見えない星に耳を澄ませて

  • KADOKAWA
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099841

作品紹介・あらすじ

音大のピアノ科に通う曽我真尋は、たまたま参加した大学の授業で人の心を薬のように癒す音楽もあることを知り、三上先生の診療所で音楽療法士の実習を受けることにした。大人の声に耳を閉ざす少女、キラキラと飾った虚構の自分しか愛せないパーソナルスタイリスト、探し求めた愛情を見付けられず無気力に生きる中年男性……様々なクライエントと音を通じて向き合ううちに、真尋自身も自分が抱えた秘密と向き合うことになり――。
私たちはこんなにも弱くて、脆い。それでも生きることから、逃げられない。美しい旋律と共に、生き抜く強さを与えてくれる感動の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 音楽療法士にスポットを当てた作品。音大に通う真尋は、最初は、演奏家を目指すが、人の心と体を癒す、音楽療法に興味を持ちます。大学で学びながら、大学の先輩で、自宅で音楽セラピーをしている、三上先生の助手をします。セラピーに通ってくる患者さんは、皆、心の病にかかっています。親子関係や、仕事の悩み。三上先生のセラピーは、まず、患者さんと会話をし、今の心の状態を、楽器を使って、音で表現します。使う楽器は、ピアノ、バイオリン、今まで楽器に触れたことがない人でも、すぐに音が出せる打楽器など。そして、その演奏によって、三上先生は、患者さんの心の動きを丁寧に読み取っていきます。真尋は、患者さんの演奏に寄り添うように伴奏をします。それによって又、新たな心の状態が、引き出されるからです。

    しかし、読み進めていくと、本当にこのセラピーが必要なのは、真尋なのだと気づきます。祖母と母親の板挟みで、両方に気を遣い過ぎて、いつも心身共に疲れています。かわいそうなぐらい。だから、患者さんのセラピーを手伝っていても、自分がそれに引っ張られて、感極まって泣いてしまうことが多くありました。そんな真尋に、最後に、三上先生からの厳しくも温かい言葉が、胸に刺さります。

    登場人物のほとんどが、心に闇を抱えているので、終始、重く、苦しい話です。読み終わっても、心にモヤモヤ感が残りました。



  • わたしたちは“しんどさ”を通じて、繋がることができる――香月夕花『見えない星に耳を澄ませて』刊行記念インタビュー | カドブン
    https://kadobun.jp/feature/interview/5ykcw2yu2dgk.html

    見えない星に耳を澄ませて 香月 夕花:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000160/

  • 人は誰しもこころのどこかに影があるのかなと感じた作品。一人一人が持っている闇が重くて、心がそちらへつられていきます。重いものを抱えている人が多く登場するので、喫茶店のマスターの言葉や主人公の友人に少し癒されます。
    最後の数ページでさらに心に重くなりました。でも気になって一気に読んでしまった。

    音楽や楽器のことを全くわからなかったので、どんな形か想像しながら、気になったら調べて読み進めていくのが楽しかった

  • スッキリしない読後感。
    答えが見つからないまま話が終わりました。

    でも生きていくってそんな感じかも?

    きっと死ぬ間際…
    というよりは死んだ後に自分が生きてきた答えが見つかるのかな、と思いました。

    で、死人に口なし。

    生きている限りわからない答えを探し求めながら私たちは生きていく。

  • この世界に何もないと思った時に、
    現実から逃れるために死へと向かうのか
    現実から目を背けるために幻を作り出すか。
    三上先生は自分を含めた現実を捨てた母親の姿を真尋に重ねているように見えるし、
    真尋は幼いときから承認欲求を満たす存在として心の支えにしている幻の兄の姿に三上先生を重ねているように見える。
    3人への音楽療法を通して二人の傷も露呈していく。
    自分の傷を人に話せることはもしかしたら救いになるかもしれない。
    見えない星は自分を傷つけた存在でありながら、自分が求めてやまない相手でもある。
    見えないものは完璧に美しいもので、それは初めからこの世に存在しないもの、すでにこの世に存在しないものだからこそ自己完結して美化することができる。
    だけど、そんな幻から解放されて、抱きすくめられた温かさで曖昧な輪郭がハッキリしてほしいと願ってしまう。
    寂しさを抱えて切実な祈りを抱えている二人だからこそ、一緒にいることができると思いたい。
    おばあちゃんとお母さんの関係性も切ない。
    母と娘の物語としても差し迫ってくるものがあった。

