ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか

  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101025

作品紹介・あらすじ

人類がホモ・サピエンスになってから約20万年。私たちの祖先は身体ばかりでなく、脳も進化させてきた。脳がつくりあげる心も当然、進化したと考えられる。本書はその壮大な歴史のなかに、心の進化を追いかけるものだ-。

感想・レビュー・書評

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  • NHKスペシャル「ヒューマン」の書籍版。角川書店から出ている所為なのか知らないが、図版が少なすぎる。ここには絶対写真がいるだろという局面でも、文字だけで説明されている。2章など投擲具をグレートジャーニーの鍵としているのに、最後までその図版が1枚も登場しない。これって知らない人は誤解すると思うよ。オイラは「マスターキートン」で勉強したから分かるけど。
    ギョベックリ・テペ遺跡の石柱も写真で見せて欲しいよ~。こんなもん文章で説明されても虚しいだろ。
    農業と宗教の関係については今までの理解とまるっきり逆の説で興味深かった。でもNHKって、そういう目新しい説をよろこんでとりあえげる所があるからなぁ。前も「恐竜は花に負われた」なんて番組作っていたし。

  • 進化の過程で私達の祖先であるホモ・サピエンスが発明した飛び道具、
    それは安定して食糧を確保するための文明の利器だった。
    しかし、それがやがて一転して、同じ仲間に向けられるようになる。
    例えば人を傷付けたり、獲物を独り占めにしようとしたり、
    狩りはサボって分け前だけもらおうとズルをすると、
    飛び道具による制裁を受ける事になり、悪質な場合は命も奪われる。
    偉大な文明の利器が、私達の攻撃性に火を付けたのだ。
    そしていろんな形に進化したそれは、
    今もなお果てしない暴力の連鎖を世界各地で引き起こしている。

    文明が進化し、生活が便利になってきたことに反比例するように、人の心は荒んできた。
    現代人の心を生んだ決定的な出来事は、無限の欲望を生み出すコインの誕生だ。
    そして利器だった飛び道具は、今や核兵器に。

    強く美しく、野蛮で恐ろしい、私達の心。
    史実を裏付けにした心の成り立ちの洞察は、説得力がある。

  • ちびちび読み進めたのでかなり時間かかりました…が、さすが自然や文化系への徹底取材力のNHK。面白かったです。
    人間だけが「お返し」をする、というのは特に目から鱗でした。お返しの本能、とは現代にこそふさわしいじゃないかと思います。

  •  「分かち合う心」がサルとヒトを分けた。ヒトが人間になった鍵は心のなかにあった。これがただの「いい話」にならないのは、その「分かち合う心」が何に支えられているかが判明するまでのことだ。「情けは人のためならず」「すぐに返ってこなくても、いい評判をつくることで結果として自分が得をする」――こういったことがベースにあるから「分かち合う」。反面、この仕組みはフリーライダーに弱い。そのため、仲間でない人間にはとことん冷淡になれるし、裏切り者・不公正な者を制裁するときには脳に快楽物質が出るようになっている。「分かち合う心」と「残忍な心」は表裏一体のものであるということが、非情に興味深かった。
     この第一章がもっともおもしろく、あとは、まぁつけたしかなーと感じた。取材の過程が書いてあるのは読みやすいが、反面冗長にも感じる。取材班の苦労話より、取材した学者の主張をわかりやすく書いて欲しい。

  • 『人間はランボーとマザー・テレサの組み合わせだった』

    「優れた戦士は利己的ではありません。利己的な戦士なら、仲間を先に行かせて、自分は後ろに控えているでしょう。優れた戦士は、集団のために進んで危険を冒すという意味で利他的なのです。人間はランボーとマザー・テレサの組み合わせです。この二つを組み合わせることは奇妙に思えますが、良かれ悪しかれ、それが人間性だと思います」

    というサミュエル・ボーズさんという経済学者の言葉がこの本で紹介されています。仕事をしている場面では「あんたの心は何で出来ているんだい??」ってくらい、ドライでハードな人が、一歩家に帰れば、でれでれで甘々なお父さんになっていたりすることって少なくはないですよね。

