人間失格 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099124

作品紹介・あらすじ

「恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです」青森の大地主の息子であり、廃人同様のモルヒネ中毒患者だった大庭葉蔵の手記を借りて、自己の生涯を壮絶な作品に昇華させた太宰文学の代表作品。「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」ほかに、家族の幸福を願いながら、自らの手で崩壊させる苦悩を描いた「桜桃」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 読む気にさせてもらった読友さんに感謝。太宰治の遺言とも思える。(第一の手記)葉蔵はお道化ることこそ相手に好かれると知る。これは厳格な父親の影響の結果かもしれない。(第二の手記)お道化ている自分に対して「ワザ(わざと)」と言い当てる竹一。見破られた敗北感から現実逃避し酒に女に溺れていく。(第三の手記)アルコール中毒、薬物中毒へと墜ちていき、最終的には精神病院へと強制入院させられる。そんな葉蔵は女性から見て「神の子」だったというバアのママ。葉蔵は父親からの影響を受け、自分がなく、優し過ぎたのだろうか。④

    さて、この本の解釈、以下の3つの仮説を立てました。仮説①【悲劇】厳格な父親の影響により、この墜ち様は「斜陽」の直治と重なり「弱さ故の優しさ」であり、そして人間の末路をみた作品なのか? 仮説②【喜劇】こんなあり得ない自堕落な様を物語としてわざと作り出し、太宰が横っ腹で笑い、ニヤニヤしながら完成させたのか? 仮説③【人格障害】葉蔵がボーダーライン=境界性人格障害であり、単なる病的な様を示し、周りの女性を巻き込んだ精神病理を示した内容なのか?この悲劇・喜劇・人格障害の3仮説を読友さんとお話ししたい。自分は仮説②

  • 文豪作品を読みたいと思ってはじめに手に取った本。

    深いな〜と思う部分が数ヶ所。反対に少し笑える部分が数ヶ所あって意外だった

    「恥の多い人生を送ってきました。」確かにそう思える、タイトル通りな話だと思いました。
    本棚にずっと大切にしまっておきたくて、しばらく経ってからまた読み直したい。

    これからも定期的に文豪作品を読んでいきたい。

  • われ、山にむかいて、目を挙ぐ。

    旧約聖書・詩篇第121の冒頭から始まる桜桃。

    互いのわだかまりや不安。
    口にすることで<現実>になることを
    恐れるかのように喧嘩もできず取り繕う夫婦

    人との交わりを絆にできず、
    それはたちまち重い鎖となり身を縛る。

    子供より親が大事。
    虚勢をはり、振り切ろうとするも
    涙の谷と父の寝汗。

    しかし現実に父は悩み、母は泣き、
    子は成長せずとも生きている。

    自らを罰し、消えてしまうことのみに
    救いを求める独りよがりの思いが哀しい。

  • 生きづらさ
    そんな言葉が流行る現代
    この本はそんな心に寄り添ってくれるものなのかもしれません

    誰もが感じたことがある人間の軽薄さ。
    それが全く理解できない葉蔵
    残念ながら少しは理解できてしまう自分

    生きづらいのは彼の方やけど
    理解できてしまって、そんななんとなく人間に慣れている自分は偉いのか?

  • 高校の頃、国語の先生が言ってた。
    人間失格を読んで「自分のことみたいだ」って後味が悪くなる人と「さっぱり分らない」って首を捻る人。
    私は完全に前者で、自分の浅ましい部分や卑しい部分が言語化されてて、気持ちが悪かった。これは自分だけじゃなくてみんな持ち得る根本的な“部分”かと思うくらい正確な描写だった。

  • 人間失格

    人間、失格。にいたるまで葉ちゃんの手記を読んで、こりゃ大変な人生を送ったな、と思ってたら最後に27歳という年齢発覚。びっくりした、、
    今の私とほとんど変わらないのに人生経験が広く深くもはや人生何回目?レベル。
    周囲に馴染むためにこういう時はどう反応するのが正解なのか、おどおとしながら周りを確認してた自分の過去を思い出した。自分以外は自然に反応できていることなのに私は正しい反応か分からず(笑うタイミングが1人だけ違うみたいな)、深層心理に刻まれてたけど、今思えば子供なんだし、人間初めてだし、って思うとなんでもないもんだなーと。
    あとがきに行くまで手記である事をすっかり忘れるくらいの濃さだった。モテる、酒に溺れる、金なしの男はいつの時代もいるのね。ヨシ子のもちろんの略のモチ、私もよく使うから急に時代感覚おかしくなった。令和でもモチ使ってますよー

  • H29.2.28 読了。

  • 人間みんな葉三の一面を持っている。

  • ネガティブすぎて読むのがしんどいと思われる方もいるかと思いますが、この世に生きることは苦しくてしんどくて大変なのが実情です。もちろん楽しいことも沢山溢れていますが、それもまた誰かが一生懸命頑張ってくれていることの裏返しだと思うのです。本書は太宰自身の苦悩を書き綴っていると言われていますが、人間として生まれ落ちてしまったばかりに、嫌でも真っ当に人間らしく生きなければならないことへの問題提起を感じ取りました。人道に反すること、人様に迷惑をかけることは勧められることではありませんが、普遍的な人間らしい生き方にどうしても対応できない人が一定数存在するのも事実なのだと思います。

  • 「恥の多い生涯を送ってきました」の有名な冒頭で始まる超有名な本を、今更ながら初めて読んでみた。
    主人公の葉蔵は、一見剽軽なおとぼけキャラで人(特に女性)から愛される人物で、時にヒモのように生活することも。だがその一方で内面では、自己肯定感が著しく欠如し、人と接するのを極度に恐れる繊細な一面を感じた。
    人見知りをしがちな自分が共感したのは、相手を「訪問」するのが苦手なところ。断られたら恥ずかしい、悲しいといった気持ちからなかなか腰が重くなってしまう。
    主人公は悲しいラストを迎えることになるが、幸せになるにはなにより自分が自分を認めてあげる、好きになることだったのではないだろうか。たとえ人から愛されても、自分の中で自分を愛しきれないなら、心は寂しいままだと強く感じた一冊だった。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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