- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041098721
作品紹介・あらすじ
26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して――。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす! 第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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「クズとワルしか出てこない 最低にして最高」の魅力溢れるパワーワードに惹かれ帯買いした本書....の思い出は中々古い記憶だ。長らく本棚に鎮座させてしまい、最早復活の儀を待つラスボスみたいになっていた。
目覚めの時は突然で、勇者が剣を引き抜いたその時...とかでは無く、最近皆様の本棚でよく見掛ける様になった事で興味惹かれたという至極当然たる目覚めだ。ありがとうございます(*^^*)
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ケースワーカーの佐々木守の日常から物語は始まる。生気は無いがしっかりと受給者に向き合う姿勢の守と、その視点から見える不正受給者のクズワル具合に彼に対して秒で同情心が沸き立った。うーん、本当に面白いので内容をあまり語りたくない。なので作品説明以上の事は極力語らずに....出来るだろうか。
(´ρ`*)コホン
守の同僚〈高野洋司〉の悪事から負の連鎖がとぐろを巻き始める。被害者の〈林野愛美〉、高野を食い物にし東京進出を目論む地方ヤクザ 〈金本竜也〉 金本のパシリ不正受給者の〈山田吉男〉...に留まらず、少なくない登場人物達はもれなく負の連鎖に呑み込まれ、後の大き過ぎる悲劇として順調に成長していく。
語り手が逐一切り替わるスピーディな作品なのだが、人物描写がとても丁寧だった。誰がどんなワルかしっかり認識して読み進める事が出来る。種族のレパートリーが豊富過ぎて最早「クズワル大辞典」だ。
他人を食い物と認識すると人はここまで残酷になれるものなのかと恐ろしくなるが、如何せんこの作品に「良い奴」は存在しない。クズ×ワルの〈混ぜるな危険〉をとくと楽しんだろう くらいの俗悪的思考で向き合う方が精神は安定するかと思う。
性的暴行 麻薬 暴力 万引き....思いつく限りの「悪い事」が次々と起こるのだが、発端となるのは「生活保護不正受給」となる。勿論、不正受給は許せない。しかし、それを斡旋する地方ヤクザ金本のセリフが、人の羞恥を的確に抉り出しているように感じた。
『世間は生活保護を貰ってる奴らは楽して金を得てずるいではなく、一生懸命働いてるのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしいと考えるべきだ』
....良い事言っている風だが、背景はマッチしていない。その世間の視野の狭さを嘲笑い、15時のもぐもぐタイムにしている様な人間の言葉だ。
しかし、「お言葉ですが」と返す言葉は見付からなかった。もしかしたら被害者は自ら「食べ頃」になっているのやもしれない。
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常にシリアスな雰囲気で眉間のシワは刻まれる一方だ。しかし終盤は打って変わってのコメディタイム。これは決して非難している訳ではなく、リアルとどこかお茶目を感じる非現実さのバランスがとても面白い。野次馬根性よろしく大いに喜劇を楽しんでいた(注︰暗黒書物愛好家視点)
是非、白石和彌監督にエグさのテコ入れをして映像化してもらいたい。
著者の後書きにもチャールズ・チャップリンの名言を使ってこう記されている。
「『人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ。』これは、辛い事も思い返せば笑い話といった意味合いだろう。しかし、近くと遠くを自分と他人に置きかえられるのではないか。」
