堕落論 (角川文庫クラシックス)

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  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100035

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惑わされるなかれ。すばらしい、良書である。私は、坂口安吾が大好き‼

  • 立ち止まった時に読み直したい。
    いや、立ち止まりたいから読み直すのかもしれない。

    天皇制を切る、武士道を切る、貞節を切る。
    切れ味鋭いが、時に安堵を覚えるのは何故か。
    現実主義の中にロマンチストな部分を感じる。

    ただ少し読みづらい部分もあり。

    <以下引用>
    めいめいが各自の独自なそして誠実な生活をもとめることが人生の目的でなくて、他の何物が人生の目的だろうか。
    (「デカダン文学論」より)

    人間は変わりはしない。ただ人間へ戻ってきたのだ。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。
    (「堕落論」より)

    人生においては、詩を愛すよりも、現実を愛すことから始めなければならぬ。もとより現実は常に人を裏ぎるものである。しかし、現実の幸福を幸福とし、不幸を不幸とする、即物的な態度はともなく厳粛なものだ。詩的態度は不遜である、空虚である。物自体が詩であるときに、初めて詩のイノチがありうる。
    (「恋愛論」より)

  •  第二次大戦直後に若者達の強い支持を得た「堕落論」ほか数編を収めたエッセイ集。「堕落論」で展開される考え方もよかったが、むしろ他のエッセイで書かれた文章の中に興味深いものが多い。文化、文学、恋愛、内省、実存、政治、宗教など、ほとんどの分野における著者の考え方を網羅しているといえるのではないか。それぞれの場面で本業ともいえる文学論を絡めているため、一本筋の通った思想を読み取ることができる。なかには、現代においては一般的な考え方が、当時では異説として扱われていた様子をみてとることができ、そこに時の流れが感じられるような点もまたおもしろい。いずれにしても、作家など自分の思想を表現することを生業とする人達は、いつの時代も孤独を抱えて生きていくものなのだな、ということを強く感じられた。

  • この本は電子ブックとして図書館に所蔵されています。紙の本は所蔵がありません。閲覧する場合は以下のURLからアクセスしてください。
    https://web.d-library.jp/kokushikanlic/g0102/libcontentsinfo/?conid=156566

    (LibrariEを利用するにはIDとパスワードを申請する必要があります。申請方法は図書館のHPからご確認ください。
    https://www.kokushikan.ac.jp/education/library/librarie.html

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  • 緻密な文章に感動を覚えたことを覚えている。

  • 日本文化私観、堕落論、続堕落論のみを再読

    日本人としての強みは旧来の道徳観や美徳、情緒。その回帰こそが、堕ちてく社会、民主主義、資本主義の中で重要なことになりそうな予感はしていた。

    一方で、旧来の道徳観などが崩れ去り、新たな価値観が日本に導入されようとしていた全く逆のタイミングでかかれた堕落論。ではその内容も全く正反対のものなのか。決してそうでなかった。

    日本文化私観では、古くからある伝統的なものに対して、厳しい態度を取りながらも、真に必要なものであれば生き残るべしという姿勢を見ることができる。

    また堕落論、続堕落論では、旧来の道徳、思想、価値などすべてを剥ぎ取り、徹底的に落ちることで、再び自分自身をとなり、自分自身を救うことができると述べている。

    人は無限に堕ち切れるほど堅牢な精神に恵まれていない。何者かカラクリによってたよって落下を食い止めずにはいられなくなるであろう。それのカラクリをつくり、そのカラクリをくずし、そして人間は進む。堕落は制度の母胎であり、その切ない人間の実相を我々はまず最も厳しく見つめることが必要なだけだ

    という言葉で終わる。

    旧来の価値観をくずし、新しい価値観を実装し、またその価値観を崩し、ただしいものを求め続ける。これが人間であり、歴史の中で繰り返されてきたことなのかもしれない。だから私たちも堕ち続け、つくり続け、崩し続ける。

  • 久々に再読。
    「堕落論」の切れ味はさすが。
    当時、on time で読んでいたらすごい衝撃と思う。

  • 坂口安吾の社会評論と作家評論を集めたもの。
    日本文化私観や続堕落論における日本人論・人間論はややシニカルだが、キレがある。20世紀後半に人間科学が人間の思考の癖や非合理を解明する以前は、「人間がどういったものか」という問いに最も精緻な回答を持っていたのは、安吾のような一部の文学者だったのだろうと思わせる。

  • 読みやすいんだけど、こちらの頭が悪いせいで、よく分かんないとこが多かった(>_<)。
    まあ、「常識にとらわれるな」ということを繰り返し語っているのは理解できた( ´ ▽ ` )ノ。
    同時代の太宰や芥川はともかく、大文豪・漱石までズタズタにブッタ切っててびっくりした(゚д゚)!。

    こういう本は細部の書き込みの方が後々記憶に残るものなんだよね。
    スピーチを笑ったら西洋人の先生に殺意のこもった目で睨みつけられたこととか、あらゆる男と寝る願望を性病を病んだ後も捨てられない女とか、下半身が「穴だらけ」になった少女の話とか……きっと、何年も先まで覚えてることだろうな。
    洋服とか便利な西洋文明は、導入が遅かっただけで、何時の時代に輸入されてもすぐに日本文化に溶けこんだろう(かといって、それで日本人が日本人でなくなるわけではない)、という指摘にはなるほどと思った( ´ ▽ ` )ノ。

    前半はまるでセンター試験の問題文みたい(たぶん、実際に何度もここから出題されたんだろうな)だったのに、後半はどんどん感情むき出しになっていって仰天(゚д゚)!。これが無頼派か。
    「不良少年とキリスト」は太宰に対する乱暴だが心のこもった哀悼文。自殺なんかするな、ってことだね……野性的な友情に胸が痛くなった……(´;ω;`)。

    2016/03/08

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著者プロフィール

1906年生まれ、1955年没。太平洋戦前から戦後に活躍した小説家。代表作に『堕落論』『白痴』『桜の森の満開の下』等。

「2024年 『青鬼の褌を洗う女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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