ヴィヨンの妻 (角川文庫)

著者 :
制作 : 梅 佳代 
  • 角川グループパブリッシング
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本棚登録 : 284
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099117

作品紹介・あらすじ

傷つきやすい心をごまかすように、金もないのに飲んだくれる詩人の動静を、妻が奇妙な明るさで語る表題作をはじめ、未完の絶筆「グッド・バイ」のほか「パンドラの匣」「眉山」「トカトントン」の5篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 死や破滅思考・行動に依ってしか生きていけない登場人物たち。
    痛みを感じねば生きている心持も得ない、現実に対してリアリティの欠如に苦しんでいるのだろう。
    実に痛ましい事だ。
    この痛ましさに気付かない理解出来ない人は幸せだ。
    現代だからこそ、より一層太宰作品は愛されると思う。現代病だらけじゃないか!

    表題作より「パンドラの匣」を読みたくて、珍しく新書で購入。
    どの作品も当たり前のように良かったけれど(当たり前のよう…ってスゴイね)、「眉山」が一番良かったかな。
    身体が辛くって押してでも、接客していたのはサービス業の鏡!
    なにより愛嬌があって可愛らしい良い子だ。

  • 『パンドラの匣』
     終戦とともに、無理な気取りを捨て、命を燃やす決意をした青年。結核を治すべく、「健康道場」に入門する。そこでの生活が、彼から友人に向けた手紙で浮かび上がる。
     当時重篤な疾患だった結核だけど、その暗い側面に一切光を当てていない。健康道場での生活は、小さな恋があったり、おかしな綽名で呼び合ったり、ちょっと楽しそう。かなり笑えた。森見氏の「恋文の技術」はこの話から着想を得たのかしらん。

    『トカトントン』
     トカトントン。その音が聞こえた途端、無気力になる。仕事も恋も夢も欲も、トカトントンで無に帰す。トカトントンが悪いのではなく、本当はやる気もないのにトカトントンを言い訳にしてるのかな。作家先生の言葉がグサリと刺さる。“真の思想は、叡智よりも勇気を必要とするものです。”

    『ヴィヨンの妻』
     酒浸りで家に帰ってこない。お金を入れるどころか、泥棒を働く始末。そんな夫に寄り添う妻。他の男の手に入れられた妻は、夫の見えないところで変化する。
     太宰の描く女性の胸中が好きだ。強くしなやかで、時代を映す鏡になってくれる。前回読んだときよりも、年を重ねた分感じ方が違う。

    『眉山』
     眉山という綽名をつけて邪険にしていた行きつけの飲み屋の娘。無知で無学で、そのくせやかましい。しかし、彼女の命が長くないと知り・・・。
     ちょっと哀しい読後感。爛漫さは命の火が燃え尽きるとき、強烈に光を放つのだろうか。

    『グッド・バイ』
     多数の愛人を抱えていた色男が、その関係を清算すべく、すごい美人に妻になりすごしてもらって諦めさせるという策を講じる。うまい具合にすごい美人は見つかるが、内面はがさつではすっぱ、おまけに鴉声で不潔。彼女と計画を実行するが振り回されるばかり。どんな風に転がっていくのかと楽しみになったところで突如幕を閉じる。太宰よ、続きが読みたかった。

  • 太宰作品は人間失格しか読んだことがなかったので暗いイメージしかなかったんですがこのヴィヨンの妻に収録されている5編ともがなんだか明るく軽快な作品でイメージが変わりました。
    特にグッド・バイの田島とキヌ子のやりとりというか駆け引きが可笑しくて未完なのが残念でなりません。是非とも続きが読んでみたかったです。
    あと眉山は最後ちょっと切ない気持ちになりました。太宰はやっぱり奧が深いなぁって思いました。

  • 傷つきやすい心をごまかすように、金も無いのに飲んだくれる詩人の動静を、妻が奇妙な明るさで語る「ヴィヨンの妻」、戦後第1作として書かれた、風変わりな結核療養所で闘病生活を送る少年を描く「パンドラの匣」、13回分の連載で中絶した未完の絶筆「グッド・バイ」、戦後の虚無的な精神状態を“音”で表現した「トカトントン」、飲み屋で出会った少女の哀しさを描く「眉山」の5篇を収録。最晩年の傑作集。

  • ヴィヨンの妻
    「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」というスタンスで生きる人は強くて幸せ者。私もさっちゃんを見習わなければと思う。けれどもあそこまでの甲斐性なしには出会わないようにする。


    眉山
    日常の中にも、こうゆう悲しい勘違いが気づかなくても起こっているはず。眉山のように悲しい結末になることだってある。

  • 「眉山」が良かった。「ヴィヨンの妻」も良かった。
    ユーモアにあふれた太宰が実にいい。私は分かった。
    彼の云う「死」は私の思う「死」とは異質なのだ。太宰の
    「死」は「退屈だな。なにか愉快なことないかな?そうだ
    死んでみるか!どんな気分だろうな?どうであれ、今よりは良かろう」

  • トカトントンがかなりお気に入り。
    よく太宰の小説は思っていることを代弁してくれている、なんていうけれど、この話はそうだなと思った。
    行動力と勇気、明らかに私に足りないものだな。

  • パンドラの匣
    トカトントン
    眉山
    グッド•バイ

    パンドラの匣はずばぬけて好きだ。
    トカトントンも、好き。

  • 太宰治といえば暗い印象ですが、最初に収録されている「パンドラの匣」はドンヨリしてなくて好き。
    個性豊かな登場人物(特にかっぽれ)は現代のアニメにも出てきそうだし、読後の爽快感というか、読みきったときのすっきり感がとても心地よかった。

  • 本当に好きだからこそ、その思いをこっそりと仕舞い込んだりするのでしょう。
    宝箱に仕舞いこむようにそっと、誰にも知られないようにひっそりと。だけどその思いを押し込み過ぎたとき、その好きという感情はどうにも溢れ出てしまうのだと思う。それはあまりにも、儚くて切なくて美しい。

    この一冊を通して、それを学んだ。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

「2018年 『津軽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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