斜陽 (角川文庫 た 1-4)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099148

作品紹介・あらすじ

「人間は恋と革命のために生れて来た」。古い道徳とどこまでも争い、"太陽のように生きる"べく、道ならぬ恋に突き進んでいく29歳のかず子。最後の貴婦人の誇りを胸に、結核で死んでいく母。自分の体に流れる貴族の血に抗いながらも麻薬に溺れ、破滅していく弟・直治。無頼な生活を送る小説家・上原。戦後の動乱の時代を生きる四人四様の、滅びの美しさを描き、戦後、ベストセラーになった、太宰の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 太宰ってたなあ。本当。太宰治の文章に触れるとなんかホッとする。図書館で借りたものなので、手元に置き続けれないのが残念。

  • 太宰治の中では後期にあたる作品。
    身分の高い貴族のもとに生まれ育った語り手がやがて落ちぶれていく様子を描く。”母”という存在の大きさと幻影性からは、これが"女性"の物語だということを強調しているようでもある。
    ここで書かれる「貴族から落ちぶれる」ことが当時においてどれほどの意味を持っていたのか、私には正直よくわからない。だけどこの小説で太宰がやろうとしてたことはなんとなくわかる気がする。それはおそらく「美しく滅ぶ」ことだ。
    また、私がこの小説を読んでいて興味深いと思ったのは、太宰治本人の代弁者である人物が、語り手の”弟”というポジションに置かれている点で、相変わらず生きづらさ、息苦しさ、不安、それでも明るく振舞おうとする器用で不器用なところ、いわば「道化」、そんな我々の中にある「太宰治っぽい」イメージを体現している存在が、ある種の客観性を持って描写されている点だった。
    つまり彼が”自殺”してしまうまで、彼の言動は客観性を帯びた太宰の弁なわけで、語り手の主観としてそれを聞くこととなる。
    当然の帰結として、彼が自殺し、"いなく"なってしまった後は、わずか数ページの間ではあるけれど、語り手の言葉、主張には太宰の精神がストレートに乗っかることとなり、「いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です」と声高に言って幕を閉じる。
    ゆえに、私はこの小説が、太宰なりの「自立した女性」が生まれる瞬間を書こうとしたのかな、なんて想像する。

  • 今月の“千年読書会”の課題本、でした。

    手元になかったので角川文庫版をチョイス、
    表紙が暗闇の中で微笑む少女と、なかなかに印象的です。

    さて、物語の舞台は戦後間もない、混乱期の日本。
    そして軸になるのは4名の男女、でしょうか。

    どこかお嬢様然としたバツイチの、「かず子」。
    復員後、なんとも退廃的な生活を送るかず子の弟、「直治」。

    戦後の混乱の中でも誇りを見失わず凛と在り続ける、その二人の「母」。
    そして、どこか太宰を投影したかのような無頼な小説家、「上原」。

    戦後の混乱期にそれぞれが悩み、苦しんでいる、
    そんな様子の物語が綴られていくことになります。

    劇中では主に、かず子の視点で語られていきますが、、
    皆が悶えている中でも、どこか危機感のない悩みを持ち続ける彼女、

    そんな様子を楽天的で前向きととらえればよいのか、
    ただの甘ったれと断罪すればよいのか、、悩ましいところです。

    直治と母、二人を失っていく中でも、
    さして好きでもない上原との不義の子を授かりたいと。

    およそ生活力のないかず子が、シングルマザーとなる、
    先に見えるのは緩やかな破たんでしかないとも思いますが、、

    この後、“母”となったかず子がどうなっていくのか、
    意外と強かにのほほんと生きていったのではないか、と個人的には。

    そんな根拠のない明るさが、戦後の苦しい現実の日本社会において、
    受け入れられていった理由ではないかなと、そんな風に感じた一冊です。

  • 2023.6.21 読了。
    元華族であったかず子と母は貧困していく中、伊豆へと引っ越す“最後の貴族”であった母親は結核を患い亡くなってしまう。徴兵から帰還した弟・直治もまた酒や麻薬に溺れ自殺してしまう。そんな中でもかず子は直治の知り合いの既婚者の作家で奔放に生きる上原に恋をし、彼の子どもを身ごもりひとり産む決意をする。

