語りきれないこと 危機と傷みの哲学 (角川oneテーマ21)

著者 :
  • 角川学芸出版
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101094

作品紹介・あらすじ

心を引き裂かれる経験、体の奥で疼いたままの傷。どうすれば苦難から身を立てなおすことができるだろうか?傷ついた人々の声を「聴くこと」を課題として臨床哲学を提唱した著者が、心の傷口を静かにおおってゆく「語ること」の意味を真摯に説く。幸福に気づく知恵を問いなおす哲学入門。

感想・レビュー・書評

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  • 「臨床哲学」を提唱する著者が、震災以後の問題について論じた本です。

    ところどころに著者らしい繊細な精神のきらめきが見られますが、意外にも紋切り型の意見が多く目につくように感じました。とりわけコミュニティの崩壊について論じている個所は、少なくとも表面的には、保守派の懐旧と重なってしまいます。

    確かに、「語りきれないこと」というタイトルが表わしている問題は、どこまでも重く受けとられるべきでしょう。著者自身、震災からの復興のプランを声高に語るメディアや評論家を批判しながら、みずからの言葉が「語ることができない者に代わって語る」という身振りを反復していることを自覚していないはずはないと思います。それでも、現在の日本の哲学者の中では例外といえるほど細やかなことば使いと繊細な知性を示している著者にしては、ややことばが「鈍い」のではないかという印象を拭えませんでした。

  • 二つの大震災のショックと痛みを再体験しているなかで出会った本。「語り直し」という言葉は、深く傷みを受けた自分を見つめなおしそれを認め、改めて作り直すことでもあると思う。「語り直し」のプロセスには伴走者が必要であるという。それこそ主ご自身で、神の家族としての私たちなのであろう。(小平恵氏)

  • 哲学者である著者が東日本大震災から1年後に思うことを綴った本。
    直接被害に遭った訳ではない私たちに心構えを教えてくれる。

  • 鷲田さんの本何冊か読んでるけど、ですます調で書いてあるの初めてな気がする。
    それだけ慎重に言葉を選んで書いてるんでしょうね。

    鷲田さんの専門や難しい話は一切なく、読みやすい。

    「いつでもさりげなく時間を空けられる関係」

    「絶対になければならないもの、あったらいいけどなくてもいいもの、端的になくていいもの、あってはならないことの見分けられることが教養」

    「言葉は心の繊維」

    「言葉の意味ではなくて言葉の感触。その背後にあるじかんをくれているということ。そのなかに、話された内容とは無関係に人をケアし、支える真実があると思います。」

    「ケアの現場は、ケアの゜小さなかけら゜が編みこまれたもの」

    「言葉の根っことは、体のうねり、うごめきのことにほかならないのですか、そこに希望の最後の小さなかけらがあるように思います。」

  • 「時間をあげる」という箇所が一番印象に残った。時間をあげるのが苦痛な時、面倒なとき、日常の中で思い出したい。

  • 2013.5.1

  • 卒論資料。語り得ないという語り方。語れないことが何より雄弁な場合もある。

  • 強くて優しい言葉。
    卓越した文章を書く人って、アナロジーの能力が高いのかな、なんて思ったりしました。

  • 201204

  • 東日本大震災から3ヶ月後の朝日新聞への寄稿
    https://aspara.asahi.com/ulrsc/8/blog/katarikizuki/201106/201106119188255.pdf)と、大阪大学の式辞(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/president/ja/guide/president/files/h23_shikiji.pdf)ベースという感じ?以下目次


    ◆はじめに
    区切りなきままに

    ◆第一章|「語りなおす」ということ 語りきれないもののために
    心のクッション?
    「まちが突然、開いた」
    語りにくさ
    <隔たり>の増幅
    <物語>としての自己
    <わたし>という物語の核心をなすもの
    断ち切られたアイデンティティ
    傷を負いなおす
    語りなおしと、その「伴走者」
    語りは、訥々と
    語りを奪わず、ひたすら待つこと
    痛みに寄り添う日本語
    「お逮夜」という喪の仕事
    「死者」として生まれる
    なぜわたしが生き延びたのか
    理解することと、納得することの違い
    時間をあげる、ということ

    ◆第二章|命の世話
    求められる、もう一つの語りなおし
    危機の信号
    決められないわたしたち
    無力化された都市
    消費の町
    「命の世話」の仕組みが消えた?
    快適さの罠
    労働なき町を語りなおす
    ベッドタウンの中の子どもたち
    絶対になくしてはならないものを見分ける
    言葉は心の繊維
    言葉の環境
    聴くことの、もう一つの困難
    やわらかく壊れる?
    ケアの断片が編み込まれた場所
    幸福への問い

    ◆第三章|言葉の世話 「明日」の臨床哲学
    見えないものが多すぎて
    特殊な素人
    見えているのに見てこなかったこと
    「不寝者」の不在
    倫理を問うことが倫理を遠ざける?
    トランスサイエンスの時代
    言葉を品定めする
    口下手の信用
    「自由作文」の罪?
    対話の言葉、ディベートの言葉
    テクストとテクスチャー
    文化としてのコミュニケーション
    コミュニケーションの2つの作法
    カフェという集い
    パブリック・オピニオンとポピュラー・センチメント
    模擬患者という試み
    コミュニケーションの場を開くコミュニケーション
    いまもとめられる対話のかたち
    ワークショップは不安定でよい
    インターディペンデンス
    よきフォロワーであること
    責任という言葉
    現場へ
    哲学を汲みとる
    前知性的知性
    価値判断をわたしたちの手に

    ◆むすび
    寄り添い、語りなおしを待つ

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著者プロフィール

1949年生まれ。京都市立芸術大学学長。せんだいメディアテーク館長。哲学者。臨床哲学を探究する。著書に『現象学の視線』『モードの迷宮』『じぶん・この不思議な存在』『ぐずぐずの理由』『聴くことの力――臨床哲学試論』などがある。

「2018年 『大正=歴史の踊り場とは何か 現代の起点を探る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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