女生徒 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.10
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感想 : 255
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099155

作品紹介・あらすじ

「幸福は一夜おくれて来る。幸福は、-」。女性読者から送られてきた日記をもとに、ある女の子の、多感で透明な心情を綴った表題作。名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して語る「きりぎりす」、情死した夫を引き取りに行く妻を描いた「おさん」など、太宰がもっとも得意とする女性の告白体小説の手法で書かれた秀作計14篇を収録。作家の折々の心情が色濃く投影された、女の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 表現方法が巧み。初めて見るような表現ばかりだけどすっとはいってくる。あと心理描写が緻密。

  • 北村薫「太宰治の辞書」から、なんとしても女生徒を読みたいと思い購入。

    表題作を含む短編14作は、どれも女性目線の独白小説で、太宰を読みつけない私にとっては男性作家のこの形式はとても新鮮だった。

    さて、お目当ての女生徒。
    この短編集の表題になるべくしてなっているな、という感想。
    思春期の少女が持つ潔癖さ、傲慢さ、いじらしさ、一瞬先でさえ自分の感情をコントロールできない不条理、なんとも言えない焦燥が1日の中で目まぐるしく押し寄せる。
    賢く、正しく、美しく生きたい。
    自分の理想はあるのだけど、
    それに近づけない、頭でっかちで、嘘つきで、まさにロココな今の自分。
    疎ましく嫌だと思いながらも、
    どこかナチュラルに他の人と比べて、自分の方が優れていると思う土台の上からいろいろな目の前の出来事を判断する感じ。
    俯瞰する自分と、出来事にリアクションする具体の自分を統合できなくてぐちゃぐちゃになる、あの感じ。
    めっちゃ出てる。
    そして、それはここにおさめられている全ての作品に通底しているようにも感じた。乱暴に表現するなら、少女性…というか。

    これだけ女性目線の作品ばかりなのに、母性があまり見えないな、と感じるのもそのせいなのかもしれない。

    そしてこれはやはり太宰治という人の人生がそうさせているのか。

    この作品集を読んだ後、Wikiで調べてみたけど、既知の事実も作品を読んだ後に改めて読むとなんとも味わい深い。

    そのうちまた、いろいろ読んでみよ。

  • 学生時代に私を救ってくれた一冊。

    特段何も事件は起こらないけれど、鬱々としている日々。
    思春期や若さという言葉ひとつで片付ける、大人や社会に対する違和感や不快感。
    その気持ちを言語化してくれ、寄り添ってくれる本でした。
    集団主義の教室で異端分子だった私の唯一の味方。
    同じ敵を持てる仲間のような本。

    しかし、大人になって再読してみると、まるでナイフで刺されたような感覚に襲われました。
    学生時代、とても嫌いだった大人たちの綺麗事。
    その綺麗事を言ってしまう気持ちが今では少し理解できるようになったからかもしれません。
    自分が嫌いだった大人に私もなってしまった。

  • 太宰が書く女の人は優しくて大人しくて健気なイメージで男の人は自由気ままな感じに思ってますが
    皮膚と心の旦那さんはとても優しい
    可愛らしい夫婦
    本人は嘆き悲しんでるけどほっこりしちゃう

  • これを書いているのが成人の男性であるということが信じられないぐらい、まさに女学生の頭の中だった。
    『皮膚と心』が特に好きだった。

  • 太宰治の中で1番好きかも
    思春期の女の子の感情がコロコロ変わっていくのが面白い
    思春期で感受性が高いから大きなきっかけも無しに考えが180度変わっちゃうのとかなんとなくわかるなと思った

  • 一番始めの燈籠が大好きです。

    なんでこんな面白いギャグみたいな小説を書けるのでしょうか。

    好きになった水野さんのために海水パンツを盗んで、
    牢屋に入れられて、

    あ!そういえば水野さんはもともとお金持ちの育ちだった事忘れてましたって。笑

    そんな。

    そして最後は、
    自分の家族の愛おしいさ、小さな幸せに気づいて。
    他人にはわからない家族しかわからないものってあるよなーって。じーんとしちゃって。

    あれ?これはなんの話だっけ?

