人間失格 桜桃 (角川文庫)

  • 角川書店 (1989年3月20日発売)
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  • 本 ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099100

感想・レビュー・書評

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  • 魅了された。

    主人公ははっきり言って、クズ。

    酒と薬に溺れ、自意識に呑まれ、女に依存して、幸も、不幸も感じず、ただ、生きている。

    それでも、文章の至るところで共感し、主人公に魅力され続けている自分がいた。

    人間失格という言葉に込められた思いは、人間としての最低限の生活すらできず自殺もできない自分を自虐する意味もあると思うが、誰よりも人間の本性的なものを恐れていた主人公が、人間らしさをこの後に及んでも卑下し、自分は『人間』らしくないのだと自分に言い聞かせることで身の保身をはかる意図も込められている気がした。

  • ただ、一さいは過ぎて行きます。

    大庭葉蔵の手記で進んでいく日常。
    主人公にも何かが出来るわけでもなく、ただ日々を淡々と生きていくだけ。

    女にモテて、お酒に溺れて、薬に溺れ、そうしてきっと太宰治と同じように死んでいった葉ちゃん。

    自殺=自ら選んで死んだ。
    それが一番悲しい選択だと思う。

    オリラジのあっちゃんが、わかりやすく解説してくれてる動画を見ていたから理解できたけど、自分には、この物語そのものが「ただ、一さいは過ぎて行きます」って真理を教えてくれていたような気がする。

    難しい。けど、太宰治の他の作品も読んでみたい。

  • 2017年29冊目。

    久しぶりの再読。
    一文一文まともに読むと、えぐられすぎて心的な疲労がすごい。
    ただそれくらい、この作品は自分ごとに引きつけられる。

    人間を恐れすぎて、自分を取り繕うために始めてしまった道化。
    相手を裏切る事に極度に怯え、その道化はエスカレートしていく。
    それが見破られた時の、足元が崩れるような絶望感。
    誰かから受けるちょっとした恩恵さえ、取り返しがつかない重荷のように感じてしまう。
    「なぜこうなってしまうんだ」と自分を呪いながらも、地獄のような思いをさせられるその性質を、なぜか手放さず選びとってしまう。

    初読の時も、「世間というものは、個人なのではなかろうか」という葉蔵の発見がずっと心に残っていた。
    一つの恐怖、一つの挫折が、まるで今後もずっと続くかのように固定化・一般化してしまうところに不幸がある。
    だけど世間は、一般化された広大な海ではなく、目の前の個人、それを乗り越えてまた個人、の連続。
    行き当たりばったりの、その場限りの勝負にだけ勝っていけばいい、という気づきは、大きな救い。
    願わくば、葉蔵もそれに救われればよかったと思う。

    これでもかというくらい、たたみかけるようにえぐる筆調に、ただただ圧倒させられる。

  • 映画公開に合わせ、9年ぶりくらいに読んだ。前に読んだ時より自分の情緒や経験を重ねた結果か、刺さるようになった。金の切れ目が縁の切れ目、という言葉の葉蔵の解釈が印象的だった。

  • 暗いんだけれど唸らせる。他の方のレビューを見てみると、「共感できる」派と「理解できない」派真っ二つに分かれているのが興味深い。自分は断然共感できる派だった…

    今でこそその嫌な癖から抜け出しつつあるが、私も幼少時から20歳前後にかけて周りの人が期待・想像している自分のキャラを察しそれをわざわざ自ら演じる傾向があった。死を考えたことこそないけれど、小さいころは何故だかなんとなく普通の幸せを得られないような気がしていた(ありがたいことに今は小さな幸せを享受しているが)。

    幼少時のどんな体験がこういう性格を作り出すのだろう。

  • 人間失格
    太宰の他の作品を読んで「ああそうだったのかな」と思うことがある。

    桜桃
    「自分のほうが大事」、時々児童虐待云々の報道を見るたびに思い出す。

  • 太宰作品は教科書に載っていた「走れメロス」しか読んだことがなかった。改めて歴史的作家の作品を読みたいと思い、古本屋で手に取った。太宰作品や彼の人生に関する解説が末尾に載っているので初心者向けの本であるといえる。彼の狂いっぷり、愛されっぷりに羨ましささえ感じてしまう。

    人間失格… まず文体がすごい。一文が長すぎるし途中で脱線したりするのに、なぜか読める。脳内のひとりごとが取り止めもなくあちこち行ったり来たりする様子が、そのままに描かれていた。それでも話の大きな筋はブレず、一気に最後まで読みたくなる。これが文豪か。残念ながらわたしは葉蔵のようにはモテないが、暗い心の内を隠しながら、底抜けに明るいキャラクターを演じる苦しみをとてもよく理解できる。彼は終盤で自我を獲得していたが、わたしも最近ようやく内と外の距離を縮められるようになってきた。彼のような狂人にはならないよう、自我をコントロールしつつ、解放していきたい。

    桜桃… 子供より親が大事、と思いたい。という始まりにすべてが詰まっている。大黒柱として家庭を支えなければならないプレッシャー、父ではなくひとりの男でい続けたいという本心、けれどもやはり家族を大切に思う本能。ほんとうは父だけでなく母も少なからず同じような葛藤を抱いているはずだ。こればかりは親の立場になってみないと共感しえない。そちら側の世界へ行ってみたいという浅はかな好奇心が生まれた。

  • 受験生真っ只中に読みました。再読でしたが、やはり現実逃避には向かない本です(そりゃそうだ)
    全てのものから逃げ続けたらこうなるのかなと思いました。これがどこまで太宰自身のことなのかわかりませんが、ほぼ自伝なのだとしたら客観的すぎて怖いです。こんな風に自分のことを見つめ直して文章にする。確かに書き終えたら死ぬしかないかも…

  • 再読。

    大庭葉蔵の手記が3部形式に、はしがきとあとがきがついた作品。

    葉蔵の幼少期から脳病院に入院するまでの人生が手記により書かれており
    再読にも関わらず、読んでいて気分が悪くなった。
    生きる勇気や元気を吸い取られるような作品である。
    こんなにも生きることはつらいことなのか。

    もう次は再読しない。
    と思いつつもこの暗さが苦しみが、太宰治であり私の心に残り続ける。

    さすが名作である。

  • 大人になってから読んだら、共感できなくなっていた。主人公のhomme fatale ぶりというか、負のイケメン力がすごい。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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