化け者心中

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 391
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041099858

作品紹介・あらすじ

江戸は文政年間。足を失い絶望の底にありながらも毒舌を吐く元役者と、彼の足がわりとなる心優しき鳥屋。この風変りなバディが、鬼の正体暴きに乗り出して――。

「あたかも江戸時代をひらひらと自在に泳ぎまわりながら書いているような文章。こんなにぴちぴちした江戸時代、人生で初めて読んだのである。脱帽!!」(森見登美彦氏)

「早くもシリーズ化希望!」(辻村深月氏)

「作品の命というべきものが吹き込まれている」(冲方丁氏)

と、選考委員全会一致の圧倒的評価。
傾奇者たちが芸の道に身をやつし命を燃やし尽くす苛烈な生きざまを圧倒的筆致であぶりだした破格のデビュー作!!

■「大傑作!!江戸という時代と場所、芝居の世界のバーチャル体験として見事」(ライター 吉田大助)
■「現代の戯作者としての力量を秘めている。とんでもない新人が登場したものだ。今年度ナンバーワンのベスト本である。」(評論家 菊池仁)
■「江戸の景色が浮かんでくるような文章のセンスは驚異的である。」(ミステリ評論家 千街晶之)
■「これで新人!?ぜひ豪華絢爛な舞台や映画で観たい!」(丸善本店・高頭佐和子)
■「取り憑いたら離れない「鬼気迫る」以上の物語。すっかり呑み込まれ、抜け殻状態。。」(ブックジャーナリスト 内田剛)
■「あまりに興奮して、体が乗っ取られたようになりました」(本の雑誌社・浜田公子)
■「アウトローな存在であり、かつ男女の性別からも逸脱している役者の生理や道徳観念を浮き彫りにしていく展開がスリリング。肚の坐った書き手だ」(書評家 杉江松恋)

感想・レビュー・書評

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  • 鬼暴きミステリの一冊。

    役者六人の中に鬼がいる!

    耳に心地良い言葉と共に鬼暴きの幕開けだ。

    時々舞うかのようなリズム感のある言葉はもちろん、心の奥にふぅわりと響く言葉を拾い味わいながら鬼へと一歩一歩近づく時間。

    次々と暴かれる役者達の凄まじい心意気、本性には圧倒されるほど。

    そしてちらりと見える、誰もが心に住まわせる鬼の姿に時折、己を見つけて心はちくり。

    人、鬼、男、女その境がゆうらりと混じり合う描き方も美と哀しみ感じる味わい深さ。

    魚之助、藤九郎、鬼、愛、心中、せつなさ舞う幕終い。

    あぁ、なんか最高の時間やったわ。

  • 江戸随一の芝居小屋<中村座>で、鬼が人を喰らいその者に成り代わるという恐ろしい事件が起こる。事件が起きたのが夜のため、一体誰が鬼に取って代わられたのか分からない。
    容疑者は現場にいた五人の役者。
    鬼探しを依頼されたのは、両足を失った元スター女形の田村魚之助(ととのすけ)と鳥屋を母と営む藤九郎。

    魚之助が高慢ちきで意地悪で、藤九郎が売った金糸雀を虐待して、最悪な第一印象。
    当然藤九郎も魚之助と行動を共にするのを何とか避けたいと思うものの、上手くは行かない。
    そうこうしているうちに受けた、鬼探しという恐ろしく奇怪な仕事だが、魚之助は芝居を見るばかりで聞き込みなどの捜査はもっぱら藤九郎任せ。
    当事者である役者連中は勿論、大部屋の者たちも鬼の存在を怖がるどころか面白がっている者が多い。
    藤九郎は更に、彼には理解出来ない役者たちの狂気と業を見せられ戸惑うばかり。

