- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041098707
作品紹介・あらすじ
桜祭りの帰りに見た宙に浮く柔らかな光、川で投網を打つ人を襲った足元の砂の奇妙な動き、山道で「おおい、おおい」と呼びかけてくる声、憑物を籠めているという壺の秘密……不思議でどこか懐かしい短編集。
感想・レビュー・書評
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恐れというより畏れを感じる小話が充実してます。
はっきり怖い感じよりは、ほんのりとしたものの方がリアルにありそう。
大正から昭和にかけてのイメージがある話が多いので、中年層には懐かしく、若年層には昔話のように読めます。
携帯電話やネットがない時代、コンビニも24時間のファミレスもない頃は、闇が深くて自然の光りが眩しくて、不思議に感じる余白が多かったんですね。
そういう、はっきりしない存在に対して感じる畏怖や敬愛が、結果的に他人に対する尊敬や譲り合いの精神を育んでいたのかな。今はなんでも調べて白黒つけられることが増えて、味方も敵も見つけやすくなって、他人に対して気持ちの余白がないですよね( ;´Д`)
この本に出てくる里山のような、自然に溶け込む環境で精神を緩めたいなと思います。
犬科の眷属に好かれやすい人と玉かんざしのお話はほっこりしてよかった。
憑物壺は本当にありそうで怖い。
原因や媒介が解明されていない病気が憑物の呪いとして恐れられていたとしたら納得できる。
あるかないか、本当か嘘か、曖昧なことが却って印象深くなる、、まさに体験を文字にした臨場感のある短編です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三作とも図書館で借りて読みました。
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50268620 -
微妙に不思議な話もあり。
その方がリアルかも。 -
「たけくやしき」「憑物壺」「玉かんざし」の3篇が印象に残りました。
中でも「憑物壺」かなぁ。呪物を扱う恐ろしさと、その存在を受け入れていたということが怖いです。各地の狐憑きの伝承とかは、「憑物壺」の話のような家の存在があったからなんでしょうね。
そういえば、MASTER KEATONで狂犬病を利用した殺人事件の回ありましたね。思い出しました。あの話は、犯人の狂気が恐ろしかったですが、職業にしているという「憑物壺」は、理性があってのことなので、違う怖さです。
狂気は理解できないけど、職業ということになると職務内容はともかく、仕事をする、という行為は理解できてしまうので。
「たけくやしき」は漢字にすると「猛悔しき」とでもなるのかな。そういう言葉があるのならば、勉強不足ですみません。自分が大事にしていることだけど、生活のためにはどうしても後回しにしてしまっている現実。その罪悪感をついて、心の弱さ隙間につけこんでくる言葉を、否定できない不甲斐なさ、もどかしさ。
そんな感情を吹っ飛ばしてくれたのは、守るべき存在でした。感謝です。
遺された想いを昇華させることのできた「玉かんざし」。
こういう話は、やはりいいです。理不尽に失ってしまった人生の心残りを、救ってあげることのできた話は、心に残ります。せめて、ささやかな安らぎを。
アンソロジーの作品