    名作というものをほとんど読んだことがなく難しいと思い読まず嫌いをしていたが読んでみると感慨深く、読んでみて良かったと思った。
    序盤はかず子も母親もどこか夢見がちで金銭感覚に疎い感じがしたし弟も自堕落な生活を送り続け、この一家は大丈夫なのだろうか?とほんの少しイライラとしたが、読み進めるうちに元華族であるプライドや時代の流れに翻弄され誰もが一生懸命苦しみながら生きているのだと思えてきた。
    肉親を失くして、なお自分のひたむきな恋心に忠実に生き「人間とは恋と革命のために生まれてきた」とまで言うかず子の覚悟がかっこいいとまで感じるようになったし、直治の「人間は、自由に生きる権利を持っていると同様に、いつでも勝手に死ねる権利を持っている」という言葉は本当に生きることに苦しみ抜いて悩み、葛藤した者にしか言えない重い言葉だと思った。

  • お母さまのスウプのいただき方が素敵。

    無心そうにあちこち傍見などなさりながら、ひらりひらりと、まるで小さな翼のようにスプウンをあつかい、スウプを一滴もおこぼしになる事も無いし、吸う音もお皿の音も、ちっともお立てにならぬのだ。

    没落貴族のプライドと、不良への屈折した憧憬と、弱く脆い男たち。
    上原も直治も山木も太宰も面倒くさい男たちだな…。

    かず子のその後が気になる。

  • 読んでいると、やっぱり青森人らしい書き方だと感じました。太宰治先生の小説は殆どに手をつけましたが、一番は決められないくらいどれも好きです。このシリーズの本、もっと出して欲しいです。

  • 「死」という概念への距離が近い。
    今も昔も人は生きる意味とか不明瞭なまま
    人生を終えていくのかな。


  • かずこの母の愛情が言葉だけではない愛情が染み染みと感じられました。女性と力強さと逞しさも
    男より感じそれでも頼ってしまう人間の不条理さ
    もあるように思いました。伊豆の高台の情景描写が綺麗だった。

  • 太宰治(1909~48年)は、青森県北津軽郡金木村(現・五所川原市)生まれ、東京帝大文学部仏文科中退、小説家。左翼活動での挫折後、自殺未遂や薬物中毒を繰り返しつつ、第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を次々に発表したが、38歳で愛人と心中した自己破滅型の私小説作家であった。代表作は、本作品のほか、『走れメロス』、『人間失格』。
    本作品は、太宰が自死する1年前の1947年7~10月に「新潮」に連載され、すぐさまベストセラーになり、また、戦後没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という流行語を生み出した。
    私は基本的には小説よりもノンフィクション(新書含む)を好むのだが、先日偶々40年振りに『人間失格』を読み、太宰のもう一つの代表作である本作品も読んでみた。
    本作品は、(少なくとも表面的には)分かりやすい作品である。
    主な登場人物は、元貴族令嬢のかず子(私)、元貴族夫人のかず子の母、かず子の弟の直治、小説家の上原二郎の4人。かず子の母は、「本物の貴族」として、その気品と美しさを保ったまま結核で亡くなっていき、直治は、元貴族であることから逃れるために、「貴族は嫌い」と言う上原と頽廃的な生活を送るが、俗人になりきることができずに、自死してしまう。そして、かず子は、元貴族であることを殊更に否定することなく、俗人的な現実を受け入れ、既婚の上原の子を身籠りながら、その子どもと一緒に力強く生きていくことを宣言する。
    津軽の大地主だった太宰の生家(津島家)は、戦後の華族制度廃止・農地改革を受けて没落していき、その様を見ていた太宰が、チェーホフが『桜の園』で描いた帝政ロシアの没落貴族のなぞらえて書いたと言われ、主要な登場人物が、当時の社会に存在したいくつかの集団を象徴しているのだ。
    太宰好きを公言している又吉直樹は、太宰は「嫌いな人は大嫌いだし、好きな人は大好きです」と言っているのだが、確かにそうなのかも知れず、残念ながら、私にはそれほど面白いとは思えなかった。尤も、又吉氏はさらに続けてこう言っている。「何かを思える。好きだとも嫌いだとも思える。ヒーローにもヒールにもなれるということは特別な作家にしかできないことです。・・・現代の作家で、太宰の役割を担えるのは村上春樹さんしかいないんじゃないかと思います。村上さんが新刊を出せば多くの人が読み、好きだ、嫌いだと言います。ご本人からすれば「嫌いだ」と言われるのは腹も立つでしょうけど、どこかで誰かが「嫌い」と言ってもびくともしません。日本文学の中で過去から現在まで、最もその対象にされ続けているのが太宰治さんです。」。。。なるほどである。
    (2023年4月了)

