした戦争小説
    2018年2月28日 KADOKAWA 単行本 で読んだ

  • 中国を舞台にした「戦場ミステリー」。

    浅田センセは、軍隊・自衛隊の現場の空気を描かせたら秀逸だなぁ。

    最終的にどこに落ち着くのかと思ったら、ラストはなんだか救われた気がする。

  • 『長く高い壁』(浅田次郎著)は、戦争という極限の現実を背景に、人間という存在の尊厳と愚かさ、そのどちらもを静かに照らし出す傑作である。物語の舞台は1938年、中国北部の前線。国家の名のもとに動かされる兵士たち、そしてその中で起こる一件の“不可解な死”。浅田次郎は、この謎を糸口に、戦場という場所がいかに人の心を侵食し、同時に人間の本質を露わにしていくかを見事に描き出している。

    本作の魅力は、単なるミステリーの枠を超えている点にある。真実を追う物語でありながら、読者が辿るのは「事件の解決」ではなく「人間の理解」へと至る道である。そこには、善悪の単純な区別を拒む、深い人間観が息づいている。軍隊という組織の中で、個の意志が押しつぶされ、理性と信念がせめぎ合う姿は、戦争文学でありながらも現代社会にも通じる普遍性を帯びている。

    そして、浅田次郎特有の筆致――冷徹でありながらも、最後に必ず人の温もりを残す文章が、この作品をただの悲劇に終わらせない。
    「長く高い壁」とは、国家と個人の間に立ちはだかる壁であり、人の心が越えようとしながらも越えきれぬ壁でもある。読後には、重くも澄んだ静寂が胸に残り、人間という存在の奥行きを改めて思い知らされる。

  • ミステリと歴史の融合

    歴史部分が面白すぎて 謎がどうでもよくなる

    この作者 埃っぽい貧困を描くのが本当にうまい

  • 当時、わけのわからぬ戦争を続けた日本。
    その中、万里の長城で起きた
    不可解な事件の真相を解くのだが、
    やりきれない思いだけが残る。
    愚かな行為がまかり通ってしまうのも、
    また、戦争の恐ろしさでもあるのだ。

全27件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×