不連続殺人事件 (角川文庫)

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レビュー : 135
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100196

感想・レビュー・書評

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  • 日本推理作家協会賞の前身となる探偵作家クラブ賞を受賞した物語である。
    高木彬光の「刺青殺人事件」と争った末の受賞だったようだ。

    最近の小説を読みなれている者としては、とにかく文体が古く読みにくい。
    ひとつのセンテンスはこれでもかと言うように長いし、言い回しも昔ふうでわかりづらい。
    序盤ではそんなこんなで数日に分けて読み進んでいたのだが、いつの間にかすっかり物語の中に引き込まれていた。
    登場人物がとても多く、次々と起きる殺人事件によって被害者もまた増えていく。
    にもかかわらず、個性的な人物のひとりひとりを丁寧に描写することによって、彼らの特徴がすんなりとわかりやすく伝わってくる。
    待ち受けていた結末は驚きのものだった。
    いかにもな人物たちが混在する中での事件。
    歌川邸に集まる面々だからこそ成立した物語は、完成度の高い上質なミステリーだった。
    難を言えば探偵役がことのほか魅力に欠けている。
    もっともこの物語に限っていえば探偵役はあくまで脇役であって、読者が真相を知るための繋ぎ役でしかないのだろう。
    悲劇的な結末は、すべてが明らかになってみればこれしか事件の落としどころはなかったのだろうと納得ができるものだった。

  • これも何度読んだかわからないくらいの再読。

    トリックは今でも通用するくらい秀逸なのだけど、いかんせん文体がキツい。ワタシは高校時代に教科書に載っていた「ラムネ氏のこと」に衝撃を受け、その後しばらく安吾を読み漁ったりしたくらいには好きなんだけど、それでも「不連続殺人事件」の文体はちょっとキツいなぁ、と思う。昭和二十二年の発表だし、きっとまだヒロポンが抜けきっていなかった頃の作品なのね、と邪推したりなんかして。

    横溝正史も筆が滑った時に似たような文体になるので、この年代の方がちょっとフザケた文を書こうとするとこうなるのかと思うけど、それにしても「不連続殺人事件」でのフザケ具合はちょっと過剰だよねぇ・・・。

    登場人物はどいつもこいつもクセがあるし、文体にもクセがあるうえ「てにをは」が微妙だけど、一読の価値はあるミステリです。

  • 登場人物が20人近くもいて覚え切れなかった。
    人物表を自分で久しぶりに作ってみた。それでもあまり記憶に残らない人が何人か…。
    しかもそれぞれの関係がまた複雑で元妾やら元恋人やら。男女関係が入り乱れていたり、
    自分の芸術論を語ったり、言動も行動も本当に異常な人たちであった。
    それであったからこそ、真犯人の異常が目立たなかったのかも。
    長かったけど、テンポよく読みやすい作品だった。

  • 金満家の友人に招かれて、戦時中に疎開していた田舎の別荘で再び一夏を過ごすことになった主人公たち。
    謎の手紙や招かれざる客、そして殺人は起きた。

    どろどろの男女関係とばんばん増える被害者たちのインパクトもさることながら、意表をつくトリックに驚かされました。まんまと騙された…
    初めは登場人物が多くて覚えきれるか心配になりますが、各所親切に解説が入りますので思ったより混乱せず読めました。
    あとすごい勢いで殺されてくので、容疑者結構減るし…
    警察関係者が皆有能なのは好感が持てます。
    それと、犯人の最後の告白は美学があっていいですね。不良好きの安吾らしいです。

  • 坂口安吾といえば『堕落論』しか読んだことがなく、そのイメージしかなかったのですが、ミステリーも書いている、というのを知ってすぐに購入。

    とある別荘にひと夏を過ごすこととなった男女の一団。1人また1人と殺されていくが、同一犯による連続殺人なのか、それとも、数名もしくは数組の犯人がいる不連続殺人なのか、謎が深まっていく。。


    一言でいうと、とても面白かったです!