    澤村田之助を彷彿とさせる魚之助。かつて『足千両』と呼ばれたほどの美しい脚を、客の男に切られた末に足を切ることになったという。
    歩けない魚之助を背負って藤九郎は<中村座>を捜査するが、芝居の世界に全く触れてこなかった藤九郎には芝居のため芝居が上手くなるため役者番付を上げるためなら人を足蹴にしたり追い落としたり傷つけたり、あるいは殺してしまうことすら厭わない役者の業が分からない。

    終盤まで鬼探しが脇に追いやられて、鬼よりも鬼のような役者たちの姿を見せられていくうちに、読者である私には鬼探しが狂言なのかとすら思ってしまった。
    段々鬼探しよりも魚之助の葛藤や苦しみの方に興味が向いて、田之助のように義足を着けて役者に復帰するのかそれとも別の形で役者に戻るのか、更には役者の道を諦めて別の道を模索するのか、そちらが気になってしまった。

    魚之助と、彼の心の傷や葛藤を理解できるようになってきた藤九郎との距離が近くなって良いコンビになってきたのは嬉しいが、今度は藤九郎がやけに自分の価値観だけで魚之助を後押ししようとするのにハラハラする。
    魚之助は役者なのか役者ではないのか、男なのか女なのか、歩きたいのか歩きたくないのか。そもそもそんな線引をすることすらナンセンスなのだろうか。

    最終的に鬼探しに戻ってくるものの、そこがサラッと流されていたのが残念。もう少し鬼について深堀りして欲しかった。
    人にあって鬼にないものもあれば、人にも鬼にもあるものがある。そこは興味深いところではあった。

    最終的には藤九郎の考えが柔軟になっていく。これぞ多様性か。結果良いコンビだけでなく良い関係になったということだろうか。

    藤九郎の母親は存在だけで全く姿を現さないし、オランダ人の血が流れる蘭方医見習いのめるも姦しい三人娘も鬱陶しいだけで終わってしまった。
    続編ありきの作品なのだろうか。

  • 【野性時代新人賞受賞作『化け者心中』 刊行記念師弟対談】児玉竜一(早稲田大学文学部教授)×蝉谷めぐ実/芸界の情念に手をつっこんで | カドブン
    https://kadobun.jp/feature/talks/1xcog9331e80.html

    蝉谷めぐ実『化け者心中』刊行記念インタビュー「自身のどうしようもないところを、いかにして乗り越えるか――」 | カドブン
    https://kadobun.jp/feature/interview/1w71w7n0dlb4.html

    <蝉谷めぐ実インタビュー>江戸で一番妖艶な、傾奇者たちの鬼探し。話題沸騰中の新世代作家、鮮烈デビューの舞台裏 電子版34号 | インタビュー・対談 - 本の話
    https://books.bunshun.jp/articles/-/5877

    化け者心中 蝉谷 めぐ実:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000161/

  • 第11回小説野生時代新人賞受賞、デビュー作。

    書評で知り、装丁に惹かれて図書館の順番待ちに並ぶ。
    読了して改めて表紙を眺めると、美しいだけでなく、そこに描かれた物語の符牒の巧みさに感心。

    「人の中身」に比べれば、鬼のそれの方がはるかに純真なのか。腹を撫でる魚之助は、自分の中に棲む役者としての自分、女性としての自分に迷いつつも愛していたんだろうな。

    飛び交う京言葉と江戸言葉が生き生きとしていて、色鮮やか。魚之助と藤九郎のコンビにまた会いたい。

  • 歌舞伎役者の中に鬼がいる。

    最初は久々の時代物が読みづらかったが慣れたら大丈夫でした。
    探ってゆくと役者の性と狂気がみえてくる。
    鬼は誰だ。
    何が人間で何が鬼なのか分からなくなってくるが、〇〇だから鬼なんだ、というのが意外性があった。

