ワン・モア

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 356
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100578

感想・レビュー・書評

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  • 北海道のとある病院を主な舞台とした中年恋愛小説。ドロドロから始まったわりには結末は何もかもがうまくいって、きれいにまとめすぎちゃった感ありありは少し興醒め。

  • 高校の同級生だった女医2人と放射線技師の男。彼らやその周辺の人々が語る日々の暮らしと本当に欲しいもの。コツンと胸に投げ込まれる小石を感じながらも、優しい連作短編集でした。



    のっけに語られる、離島の女医・神埼美和の過去。死を待つばかりの病人の孫から頼まれた安楽死問題で大きな病院を追われた彼女の、きつい眼差しやそっけない物言いが、ちょっと私には合わないかなぁ・・と思ったのだけど、そんな彼女にかつてのクラスメートの女医・鈴音から連絡が。癌の末期いであるらしい鈴音の病院の後をまかせたい、と言われた美和は島を離れることになるのだった…。

    誤解されたままで釈明もしない女医、とか、治る見こみのない病気、とか、私には不得意な分野なのだけど、不思議に優しい気持ちで読めたのは、彼女たちを取り巻く人々のそれぞれ思うことが穏やかながらきっちりと語られていたからだろうか。

    私が好きだったのは、鈴音の病院のベテラン看護師・寿美子の物語、「ラッキーカラー」。しっかり者を自認し、両親に家事をまかせ、それなりに充実した日々を送る彼女の淡い恋の相手は、かつての患者・赤沢。不器用なだけではなく、今の穏やかな日々を投げ捨てることに躊躇してしまう彼女の気持ちが、徐々にわかってきて頷けた。

    みんな、心の奥底に抱えているものがあり、それがふっとした拍子にそうだったのか、と自分でも驚くような出方をする。まして読者は、そっか、そうだったのね、とふわっと驚くわけで、その兼ね合いが上手いなぁ、と思いました。

    表題作の「ワン・モア」は春の遅い北海道、5月の「お花見誕生会」。そこに集うこれまでの登場人物たち&ワンちゃんたち(*^_^*)の醸し出す幸せ感がとても嬉しい。
    うん、やっぱり、幸せになろうよ! 幸せが目の前を通り過ぎるのをただ眺めてないで、ちゃんと手を伸ばして幸せをつかもうよ、と当たり前のこともなんか素直に思えたし。

  • 登場人物の一人一人にスポットをあてた、連作短編小説。
    余命を宣告された女医さん。彼女が飼っていた犬が、5匹の子犬を産み、北海道の田舎町で一生けんめいに生きる人がつながっていく。

    本の表現を借りれば、プラチナのように固くて張りつめた文章の中に、温かみがある。著者が北海道在住と知って、なんか納得した。

  • 初めて読んだ作家だったけど、登場人物の心の動きにシンパシーを感じて、ひさびさに他の作品も読んでみたいと言う気持ちになった。やっぱりストーリーの面白さよりも、人間の心を描いてる本の方が読後に静かな余韻が残る。

  • 「ラブレス」がとてもよかったので読んでみた。温かみのあるお話。なのに、胸がキリキリしたり苦しかったりするのは、この作家さんの作風なのかな。
    連作短編集というのかな?だけど、読後、最初に主人公だと思った美和ではなく鈴音が主軸だったんだなと感じて、それがまたなんだかよかった。
    桜木紫乃さん、過去の作品は今ひとつ惹かれないんだけれど、これからの作品がとても楽しみな作家さんです。

  • 北海道の離島に暮らす若くて美しい訳ありの女医がいきなり出てきてゾクゾクして読みました。美しくまとまった連作短編集で最後はとても良かったです。読後爽やかな気分になれます。

  • ブックデザインは鈴木久美さん

  • 読み終わった後に、微笑む事ができる素敵な連作小説だった。

  • 女性医療者の抱える葛藤を感情豊かに表現されていた。終盤に向けて優しい気持ちがひとつに結ばれていくようなまとめ方が秀逸だった。

  • ひっさしぶりに雨が降ったので今日は読書。しっとりとした感じがいいなと思いこの本を手に取る。
    余命宣告を受けた女医さんと元夫や友人たちが生きることを静かに想いながら生活していくみたいな感じのお話。しっとりと静かではあった。ただ、ちょっと品が良すぎて物足りなかったかな。エンターテーメントに欠けるというか。

    まあ京都の古刹に行っといて、エレクトリカルパレード的なものが欲しかったなと言っているようなもんか。

    まじめで、いい人にお薦め!

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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