    よくこんな話を書けるものだ。
    本当に天才なんだと思った。


  • 「女生徒」
    リズムが良くて、ポンポン読めた。
    現代はインターネットで色々な人や情報と繋がれるから、心の中で自分を顧みたり思想に耽けたりする時間って少なくなってるのかなとふと思った。
    でも多分、量は違えど、みんな心の中で悶々としている時間はあると思う。
    その心の中の葛藤は一生続くのだろうけど、まだ女生徒の瑞々しく初々しい葛藤が描かれている。そして時代特有の女性(少女)としての葛藤でもある。まあ、太宰からみたひとつの女性の葛藤ではあるけど。笑
    「皮膚と心」の可愛い感じも好きだったし、「きりぎりす」とか「おさん」の、解説の言葉で言えば男根、俗人主義、スノビズムへの反抗心が表れている作品も、太宰の新しい面を知れて良かった。

    何故か太宰治はページをめくる手がひょいひょいとなる。読みやすいのかな?或いは解説のように日本人にささるから?
    今度の作品集も良かったなぁ

  • 何故あなたにここまでリアルで繊細な思春期女子の心の機微が描けるんですか先生…。

  • 太宰は教科書以外に読んだことがなかったけど、表現の的確さだったり、読みやすさ、人物の気持ちやもどかしさみたいな事が容易に想像できるところとか、やっぱり凄いんだなーて感じ
    とくに女の子の心情は昔も今も変わらないんだなって感じて面白かった

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    少女が大人になる一時期の光と影のような不安定を
    太宰の言葉でくっきりと描かれている


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    「幸福は一夜おくれて来る。幸福は、―」。女性読者から送られてきた日記をもとに、ある女の子の、多感で透明な心情を綴った表題作。名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して語る「きりぎりす」、情死した夫を引き取りに行く妻を描いた「おさん」など、太宰がもっとも得意とする女性の告白体小説の手法で書かれた秀作計14篇を収録。作家の折々の心情が色濃く投影された、女の物語。


    ⚫︎感想
    九段理江さんの「school girl」を読む前に、表題作のみ読了。さすが太宰…という表現力に脱帽。

    思春期特有の、少女が持っている漠然とした不安、本音と建前のバランス、母への愛と拒絶、労りと残酷、自分が純粋でないと感じて、期待はずれに思ったり、こんな自分でいいんだろうかと疑問に思ったり、自分の意地悪な部分を感じて自己嫌悪…それでもなんとなく生きてる。不幸せでもない。でも…そんな思春期に誰しも大なり小なり感じたことのあるもやもやした感情を、美しく切り取っている。感情が目まぐるしく、朝起きた時の感覚からはじまり、最後寝るまでの1日の中に凝縮されている。

    素敵な表現がいくつかあったので、メモに残しておこうと思う

  • とても刺さった。
    思春期の女の子の日常、正直あらすじだけ見ると面白くなさそうと思っていましたが、太宰治特有の美しさと切なさであっという間に読み終わっていました。

  • パッと読める短い本。言葉選びのなんと美しく的確なことか。
    サクッと読めました。

  • 女性読者から送られてきた日記をもとに、ある女の子の一日を描いた表題作。名声を得ることで破局した画家夫婦の内面を、妻が夫へ綴る手紙で表現した『きりぎりす』など、女性視点での作品14篇収録。

    『人間失格』に続いて太宰治チャレンジの二作目。角川文庫の和柄でピンクの装丁が可愛かったのと、女性読者の日記をベースにした作品という文句に惹かれて手に取った。女性の告白で進む物語は、まさか男性が書いているとは思えないほど自然に流れていく。

