幾千の夜、昨日の月

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100660

作品紹介・あらすじ

初めて足を踏み入れた異国の日暮れ、夢中で友と語り明かした夏の林間学校、終電後ひと目逢いたくて飛ばすタクシー、消灯後の母の病室…夜という時間は、私たちに気づかせる。自分が何も持っていなくて、ひとりぼっちであることを-。記憶のなかにぽつんと灯る忘れがたいひとときを描いた名エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 夜についてのエッセイ。
    初めて徹夜をした林間学校の夜、生まれたばかりのような月を見た砂漠の夜、酔っ払って友達に電話をかける夜‥など、その夜を過ごした年齢も場所もまちまちなのに角田さんの記憶の中の夜はみんな静かで少しそっけない。
    そんな変わらない夜の空気を優しいと思うか、怖いと思うかはその時の自分の状況で決まるんだろうな。

    例えば私の場合も、怖い本を夜に読むともう全然ダメで一刻も早く眠りにつかなければと焦ったり(でも部屋を暗くして目をつぶるのがもう怖い)、逆に夜の静けさの中を散歩をするのが無性に楽しくドキドキしたり、音楽を聴きながらめそめそしたり‥、昼間よりもずっと自分の感情が濃くなっている(変な表現だけれど)ような気がする。
    夜にはそういうところがあるのかもしれない。

    エッセイの中には異国の夜について書かれたものが多くて、それがまた新鮮で面白い。
    外国に行ったことがない人間からすると、角田さんの行動力と度胸はまるで勇者のようだ。

    • takanatsuさん
      まろんさん、ありがとうございます。
      「自分の見たくない部分もどんどん見えてくるようで」
      あぁ‥、分かります!
      ダメージを受けた作品、私...
      まろんさん、ありがとうございます。
      「自分の見たくない部分もどんどん見えてくるようで」
      あぁ‥、分かります!
      ダメージを受けた作品、私もありました。
      角田さん作品を読み始めて日が浅くて詳しくはないですが、幸せな気持ちになれる作品もありましたし、食に関するエッセイとかも面白いです。
      角田さんは多作な方ですし、まろんさんの好きになれる作品も絶対あると思います。
      (…て、プッシュし過ぎでしょうか。)
      レビュ、楽しみにしてます!
      2012/06/08
    • まろんさん
      いえいえ、takanatsuさんの感性、とても信頼しているので
      まずはエッセイから探してみます!
      くいしんぼうなので、食べ物関係からになるか...
      いえいえ、takanatsuさんの感性、とても信頼しているので
      まずはエッセイから探してみます!
      くいしんぼうなので、食べ物関係からになるかも♪
      2012/06/09
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      takanatsuさん
      「まさに憧れのシチュエーションです」
      今思うとホント贅沢。。。これからは意識して読む時間を確保しなきゃ、積読が増える...
      takanatsuさん
      「まさに憧れのシチュエーションです」
      今思うとホント贅沢。。。これからは意識して読む時間を確保しなきゃ、積読が増える一方です。

      横入りします。
      > まろんさん
      「女性の内面をあまりにも的確に切り取って」
      へぇ~
      私が読んで、それに気付くかなぁ?
      2012/06/11
  • 旅先での夜にまつわるエッセイ。ほとんどが二十代のころのお金のかからない海外旅行に関連するエピソードだった。

    印象に強く残ったのは『出会うのは夜』という話。
    高校三年生、十七歳の夏。林間学校で隣のベッドになったNさんとはほとんど口を聞いたこともなかった。まじそうな見た目、服装、髪型。Nさんは苦手なタイプだと思っていた。
    消灯後、始まったお喋り。イギリスのロックミュージシャンに憧れて、イギリスの庭に惹かれ、ゆくゆくは造園業に就きたいと話すNさん。
    Nさんを表する言葉は「まじめ」ではなかった。初めて徹夜した十七歳の夏。何かに出会うのは圧倒的に夜だ、というエピソード。

    冒険や恋愛の話ではないけど、”十七歳の夏”という感じがして痺れてしまった。
    まじめそうな人だって頭のなかまで「まじめ」とは限らない。他人のことを知ること。自分をしてもらうこと。夜通し話して分かり合うこと。
    後になってからわかったのはあの時間が青春だったということ。

    『17才』アイドルネッサンス
    ( https://www.youtube.com/watch?v=LMBo8dIXxQc )

  • 特に角田作品のファンではないんですが、数年前に雑誌連載を楽しみに読み続けていて、単行本化が待ち遠しかった本。

    角田さんの他のエッセイでも、夜に関するものが多いように感じていたんですが…角田さんの夜の彷徨をまとめたエッセイ。ご自身を「大変なビビり性」「国境というものに慣れていない」とおっしゃりながらも、ひとりバックパッカー旅とは、結構大胆な行動をなさってるような(笑)。