  • 『病みついた誰かを魔法のように癒やすことなんて出来ない』
    『あんたは話題が少ないわね。なんて言うか、特徴がないのよ』
    『本当に向いてることも、本当にやりたいことも、大概の人にはないんだって』
    『星はいいよ…決まった時間に必ず決まった場所にいるわけだし』
    『生きている人間を支えてくれるのなら、幻にだって意味があるはずです。現実に影響を与えているんだから、むしろ本当に生きていると言ってもいい』


    音楽療法士を目指す音大生の真尋。実習先の診療所にやってくるクライエントを様々な楽器を用いて治療する。楽器を奏で幻を作り、心を闇から救い出そうとする。だが、本当に治療が必要なのは…
    登場人物はみな心に闇を抱えている。単に音楽療法で闇を解放していく物語ではない。というか、誰も完全には解放されていない。
    「私たちはこんなにも弱くて、脆い。それでも生きることから、逃げられない」
    読んでいて重たい、苦しい気持ちになるのは、主人公の真尋がずっと病んでるからだろうか。

  • 音大でピアノを専攻している主人公が音楽療法を学ぶ中でクライアントや自身の家族、そして自分自身と向き合い葛藤する物語。

    主人公は、家庭環境によって苦しみ、葛藤を抱えていてその描写がリアルだった。
    自分の力ではどうしようもないことと生きていかなければならないのは、とてもしんどいだろうなと思いながら読んでいた。

    主人公の感情の動き、変化が主軸になっているからか、音楽療法のクライアントの描写が中途半端ですっきりしない。
    ラストももう少し描いて欲しかった。
    色んな問題がそのままに終わってしまったので、それもすっきりしなかった。

    なんと評していいのか難しい一冊だった。
    ☆1.0

  • 音楽療法士を目指す学生が実習先の先生の元で、自分がカウンセリングを受けている様な状況に陥ってる苦しい様子だった

    様々な苦痛を抱えている人が音楽療法に縋ってるような、それでいて心の奥底の辛さを吐き出せない、自分で認めたくないとの葛藤があるのか…
    なんとも切ない…空気を読み過ぎたり人の感情に敏感な人間には辛い

    鈍感になりたい

  • 楽器を使ったセラピー、音楽療法をテーマにした物語。音大でピアノを専攻している真尋は音楽療法に出会い、見習いとして三上先生の元で色んな傷を抱えたクライアントと接する。
    ここで真尋は三人のクライエントに関わるが、関わったことで本当は真尋自身が深い心の闇を抱えて生きていることが露になっていく。

    真尋が母親と衝突する場面が多かったため、完全に母親が毒親っぽい感じなのだと思っていたが、最後に真尋の心の闇が露呈して、自分自身の心の闇に気付いてしまった真尋が一番脆く儚く感じた。

    途中で同じような展開が続き、退屈になった。気になる展開がなかったため、途中何度か読むのを辞めてしてしまった。
    結局何が言いたかったのかよくわからなかった。色々な問題が解決することもなく、スッキリしない終わり方だった。


    「見えない星に耳を澄ませて」
    現実が苦しいのなら、幻や空想を心の拠り所にするのもありではないだろうか

  • 音楽療法の手伝いをしている真尋ですが、自身も矛盾を抱え上手に母や祖母と向き合えずに苦しんでいるので、自分も同じようにセッションを受けてる感じ。
    薄氷を踏むような脆く繊細な内容で、痛々しく物悲しいけど綺麗です。

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著者プロフィール

1973年大阪府出身。京都大学工学部卒業。2013年「水に立つ人」で第93回オール讀物新人賞を受賞。16年受賞作を含む短編集『水に立つ人』を刊行。他の著書に『永遠の詩』『昨日壊れはじめた世界で』がある。

「2020年 『見えない星に耳を澄ませて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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