    表題作は少女が大人になる直前に抱く自分と世間の摩擦、アイデンティティの揺らぎを鋭く映し出している。有り体に言えば「女の子の一日の話」なんだけど、そこに溢れた思考の数々は傷口から止まらない血にも似た切迫感がある。そういう中にも、
    「ことし、はじめて、キウリをたべる。キウリの青さから、夏が来る。五月のキウリの青味には、胸がカラッポになるような、うずくような、くすぐったいような悲しさが在る。」
    という心が一気につかまれてしまう瑞々しい描写もあって好き。全体を通すと、よく考える女の子だな──という感想に(笑) 思考をがぶ飲みさせてくれる圧倒的な表現力と物量は凄まじい。

    一番最初に持ってきた『燈籠』もなかなか重たい。両親はいるが父に似ておらず、誰の子だと噂される身の上のさき子。彼女は親孝行をすることで自分の存在を確かにしようとしてきた。その一方で、心惹かれた水野のためにと出来心で海水着を盗んでしまい、水野からは突き放されてしまう。日陰者となった彼女を照らしたのは、両親だけだった。でも、それでいいという世間とは切り離された美しさが悲しみを誘う。

    『葉桜と魔笛』の姉が、先の短い妹へ吐いた嘘も好き。あたたかい嘘は、嘘と分かってしまってもあたたかかった。手紙の内容は妹からしたら面食らっただろうなあ。でも、その奥にあるものを感じ取っているところが好き。

    『きりぎりす』も面白かった。こんなに長々と書かれた絶縁状をもらったら驚くだろうな。でも、夫にはきっと届かないであろうということも伝わってくる。売れてしまったことで絵へのストイックさが失われ、陰口やお金の話ばかりするようになってしまった夫。社会的評価は得ても、彼自身を見つめていた妻にはその虚ろな中身が暴かれたように映る。お金持ちになってもつつましく生きることを貫くため離縁を決意する妻は、社会的に見れば愚かなんだろう。それでも、その愚かさには誠実さがある。この対比が際立っていてとてもよかった。


    p.29
    でも、みんな、なかなか確実なことばかり書いてある。個性の無いこと。深味のないこと。正しい希望、正しい野心、そんなものから遠く離れている事。つまり、理想の無いこと。批判はあっても、自分の生活に直接むすびつける積極性の無いこと。無反省。本当の自覚、自愛、自重がない。勇気のある行動にしても、そのあらゆる結果について、責任が持てるかどうか。自分の周囲の生活様式には順応し、これを処理することに巧みであるが、自分、ならびに自分の周囲の生活に、正しい強い愛情を持っていない。本当の意味での謙遜がない。独創性にとぼしい。模倣だけだ。人間本来の「愛」の感覚が欠如してしまっている。お上品ぶっていながら、気品がない。

    p.32
    人々が、よいと思う娘になろうといつも思う。たくさんの人たちが集ったとき、どんなに自分は卑屈になることだろう。口に出したくも無いことを、気持と全然はなれたことを、嘘ついてペチャペチャやっている。そのほうが得だ、得だと思うからなのだ。いやなことだと思う。早く道徳が一変するときが来ればよいと思う。そうすると、こんな卑屈さも、また自分のためでなく、人の思惑のために毎日をポタポタ生活することも無くなるだろう。

    p.50
    ロココという言葉を、こないだ辞典でしらべてみたら、華麗のみにて内容空疎の装飾様式、と定義されていたので、笑っちゃった。名答である。美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。

    p.77 (葉桜と魔笛)
    僕たち、さびしく無力なのだから、他になんにもできないのだから、せめて言葉だけでも、誠実こめてお贈りするのが、まことの、謙譲の美しい生きかたである、と僕はいまでは信じています。

    p.134 (きりぎりす)
    いいお仕事をなさって、そうして、誰にも知られず、貧乏で、つつましく暮して行く事ほど、楽しいものはありません。私は、お金も何も欲しくありません。心の中で、遠い大きいプライドを持って、こっそり生きていたいと思います。