中々辛辣な言葉だが、自分以外の人間からしたら自分は他人だ。いつでも喜劇の対象となる。そしてそれは自分からしたら悲劇なのだ。
.....私は皆でエレクトリカルパレードが良い。
私は食べ頃になりたくない。
暗黒フィクションはフィクションのままで。悲しい連鎖は決して現実に連れ出してはならない。暗黒フィクションは防波堤だ、未来を学べる。悪夢を遮る砦だと私は常々思う。 -
この作品、色々な人が「クズとワルしか出て来ない」「胸糞悪い」「面白い」って投稿しているんです
ちょっと変なのが好きな私は、ずっと気になっていた訳で、夏が終わる前に飛び込んでみました
いやあ〜、本当に「クズとワルしか出て来ない」でしたーッ!!笑
でも嫌いじゃない、こういうの
生活保護受給、不正自給、ヤクザ絡み、貧困、ヤク中、セクキャバ、万引き。。。こんな言葉が陳列しているだけで暗闇の世界な訳で、決して笑えません
どんどんみんな堕ちて行くし
しかしながらこの作品、何故か軽いテンポで読めてしまうんですよね
そしてもう最後なんか「クズ」と「ワル」達が勢揃いしちゃってのドタバタ劇です笑
真面目な話になりますが、人ってこうも簡単に堕ちて行くものなのでしょうか
昨日まで頑張っていたのに、さっきまで真面目に働いていたのに、何かの弾みで、一歩踏み外して、どんどんどんどん堕ちていってしまうんです
こういう展開は現実に転がっているんでしょうねえ
これは決して他人事ではないと思いました
しかし、あの佐々木がねー、あの真面目だった佐々木がね。。。
今、私の頭の中は佐々木でいっぱいです-
ハピアワさん、こんばんは(*´꒳`*)
表題からしてなかなかワルそうな作品ですね笑
一線を超えたらどうなるのか。そうした非日常を覗き見ること...ハピアワさん、こんばんは(*´꒳`*)
表題からしてなかなかワルそうな作品ですね笑
一線を超えたらどうなるのか。そうした非日常を覗き見ることができるのも読書の醍醐味かと。
あの佐々木はまだ頭から離れませんか?笑笑2023/08/27 -
2023/08/28
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ハピアワさん、おはようございます(*´꒳`*)
あーこれは指先から抜けて行くやつですねー
いつも楽しいレビューありがとうございます!ハピアワさん、おはようございます(*´꒳`*)
あーこれは指先から抜けて行くやつですねー
いつも楽しいレビューありがとうございます!2023/08/28
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本書は、イヤミスならぬゲスミスとでも云いましょうか、うだる様な暑い夏の、嫌〜なじっとり感を凝縮したような「不快な」一冊です! 今の季節にピッタリ! そう、「救いのない」小説なんです。
でもこれが、不快で救いがないけど不思議と嫌いじゃない、というのが私の本音です。(変? もしやのM?)
誰かー、同調してくれる人いませんかー?
登場人物は、皆生きていくことにだらしない人間ばかりで、生活保護と不正受給とヤクザが絡み、自業自得で泥沼に陥る、というか堕ちていく話です。これが延々と続くので〝黒〟小説なんです。
転落、孤独、貧困、ネグレクト、絶望、悲劇‥、内容を形容する陰鬱な言葉には、事欠きません。
この物語がどう帰着するのかと想像しながら、それでも先が気になります。読み進めるのに意外に苦痛が伴わないのは、筆者の筆力の賜なのでしょう。
人間の心の領域には誰しもグレー部分があって、外部刺激で簡単にブラックへ移行する例は、枚挙にいとまがないと思います。道を踏み外すのは簡単なのだと考えると恐ろしいです。
最終盤、多くの人間が交錯し、狂騒を超えてコメディかとも受け取れるクライマックスの滑稽さは、恐怖と脱力が同居する展開です。
評価は分かれるかも‥ですが、この〝おぞましき〟読後感をぜひご堪能あれ!-
きたー! 同調者ー! ありがとうございます♪
逆大団円、全くです。悲劇的な終局なのに、ちょっと笑える感覚って何なんでしょう?
ノワールの傑作...きたー! 同調者ー! ありがとうございます♪
逆大団円、全くです。悲劇的な終局なのに、ちょっと笑える感覚って何なんでしょう?