    色々面白かった点があるのですが、まずは登場人物たちの魅力溢れるキャラクターでしょうか。文士や絵描きなど、芸術家が多く一癖も二癖もある人たちばかり。それぞれの際立ったキャラが丁寧に書かれており、また、文士同士の抜き差しならない妬み・僻み、嫉妬といったことが、よく描かれていました。当時の文学界の人間関係の様子を垣間見ることができたように思います。

    あとは警察側のキャラクターもあだ名の付け方が秀逸で、ベタといえばベタなんですが、やはり物語に立体感を出すには、登場人物たちを、その存在を具体的にイメージ出来るように描くことが大切なのだなと。

    もう1つは、いかに犯罪を成し得ることができたか、、というネタ、トリックの部分ですが、そのミソが人間の心情や心理を探求し、その盲点をうまく突いたところにあったということです。なので、逆に金田一とかコナンとかでよくでてくる難解な密室トリックとかはでてこないので、素人でも十分可能な、すごくリアリティのある仕上がりになっています。

    人間心理を逆手にとったトリックやネタばらしにしたのは、坂口安吾のこだわりなのでしょう。

    1こだけ、物足りなかったと感じたのは動機について。作中でも、動機がわかれば犯人はわかる、といように伏線とおもわれる箇所が何個かあったのですが、ミステリー通的にいうと、回収しきれていないのでは?と思ってしまいました。これはあえてこうしているのですかね。



  • ミステリーとはこういうものだ、と満足感。時代背景は古いのにちっとも古くない。安吾は人を書き上げている。人の欲を書き上げている。憎しみも苦しみも寂しさも面白さも人の感情は欲から出ているものなのかもしれないとおもわせる。殺人というのはそれがいちばん明らかにあらわれるものなのかもしれないなぁ。時代は変われど人のなかみはなにも変わらない。坂口安吾さすが、である。

  • いやー、読みづらかった。自分はこの、坂口安吾氏の文体は苦手。しかも登場人物が多いので誰が誰やら分からなくなり…
    何とか我慢して読み通した感じですが、作者の仕掛けたトリックには関心。なるほど…してやられました。
    ただ、やはり文体に馴染めないので好きな作品ではありません(苦笑

  • 意外だ。文学作家のミステリなのに、文学してない。ちゃんと謎解きのためだけに書いてる。はじめは些か好みじゃないなぁ、と思っていたけど、そういった部分も含めて後半活きてくるのが絶妙。ただ登場人物の多さだけは、うーんって感じ。

  • とても有名な古典的推理小説。
    現代の文章とは文体も違い、漱石や鴎外の時代の作品の
    ような印象。
    ところどころにちりばめたカタカナ表現や現代では
    差別用語とされるような言葉があるのも時代性を感じる。

    無駄に人数が多くて入り組んだ人間関係の登場人物に
    あっけにとられながら読み始め。
    しかも、みんな、揃いも揃って、ある意味奇人変人(笑)
    あれで、もっと陰の雰囲気だと横溝正史の世界。

    メイントリックは、当時は斬新だったのだろうなと思う。
    今読むと、どこかで見たような、読んだような印象は
    ぬぐえないのだけれども。
    当時でも、クリスティの某作品との共通性は話題に
    なってたらしいけど、私の印象は、同じクリスティ
    でも、もっと違う作品かなぁ。

  • おもろいわ。
    しかし本筋から逸れますが、とても今では使えない言葉が生き生きと溢れかえっており、遥かにクリーンな現代の文章の水面下にはこんなあられもない姿の心が波打ちのたくりまわっているのだなと思うとゾクゾクしますね。

著者プロフィール

新潟市生まれ。1919(大正8)年県立新潟中学校に入学。1922年、東京の私立豊山中学校に編入。1926年東洋大学大学部印度哲学倫理学科に入学。アテネ・フランセに通い、ヴォルテールなどを愛読。1930(昭和5)年同校卒業後、同人誌「言葉」を創刊。1931年に「青い馬」に発表した短編「風博士」が牧野信一に激賞され、新進作家として認められる。歴史小説や推理小説も執筆し、文芸や時代風俗から古代歴史まで広範に材を採る随筆など、多彩な活動をした。

「2018年 『狂人遺書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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