悪の芽

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 639
感想 : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099674

作品紹介・あらすじ

世間を震撼させた無差別大量殺傷事件。事件後、犯人は自らに火をつけ、絶叫しながら死んでいった――。元同級生が辿り着いた、衝撃の真実とは。現代の“悪”を活写した、貫井ミステリの最高峰。

感想・レビュー・書評

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  • 圧倒的なリーダビリティの一冊。

    大量殺人、いじめ、ネット晒し、社会の負が心に降り積もる。
    この負の苦しさにも関わらず犯行動機、誰もの心情にひたすら心はひっぱられた。

    主人公達の心を整理するために何か行動を起こさざるを得ない気持ち、知ることが苦しみの軽減に…と一縷の希望を託す気持ち。
    特に被害者遺族に心を重ね合わせ胸が痛む。

    そして随所で誰もが投げかける言葉に即答できない自分がいた。

    悪に目を向け攻撃するのはいともたやすい。
    対して善の目を持ち続けることの難しさを思う。

    一時的ではない真の善の目と芽の必要性が心に残る。

  • 貫井さん、初読み。タイトルの悪の芽、作者がラストにどうオチを付けるのか楽しみに読んだ。アニコンで起きた大量無差別殺人。犯人は斉木。斉木には小学校時代苛められた過去がある。一流企業に勤める斉木の小学校時代の同級生の安藤。安藤は自分のせいで斉木が殺人者になったのではないか?と疑い、そうではない証拠を得たい。安藤の完璧主義によりパニック障害に陥る。斉木とキャバ嬢の関係、見くだす心、絶望。自分にとって悪の芽の真相と大量殺戮がどうしても不均衡。すなわち動機が不十分で、「悪」が悪ではなかったとしか言いようがない。

  • 面白すぎていっき読み。
    悪の芽と善の芽。私たちの中に眠るどちらの芽の存在も無視することはできない。この殺伐とした社会に生きていて、発芽するのは一体どちらか?
    ミステリとして驚きのトリックやラストにどんでん返しが待っている、という小説ではなかったにせよ、センセーショナルな事件に翻弄される関係者たちの葛藤する心情を鋭く炙り出して、読者に問いを投げかけてくるような良書。

  • 装丁に惹かれ、図書館でたまたま手に取った貫井徳郎さん。初読み。

    なかなか重いテーマから気持ちの良いラスト。人は誰しも「悪の芽」を持っている。その悪の芽を育てるには自分の境遇ち周りの環境も影響してくる。それを開花させるまで育てる人はごく一部の人間。自分が想像出来ない想像力の欠如。ネット上での発言もそう。

    だがその悪の芽を持つ一方で善の芽もある。自分の知らないことを慮る、それはとても難しい。少しづつでもよいので善の芽を育てて開花させたい。それはとても勇気のいることだ。

    長編ながらそれを感じさせない筆力、構成だった。

  • アニコンで数多くのアニメファンが一人の男に殺害される事件が起きる。
    犯人は子供の頃に虐めにあい、それがきっかけで不遇な人生を送っていた。
    そのニュースを見たエリートサラリーマンの男性は犯人がかつての自分の同級生であり、自分が虐めのきっかけを作った人間だと気づく。
    彼は罪悪感を抱き、かつて犯人を虐めていた首謀者の男性に連絡をとり、さらに犯行動機について探っていく。
    また、犯人に子供を殺された母親は虐めのきっかけを作った男性をネットで追い詰めようとするがー。

    今まで思った事もないような事が書かれていて、なるほどな・・・というくだりがあった。
    それは、人間はまだ進化の途中なんだという話。
    人間の究極の所は優しいもので、そこにいきつくにはまだまだ長い年月を必要とする。
    そして、その優しさというのはある意味、想像力から生まれている。
    そんな事も読んでいて感じた。
    ただ、犯行動機には疑問を感じるし、そこまで・・・と思ってしまう。
    彼は悪の芽にさい悩まされたけれど、自分で悪の芽を生んでしまってもいる。
    想像力について語っていた人なのに・・・。

    悪の芽というのはほんの些細な一言から生まれてしまう。
    自分の名前や顔出しをせずにそれができる今の世の中ではそういうのが芽生えやすいと思う。
    だけど、被害者の母親のようにここでそれを自分の手で摘み取る事もできる。
    善の芽という言葉が作中出てきたけれど、むしろそれよりも悪の芽を摘み取る行為の方が分かりやすくて私にはしっくりきた。

  • 長編だが定期的に視点が切り替わるのでマンネリせずに集中して読めた。唯の小説ではなくて社会問題に根ざしているところが毎度ながら感服させられる。犯罪者にも同情の余地が生まれるほど。

  • 大量殺人の原因となったのは昔の自分のいじめが原因なのか。
    現代社会の問題点をついて、考えさせられる小説でした。
    登場人物のそれぞれの視点で印象が全く変わる。
    自分は悪くないと思っていたが、そうではないのかもしれない。そんなことを考えさせられる小説です。

  • 相変わらず安定のイヤミスぶりで十分面白いのだけれど、やや取り止めもなく終わった感じ。

  • 東京ビックサイトのコミケで無差別殺人事件が発生し41歳の犯人(アルバイト店員)はその場で自殺。犯人の斉木は小学校から不登校となっており、その原因は小学校のいじめであった。そのいじめのきっかけを作った安達は、大手銀行の課長であり妻子供と用賀の戸建に住んでいる。安達は精神的に大きなダメージを受け出社できなくなり、斉木の犯行動機を突き止めることが自分の心を修復する上で必要と考え、銀行を休職し調査を開始する。
    この本は人間の想像力を試す。どれほどまでに他人の気持ちに寄り添えるか。今の日本ではネットでもリアルでも人を見下す、差別する、同調しない者の排除等が平然と行われている。人間が進化すればもっと優しさが増えるのだろうか。しかし優しさが余裕やゆとりから生まれるならば、世界に置ける位置付けが低下する一方のこの国では、更に酷いことになってしまいそう。この本での犯行の動機、あまり納得できなかったが、それがむしろ本当に世の中に絶望すると…というリアルを感じさせられた。少しずつでも善の芽が出るよう努力する、社会のために。

  • 丁寧な人物描写と心理描写に磨きがかかった印象で、物語に没入できるが、犯行動機のプロットが今一つなのと、安達が中心なのはわかるが、真壁編があまりにあっさりとしていて違和感ある。エンディングもひと工夫ほしいところ。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。他の著書に『壁の男』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』などがある。

「2021年 『悪の芽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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