    でも、この二面性というのが、今の時代まで生き残ってきたタイプの人間の典型的姿でもあるのかもしれませんね。あまり詳しくはわかりませんが愛情ホルモンという別名もある「オキシトシン」なる脳内ホルモンが多く分泌されるほど、人は身内に優しくなるけれど、同時に身内を守るために外部に対しては攻撃的になる、という話は別の本でも読んだことがあります。人間ってややこしいですよね。

    で、この本はそんなややこしい人間のこころはどんなふうに出来上がったのか?歴史的に検証していこうという趣旨で作られたNHKのテレビ番組の書籍化です。サピエンス全史という歴史を扱った本がとても売れましたが、つながるとところもあり興味深いです。

    サピエンス全史では人の心を形作った一番大きなものは「虚構」を作ったことだった。という結論でした。そのあたりはイベントで書いているので、そのあたりに関することはコメント欄に貼り付けときます。
    で、こちらの本では3つの大きな発明が人の心を作り上げたと主張しています。
    ①おしゃれ
    ②飛び道具
    ③コイン
    ①のおしゃれって意外な感じもしますが、考えてみれば我々人間以外の動物でおしゃれをする動物っていませんよね。聞いたことも見たこともない。そしておしゃれの起源ってのは、天然の顔料を身体や顔に塗りたくる、みたいな感じだったらしいです。で、なんのためにそんな事をしたのか?たぶん「自己主張」ですよね。この「自己」を意識するってのも人間くらいのもの。そしておしゃれをすれば自慢したい。そして見事なおしゃれに対しては「いいね!」って言いたい(このあたり現代人も変わらない 笑)。そしてそのためには言語が必要になる。
    加えておしゃれな装身具、首飾りのようなものって自分で身につけるよりも誰かにプレゼントするものって使い方が多かったようです。身内にも贈ったと思いますが、遠く離れた違う部族にも贈っていたらしい。すると相手からも贈り物が返ってくる。部族間の友好の印にもなったんですね。で、もしもどちらかの部族がピンチのときには助け合うことができる。というのもヒトの生き残りにとって大きなことだったらしい。リスク管理。まぁそういう実利的な目的もありますが、ヒトって誰かにプレゼントするのが好きですからね。赤ちゃんが最初に自主的にする行動はものを拾って口に入れることで、次にするのは拾ったものを誰かにプレゼントすることだという、にこにこしながら。面白いですよね、この行動。

    ②の飛び道具ってのも面白い。投擲機というやつの発明ですね。弓矢の原型でもありピストルのルーツでもある。テコの原理を利用して力をかけずとも、離れた場所から獲物を仕留めることが可能になった。この発明は体力的にはるか上をいっていたネアンデルタール人が滅びて、我々サピエンスが生き残った原因のひとつにもなっている。直接、武器で抗争をしていたというわけではなくて、獲物獲得競争において勝ったということですね。同じ獲物を狙っていましたから。それから、もう一点。この武器の発明によって、人間はより大きな集団を作り上げることが可能になったんですね。ダンパー数というのがあって、認識できる個体数というのはある程度、大脳新皮質のサイズによって、決まっている。テナガザルは15、ゴリラは34、オランウータンは65、そしてヒトは148ということなんですね。だから、原始の時代において集団がいくら大きくなっても、だいたい150人まで膨らんだ時点で分割されていくことになった。だけど、投擲機という武器の誕生による影響もあり、その150を突破してより大きな集団が出来上がるようになったということです。具体的な理由はいくつかあるのですが、ちょっとハードな話ですと、処罰処刑が円滑にできるようになった、という事もあるらしい。もしも集団内部で秩序を壊すような者がいればなんらかの処罰をくださなければ集団は維持できない。殺人などの重刑の場合はやはり死刑ということになる。だけど、誰も死刑執行人にはなりたくない。その時、一人の罪人に対し、多数の処刑執行人が投擲機を使って刑を執行すれば、ひとりの執行人のときよりも精神的負担や相手の身内からの復讐というリスクも減る。この結果、刑罰のシステムの円滑化、これも大きな集団を形成することが可能になったことの一因ということ。

