日本の文脈

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041100783

作品紹介・あらすじ

『日本辺境論』の内田樹と、『日本の大転換』の中沢新一。野生の思想家がタッグを組み、いま、この国に必要なことを語り合った渾身の対談集。

感想・レビュー・書評

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  • 内田樹と中沢新一の対談の形で、いわゆる「日本的なもの」が物語のような文脈で語られていく。

    歴史的な記述というより、能や風水、贈与など日常的な文化を通して、2人からみる「日本の文脈」を明かしていく本。

  • 元は『日本の本流』というタイトルで出版予定だったそうですが、東日本大震災が起こり、文脈が変わってしまったのでタイトルどうしよう、、と迷い、文脈が変わったのだから『日本の文脈』でどうか、ということになった、と冒頭にありました。発刊から9年経ってコロナ禍が起こりまたしても文脈が変わりいろいろ見直し考え直すタイミングで読んで良かったです。カタカナの専門用語や人物名に翻弄されながらも、全編通して対談の書き起こしというつくりだったので例示などもざっくばらんで、読みやすかったです。もともと中沢新一さんのやっている学問を理解したい欲求があり『チベットのモーツァルト』もカイエ・ソバージュのシリーズも読んでいますが、興味が満たされる満足感よりも理解したいけど理解しきれないもどかしさの方が大きかったのですが、この本は楽しんで読めました(とはいえ全部を理解したとはやはり言えないのですが)。読みやすかった分、雑な言い様の部分もありつつ(男のおばさんとか)、特に印象に残ったのは、贈与と資本主義の関係についてで、対等でない二者の間でのやりとりは資本主義経済の関係性だけでは無理である、という論。教育者と学ぶ者、医療者と病人(けが人)、介護者と要介護者、などはもともとの関係性が対等ではなく一方からもう片方への贈与ありきでないと健全な継続はおぼつかない、だからいろいろオカシクなってしまっている、というのは腑に落ちやすかったです。一神教的な思考と、土着の思考など、価値観とはまた違う、考え方の軸というか技術というか筋肉の使い方のようなところを紐解いてくれて、非常に興味深かったです。また折りを見て、ときどきこういう刺激も入れていきたいと思いました。面白かったです。

  • タイトル通りそういう本なんだけど、日本人は〜という大きな主語をそのまま受け入れられず常に若干の違和感がつきまとう感じだった。

    ・自分たちは「おばさん」だと嬉々として語っているけれど、私からするとそれも皆おじさん同士の会話という印象しかなく…。無謀にも世界をみているかローカル目線かという区分けのようだけど(単に私が言葉に持つイメージのせいかもしれないとはいえ)〇〇は△△だとどんどん断定していく語り口とかがどうにもおじさんのそれなんだよな〜。もちろんやたら断定するおばさんも多々おりますが。

    ・「労働と報酬が正確に数値的に相関したら、人間は働きませんよ。何の驚きも喜びもないですもん」と内田氏は言ってて、確かにオーバーアチーブとやらは大切だと思うけど、今はあまりにも仕事内容に対して低待遇な人たちが多すぎる時代だと思うので、まずそこを改善させない限り識者のキレイゴトに聴こえてしまうなぁ。
    労働者が求めているのは「予見できない報酬」ではなく報酬です。きちんと報酬が払われるようになってからの話だと思う…。

    ・欧米では哲学者が使う哲学の用語の多くは実は生活用語を流用しだの。
    哲学がわかるかわからないかの差は哲学用語の意味を知っているかどうかではなく、ふだん使っている言葉の意味をどこまで深く理解しているか。
    「言い換え」が重要な知的作業になるのは日本だけではないか?

    ・金春禅竹「明宿集」
    世阿弥の娘婿にあたる人

    ・結婚とは、戦争の弱化した形態である。
    読んで納得。日本神話ん見るともっぱら結婚している。天孫降臨したニニギノミコトが鹿児島のアタ隼人のところへ行って、コノハナサクヤ姫と結婚する。

  • 日本的なものの見方・考え方と、西洋的・キリスト教的ものの見方・考え方を対話を通して考えさせてくれる良書。内田樹さんの「日本辺境論」と中沢新一さんの「日本の大転換」は別途読まないといけないね。

