- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041099674
作品紹介・あらすじ
世間を震撼させた無差別大量殺傷事件。事件後、犯人は自らに火をつけ、絶叫しながら死んでいった――。元同級生が辿り着いた、衝撃の真実とは。現代の“悪”を活写した、貫井ミステリの最高峰。
感想・レビュー・書評
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斎木均、無差別大量殺人事件の犯人である彼は小学生時代にいじめを受けていた。彼の人生はそこから崩れ、人生に絶望し、社会を恨み、大量殺戮などという惨事を起こしたのだろうか。
いじめのきっかけを作った人物、いじめを主導していた人物が30年の時を経て贖罪の真相を求めるゴリゴリの社会派ミステリー。に感じたが、なんだか毛色が違う。私が求めた主軸は明確にWhy done it だったはずなのだが、その好奇心は終盤に差し掛かるにつれ薄れ、そしてそのま消え去った。
というのも、斎木均の人生をメディア報道の情報そのまま鵜呑みにした正義の使徒、別名無関係の人間共よろしく、注意深く観察していたはずの私の目には色眼鏡が掛かっていたのだ。彼の人生は消して「社会の敗北者」などでは無い。勿論、肯定は出来ないが。
彼は絶望したのだ。世界に絶望し、人間に絶望し、自分自身にも絶望し、その果てに何も残らない悲しい人間が作り出されてしまった。私はそんな壮絶な背景に飲み込まれ、本来の目的である「なぜ」の追求を放棄した。斎木均の回顧録に夢中になってしまったのだ。
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小学生時代、小さな見栄から斎木がいじめられるきっかけを作ってしまった主人公 安達周。罪悪感に苛まれた彼はパニック障害を患いながら、斎木の悪の芽がどこで産まれ、どう育ったのかを調べ始める。自身の関与に怯えながら。
並行するのはいじめの主導者 真壁友紀の現在と、無差別大量殺人を「正義」の名の元動画に収め一躍有名人となった平凡な大学生 亀谷壮弥のその後。そして後に現れる被害者遺族の母親の視点だ。
安達の素人捜査や真壁とのコンタクト方法、壮弥の承認欲求の満たし方。遺族母の目的の定まらない復讐、これら全てにネットが用いられる。改めて発言の自由の無法な荒地に他人事とは思えない恐怖心が芽生えた。何が彼らの行動の違和感を生み出しているのだろう。
想像力の無い人間は自分に想像力がない事を想像する事が出来ないから想像力の欠如の意味を理解する事が出来ない。....なるほどその通りだと思う。
知人に対する優しさも、他人に対する無関心も、人間が持つ潜在の初期能力だ。それを引き伸ばせるはずのネットの世界は必ずしも最善の状態とは言えないのやもしれない。人間は賢いのか、愚かなのか、これもまた潜在されたバグなのだろうか。
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物語としてはちらほら見掛ける「拍子抜け」が妥当な表現だと思う。確かに、急ブレーキ踏まれて鞭打ち状態になった事は否めない。忘れかけていた斎木の動機は、個人的には頷けるものではあったが...美談過ぎた。人間を30年近くやっていると、これが非現実だと脳が認識してしまう。なるほどこれが想像力の欠如か。
とは言え私が残念に感じたのはここではなく、晴れて結末を迎える事が出来たのが安達周だけだったというこの一点だ。欲張りやもしれないが斉木と安達同様、真壁友紀、亀谷壮弥、遺族母が事件に関与した事で何を感じ、何を思い、そしてどうなったのかを見届けたかった。
今日は一日首にコルセットを巻いて過ごすことになるだろう。急ブレーキの代償だ。 -
圧倒的なリーダビリティの一冊。
大量殺人、いじめ、ネット晒し、社会の負が心に降り積もる。
この負の苦しさにも関わらず犯行動機、誰もの心情にひたすら心はひっぱられた。
主人公達の心を整理するために何か行動を起こさざるを得ない気持ち、知ることが苦しみの軽減に…と一縷の希望を託す気持ち。
特に被害者遺族に心を重ね合わせ胸が痛む。
そして随所で誰もが投げかける言葉に即答できない自分がいた。
悪に目を向け攻撃するのはいともたやすい。
対して善の目を持ち続けることの難しさを思う。
一時的ではない真の善の目と芽の必要性が心に残る。 -
面白すぎていっき読み。
悪の芽と善の芽。私たちの中に眠るどちらの芽の存在も無視することはできない。この殺伐とした社会に生きていて、発芽するのは一体どちらか?