    一人バックパッカー旅の夜に驚くようなことや、残念なことに遭ったときのリアクションには、「角田さん、そんなあ」と笑いながら読めます。そこは椎名誠さんの旅エッセイと同じネタだとは思うんだけど、角田さんの旅は、「どうなっておるのか!」という怒りに転ずることもなく、そのびっくりも戸惑いも、一枚紗がかかったような感じで、理性的で克明にとらえられている。しかもどこか寂しく甘美。物理的にひとりでお過ごしになるのがお好きなのかもしれないけれど、自分と他人をきっぱり分けている孤独感がどのエッセイにもさしはさまれているからかな、と思います。旅先での『男を守る』は、なんだか大当たり感がありながらも、まさしく一夜の夢だし、『夜と恋』の、夜中にタクシーに飛び乗って走り出す感覚は、「今じゃなくても、明日があるでしょう」というまっとうな意見なんか吹っ飛んでしまうほど、切羽詰まって美しい。でもこれも、相手に近づけなかった、しかも過ぎ去って戻ってこない瞬間の寂しさが勝っているように思います。外れてるかもしれないけど、ポルトガル語の「サウダージ」ってこんな語感かな?と思ったり。

    昔から真性のビビりで人見知りもひどくておまけに夜が弱く、試験前に徹夜しては身体を壊し、飲みに飲んで午前様になることもほとんどなく、眠くなってきたらたちどころに機嫌の悪くなる私としては、夜でなければ知ることができない重さや静けさ、高揚感をほとんど知らずに今まできてしまったのではないか?と、ページをぱらぱらめくりながら思いました。残念な人生だ、私(涙)。

    穏やかな大人の語り口のわりに、装丁がちょっと乙女チックかなとも思いますが、すごく雰囲気がよくて行きとどいたブックデザインなので、本屋さんで勇気を出して、カバーをえいやっとめくってみられるのもおすすめかと。

  • 夜が好きだ。
    暗闇に包まれると昼には見えなかったものが見えるから。
    静かで安らかな夜も、寂しくて不安な夜も大好きだ。

  • 夜に関するエッセー集。
    旅の夜に関する話が面白い。
    予約も下調べすらせずに、こりずにしまったを繰り返す旅をしてきた著者のパワーに感動。
    予測不能なところが一人旅の良さ、それも夜になる時分のなんとも猥雑な感じとドキドキ感を増すなところが懐かしくなりました。
    読めば旅先で夜が楽しみになると思います。

  • 「夜」だからこその寂寥感、心細さ、物哀しさ…これまで過ごしてきた様々な夜の中にある印象的な記憶。かつての自分が経験した夜にまつわる思い出が、角田さんの描くエピソードに重なるものもあり、ぼやけていた懐かしい過去が甦った。
    修学旅行や合宿での、飲み会での、夜を徹した友との語らい。引越し前日の、そして引越し当日の、寂しさと新鮮さがごちゃまぜになった感情を持て余しつつ眠りにつく夜。旅先で夜景を眺め、高揚感に満たされる夜。あるいはすることもなく、途方に暮れながら夜空を仰ぎ、思いにふける夜。不安に苛まれ、自分の輪郭をくっきりと意識する、眠れない夜。ああ、こうやっていくつもの夜を重ねてきたのだなとしみじみと思う。特に若かりし頃過ごしてきた夜に思いを馳せると、恥ずかしいような懐かしいような…甘酸っぱすぎて何だか泣きたくなる。どういうわけだろう、夜になると素直に語れたりする。時にハメを外し過ぎてあれこれイタかったこともあったけども、泣いたり笑ったり、自分にとっては大切な時間だった…克明に思い起こさせてくれるのは角田さんの作品を読んだ時だけだ。
    これまでたくさん読んできた角田さんの旅エピソードも、夜をテーマにするとまた印象が変わるものだと改めて思った。それも、笑わせられたり時にしんみりしたり。緩急の付け方がお見事と思いながらも、全体的にしんとした空気感が心地よい、静かでしっとりした、「群青色」のエッセイだ。

  • 角田さんはいろいろな場所を旅している。
    知らない場所を旅したいという思いは私にも脈々と流れているので、旅と夜が書かれたこのエッセイ集を楽しく読みました。
    違う世界をみるわくわく感、一人である自分に気づく時、旅先であせったり、驚いたり、感動したり、角田さんが豊かに柔らかく感じた様々なことを読んでいると、自分の心がほぐされていくようでした。

    夜にまつわるエッセイでもあり、角田さんの記憶の夜たちが自分の前に広がってくるようでとても良かったです。
    「月の砂漠」の夜はドラマチックですね。
    「祈る男」で祈りへ思いをめぐらす部分も好きでした。
    「夜と恋」は切ないなぁ…。かつて二十代の自分が真夜中に切ない気持ちで歩いていたことを思い出しキュンとしました。
    夜を見つめている時間、見つめていた若い頃、なんて贅沢な時間なのでしょう。

    心に残ったのは、はじめて徹夜をした十七歳の夜が書かれた「出会うのは夜」
    今まで話したこともなかった同級生と話し込み、気づいたら朝だったという。
    その友人の内面との出会いに、なんだか小説のような世界が広がって素敵です。
    気楽に楽しめたのは「時間と旅する」。
    長距離フライトの機内の様子を書き(特に機内食)何度も不思議だという角田さんが楽しい(^ ^)。ふっと笑いを誘って上手です。

  • わかる、わかると同感することばかり。

  • 夜の香り、旅先で知る自分の国では味わえない音や風景。そういうものが肌で感じられるように読むことができる本。20代の頃にいろいろなことが起こった夜の文章が、懐かしく切なく感じられてとても印象深い。

  • 旅にしろ引っ越しにしろ,作者の拘っているのは宇宙の中の孤独といっていいような存在の頼りなさ,不安感ではないだろうか.それが旅先でより強くせまってくるということではないのかなと感じた.たくさんの旅のエッセーでもより心に残るのは夜に関するものだった.

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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