- 本 ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041100967
作品紹介・あらすじ
自分らしさにもがく人々の、ちょっとだけ奇矯な日々。客に共感メールを送る女性社員、倉庫で自分だけの本を作る男、夫になってほしいと依頼してきた老女。中島ワールドの真骨頂!
感想・レビュー・書評
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スカイツリーと東京タワー、新旧タワーの眼下で繰り広げられている、人々の様々なドラマ。タワーが登場するのは最初と最後だけなのだが、その間で描かれる8つの短編は過去(昭和)と現在(平成)が交錯し、両タワーのシルエットがほのかに浮かび上がってくるかのようだ。
描かれているのは些末な出来事の連続であり、日々に埋もれがちなエピソードばかりだが、現実と非現実の境目が曖昧になるような浮遊感が、不思議と心地よく感じられた。ちょっと日常からはみ出した登場人物らの奇矯な振る舞いは、時に不気味で、でもどこか憎めなくて、ユーモラスで。つくづく、中島さんって「余韻」の天才だなぁ。
どの短編も好きなんだけど、やっぱり、エンディングを飾る東京タワーの「眺望よし。」【復信】が印象的。毅然と立つ東京タワーの貫録よ!一時代を築いた建築物の矜持にしびれました。
東京に暮らす人々の軌跡には、東京タワーとスカイツリーが存在しているんだなと何だか羨ましくなった。 -
東京を舞台にした短編集。東京タワーとスカイツリーが見つめてきてこれからも見つめていく東京に暮らす人々の営み…と考えたのでいいのだろうか。流れてゆく「時」はやさしいような、せつないような。
「亀のギデアと土偶のふとっちょくん」「よろず化けます」「おさななじみ」のやさしい感じが好き。「金粉」のイヤな感じも好き。 -
東京を俯瞰するスカイツリーからの書簡にはじまり、8つの短編を収録。
それぞれの短編はぐぐっとズームアップされ、日常の小さな出来事が描かれている。
特別珍しくはないけれど、そうそうありふれている訳でもない。
そんなちょっとした物語を読んで、作者の想像力が深いのに感心してしまった。
「金粉」は、かつて薔薇屋敷と呼ばれた家の姉妹がゴミ屋敷の住人になってしまった話。ゴミを持ち帰ってくる老女がいう、我が家の持ち物を人が勝手に持ち出しているから取り返すためとの理屈にハッとした。
金粉のエピソードが切ない。
「おさななじみ」は、一番好きな短編。5つ星!
お店を閉めるママの語りと結婚をすることの打ち明け話に引き込まれてしまった。
ママの純情、学生時代から時を超えて叶った運命にジンとした。
よかったねぇ…。私もうれしくなったよ。
大円団じゃないけど、小さなハッピーエンドの物語。良かったです!
思わず読み返してしまい、味わい深かった。-
「おさななじみ」のママ・・・すれっからしに見えて、純情だった“彼女”がとても可愛らしかったですよね。私もジンと来ちゃいました。「おさななじみ」のママ・・・すれっからしに見えて、純情だった“彼女”がとても可愛らしかったですよね。私もジンと来ちゃいました。2012/03/26
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「おさななじみ」のママ。初めはまとわりつくような口調に引いてしまいそうでした(笑)
でも知らないうちに私も好きになってしまいました。学生時代...「おさななじみ」のママ。初めはまとわりつくような口調に引いてしまいそうでした(笑)
でも知らないうちに私も好きになってしまいました。学生時代の回想から、不意打ちのように秘密を知り、あっと息をのみました。
ほんとうに純情がしみてきますね。
2012/03/26
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スカイツリーと東京タワーが交互に書簡をやり取りする話と思っていたら、それは最初と最後だけでした。
その間に昭和と平成の短編が挟まっていました。
『よろず化けます』『亀のギデアと土偶のふとっちょくん』『おさななじみ』が面白かった。 -
それでももう一度、あなたに言いたい。
あなたとわたしは、立っていなければいけません。
照っても降っても、荒れても凪いでも、常に堂々と立っていなければなりません。それだけがわたしたちにできることであり、立ってさえいれば人々はわたしたちを見上げて安心し、明日を生きる活力を身に蘇らせることができるのです。
いつかわたしたちは不可抗力で、立っていられなくなるかもしれない。それでもその日が来るまでは、わたしたちは立ち続けなければなりません。
(P.186) -
変わらず巧いなぁと思う。特にママが結婚する話が良かった。そりゃ幸せだろうな、と羨ましく。
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東京が舞台の短編集。淡々。
著者プロフィール
中島京子の作品