ノワールの傑作をわざと外した感‥私的にウケました。2023/07/23 -
2023/07/23
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2023/07/23
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生活保護の不正受給を模索する人達。それを見定める生活保護課の人達。不正受給を食い物にする裏社会。悪い夏に悪い人達ばかりの息苦しさ。
生保関連の小説は最近多いけど、生活保護課側の男性が転落していく様子は、気持ち悪い。
仕事としても、毎日会話にならない相談を受け続けると、自分を保ちにくいかもしれないね。
どこまで皆んな堕ちるのか、気になって読んでしまいましたが、ラストは、逆大円団。逆大団円。-
2023/04/27
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こういう本を読むと、誰を信じて誰に助けを求めたらいいか わからなくなりそうですね( ・_・̥̥̥ )
しかも、あほ…笑こういう本を読むと、誰を信じて誰に助けを求めたらいいか わからなくなりそうですね( ・_・̥̥̥ )
しかも、あほ…笑2023/04/29 -
たぶん、全員悪くしたかった小説でしょうから、これで良いんだろうけど。悪さに哀愁もなくてねえ。たぶん、全員悪くしたかった小説でしょうから、これで良いんだろうけど。悪さに哀愁もなくてねえ。2023/04/29
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話の季節とちょうどマッチし、カドブン推薦のため購入
フィクションであってほしいが、
広い日本では同じ境遇の人がいそうで怖い
幸い「対岸の火事」にもない現境遇なので
「他人の悲劇は喜劇」で読めたが、
明日は我が身として頑張って仕事しようと感じた
正にあとがきにあるとおり!
横溝正史ミステリー大賞受賞作
これはミステリーなのか?
面白いというか自身への戒めとして
葉っぱをかける話だと私は捉えました
喜々な夏にしたい -
染井さん、正義の申し子に続き2冊目。
私の大好きな伊岡瞬さんが宣伝していた通り、クズとワルしか出てこない!
最低にして最高と、書かれていたが、、、
最高ではない(T . T)
全員クズすぎて、最後まで気持ちスッキリしない。イライラする。正義感ってなんなんだろ。
ヤクザ、クスリ、生活保護、不正受給など色々出てくるが、主人公?(誰が主人公かわからないくらいたくさんいる)の変わり様は恐い。
主人公の上席の嶺本さんが1番まともな人に見えてしまいました。
なんだろなあ、、救いようがなくて。
美空ちゃん幸せになってほしいな、子供は親を選べないってのが身に沁みる(涙)
個人的には正義の申し子の方が、面白かったなあ。
世の中色んな人がいて、世の中色んな考え方や価値観がある。自分は自分。正義感で他人に対してどうこう思ったり怒りは無駄!と、なんか腑に落ちたという学び。これは日常に活かせそうだな。
正義感って子供の頃の環境とかから性格の一つとして形成されるのかなあ。
何が言いたいか意味不明なレビューですみません。早く次の本読みたい。
通勤中なんだかんだで、ボーっとしてしまい、読めてないϵ( 'Θ' )϶-
2022/11/10
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2022/11/10
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2022/11/10
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初読みの作家さんだったが最後までやりきれなさが残った。本作のタイトルは『悪い夏』。今夏の暑さも酷かったが、容赦なく頭上から照りつける太陽が人を狂気に走らせたのか、太陽の描写が何べんも出て来た。昔観た『太陽がいっぱい』で、ドロンの「この熱い太陽のせいで殺人を犯してしまった」というセリフが蘇る。(※)
26歳の守は生活保護受給者のもとを回る生真面目な気の弱いケースワーカーだったのに・・・。いつかは立ち直るだろうと安易に追いかけたが非常な結末を迎えた。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知り、真相を確かめようと女性の家を訪ね、守はその出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外してしまう。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザらが守を凄絶な悲劇へ叩き堕としていった。
”ぐるぐる医者”と呼ばれる存在も本当に居るのかもしれない。
