- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041099742
作品紹介・あらすじ
西郷の首を発見した軍人と、大久保利通暗殺の実行犯は、かつての親友同士だった。激動の時代を生き抜いたふたりの武士の友情、そして別離。「明治維新」に隠されたドラマを描く、美しくも切ない歴史長編。
感想・レビュー・書評
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本作の主人公の一人は西南戦争で西郷隆盛の首を発見した軍人・千田文次郎。もう一人の主人公は大久保利通暗殺事件の実行犯・島田一郎。この二人がかつて親友同士だったというのはなかなか面白いですね。主人公たちの関係が西郷・大久保の関係と重ね合わせて物語が進むあたりは、確かに目の付け所がいいなと思いました。個人的にはこの時代に起こった多くの事件をさらっとトレースしすぎている印象が強く、主人公たちの影が相対的に薄くなったきらいがあるのと、例えば見せ場の一つだと思っていた西南戦争のクライマックスなんかも結構あっさり流されていた点なんかがいまひとつ物足りなく感じ、星一つ下げさせていただきました。バランスをどうするかの問題なのですが、もう少し全体を刈り込むか、逆に思い切ってこの3倍ぐらいの長さにしても良かったんじゃないかなと思います。
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熱くなって本が持てなくなるくらいの臨場感のある物語でした。いろんな方々の思いがあって今があるのを実感しました。
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西南戦争の話ではなく、維新を乗り越えた加賀藩士の話。大久保利通の暗殺犯が金沢の出とは知らなかった。
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20240726
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「生き胴」という刑法を知りました。よく考えるなと思います。今の時代とは価値観が違うのでしょうが人の命が信念(目的?)より軽い。時代が変わったとき、その波に自分はどう乗るか。あるいは乗らないか。千田と島田それぞれの生き様でした。
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さすが伊東潤!かなり面白い。
「武士の碑」を読んだすぐ後だったので勝手に、タイトルから西南戦争の政府軍視点ものたと思ってました。
いやいや、主役の二人はある意味、有名人だったんですね。勉強不足で全く知りませんでした。 -
あり
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プロローグ
第一章 蓋世不抜
第二章 鉄心石腸
第三章 気炎万丈
第四章 擲身報国
エピローグ -
幕末期から明治期を舞台とする時代モノだ。「意外に知られていない?」と見受けられる事柄が扱われている。そして「時代の奔流」という中で生きた“竹馬の友”という2人が主要な登場人物ということになる。
冒頭の「プロローグ」で、80歳代に差し掛かった男が高台に上って故郷の街を望むというような場面が在る。題名の『西郷の首』の「西郷」が在る故に「桜島が視える鹿児島」でも登場するのかと思えば、「加賀百万石」と謂われた前田家の城下町であった金沢が出て来る。
本作は、西南戦争の際に『西郷の首』に関わることとなった、「文次郎」こと千田登文(せんだのりふみ)と、その“竹馬の友”ということになる「一郎」こと島田朝勇(しまだともいさみ)の物語である。2人は加賀の前田家中の士であった。家中では低い位置付の足軽であった。
文次郎や一郎が中心視点人物となって展開する物語であるが、何方かと言えば一郎が中心となっている場面が多かったような感である。
激動の幕末期、加賀の前田家中でも佐幕派と尊王派との内訌のような状態は見受けられ、他方に開国後の経済の色々な動きや天候不良による凶作という領内の混乱等の様々な事情が生じていた。そんな中を文次郎や一郎が駆け抜ける。所謂「水戸天狗党上洛」の一件や、その後の「戊辰戦争」という大きな動きの中で2人は活動し、戦いにも参加した。そういう他方に各々の人生も在る。
激動の幕末期を共に駆け抜けた文次郎と一郎であったが、時代が明治になった中で「各々の道」を歩み始める。明治初期の様々な動きの中、高まる不満という背景の中で政治運動家的な動きに身を投じる一郎と、職業軍人として生きようとする文次郎とが各々辿る運命が綴られる。そして行き着いた先は?
互いの良さを認め合った「真の友」という感の文次郎や一郎だが、「時代…」の故に結果的に袂を分かつこととなって行く様が描かれる作品だが、強く引き込まれる。そして、江戸幕府の時代に「最大の大名家」であった加賀の前田家中の幕末の様子に関して、正直余り知らなかったので、そういう辺りも興味深く読んだ。
非常に興味深い物語である…