  • 「私=かず子」の目線で語られる。
    冒頭のスウプを召し上がるお母様のシーンは、上品で美しく、印象深い。
    このシーンが象徴的に初めに語られるからこそ、ここからの転落が悲しい。
    気高い貴族であるお母様との暮らしは、次第に落ちぶれてゆく。
    お母様は結核でこの世を去る。
    帰国した弟は酒と薬に溺れ、かず子自身もダメ男に惹かれてゆく。
    美しく気高かったものが、汚れ落ちぶれてゆく様。
    けれどもそれはある意味、表面ばかりきらびやかに飾った薄っぺらな生活から、人間臭く逞しく生きる事への変貌だ。

    終盤の直治の遺書が痛い。
    貴族という亡霊に追われ、こうする他なかったのだろうか。
    ラストのかず子の手紙文中、上原にするお願いがある。
    その事柄は、女の意地と図太さと、そうしなければ先に歩いてゆけないか弱さが複雑に絡み合ったものだ。
    尊敬と恋慕からマイ・チェーホフだったはずのM.Cも、マイ、コメディアンと記される。
    それでも読者である私の脳裏には、眩しすぎるほどの西陽にふらつきながらも、泥にまみれても力強く前を見据えて立ち上がるかず子が浮かんだ。

    気になったので昭和22年2月7日を検索すると、
    「華族世襲財産法を廃止する法律案」が、帝国議会に提出された日とあった。
    これ、当然太宰は知っていての事…なんだよねぇ?
    現実の法案提出と、かず子の手紙がシンクロする。
    「斜陽」は滅びの美しさと表現されるけれど、当時の現実の社会で、実際に似たような事例があったりしたのだろうな。
    敗戦後の復興の影で、時代に気圧され没落していった貴族・華族。
    愚かな戦争行為の副産物は、長く長く様々な形で生まれてゆく。
    現実の滅びとは、そんなに美しいものではない。

    太宰というと「人間失格」「走れメロス」などが挙げられがちだが、
    私が好きなのは、「斜陽」と「津軽」だ。
    斜陽とは西に傾いた太陽の事だけれど、
    新しい波に圧倒的に押されて、次第に没落してゆく様との意味もある。
    当時本作が話題を呼んで、時代の流れにより落ちぶれていった元上流階級の華族などを斜陽族と呼んだりしたらしい。

    蛇足だが、「斜陽」を読み終えてから何年も後に、ユトリロ展を訪れた際は、
    あぁ斜陽にも出てきたなーなんてぼんやりと思ったものだった。

    • チャオさん
      おはようございます。
      太宰治良いですよね。自分も一時はハマり、多くの作品を食い入るように読み漁りました。
      意外にユーモアに富んだ作品や、ひた...
      おはようございます。
      太宰治良いですよね。自分も一時はハマり、多くの作品を食い入るように読み漁りました。
      意外にユーモアに富んだ作品や、ひたすらに病んだようなものだったり。
      自死を選んだ作家は多いですが、彼ほど不思議と惹かれる作家はいないかと思います。
      今再び、改めて、読み返してみようと思いました。
      2023/11/07
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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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