ミステリとして驚きのトリックやラストにどんでん返しが待っている、という小説ではなかったにせよ、センセーショナルな事件に翻弄される関係者たちの葛藤する心情を鋭く炙り出して、読者に問いを投げかけてくるような良書。 -
装丁に惹かれ、図書館でたまたま手に取った貫井徳郎さん。初読み。
なかなか重いテーマから気持ちの良いラスト。人は誰しも「悪の芽」を持っている。その悪の芽を育てるには自分の境遇ち周りの環境も影響してくる。それを開花させるまで育てる人はごく一部の人間。自分が想像出来ない想像力の欠如。ネット上での発言もそう。
だがその悪の芽を持つ一方で善の芽もある。自分の知らないことを慮る、それはとても難しい。少しづつでもよいので善の芽を育てて開花させたい。それはとても勇気のいることだ。
長編ながらそれを感じさせない筆力、構成だった。 -
斎木均は東京グランドアリーナのアニメコンベンションで来場者達に火炎瓶を大量に投げて大量殺人を犯した
斎木自身も焼身自殺をその場ではかった
事件を知った安達は銀行に勤め
妻子と幸せに暮らしていた
小学5年生の時に斎木に変なあだ名をつけた
それがきっかけで斎木は酷いいじめに遭う
自分のせいで事件がおきたかもしれない
安達はその日からパニック障害となり苦しむ
事件の真相を探る
いじめ
社会弱者
ネット社会の恐さ
様々な情報を私達はすぐに検索をして知ることができる
便利さのかげで1部の情報が流され
憶測をよび
悪の芽となり大きく広がって人や社会を蝕む -
うーん。
被害者と加害者。難しい。
斎木がやったことはどんな理由があろうとも許させることではないし、過去のいじめがあったからとかそーゆー話でもない気がする。
かと言って安達たちがやったとこもよくないけど。
でもうーん。 -
無差別大量殺人事件。犯人はその場で自分に火をつけ死んだ。
自分が起こしたあの罪がこの事件を引き起こしたのか。同級生の安達は罪悪感に苛まれ彼の人となりを探り始める。
はじめはほんとに些細なこと。誰にでも起こりうるかもしれない。怖いな… -
アニメフェスを襲ったセンセーショナルな無差別殺人事件を軸にしたストーリー
もはや現代カルチャーの一端でもあるアニメやコスプレに夢中になる若者たちの心理。
社会的強者と弱者。
SNSの闇。
様々な要因からジリジリと犯人の心理に近づく展開にかなり引き込まれる。
ただ、ラストが予想外な形でやや残念感が残った。 -
アニコンで数多くのアニメファンが一人の男に殺害される事件が起きる。
犯人は子供の頃に虐めにあい、それがきっかけで不遇な人生を送っていた。
そのニュースを見たエリートサラリーマンの男性は犯人がかつての自分の同級生であり、自分が虐めのきっかけを作った人間だと気づく。
彼は罪悪感を抱き、かつて犯人を虐めていた首謀者の男性に連絡をとり、さらに犯行動機について探っていく。
また、犯人に子供を殺された母親は虐めのきっかけを作った男性をネットで追い詰めようとするがー。
今まで思った事もないような事が書かれていて、なるほどな・・・というくだりがあった。
それは、人間はまだ進化の途中なんだという話。
人間の究極の所は優しいもので、そこにいきつくにはまだまだ長い年月を必要とする。
そして、その優しさというのはある意味、想像力から生まれている。
そんな事も読んでいて感じた。
ただ、犯行動機には疑問を感じるし、そこまで・・・と思ってしまう。
彼は悪の芽にさい悩まされたけれど、自分で悪の芽を生んでしまってもいる。
想像力について語っていた人なのに・・・。
悪の芽というのはほんの些細な一言から生まれてしまう。
自分の名前や顔出しをせずにそれができる今の世の中ではそういうのが芽生えやすいと思う。
だけど、被害者の母親のようにここでそれを自分の手で摘み取る事もできる。
善の芽という言葉が作中出てきたけれど、むしろそれよりも悪の芽を摘み取る行為の方が分かりやすくて私にはしっくりきた。
著者プロフィール
貫井徳郎の作品






私事ですが腰痛患い腰にもコルセットを巻いています。首にも巻いたら...なんだか姿勢が良くなりそう...
私事ですが腰痛患い腰にもコルセットを巻いています。首にも巻いたら...なんだか姿勢が良くなりそうですね!!前向き!!
うふふ、つまらん話をすみません(笑)遊びに来てくれて嬉しいです、ありがとうございます☆
この2行もなんですが、NORAxxさんのレビューは、ユーモア(ネタともいう 笑)とクールさのバラン...
この2行もなんですが、NORAxxさんのレビューは、ユーモア(ネタともいう 笑)とクールさのバランスが絶妙なところに、いつも痺れるんです「くぅ〰️っ♡」
すごく憧れます。
これからもレビュー楽しみにしてます。
hiromida2さん、おはようございます♪
共感していただき嬉しいでーす♡
実は振り切ってクールぶりたいんですけどね、ボロが出ちゃうんです(´>∀<`)ゝ笑 私の方こそ、いつも地球っ...
実は振り切ってクールぶりたいんですけどね、ボロが出ちゃうんです(´>∀<`)ゝ笑 私の方こそ、いつも地球っこさんの的確なレビューに自身が賢くなった気にさせてもらってます。要点が纏まっているのでなんだか良い所取りしているようです!!ふふふ、いつもありがとうございます。ウズベキスタン愛含め、これからも楽しみにしています♡