女生徒 (角川文庫)

著者 :
制作 : くまおり 純 
  • KADOKAWA
4.16
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本棚登録 : 1735
レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099155

作品紹介・あらすじ

「幸福は一夜おくれて来る。幸福は、-」。女性読者から送られてきた日記をもとに、ある女の子の、多感で透明な心情を綴った表題作。名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して語る「きりぎりす」、情死した夫を引き取りに行く妻を描いた「おさん」など、太宰がもっとも得意とする女性の告白体小説の手法で書かれた秀作計14篇を収録。作家の折々の心情が色濃く投影された、女の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 一番面白かったのは『おさん』。浮気をしているであろう夫に対し、で〜んと構えた母ちゃんはかっこいい。それなのに夫ときたらまったく…これぞ太宰治。久しぶりの太宰もやっぱりだめんず。
    一番心に残ったのは『女生徒』。思春期の女の子が思いついた事を次から次へと語り続ける物語。ドキッとさせられる言葉も多く人気があるのも頷ける。

    「花の美しさを見つけたのは、人間だし、花を愛するのも人間だもの。」太宰らしい美しい文章だなと思う。ただ、『女生徒』を再読するのは凄く疲れる。

  • 女性視点の私小説風の短編でまとめられた一冊。
    表題作が描くのは、天使と娼婦に同時に憧れ、自らを愛しながら疎む、ザ・思春期…こういう言い方をすると安っぽくなってしまって申し訳ないのだけれど、それが安くなく非常に上手いのがさすが。
    他の作品もガラス窓をそっと爪で引っ掻くような、小さいけれど忘れられない音がした。
    特に、「おさん」がお気に入り。

    「男のひとは、妻をいつも思っていることが道徳的だと感ちがいしているのではないでしょうか。他にすきなひとが出来ても、おのれの妻を忘れないというのは、いい事だ、良心的だ、男はつねにそのようでなければならない、とでも思い込んでいるのではないでしょうか。(中略)ひとを愛するなら、妻を全く忘れて、あっさり無心に愛してやって下さい。」

    ため息が出るほど文章自体も中身も見事な一作だった。

  • 『おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もう、ふたたびお目にかかりません。』

    太宰治の女子高生なりすましブログ。

  • 初めの何話かは面白かったのですが、次第に怖くなってきました。女を書く太宰、太宰の書く女。どちらにしろ女以上に女な描写ではっとさせられます。こわいなぁ。でももっと読んでみたいなぁというのも少し。

  • 「かわいい太宰を堪能できる」「角田光代さんや西加奈子さんら、女性作家に人気」という書評を新聞で見て以来、ずっと読みたかった作品です。

    繊細な女心が盛り込まれた14篇のうち、『女生徒』は名言のオンパレードで、全文を引用したいぐらいです。布団を持ち上げた時、「よいしょ」と言ってしまって落ち込む場面が何ともかわいらしい! 今や1日に何度も「よいしょ」と言う私ですが、懐かしくて照れくさくて、口角が上がりっ放しの作品でした。

    SFやファンタジーで、登場人物に人の心が読める能力があって、その苦しみは普通の人には理解されないというシチュエーションがあるけれど、もしや太宰治もそんな力を持っていた? なんて想像をしてしまうほど、男性が書いたとは思えない描写が多いのです。

    吹き出物に激しく悩む『皮膚と心』、親友に恋人が出来たと知った時の複雑な心境が秀逸な『誰も知らぬ』、おっちょこちょいで笑える『恥』などもお気に入りです。

  • 表題作について。現代だったら「むかつく」の一言で済ませてしまう微妙な感情をすごく絶妙に文章するなぁ、と感動。太宰先生の言葉はわかりやすいしツルッと入って来る。
    短編ひとつひとつの後味は悪いですが、他の作品集を読むと暗いだけじゃなくて、染みてきます。んん上手く言えない。
    太宰先生の作品がやっぱり好きです。

  • 手癖の悪い女学生、死期が間近に迫った妹を持つ姉、夫に対し嫌気が差した妻、自信家でオレ様な兄を持つ妹、意見が言えず気苦労の多い主人を持つ家政婦-様々な立場にある”女性”の告白体で書かれた14の短編集。

    どの作品も惹かれるものばかりだったけれど、表題の作品『女生徒』では、思春期ならではの多感な少女の心情が生き生きと描かれている。大人に近づく歯がゆさ、母親との距離感、周囲への反発、自分が何者か不透明な虚無感。周りの全てが煩わしいと思っているかと思えば、次の瞬間美しい夕空を見上げて感動する。そんな気持ちのムラが奔放で、旺盛で、まぶしく見えた。

