斜陽 (角川文庫クラシックス た 1-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 418
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099063

感想・レビュー・書評

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  • 祖父の本棚から拝借して読んでみた。直治の夕顔日誌や遺書はなかなか共感できた。

  • 読後、日記の提供者である太田静子の半生を読む。

    限りなくノンフィクションだと思うと切なくもなるが、かず子は恋と革命を掲げ道徳を破り上原の子を授かった。

    一方で貴族精神を貫いた弟は恋の革命を起こさず自殺。

    生き方と言うか、
    それもまた人生の選択なんだろう。

    面白かった。

  • お母さまが弱って死んでいく過程、場面の描写が秀逸でした。静謐な空気が流れていました。
    かずこが上原さんに自意識過剰な、前につんのめった感じの、もうストーカーっぽい手紙を送った頃は、あー、もうお母さま死にそうなのに何やってるの…と大層心配しました。
    上原さんにはそんな気は、かずこを愛人にする気はないのかと思いきや、ほれちまった、なんて言われて意外でしたが、多分あれはその時ちょっとそう言っただけで、ちょっとそんな気がしてみただけで、別に惚れていたわけでは無いのではないかな。
    お母さまが死んで、直治が死んで、多分上原ももうすぐ死んで、かずこは赤ちゃんと生きていくというのは、赤ちゃんがいるのは、もしかしたら光なのかもしれない。一人ぼっちじゃないですからね。
    6年後に再開した上原があんなにもみすぼらしく、醜く描いてあるのは、何故ですか、太宰さん。

  • 最後まで読まないともったいない本。

  • 恋と革命 強い

  • これはとてつもなく暗い作品です。
    零落した貴族というのも悲しさが漂いますし
    母親が弱り、あっけなく死に行く様も暗いと来ています。

    主人公もとかく悲しい目に遭っています。
    そう、離婚という。
    そして行き着いた先は傷つく恋…

    全部に陰鬱が漂います。
    この作品は死の1年前に書かれたそうで。
    きっとこの時期から彼の死の渇望は
    あったのだとおもいます。

  • 没落していく旧家が描かれ、無常感漂う作品であった。貴族として生きていくことはしたくない、だが貧乏人の中で戯れていても、自分の貴族的な面が際立つ。自分はどこにも所属できない。という弟君の苦しみは、運良くインテリ集団に入ってしまったが、彼らの考えになじめず、だからといって田舎でチャラチャラしていてるかつての友人と付き合える気もせず、どこにも所属意識を持てない自分と重なった。
    主人公が『経済学入門』を読み、以下のように述べていることが印象的であった。
    人間というものは、ケチなもので、そうして、永遠にケチなものだという前提が無いと全く成り立たない学問で、ケチでない人にとっては、分配の問題でも何でも、まるで興味の無い事だ。それでも私はこの本を読み、べつなところで、奇妙な興奮を覚えるのだ。それは、この本の著者が、何の躊躇ちゅうちょも無く、片端から旧来の思想を破壊して行くがむしゃらな勇気である。
    主人公が旧来の人間であることを差し引いても一面の真理を表しているように思う。「近代経済学が前提とする個人が量産された場合(事実、量産されつつある)、文化なるものは残るのか?」ということを考えさせられる。

  • 太宰に少し苦手意識を持っていた私が、すんなりと読めた作品。この本のおかげで、ほかの作品も読んでみようという気になった。

  • 図書館で借りました。
    もう一冊あったのですが、こちらの方が文字が大きく読みやすそうに感じたのでこちらにしました。

    初めて太宰治の小説を読みましたが、もっと難しいものだと思っていたのにさくさく読めてしまって意外に思いました。
    思えば走れメロスも教科書に載っているくらいだから読みやすいのでしょうか。
    文章自体も難しい言葉を使っているわけでなく、描写も美しく気に入りました。
    図書館で最初のページをめくって、食堂でスウプを読むシーンを読んだ時、この本は読める・面白そうと直感で感じましたが、その通りでした。

    「私は小さい時から、朝ごはんがおいしくなく、」という表現がありますが、これは朝は食欲がないという意味でしょうか。
    この時代には普段使いされていた言葉なのか、太宰独自の言葉なのかわかりませんが、面白いです。
    また、貴族(華族)というと、母親のことは「お母様」と呼ぶのでは?と思うのですが、このお話では弟も「ママ」と読んでいますね。

    正直・・・何が言いたいのかがよくわからず、読み終わっても??という感じです。
    特に直治が好きだと遺書に描いていた画家の奥様がよくわからないのですが、小説の中にその夫婦はでてきてますか?!(笑)
    あと、母親の死の意味も考えたのですが、それ自体が意味を持つというより、死によって解放されたかず子のそれからの方に注目すべきなのかな。
    その後かず子が上原により強く思いを寄せるようになったり、直治が画家の奥さんが好きだったと遺書で告白したりと、恋というか男と女というか・・そんなものが一つのテーマかなと感じました。
    蛇がよく出てきましたが、男性の象徴の比喩だときいたことがあるので、だから?と思ったり。

    直治は貴族としてのプライドを捨て切れず、苦しんだ挙句自殺を選んだけれど、かず子は上原と不倫し子どもを身籠ることで、自分の道徳革命を成し遂げた、ということでしょうか。
    となると、母親の死は制度は廃止されてもなお、彼らを支配していた(というか彼らが浸っていた?)貴族階級の崩壊を意味していたのか。

    しかし「弟の直治は、その朝に自殺していた。」という一文はドキッとしました・・。

  • 初、太宰作品でした。
    文章がすごく丁寧で、するするっと読めて、出てくる人物を想像するのが楽しかったです。
    心の描写もすごく丁寧で、さすがだなと思いました。
    また繰り返し読んで、理解を深めていきたいと思うような本です。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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