脳のなかの天使

  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.89
  • (24)
  • (26)
  • (28)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 459
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101049

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • おそらく専門書の何倍も読みやすいに違いない。
    だけど、脳神経に素人で頭のよくない私には、少し難しかったのが正直なところ。
    驚きの連続でへえ〜って心の中で常に思うことばかりだれど、特に興味がわいたのは、なぜ人は抽象画を好むようになるのかの章。なるほど!そこにアハ!を感じる訳か、とひとり合点がいった。

  • この本を読んで感じるのはヒトをシステムとして考えたときの危うさである。「健常」とは何なのかを改めて考えさせられる。「美」についての感覚もこれらの認知に引きずられているという根拠は、自閉症スペクトラムとは何なのかということについても大きなヒントをもらった気がする。
    本書ではインドの偶像が極端に女性の特徴を強調するという点やカモメのヒナが親鳥のクチバシの特徴である赤い丸以上に赤い三本線に以上に興奮するという超常(スーパーノーマル)刺激について言及している。
    これは「萌え」を説明するのにも使えそうだ。全体的な身体特徴は少女・幼女のものなのに、目、胸、尻が過剰に協調されたデザインに強く惹かれるという人がある一定数存在するということである。それも、日本だけに留まらず世界中にファンとして存在するという事実である。
    話は変わるが、当事者としての感想も書きたいと思う。私自身の話とすると、実は本書で紹介される共感覚の人が見分けられやすい図表の一部は苦も無く見分けられた。(共感覚の人は色がついてそれが異なるらしいのだが、私の場合は色はつかないが別のものだと認識できてしまう。)また、7歳の自閉症児の絵が紹介されているが、私の場合は灰色のクレヨンの濃淡だけで、写真と同じ形のものを正確に写実しようとしていた。てっきり自分は他の人とと同じように認知しているとばかり思っていたのだが、どうやら大きく異なっていたのだという仮説は、この本を読むとどうやら本当のようだと思える。
    私の場合「話が見えない」という状況にたまに陥る。言葉は聞こえているのであるが、その内容が意識にのぼってこないのである。言われたことがよく分かる時は「話は見えている」。実は込み入った話を聞くときには目をつぶるようにしている。それはあたかも、現実の風景が目に入ると見えていた話が見えなくなってしまうような感じである。数字と色の共感覚の人で、例えば数字の7が赤に見える人の場合、緑色の字で書いた7は違和感がとれないということらしい。この話にとてもよく似た状態のように感じる。
    会社員としては、システムエンジニアとしてのキャリアを進んできたのだが、構成図を使ってシステムの構成を組み上げていく、問題があるプロジェクトの問題点を可視化する、複数のメンバの認識の違いを合わせるための図表を作るという点では自分はかなり貢献できたようだ。一方、一緒に働く人や、ステークスホルダとの対話が苦手であった。これは、相手の本音を言わないと建前を真に受けたり、建前が理解できず常に本音を言ってしまうことが原因であると思っている。今は、さすがに数々の失敗経験から自分なりの理解方法を見つけて解決はしているのだが。
    本書で示される「認知」に関するシステムはとても危ういと改めて思った。つまり、われわれが「健常」と信じているものは、多くの偶然の中でたまたま起こっていることであり、ほとんどの人はその「健常」から外れている。ただし、その外れ具合もスペクトルがあるため、問題になるケース、ならないケースなどが生じていると考えられる。
    コンピュータを使ったシステムも複雑さを増すとあたかもイキモノが病気をするかのごとく調子が悪くなる。「ココロ」「認知」はもっと複雑なのだから多様性があって当たり前なのである。単純化することは思索を深める上では大事なことであるが、我々が置かれている現実とはかけ離れていると肝に銘じなければならない。
    逆にその多様性を理解し、その人ならではなの得意分野を見つけたり、その得意分野で力を発揮できるような訓練をするという点に注力すべきだと悟った。

  • 自分の専門以外の部分は一回読んだだけでは、全然分からなかった。

  • 「脳のなかの幽霊」「脳のなかの幽霊、ふたたび」の
    作者による新刊。基本的な態度や方向性は前2著と同じ
    で、興味深く面白い内容ではあったのだが、今回は研究
    の端緒の紹介というか、これからの研究のための叩き台
    を紹介するといった趣が強く、専門用語がかなり出て
    くることもあり、やや残念な印象かな。

    まだまだこれから進展して行くであろう脳神経科学、
    そして意識の問題についての読書の最後を締めるには
    ちょうどいい本だったかも知れない。また数年後に
    漁ってみることにしよう。

  • トピックが幻肢、錯視、共感覚、ミラーニューロンと来るので、出す時期を間違えて鮮度が落ちた書籍かと思ってしまうが、所々に新たな知見がちりばめられていて油断ができない。
    全体的には驚きは少なく、脳科学の発展が倫理や技術的なブレイクスルーに縛られて遅々としている様が伺える。
    写実よりも大きな情動を与える表現形式があり、それが芸術である。笑いは、危険の予想による警報が間違いだった場合の仲間への情報伝達。

  • 幻肢をはじめとする脳に関する奇妙な現象については、前著の「脳の中の幽霊」で知り、大いに驚くとともに、知能というものに対しての認識を改めた。本書においても、様々な奇妙な現象が取り上げられており、それぞれについて、人類が進化の結果たどりついた独特の存在であることの例証であることが説明される。脳科学の本を読むと、人間の知能というものが不思議で複雑であることを思い知らされる。累積進化の結果、思いがけず文化を持つに至り自己というものを発見した人類の歴史を思うと、人工知能の実現の困難さを改めて感じてしまう。

  • V・S・ラマチャンドラン『脳のなかの天使』角川書店、読了。本書は『脳のなかの幽霊』の続編。進化の過程で脳を発達させてきた人類。認知神経科学は心と体の関係だけでなく、意識や美、宗教の感受性に至る迄「人間らしさ」が脳とは無関係ではないことを明らかにする。読み応えのあるスリリングな一冊。

    ただ、『脳のなかの幽霊』だけでも充分な気がする(うわ、やめろ

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-11575691437.html

  • 人間の脳の進化は短期間に急速に起きた。言語や文化には、ミラーニューロンの存在が大きく関わっている。自閉症はミラーニューロンの異常。

    理解が進むと、脳のシステムに人間が関与できるようになって、能力を高められるようになるのだろう。福音か悪夢か。

  • 脳のなかの幽霊の続編。それぞれの症例とそれに対する実験、推論を読んで、博物学的な興味を満たすのが私のラマチャンドランに対する期待で、それは満足。入れ物としての脳とその中身みたいな議論してもしかたがないよねとか、そういった部分が読んでいて一番盛り上がったかな。
    しかし脳の各部分の名称ってさあ、ウェルニッケ野とか、V4とか、もうちょっとばかしネーミングルールを整理した方がよいんじゃあないかって気がする。クォークとか量子論みたくキャッチーにして逆にわけがわからなくなるよりはいいような気もするけど、特に日本語だと漢字とかアルファベットとかカタカナとかそれらの混在とかもうひどい。中心的な学会とかがないんだろうね。それか機能していないか。というような全く本とは関係のない感想。最終章とかは現在進行形のメモの羅列になってて、そういった形でしめくくるのがすげえなと思った。編集者はあれでよかったのかな。脳の中の幽霊ふたたびでちょっと評判落としておそるおそるやってる感じとかを読み取った。これはミラーニューロンのなせる業か。

V・S・ラマチャンドランの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スティーブン・ピ...
エリック・ブリニ...
リチャード・ドー...
V・S・ラマチャ...
リチャード・ドー...
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×