    太宰治作品の印象を覆すも良し。女って良いなぁと、ほくそ笑むも良し。魅力的な1冊でした。

  • 女生徒、他の短編は何れも現実で体験し得る、現実的な内容である。
    そして此のヒロインの心描写が決して男性的で無いのは、太宰自身が相応の女々しさを所有しているからだろう。
    此処に出て来る人物各々が、女性特有の瞑想と現実の混沌を有っている。そして何処かヒステリックな性質を携えているのだ。簡潔に云えば、女性らしい悩みと思考回路で在ると云う事であるが。
    太宰は女々しいと云うよりも、女性の繊細さを具え過ぎたと言えるだろう。
    恰も女性作家が描いた様な箇所が多々見受けられる。

    太宰の執筆する短編は美しくないと感じる。彼には語りたい事が余りにも多過ぎるのだ。其れを作中で感じさせて仕舞う為に。
    然し口語の文体が非常に多く、それ故に非常に生々しさを醸し出しいる。
    憂鬱や衝動、妄想等が、女の其れとして多彩に含有された一冊だ。

    私が思うに、此の作品のヒロインは全て太宰自身なのだろうと感じた。
    太宰の抱える世間への茫漠とした恐れを詰め合わせた様な、強迫観念染みたモノを感じた。
    どの作品にも凡そは云える事だが、太宰の内部的な恐怖心は、作品に依って表出されているのだろう。

  • 太宰治をかたっぱしから読んだわけじゃないけど
    この作品はすごく好き。
    少女の心をすごく表現してる。
    意地が悪くて優しい。
    少女ってのはそんなものよ。
    太宰治のなかにはこういう
    女々しい部分があったんだと思う。
    作家っていうのは
    女性と男性を往来する中性的な
    生き物なのかもしれない。

  • 主人公の女生徒と自分が重なる。

  • これを読んでから太宰に惚れた。
    こんな女心がよく解る男は他には居ないだろう。
    こりゃもてるわ。しかたないわ。
    女が放っておかないっつうに。


    現実にこんな退廃的な色男と付き合うのはごめんだわ。
    でも、小説家としては天才的だと思う。


    それと同時に男で「うーん・・・」ってなる人が多いのも
    これを読んで了解したのでした。笑

  • 太宰の短編はすごく良い。
    「皮膚と心」に出てくる男性の、あの良さといったら!
    ああいうの書くからモテたんだろうな太宰さん。

  • 太宰治、あるアニメのキャラクターで大変魅力的であったため、そのモデルとなった太宰治の作品を読んでみたくなって読んだ。正直わたしには合わなかった。それぞれの女性に全く魅力を感じなかったし、その時代ならではの女性の地位の低さ、人生の選択肢の少なさ、自らの謙遜と蔑みがしんどかった。確かに表題にされている、女生徒は良かった。多感な時期の苦しみは今振り返れば笑えたり、客観視できたりする。けれどその渦中にいる人は、苦しみ、悶え、周りからのもう少し大人になればとか、つかの間の苦しみとか、言われても意味がない。彼女(彼)は今が苦しいのだ。わたしも今振り返れば、なんてことはない、苦い思い出の一つだが、あの頃はとてもしんどかった。一歩間違えれば、今わたしが存在していないこともあり得るのだ。そういう危うさがあの頃にはあるのだ、と考えさせられたな。わたしも経験した分、今苦しい思いをしている青春時代を過ごしている彼女(彼)らに、あっという間に時は過ぎるよとか、振り返ればどうってことないんだよ、とか言ってしまいそうであったと思う。こんな風に気づけるあなたはすごい。

  • 太宰は『人間失格』選んだつもりが、女生徒だった。直前で変えたんだっけか?
    うん、まあこれも好きだけども。


    貴族の話し言葉には定評がない太宰治(by 志賀直哉)だけど、こういう女の子の素朴な独白はグッとくると思いました。

  • 女性が語り手の短編集。
    表題の女生徒をはじめ素晴らしい作品がたくさん。
    読み終わるのが勿体無いと思った。

  • 悲しいことを出来得るなら少しずつ少しずつ受け止めていきたい。そうしていかないと、いつか起こる大きな悲しみの渦に飲み込まれて溺れてしまう。幸福を感じ、それが過ぎ去った後の更なる幸福は、不幸せの背中を見つけようとしている。一筋の光も差し込まない暗闇にひとり、けれど胸の内で何か光るものがある。それがわたしの幸福だ。それを確かに見つめていた証をあなたの言葉に探してしまう、あなたが見たはずのその光。

  • 私小説としても面白かった。何より戦前から終戦直後の人々の生き方がどのようなものかがリアリティをもって伝わってきた。

    まさに名作。

  • 太宰、少女の心の描写が上手すぎて、笑った。

  • i文庫S

  • とても好き。一生本棚にいてほしい。

  • 全編女子学生の一人称で話が進む。思春期特有の、大人になり切れずに揺れる少女の心情をここまで見事に描けるのだからすごい。
    作中で主人公は「墨東奇譚」を読むが、「ところどころ作者の気取りが目について、それがなんだか、やっぱり古い、たよりなさを感じさせる」と結構辛辣。

