長く高い壁 The Great Wall (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041098622

作品紹介・あらすじ

1938年秋。従軍作家として北京に派遣されていた探偵小説作家の小柳逸馬は、軍からの突然の要請で前線へ向かう。
検閲班長・川津中尉と赴いた先は、万里の長城・張飛嶺。
そこでは分隊10名が全員死亡、しかも戦死ではないらしいという不可解な事件が起きていた。
千人の大隊に見捨てられ、たった30人残された「ろくでなし」の小隊に何が起きたのか。
赤紙一枚で大義なき戦争に駆り出された理不尽のなかで、兵隊たちが探した"戦争の真実"を解き明かす、極限の人間ドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 支那事変が拡大する中、万里の長城の要衝、張飛嶺を警備する守備隊の10名が悉く毒殺されてしまう。従軍作家として北京に滞在中の売れっ子探偵作家、小柳逸馬は、急遽、事件の捜査に駆り出される。小柳を探偵役として、日本軍の負の面を描いた戦場ミステリー。

    本作、著者の自衛隊時代の経験がふんだんに盛り込まれていると感じた。繰り返し出てくる「星の数より飯の数」という慣用フレーズも、確か著者が自衛隊時代に身に染みた言葉じゃなかったかな。

    茫洋で殺伐とした中国大陸の雰囲気を描くのは、さすがに上手い。ミステリーとしては今一つかな。

    小柳のセリフ「しかし僕は、嘘つきで見栄坊の人間を醜いとは思わない。だからこ美しい。それは天然の一部分としての、人間の営みに違いないから。」が印象に残った。

  • (いっつもレビュー書いては保存しようとして消してしまう…PC版で必ずやってしまう…私のあほ…)

    久々に浅田次郎が読みたいな〜と買ってきた本作。
    ページを開いてすぐ、文体大丈夫かなと心配したんですが(苦手っていうより時間がかかる)とっても面白かったです!

    あらすじと帯を読んで読み始めてみたけど、いや、ミステリーだった!!
    けど確かに人間ドラマでもあった!!(ちなみに人間ドラマは最後なので、ほぼずーっとミステリーです)
    侵略戦争だとどうしてもこういう面が出てきてしまうのかな…悲しい。

    そしてこのコンパクトだけどいろいろ詰まってる作品をギュッとさらに濃縮して展開させて芳醇にさせてる、さすが大御所…!
    面白かったです!


    @手持ち本

  • 浅田次郎の中で書きたい核のところがあったのだろうが、そこまで理解ができなかった。
    解説を読みたいな。

  • 実力・実績の著者ならではの、情景描写のクオリティだが、結城昌治の戦争小説の名作「軍旗はためく下に」の劣化版コピー作品と評価されてもしょうがない作品。少し残念であった。


  •  日中戦争は、「なんのために始まり、なぜ終わらないのか」が分からぬ、不可解な戦争だったと言われているそうです。
    
     大義のない戦争で、色々な境遇の兵士が集まった時、何を正義とし、何を悪とするのか。軍隊という組織の中では、何をよしとするのか。
    
     私は今まで、大戦中の兵士というのは、「お国のため」という大義名分のもと、一丸となって戦っていた、悲しいくらい真面目な人の集まりだと思っていました。THEサムライというような…。
    
     でもそれは綺麗事。生活やお金のために仕方なく戦地に赴くことが普通。そこで真剣に取り組むか、適当に取り組むか、やりたい放題に堕落するか、それは各々の人間性に依っていたようです。それは、現代と何も変わらないし、人間というのは普遍的なものなのだと実感しました。
    
     読み終えた時、これが最善だったと思いました。それなのにどこか心が重くなる、とても考えさせられる話でした。
    
     浅田次郎の現地取材と資料調査により、今まで私が考えていた戦争と、実際の戦争の違いがたくさん知れて、とても勉強になりました。

    
    
    ハッと、心に残った言葉(ネタバレになります)
     「海野さんが悪いのではなく、海野さん以外の人がみな悪い。悪人から見れば、善人が悪人。だとすると、海野さんを悪人だと思っているみなさんこそが、実は悪人ということになりますがね。」
     

  • 20220218

  • 日中戦争のさ中、万里の長城・張飛嶺でみつかった10名の兵士たちの死体。これは戦死ではなく殺人。やがて明らかになる真実に、作者が描いたものはトリックではなく、嘘で塗り固められた戦争の姿だと気づきました。

  •  2021年11月20日(土)にジュンク堂書店 三宮駅前店で購入。11月22日(月)に読み始め、24日(水)に読み終える。

     浅田次郎の作品を読むのは、『壬生義士伝』『地下鉄に乗って』に次いで3作目(だと思う)。泣かせるような話ではなかったけど、とてもよかった。

     何かに関わるとか、その原因になるとはどういうことなのか、特に最後の部分で考えさせられる。

     涮羊肉(シュワンヤンロウ)を食べたくなる。

    59ページに「長く高い壁である。」
    244ページに秋口に採れたきのこもまだたっぷりとありますと。

  • 小手先のやっつけ仕事
    演出家のメモ付きの舞台脚本でも読んでる気分だった

    浅田次郎はこの頃戦時下を舞台にした犯人当てミステリーでも読んだのか?
    浅田次郎って、ときたま「俺ならこう書いてやる」と言わんばかりに、その時読んでいたと思われる小説の亜流を書くことあるからな。

  • 日中戦争を舞台としたミステリー。従軍作家として北京に滞在していた売れっ子推理作家に下されたのは万里の長城で起きた事件の調査。

    関係者への聞き込みを進める際に、それぞれの軍関係者の一人称視点で語られる。事件の解き明かし自体は大したことはなく、事件の真相も安直すぎる。

    ただし、大正の軍縮時代と昭和初期に入ってからの大陸での戦争遂行状態で兵役というものが全く異なっていたこと、それに伴って世代によって兵隊の資質が異なっていたことを知れたのは収穫。

    また、士官学校出身の将校と、兵卒からのたたき上げの下士官の関係性を描いた作品は数あれど、最初の兵役満了後に一般社会人として生活をしたあと、予備役招集で再び大陸に送られた当時の日本人男性たちの姿の描写はリアルだった。このまま坂を転がり落ちるように太平洋戦争が始まり何百万人もの普通の男たちが戦争に絡め取られていく未来があったことが悲しい。

    一方で、日本軍、国民党軍、共産党軍が群雄割拠している状況にあっても中国の来週、それも食生活が豊かであったという描写は興味深い。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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