  • 対談の面白さは この本のように 知識と知識が ぶつかり合って 潰し合うことではなく、対談によって 知識が積み上がっていくことだと思った

    2人の思想のエッセンスが たくさん 盛り込まれており、読みやすいけど 咀嚼に時間がかかった

  • ・教える人は教壇に立って、生徒はノートをとる。時代が変わってもあまり変わらない。ということは理解できる以上の仕掛けが組み込まれている可能性。学校・医療・親族・司法・宗教など。よくわからない決まりごとについては軽々に理非を判断すべきでない。
    ・交換の本質は、おたがいに、相手いにはその価値や有効性が分からないものを送る、そのような贈り物だが交換を継続し加速する。ここに交換の欲望が発生する。
    ・日本人はエッセイが得意。堅固な構築物を作るように哲学として思想を表現するよりも能楽・茶道・華道などの芸道として表現した。
    ・スーパーフラット:日本人は平面化して薄くするのが得意
    ・本に書いてあるものを読んで、分かった気になるのは非常に危険
    ・伝統芸能は、伝聞ゆえに、中空性を維持している
    ・日本人に国家は向いていない。地域共同体ぐらいがちょうどいい
    ・ユダヤ人になくて日本人にあるもの:農業と里山文化
    ・自分のローカリティ−を徹底するのが日本人にはよい。世界を目指すのではなく、ローカルを突き通す。
    ・メンバー全員が平等である、という前段階として、メンバーであるかぎりは同一のルールに従わなければならない、という制約がある。
    ・社会が上り坂の時は民主主義がうまく働くが、マイナスに働く時期もある。
    ・民主主義をうまく機能させるにはつねに贈与する人やシステムが必要
    ・医療・教育・宗教は根本に贈与があるのでビジネスが入るとダメ。
    ・Time is time.
    ・米国の介護施設は万人受けするように合理化して作ったが失敗。
    ・自然にいいことだけしよう、という発想が無理。エコの考え方の限界。
    ・非生体圏の核技術と生体圏のタービンと媒介する部分の技術が脆弱
    ・自然は征服するものでも守るべきものでもない。恵みをもたらしてくれるもの
    ・廃県置藩
    ・地域通貨:通貨の中に人間関係が入っている。言語や食べ物を共有する小さい範囲の中で人間関係を大事に作っていくところに戻るべき

  • 本来、生態系に依存しない原子力は「神の火」であり、原子技術はいわば「荒ぶる神」をどう祀るかという問題で「神霊的」な捉え方。だから欧米での原発は神殿を模して作られており「一神教」の宗教意識が成り立っている。一方で日本はどうか?「神の火」でなく「アメリカの火」であり、「荒ぶる神」でなく「カネになる木」とねじくれた捉え方をした。原子力がカネ儲けの道具ならばコントロール可能であると勘違いし、恐怖心が抑制された。原発の設備をあれだけ粗雑に作ったのは原子力に対する恐怖心をごまかそうとしたからである。

  • おばさん的なおじさん(本文より)二人の対談。
    僕もこれからおじさん化していきますが、おばさんみたいな(女性ジェンダー化した)おじさんを目指そうかと思いました。
    「俺は男だ!」って意気がると、日本ではろくなことがないいたいです(笑)。

    確かにそうかも知れません。
    アカデミズムの世界なんて肌に合わないし、やっぱり田舎にかえって農業でもやりたいな~と思いました。

  • 文庫になってから読めばよいかとも思ったけれど、3.11以降の生の話もあるので、早めに読んだ方がいいかと思って、買って読んだ。2人の書いたものはいくつも読んできているので、どこかで聞いたことのあるような話が再確認できた。医療・教育をビジネスとしてはいけないということ。贈与する・されるものであって、お金で医療・教育サービスを買うという発想はいけない。もともと医者と患者、先生と生徒は対等ではない。こういうところにはビジネスは成り立たない。最近、奥歯が痛くて何回も歯医者に通っているが、いっこうに治らない。治療代を返してほしいと思うほど。そこで、すぐに気付いた。自分がしているのも(その歯医者と)同じこと。これだけお金をつぎ込んだのに不合格になった。金返せ!と言われても仕方ない。そうはならないところにあぐらをかいてビジネスをしてしまっている。そんなふうに思ったことはないけれど、そうとられても仕方ないのかもしれない。ここはもう少し考える必要がある。しかし、著者はいずれも長年私立大に勤務してこられた。その点はどうなんだろう。本書を読んで何よりおもしろかったのは、2人が同じ時期に東大で学生だった、けれど、そのときには出会っておらず、中沢新一が若手でデビューしたとき、同年代の内田樹は応援したり、羨望したり、やきもきしたりしていたということ。そして、中年になってからであって意気投合しているのだそうです。読みかけになっているレヴィ=ストロース「悲しき熱帯」は読まないといけないと思った。