  • 中学生の時に読んで鳥肌立つほど共感した思い出

  • そういやなぜか最近、太宰作品を読んでるなぁ。
    きっとおびのりさんや傍らに珈琲を。さんの呪い、いや失礼、誘導と影響を受けてしまったのだろう。
    もともと文学なんてがらでもないし。

    14篇の短編集。そのすべてが女性の一人称で書かれています。

    ●燈籠
       万引きはダメ。

    ●女生徒
       女生徒の皮を被った太宰。

    ●葉桜と魔笛
       偶然の口笛? オー・ヘンリーみたい。

    ●皮膚と心
       いやいや。いくら肌が大事ったって、腕や脚のほうが大事でしょうよ。大山鳴動物語。

    ●誰も知らぬ
       唐突な激情。劣情。

    ●きりぎりす
       価値観の違い。「ヴィヨンの妻」にでもなりたかったのかな。

    ●千代女
       勝手にもてはやされて、その気になったら落とされる。

    ●恥
       千代女の数年後だろうか? 名前も同じ和子だし。

    ●待つ
       駅のホームで誰かを待つ。

    ●十二月八日
       開戦の日の日記。

    ●雪の夜の話
       スルメが食べたくなる。

    ●貨幣
       百円紙幣(女性)の一人称話。

    ●おさん
       愛人と情死した旦那。その女房。

    ●饗応夫人
       嫌といえないにも程がある。


    思ったよりもかなり読みやすくて良かったけど、残念ながらおもしろいと思えたのがなかった。
    逆に読んでて最も苦痛だったのは、表題作の「女生徒」。
    なんてことのない一日の中で、女生徒がつらつらと考えていることが書かれているんだが、どうも太宰本人に思えてしまう。
    ひたすら眠くなった。


    表紙がなんか違うな~。
    俺が借りたのは、傘を差した女生徒が横断歩道の上で風かなんかに巻き上げられてブワッとなってる、今にも時を超えそうなラノベっぽい表紙だったのに。
    こっちの表紙の方がなにかと間違えて売れそうだ(笑)

    • 土瓶さん
      ということで(?)1Qさんも読んでください。
      薄いからすぐだよ^^
      ということで(?)1Qさんも読んでください。
      薄いからすぐだよ^^
      2023/12/22
    • おびのりさん
      実は、私は、夏目漱石そんなでもないっす。
      こころと夢十夜くらい。
      文章が美しいから、いけるけど、ストーリーはどうも。
      実は、私は、夏目漱石そんなでもないっす。
      こころと夢十夜くらい。
      文章が美しいから、いけるけど、ストーリーはどうも。
      2023/12/22
    • 1Q84O1さん
      ということでw
      ということでw
      2023/12/22
  • 私も軍隊さんみたいな生活を送れば考え事ばかりするのをやめて、健康な女になれるのかしら、という一節が好き。毎日健康的な疲労を背負えば、悩み事も健康的なものになると思う。

  • 太宰文学の中の女性視点ばかり集めた短編集。
    太宰って、デカダンとか厭世的とか太宰の味って色々言われるけどそれって女性視点の方が素直に出るんじゃないかなぁと思いました。というか、太宰にとってそもそも女性ってそうだったんだろうな。「自分の胸の中、想いに素直」と言えば良いのか、意地がないといえばいいのか…。
    「女生徒」「灯篭」「葉桜と魔笛」「恥」「雪の夜の話」とか良かったです。「皮膚と心」は読んでて辛かった。主人公が自分のことめちゃくちゃに言うし、「女ってそういうもの」っていう主語大きい語りをするので……。

    ●あらすじ
    太宰の真骨頂、女性の語り口による告白を集めた短編集。
    「幸福は一夜おくれて来る。幸福は――」多感な女子生徒の一日を描いた「女生徒」、情死した夫を引き取りに行く妻を描いた「おさん」など、女性の告白体小説の手法で書かれた14篇を収録。
    (角川オフィシャルサイトより引用)

  • 美しい物語。
    時代は今とはかなり違うが、思わずクスッと笑いたくなるような、どうしようもなく気にして仕方がない感情がよく語られていて好きだった

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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