    ③のコインってのは大体想像がつくと思いますが、ものすごい発明であって、結果的に人のこころに、いろんな良いことも悪いことも生み出したもの。まぁ腐ることのない保存できるコインというものが出来たおかげで独占するっていう心が人間に芽生えたのかもですね。そして、コインって最初は等価というか、純銀100%で作られていてそれ自体に価値があった。ところが、頭の良いローマ人が徐々に銀の含有率を減らして、そのかわりローマ皇帝の顔をコインに彫って「銀は少ないけど皇帝がこのコインの価値を保証するよ!」っていうシステムを生み出すんですね。これがお金という信用制度の誕生になるわけですが、すごいですよね。このむちゃくちゃな論理を発明したのは(笑)ちなみに余談ですが、日銀が発行する1万円札の原価は22円らしい。

    というような3つの軸を元にランボーとマザー・テレサの組み合わせという人の心の成り立ちを研究している本です。テレビ番組もリアルタイムで見ていて面白かったですが、書籍版のこちらもとてもオススメの面白さです。
    2017/10/05 01:35

  • 3年ほど、積ん読になってましたが、読みました。新しく知ることが多くて勉強になりました〜。

  • 資料番号:011449881
    請求記号:469.2ヒ

  • 〜自分のものなのに、自分の思い通りにならないーそれが心というものだ。〜

    ちょうど悶々と思考の迷路にはまっていた日に読み始め、冒頭のこの文で心を持っていかれた。

    以下、抜粋しながら覚え書き。

    10万年前の人類も酸化鉄から削りとった赤い粉を身体に塗り、お洒落を楽しんでいたという。赤であることにも意味がある。赤は血の色、生命の色だ。

    読み進めると私たちの祖先は装飾具を贈り合い、身にまとうことで分かち合う心を表現していたことがわかる。

    〜言葉は「牢獄から人を解放する」という表現があるそうだ。言葉がない限り、人は自分の体験を伝えることも、普遍化させることもできない。(略)その人のうちに閉じ込められたままという囚われの状態なのだ。〜

    サンの人々。彼らの社会でもっとも嫌われるのは、ケチと自慢。生き残るためには分かち合うことがとても重要だったとのこと。

    分かち合うこと、助け合うことが人間を人間たらしめている基本的な行動のひとつ。
    しかし人間の持つ柔軟性は、協力と対立の両方向へ作用する。

    〜志を持って他者に手を差し伸べ、その人を幸せに導く。それが人間の人間らしいところだと思います。〜

    出産。人間の出産の複雑さは身を持って体験して、人間だけが特別な生き物ではない、自分もひとつの動物であることをひしひしと感じたことを思い出した。
    そして他の動物との違いを羨んでいたのでようやく疑問が解けた。

    他にもフリーライダーと処罰、モラルと恥の話。
    浅ましい気持ちに支配されることなく、気高く生きたいなと強く思った。

    SNSの話。自分たちの脳の大きさだけに頼るのであれば150〜200人程度のコミュニティが上限だというのも納得。

    単なる人類の進化の話にとどまらない、得るものの多い一冊だった。

  • 多くの知識を得ることができた。趣味の合う方には面白いと思います。

  • 人はなぜ人間になれたのか。古くて新しい、終わりのない問いである。様々な環境の変化とともに心がいかに進化して行ったのかを推測する。

    太古の人間にもおしゃれをする心があった。

    様々な心理実験を通して、性善説のようなことが判明する。人は平等に分かち合うことを好ましく感じる反面、ズルには厳しく、悪い人が罰せられるのを見ると快感を感じる。
    ケチと自慢は嫌われる。
    チンパンジーは頼まれて初めて協力をするが、人間は困っていることを察した時点で助ける。

    狩猟採取から農耕への転換は長い時間をかけて変化していった。

    信頼と協力、助け合いの精神で人間は栄え始めた。

    都市が生まれ分業が始まると階級ができた。原始的貨幣は大麦などの食料だった。長期保存ができないのもあって、借金を帳消しして格差を時々減らしていた。

    しかしコインの登場が現代社会の悲哀の始まりだった。腐ることのない、永遠の富だ。
    平等の分かち合いからから独り占めへの転換。

    しかし、経済格差が広まると健康を損なう率が高くなる。貧乏人だけではない。中間層も、金持ちもだ。

    貨幣社会が生み出した悲劇を人間は乗り越えられるのだろうか。

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