  • 内田樹と中沢新一の対談本。
    同じ東大の同期生ということで意気投合しているようだ。

    内田は対談だと話にまとまりがないが、それを「男のおばさん」だからと自称しているのがおもしろい。あいかわらず反フェミニズムの話を持ち出してくるが。



    他の類書で似たような考えが出てくるが、対談したたまものなのだろうな。

  • 脳みそで考えるんじゃない、身体が感じることが真実。
    そこに向けて、ただひたすらに感覚を磨いていく。
    それが道を指示してくれる。

    人間が禁忌に感じることは、本当は本能でもとめることなのかな。

    ありもので間に合わせる技術と、最悪を過程した手順を考える。

  • 内田先生、あいかわらずの安定感。
    でも「ハッ」とするような(僕にとって)素敵なフレーズが以前ほどなくなってきたのは、僕が成熟したせいなのか、はたまた、、、。

    いずれにせよ、本書に限らず、内田さんの本は合理主義一辺倒の若い人に読んでもらいたいな。
    良かれ悪しかれ何らかの影響を受けると思うし、そのこと自体は慶賀すべき体験だと思うから。

  • これも震災前後の対談集

    特に原発問題の意見は必読

  •  今回のは、かなり難しかったです。笑えるところはありませんでした。シリアスな内容です。これはっ、と思うところには印をつけたので、今後読み返していき、理解を深めたいです。

  • これを読むと農業をやりたくなります。

  • 文脈ということばにこだわりがあり、タイトルに惹かれて手に取りました。
    同じことをしていても、文脈が違えば意味することが変わります。
    何もかも外国の真似から入るというのではなくて、
    日本が背負っている歴史や社会の背景をもっと整理してものごとを考える時期に来ているのかもしれないです。
    それが日本の文脈ということでしょうか。

  • 中沢新一と内田樹の対談集。

    要所要所に「お!」と思うポイントがあるのだけど、私はそれで終わってしまう。「おばさん」よろしく、飲み会でダラダラ話しているあの感じと似てる。

    物足りないような気もするけど、「お!」って思うポイントで思い切り論破されてもキナ臭くなりそうな気もするし、結局そんなポイントを自分で勝手に解釈しながら日々の微調整に役立てている、といった感じでしょうか。

    全体的にすぐに何の役に立つ訳でもないけど、考え方とか、何を大切なものとするかとか、そういうのはめちゃんこ面白い。それは人生に生きているのかと言われれば微妙なんだが。あくまでスパイスかしら。

  • グローバリゼーションによる経済効率優先、競争原理から一歩距離をおき、日本が持つ利点をベースに現代社会を再構築、俯瞰。宗教論、農業の重要性、身体性への復権、311以降における原発問題への言及、贈与の意義。固定概念を覆すヒントとなる1冊。

  • やっと読み終わった。
    日本社会、教育、宗教、原発など様々なテーマについて内田樹と中沢新一+αが語り合ったことをまとめた1冊。読み応えがあります。

    印象に残ったのは以下の二つ。
    「教えたいことがある人が、無理して学校を始めたわけなんです。近代日本における大学なんか、別に市場の要請があって創建されたわけじゃない」p247
    →今は市場の要請に左右されてる学校もたくさんあるから、この考え方はなるほどと思った。むしろ今は市場の要請(学歴が高くなくて安く使える労働力を、国内でたくさん供給して欲しい)で、国は大学潰そうとしてるしねー。

    「日本人は原子力に対してまず「金」をまぶしてみせた」p324
    →ブログの内容の転載なのですが、読み損ねてたらしく目から鱗でした。原子力というよく分からないものをお金というフィルターを通すことで、日本人は通俗化させて手懐けようとしたのだという主張です。

    あとハリウッド映画には「予期せぬ事態に対して、自分がなんとかしてやろうと奮闘するヒーロー」がよく描かれるけど、日本映画ではほとんどない(そういうところからも、アメリカと日本の「もし最悪の事態が起こったら」に対する姿勢が現れているらしい)というのも面白い主張でした。

  • 難しいけど、いいです。
    納得して読める、役に立つ。
    知識欲が高まる。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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