一方で、現実的に、国からの援助で生活を成り立たせたくはないと、生活保護申請を敢てしないプライドの高い人たちの話も聞いたことがある。無理せずに堂々と胸を張り貰えばいいんじゃないと、その時は思ったが、読後には単純に言えなくなってしまった。
染井さんにとって、生活保護受給者は単に珍しい視点での事件場所だったのだろうか? もっと、福祉のあり様を考える視点が欲しかった、と割り切れない気持ちが残ったまま本作を読み終えて、染井さんの後書きを読んだ。
そこにはチャールズ・チャップリンの言葉”人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ”が引用されていた。『本書に出てくる人々も同じで、身の前の小さなボヤに懊悩(おうのう)しています。沼にはまり、手足をばたつかせて、結果、極端な行動に出ます。端から見れば滑稽で愚かに映りますが、本人たちは至って真剣なのです。そしていかに間違っていようとも、彼らなりの言い分、正義が存在するのです。それを問答無用、自業自得とばっさり切り捨てるのではなく、その主張に耳を傾けたいと思い、わたしは本書を書きました』と。
あとがきを読み、唐突な同僚・宮田有子のキャラクターを始めとする成れの果てらの登場人物、ましてや守を生活保護受給者にしてしまったのかがわかるような気がしてきた。何故、タイトルを『悪い夏』にしなければならなかったかも。
現行の日本の社会制度は、一生懸命働いても生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない。生活保護の方が年金より金額が高いとは考えさせられる。
※昔観た『太陽がいっぱい』で、ドロンの「この熱い太陽のせいで殺人を犯してしまった」というセリフが蘇る
「この熱い太陽のせいで殺人を犯してしまった」というのはカミュの「異邦人」だったみたい・・・(汗)どうやら記憶違いのようでした。 -
この作品に出てくる人物みんな狂ってる。
そう思わせるほど、なんとも嫌な人物ばっかりでした。胸が痛くなる場面もいくつかありましたが、ふと思ったのが、こういった境遇になれば、人間誰しもが、そういった感情になってしまうのではないかと、改めて実感しました。貧困、虐待、不正受給など、現代でも問題になっている、社会問題を痛烈に投影した、息詰まる展開の中、上手く作品として、表現した本作はとても素晴らしいと感じました。
ただ、胸が痛くなります。自分に重ねたらやるせない気持ちになってしまいました。 -
染井為人『悪い夏』角川文庫。
第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作のノワールサスペンス。不快になるような暑さの中、生活保護を巡る闇と人間の欲望の結末が描かれる。登場人物の誰もが悪に絡め取られて行く、救われない系の物語。新人作家ということで粗さはあるが、面白かった。
生活保護の不正受給、シングルマザーの貧困、生活保護制度で一儲けを企むヤクザ、不正を働く市役所職員、様々な立場の人間が自己の欲望だけを追求した挙げ句の『悪い夏』の終わりは……
主人公は、千葉県の中規模都市の市役所でケースワーカーを務める26歳の佐々木守。守の同僚・高野が生活保護を受けるシングルマザーを食い物にし、肉体関係を結んだ挙げ句、増額分の生活保護の一部を搾取する。真相を突き止めようとシングルマザーの家を訪ねた守は東京進出を狙うヤクザの目論みにハマり……
本来は弱者を救済するための社会保障制度。一見、公平であるかのように見える制度にも様々な問題がある。年金支給額よりも、生活保護支給額の方が高額であったり、ケースワーカーの判断や申告内容により支給されたり、増額されたりと。実際、過去には人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたケースもあった。
本体価格680円
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著者プロフィール
染井為人の作品






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いつもどおりなのか、いつにもましてなのか、素晴らしいレビュー。
つい、買ってしまいそう...
いつもどおりなのか、いつにもましてなのか、素晴らしいレビュー。
つい、買ってしまいそうになるので手加減してください(笑)
読んでいませんが、この本の解説よりこっちのレビューのほうが良さそうだよね。
今回はレビューを書き終えるのに凄く時間がかかったので、そう言って貰えるととても嬉しいです。ありがと...
今回はレビューを書き終えるのに凄く時間がかかったので、そう言って貰えるととても嬉しいです。ありがとうございます!!
えー、読んでくださいよ〜、暗黒書物でエレクトリカルパレードShall we dance!!笑