西郷の首 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 63
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099742

作品紹介・あらすじ

西郷の首を発見した軍人と、大久保利通暗殺の実行犯は、かつての親友同士だった。激動の時代を生き抜いたふたりの武士の友情、そして別離。「明治維新」に隠されたドラマを描く、美しくも切ない歴史長編。

感想・レビュー・書評

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  • 本作の主人公の一人は西南戦争で西郷隆盛の首を発見した軍人・千田文次郎。もう一人の主人公は大久保利通暗殺事件の実行犯・島田一郎。この二人がかつて親友同士だったというのはなかなか面白いですね。主人公たちの関係が西郷・大久保の関係と重ね合わせて物語が進むあたりは、確かに目の付け所がいいなと思いました。個人的にはこの時代に起こった多くの事件をさらっとトレースしすぎている印象が強く、主人公たちの影が相対的に薄くなったきらいがあるのと、例えば見せ場の一つだと思っていた西南戦争のクライマックスなんかも結構あっさり流されていた点なんかがいまひとつ物足りなく感じ、星一つ下げさせていただきました。バランスをどうするかの問題なのですが、もう少し全体を刈り込むか、逆に思い切ってこの3倍ぐらいの長さにしても良かったんじゃないかなと思います。

  • 熱くなって本が持てなくなるくらいの臨場感のある物語でした。いろんな方々の思いがあって今があるのを実感しました。

  • 面白くて一気読みしてしまった。
    残りのページ数がもうこれしかないって思ったのは久しぶり。
    幕末、維新の対照的な生き方をした男二人の話。
    ドストエフスキーの駅員を書いた短編にちょっとテーマが似ている気がした。
    体制の変革を願いながらも、どこかで旧体制である「武士」しがみつかなければいけなかった男が悲しい。
    文章もリズムは軽快。
    軽快であるけども、薄っぺらではない。
    説明臭くはないけれど、読み手に十分に情報が伝わり臨場感がある。
    お勧めです。

  • 幕末期から明治期を舞台とする時代モノだ。「意外に知られていない?」と見受けられる事柄が扱われている。そして「時代の奔流」という中で生きた“竹馬の友”という2人が主要な登場人物ということになる。
    冒頭の「プロローグ」で、80歳代に差し掛かった男が高台に上って故郷の街を望むというような場面が在る。題名の『西郷の首』の「西郷」が在る故に「桜島が視える鹿児島」でも登場するのかと思えば、「加賀百万石」と謂われた前田家の城下町であった金沢が出て来る。
    本作は、西南戦争の際に『西郷の首』に関わることとなった、「文次郎」こと千田登文(せんだのりふみ)と、その“竹馬の友”ということになる「一郎」こと島田朝勇(しまだともいさみ)の物語である。2人は加賀の前田家中の士であった。家中では低い位置付の足軽であった。
    文次郎や一郎が中心視点人物となって展開する物語であるが、何方かと言えば一郎が中心となっている場面が多かったような感である。
    激動の幕末期、加賀の前田家中でも佐幕派と尊王派との内訌のような状態は見受けられ、他方に開国後の経済の色々な動きや天候不良による凶作という領内の混乱等の様々な事情が生じていた。そんな中を文次郎や一郎が駆け抜ける。所謂「水戸天狗党上洛」の一件や、その後の「戊辰戦争」という大きな動きの中で2人は活動し、戦いにも参加した。そういう他方に各々の人生も在る。
    激動の幕末期を共に駆け抜けた文次郎と一郎であったが、時代が明治になった中で「各々の道」を歩み始める。明治初期の様々な動きの中、高まる不満という背景の中で政治運動家的な動きに身を投じる一郎と、職業軍人として生きようとする文次郎とが各々辿る運命が綴られる。そして行き着いた先は?
    互いの良さを認め合った「真の友」という感の文次郎や一郎だが、「時代…」の故に結果的に袂を分かつこととなって行く様が描かれる作品だが、強く引き込まれる。そして、江戸幕府の時代に「最大の大名家」であった加賀の前田家中の幕末の様子に関して、正直余り知らなかったので、そういう辺りも興味深く読んだ。
    非常に興味深い物語である…

  • 親友を止められぬ思い、政府首脳の思いが民衆に伝わらない切なさがある。

  • 西郷の首を発見
    大久保卿を暗殺

    この二人は無二の親友であり、幕末に右往左往
    している間に没落していった加賀藩の物語
    島田一男の名は途中で思い出したが安重根に比
    べてマイナーかもしれない
    本書は明治御一新に乗り遅れた状況が悲しいぐ
    らい克明に描かれている

    「西郷ノ首ナキヲ以テ、登文ニ探索ヲ命ゼラル」
    「探索ヲナシタルニ、果シテ門脇ノ小溝ニ埋メ
    アルヲ発見シ、登文、首ヲ齎シテ、浄光明寺ニ到
    リ山県(有朋)参軍、曾我(祐準)少将ニ呈ス」
    本書の主役の一人千田文次郎が発見した時の様子

    でも昭和50年に鹿児島市の松平墓地で、鉄鍋に
    入っている頭骨を発見と言う処から「西郷どん」
    の首発見とか新聞ネタになったのも知った(´・ω・`)

  •  本作品の著者は、以前から注目していたものの、直近では、やや作品の仕上がりが低迷していた印象があったが、久々に完成度の高い作品であったと思う。個人的に歴史小説としては、史実に基づいた作品が好きであるが、一方では、小説化し易い史実は、既に多くの作品が存在し、新鮮魅に欠けるところがあるが、本作品はその両方を満たす出来栄えと評価する。
     一般的に大久保暗殺は、西南戦争の傍流、後日譚として描かれることが多いが、本作品はこれに焦点を当て、ここに至る経緯並びに暗殺当時の状況をきめ細かく描かれており、この題材(大久保暗殺)を暗殺者側の目線でここまで描き切れた作品をはじめて読むことができた、というのが感想である。

  • 明治維新は、華やかな一面もあるが、この大きな歴史のうねりに飲み込まれ大変な苦労をした人々がいたという事も忘れてはいけないと思った。

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著者プロフィール

1960 年生まれ。「国を蹴った男」で吉川英治文学新人賞、「巨鯨の海」で山田風太郎賞、「黒西風の海」で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近刊に「北条五代」がある。

「2021年 『覇王の神殿 日本を造った男・蘇我馬子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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