  • 葉桜と魔笛、皮膚と心、おさんが好き

  • この本を愛してる。

    よく考えると、こんなにもうまく少女の気持ちを描く太宰若干怖い、

  • 女性独白体で集めたこの一冊って、私にとっては宝物かもしれない。
    以下、ネタバレ含む、注意。

    はじまりは「燈籠」。
    人前に顔を出したくない女の理由が大分トンでいる。一目見て、景色が輝くほど好きな男が出来て、彼が海に行くことを聞きつけ、男の水着を万引きしてしまう。
    いや。男の水着盗るか⁉︎と、それまでの恋モードとのあまりの乖離に正直引く。
    けれど、そのショックが面白い。
    警察に滔々と、自分を裁いてはならない理由を述べて、見事に新聞記事になっちゃう。

    ラストの「饗応夫人」はある意味逆に、自分の身体を壊してでも、浅ましい客たちを目一杯もてなす。
    ただ、血を吐いて実家に帰ろうと心に決めても、相手に会った瞬間、歓待モードになることの意味が分からなくて、引く。
    そして、そのドン引きがきっと面白い。

    「きりぎりす」はそう言ったショックは少なくて、貧乏絵描きの妻としてやっていくつもりの主人公が、夫の出世と共に人間までもが変わっていく様子を、女性のある意味アンノウンを認められる視点から書くことで、真実味を帯びる。
    正統派な感じ(笑)

    でも、「恥」になると、小説がフィクションであることを知らず、何故自分が書かれているんだろう?と不思議に思い、また作者が登場人物通りの身なりでないことに、インチキと感じる。
    無知が過ぎて、エキセントリックな感じ。

    さて、有名な「女生徒」と「待つ」。
    作者を知らない人に、これ、誰の作品と思う?と聞いて、太宰治って答えられるんだろうか。
    深く深く潜っていくのに、潜っていく途中で、潜ることの意味を探してしまうような、そんな揺れのある作品で、とても素敵。
    明度は確かに低いかもしれない、でも、どこかに明るさや真面目さがあって、爽やかに読める。
    『人間失格』だと、そうはいかない。

    自分の妻としての語りもあるのだけど、困った旦那さんだわ、と自分自身が書くことの恥ずかしさ?はなかったんだろうか。
    読み応えのある一冊だった。

  • とても好き。

  • 太宰で一番好きな作品かもしれない。少女の淡々とした日常が独り言のように綴られているだけなのに形容し難い美しさはどこからくるのだろう。太宰自身、「少女」であったことなどないはずなのにこれを美しいと思うのは自分が男だからだろうか。青い空を見上げた際の描写が好きで、初めて『ライ麦畑でつかまえて』を読んだときを思い出すくらいの感動を憶えた。美しく生きたいと思います。

  • 友達に勧められて手に取りました。

    「美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。」

    なるほど。

  • 時代というものの狂おしさが
    ただただ女性の視点から描かれて
    どれもそれ相応の可笑しさに満ちて。

    「十二月八日」が好きです。
    それに、まったく逆の意味で
    「恥」も。

    太宰治には、これほどまでに
    女性の心情を忖度できる才能が
    あったのだなあ。

  • 第二次世界大戦前後当時の状況を感じる内容でした。
    私も貨幣になりたい。

  • どの短編も、最初の一文がよい。「朝、眼をさますときの気持ちは、面白い。(女生徒)」「女は、やっぱり、駄目なものなのね。(千代女)」「たましいの、抜けたひとのように、足音も無く玄関から出て行きます。 (おさん)」もしも太宰の作品と知らずに読んだなら、女性作家が書いたと思うに違いない。それほど見事に女性の心情を描いている作品。初版発行が昭和29年。そして今が平成29年。現代版『女生徒』があれば面白いだろうな。

    いまに大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘びしさは、可笑しなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかも知れないのだけれど、けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮らしていったらいいのだろう。

    私たち、こんなに毎日、鬱々したり、かっとなったり、そのうちには、踏みはずし、うんと堕落して取りかえしのつかないからだになってしまって一生をめちゃめちゃに送る人だってあるのだ。また、ひと思いに自殺してしまう人だってあるのだ。そうなってしまってから、世の中のひとたちが、ああ、もう少し生きていたらわかることなのに、もう少し大人になったら、自然とわかって来ることなのにと、どんなに口惜しがったって、その当人にしてみれば、苦しくて苦しくて、それでも、やっとそこまで堪えて、何か世の中から聞こう聞こうと懸命に耳をすましていても、やっぱり、何かあたりさわりのない教訓を繰り返して、まあ、まあと、なだめるばかりで、私たち、いつまでも、恥ずかしいスッポカシをくっているのだ。

    明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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