ヘルメースの審判

  • KADOKAWA (2021年1月29日発売)
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  • 本 ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041098813

作品紹介・あらすじ

家電商品の発火で死亡事故が発生し、マスコミから経営体質を批判された世界的電気メーカー・ニシハマ。ハーバード大を卒業し、創業一族に婿入りした梶原賢太は政界のフィクサーから、ニシハマが窮地を脱するための極秘計画を持ち掛けられる。それは、モンゴルでの使用済み核燃料の最終処分場建設という、政官財を巻き込む一大プロジェクトだった! 交錯する利権と思惑。賢太はある賭けに打って出るが――。

感想・レビュー・書評

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  • 安定の楡さんビジネス小説。
    今回のトピックは、近年の東芝の倒産危機がモデル。
    物語はフィクションなんですが、
    明らかに東芝が元ネタになった小説だと分かります。

    新聞報道などで、東芝の粉飾や原発ビジネスの失敗は、
    何となく(うすーく)理解していたのですが、
    この小説を読んで改めてその闇の深さに驚かされました。
    インフラ系ビジネスはビジネスの規模も大きく、
    それゆえ国も入り込んでの、
    国際的な戦いが繰り広げられているんですね。

    巻末に参考文献のリストがないのが残念でしたが、
    明らかに新聞や書籍、雑誌記事などを
    リサーチしていることは間違いなさそうな感じです。

    最後の終わり方も読めそうで読めない展開で、
    終わってみると落ち着くべきところに落ち着いていて、
    エンタメビジネス小説っぽい仕上がりになっています。
    (最後の終わり方は完全なるフィクション、笑。)

    東芝のことは全然興味もなく知りませんが、
    個人的には今社長で頑張っていらっしゃる
    島田さんのことは応援しています。
    小説とは異なるリアルストリーですが、
    ハッピーエンドで終わるように頑張って欲しいです。

    そんな島田さんの書籍はこちら。
    (東芝のDXの事例で、個人的にはとてもおススメ。)

    ※スケールフリーネットワーク
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4296107712#comment

  • 東芝をモデルにした総合電機メーカーのニシハマ。

    その没落した創業家の娘婿の肥後はアメリカで原発事業を手掛けていた。

    2000年代から震災、粉飾決算など激動の時代を駆け抜けつつ己の出世の野望を成し遂げていく肥後はニシハマのトップに立つことができるのか?

    現実と虚構をうまく織り交ぜつつ、リアリティのある話の展開になっており、読み手を飽きさせない。

    何よりも激動の時代に己の出世欲を満たそうとする主人公に惹きつけられる。

    最後のどんでん返しもスカッとした。

  • 長編あるあるだが前半は舞台設定と状況説明メインのためなかなかページが進まないが中盤以降はグッと引き込まれる。島耕作と半沢直樹を足したようなスカッとする読後感。

  •  東芝がモデルなのだと思う。
     また、小説なので、分かりやすく整理し、またステレオタイプの人物像なのだと思う。
     それでも、読ませた。
     その後を読むことができたら、さらに興味深いのだが。

  • 読み応えもあって面白かったですね。
    でも上手く行き過ぎな感じがします。
    もう少し波乱があっていいように思いました。

  • 面白かった。
    内容が東芝の事例をモチーフにしているだけにある程度先が分かってしまうのがちょっと残念だった。

    著者の著作は社会問題を批判してビジネスプランで解決すると言う手法だが今回は日本の経営体質に関する批判が主で解決するビジネスプランとしては弱かった。と言うより解決しようがないんだと思う。
    著者の元米国勤務と言う海外からの日本企業に対する視点がよく出ていた。

  •  日本の総合電機メーカーニシハマのニューヨーク副社長の肥後賢太は、アメリカの原子力設備会社IEの買収によって将来的に莫大な損失が発生してしまう事を憂慮していた所、政府筋と日本本社の上層部からモンゴルへの液化天然ガス輸出と使用済核燃料処分をセットで受注する構想を指示される。折下、東北震災の影響真っ只中で事業の主力の一つで有った原発事業は収益が見通せず、新たな事業戦略が必要だった。
     創業家としてのプライドと本社上層部の権力争い、政権争いが渦巻く中で、更に粉飾決算という信じられない事態が発覚する。

     ストーリーは日本の総合電機メーカーでかつてはパソコンでシェア1位だった家電から原子力関連設備迄を製造販売していた東芝の事件を小説にした物だと思います。2017年に原子力メーカーで米国子会社のWHが破産し1兆円の負債を抱え込んだ。またパソコン事業では期末の押し込み、買取前提での前利益操作等、本来なら日本の冠たるメーカーが技術や物創りに邁進するべき所、当時の経営陣のノルマ必達方針の下、モラルが崩壊してしまった。

     小説は、ニシハマの社風が学閥有りき会長・社長は雲の上の人、上司命令は絶対服従等年功序列の短所を突いている。かと言って年俸制でスキルだけで生き馬の眼を抜く様なビジネスを繰り返すアメリカ的なやり方も納得出来ないです。この手の経済小説では金額や登場人物が別世界、エリート世界過ぎて感情もあまり湧かないのでサラッと読めてしまいます。

  • 楡周平さんの企業小説はいつも楽しんでいる。
    今回は某大手家電メーカーを模した内容。老舗の家電メーカーの凋落を描いている。
    日本企業がここまで学歴やら「失敗を恐れる」体質になっているとはあまり思えないが、しかし多くの企業がGAFAになりきれなかったのも事実。
    昨今のベンチャー成功者と比してXX連合会やらXX同友会が大企業の老人を中心に運営されていることを見ると変化が必要なのは誰が見てもわかる。
    そういった日本企業のアンチテーゼでもある作品。
    最後は楡さんお得意のどんでん返しが面白かった。

  • どうなっちゃうのかな、実際の◯芝

  • 大企業にとって切っても切れない粉飾、癒着、学閥。熾烈な闘いを生き残るには、運や人脈、度胸に先見の明があってこそなのだと思った。権力にいつまでも縋る旧態依然の経営陣には嫌気が差した。

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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