    ととのすけは幸せになれるのだろうか。

  • 時代歌舞伎ミステリ小説。
    鬼が現れた。歌舞伎役者に刷り代わっている。誰が鬼なのか?。
    江戸の風景・町並みが浮かぶほど、魚之助・藤九郎のコンビ、登場する歌舞伎役者・最後に現れる鬼まてもが愛おしく感じられる新人賞とは思えない筆力、語彙力、想像力。
    特に<ないものがある>という鬼の特定はお見事。とにかく巧い。
    帯にある作家(森登美彦見さん)の言う通り、<脱帽>の一言。
    とんでもない新人さんが現れた。
    勿論、続編を期待しています。

  • "好き"を極めた先に何があるのか。
    個人のアイデンティティはどう生まれるのか、そのアイデンティティをどう受け入れていくのか。
    そういう「いま」に貫く問いかけを、物語を通して、強く感じた。

  • 江戸時代の歌舞伎役者を描いた小説、っていうのになんだこの読みやすさは!面白くて手が止まらないではないか!

    いや、参った参った。まずはこの表紙。美しい。美しいのに恐ろしい。その美し恐ろしが小説全てにちりばめられていてぞくぞくぞくぞく。

    演じることに取りつかれた女形と鳥屋のバディ。その関係の変化が楽しくも切なくももどかしくもあり。なおかつ歌舞伎を演じる者たちのあるいみお仕事小説の側面と「女形」という男であり女でもある者たちの性の問題もあり、そしてなにより「犯人(鬼)は誰か」という謎解きがベースにもあり。あぁ、こんなに盛沢山なのにとっちらかった感じが全くないんだからたまらん。

    美しさがすべてである女形が足を失い舞台から去る。女形という世界から離れ、自分とはという問いの中でもがく魚之助の苦悩が痛々しい。この魚さまが傲岸不遜なキャラじゃないところがいい。
    足を失っても常に毅然超然として役者たちを睥睨し糾弾する、という流れなのかと思いきや、揶揄や同情に感情を揺さぶられるところが嘘っぽくなくてよかった。
    振り回される唐変木の藤九郎も、従順でいちずなめるもいいですね、彼らに救われましたね魚さま。

    そして、「心中」。
    誰と、誰が、心中するのか、あるいはしたのか。
    「心中」にこめられた思い、そして本当の意味。

    あぁ、こんなにも美しく艶やかでそして切なく妖しい時代小説があっただろうか。
    「時代小説はちょっと苦手」とか「歌舞伎、なにそれ知らない」という若い世代に超絶おススメ。
    このバディ、癖になる(シリーズ化希望

  • 2020年第11回野性時代新人賞受賞作を改稿して野性時代2020年8月号に掲載。加筆修正し、2020年10月角川書店から刊行。作者デビュー作。おそろしくテンポの良い語り口が楽しく、ぐんぐんと惹き込まれましたが、すぐに慣れてしまいました。役者が芸にかける執念の話と殺人という短絡的な手段とのギャップに違和感を覚えました。鬼登場のくだりでの唐突さにも馴染めません。面白いところがたくさんありますが、バランスの悪さ的なところが気になりました。次作が楽しみです。

  • 小説野性時代新人賞受賞作

    本作がデビュー作とは、今後が楽しみな作家を見つけた気分。

    役者にすり替わっている鬼を探すことになった、足を無くした元女形・魚之助と鳥屋・藤九郎。

    装画の喉ぼとけのある女形が羽を折られ魚の尾を持つ着物姿が読み進めるごとに響いてくる。また表紙をめくった先で女形の指先をそっと支える手に羽がついているという装丁の作り方も上手い。

    羽を折られた金糸雀も歌う喉もあると言い切った藤九郎に出会えたことで魚之助は生きられたのかもしれない。

    本作ではあまり活躍のなかったメルや虎魚たちも読んでみたいし、ぜひシリーズ化して欲しい。

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著者プロフィール

1992年大阪府生まれ。早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻、化政期の歌舞伎をテーマに卒論を書く。広告代理店勤務を経て、現在は大学職員。2020年、野性時代8月号に一挙掲載した『化け者心中』で第11回 小説 野性時代 新人賞を受賞する。

「2020年 『化け者心中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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