世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 617
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101162

作品紹介・あらすじ

やんちゃやってるけど、ガチで気合い入ってて、ハンパなく筋が通ってる。アゲと気合。現実志向。行動主義。母性。バッドセンス。日本に拡散するヤンキー・テイストを精神科医が読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 「日本人はヤンキーが好き」。このことを最初に指摘したのは、故ナンシー関さんだ。著者もナンシーさんのエッセイに影響を受けたと明かしている。
    「私はつねづね『銀蠅的なものを求める人は、どんな世の中になろうとも必ず一定数いる』と思ってきた。そして、その一定数はかなり多いとも思う。」
    ナンシーさんの数ある名コラムの中でも、この「銀蠅的なもの」は屈指のインパクトだった。(ああ、ナンシーさんの不在があらためて悲しい。たまにテレビを見ると「ナンシーさんがいたら…」とつい思う。そう思うのは私だけではないはず)

    「ヤンキー」の何に人はひかれるのか?「引きこもり」の研究・支援で知られる精神分析医の著者は、自らも認めるとおり「オタク寄り」で、「ヤンキー的なもの」とはまあ対極にあるはずの人だ。大体研究者とか本を書いたり読んだりする人たちは大なり小なりオタク的で、だからこそオタクに関しては山ほどの論考があるのに、ことヤンキーについてはあまり目にすることがない。本書はそういう意味でとても新鮮だ。

    ヤンキーについて語るとき、横浜銀蠅とか亀田兄弟とか義家センセイなんかが出て来るのは至極当然で、最も洗練されたかたちとしてのキムタクっていうのもわかる。すごいのはその先で、何とあの白州次郎のヤンキー性(!)とか、村上春樹とアメリカ、丸山真男と古事記、などなど、まあ実に多方面からヤンキーを好む日本人の心性に迫ろうとしている。
    もっと説明してほしかったり、ちょっと強引で説得力に欠けるように思うところもあるけれど、なるほどなあという指摘も随所にあって面白く読んだ。

    真ん中あたりまで読んで「ああ、橋下人気もこの流れで説明することもできるなあ」と思っていたら、やはり最後に出てきた。彼は攻撃的な反知性主義をまったく隠そうとしないが、まさにその点がうけてるんだろう。あらためてがっくりする。

    「あとがき」の次のような記述にはまったく考えさせられる。

    「青少年の反社会性は、芽生えた瞬間にヤンキー文化に回収され、一定の様式化を経て、絆と仲間と『伝統』を大切にする保守として成熟してゆくのである。われわれは、まったく無自覚なうちに、かくも巧妙な治安システムを手にしていたのである」
    「ヤンキー文化には二面性がつきまとう。逸脱と適応、バッドセンスと創造性、犯罪と治安、破壊と復興、などなど」

    著者の言うとおり、確かにまだまだ語ることはありそうだ。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      こんにちは。

      先日、『Number』のあるコラムを読んでいて、あるヤンキー系野球記者さんが駆け出しの頃、「あいさつしたら、『意外ときち...
      こんにちは。

      先日、『Number』のあるコラムを読んでいて、あるヤンキー系野球記者さんが駆け出しの頃、「あいさつしたら、『意外ときちんとした子や』とかわいがられるようになった」というエピソードをちょろっと読みました。出発点の(見かけの)低さからの逆転劇がカタルシスに見えるようでした。個人的にはどうなんだろう?とは思いましたが、そういうものなのかしら・・・と。
      2013/02/25
    • たまもひさん
      Pipoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

      Numberの記者さんの話って、ある種典型的なヤンキーの受け入れられ方って感じが...
      Pipoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

      Numberの記者さんの話って、ある種典型的なヤンキーの受け入れられ方って感じがします。「そういうもの」なのでしょう、きっと、おそらく、たぶん…。

      2013/02/25
  • ヤンキーという「あり方」について考察した本。

    ・わかりやすく、キッチュで、模倣しやすいこと
    ・父性的な規範を母性原理で落とし込む人たちであること
    ・家族や友人とのリアルな身体的つながりを重視すること
    ・考えるよりもまず行動することを美しいとみること

    的なことが書いてありました。
    この方、基本的に立場が「オタク」寄りらしく、
    ヤンキーテイストな文化に全然詳しくなくて、語り口に
    愛が足りないのが非常に残念・・・

    彼のクライアントに、ヤンキーって、きっと少ないんだろうな。
    そしてヤンキーがこれを読んでも、「はぁ」って思うだけだきっと。

  • 日本文化に根付く「ヤンキー的なもの」についての、音楽・マンガ・古典・芸能にまで及ぶ膨大な知見には、「精神科医かつ文化人」たる筆者の深い洞察が垣間見える。相田みつをと木村拓哉をつなぐヤンキー性、精神分析の視点から見た「ヤンキー性の持つ本質的な母性性」など、いくつもうなづけることあり。

    しかし、その反面、話がやたらと飛んだり、結論を先延ばしにして、結局後で十分な議論のないまま終わっていたり、消化不良な側面も多い。

    著名人に関する「表面的な』分析は、精神分析かつ臨床家として的確な一面もあると思うが、本質的にヤンキー的なものと交わらない筆者にとって、一種の道化の対象としてシニカルに表現され尽くしている感も否めない。ナンシー関やマツコデラックスならそれで良いのかもしれないが、ちょっと臨床家としてどうなのか、と批判したくなる部分もある。

    本作品の中で、最も面白かったのは、ヤンキー文化はは本質的に家族主義で関係性を重視し、切断する父性ではなくつなぐ母性を本質としている点。上下関係を重んじるタテ社会のなかでも、ヤンキー文化は理念やルールとは別の形で結びついた人間関係を基本としている面で女性的であるとする。対極にあるのは、規律と原理を重んじるカルトやファシズムの持つ男性性であると。
     これを読んで思ったのは、AKB48の持つ「原理と規則」である。
    少女たちは、推しによる人気至上主義、という原理と「恋愛禁止」などの規則によって個人としては規律化されている。しかし、そもそもが、アイドルとファンの関係性、また、彼女らが必要以上に友情を押し売りする演技性の体質、などにヤンキー文化的スパイスが垣間見える。
     この、男性的な枠組みの中に見えるヤンキー性の融合が、最新の文化的到達点と言えるのではないか、ということ。ジャニーズのような単なるヤンキー文化だけではない点が新しいということか?

     一方で、私は、橋本治が述べる「サブカルチャーは通過儀礼である」という言葉にも深く同意している。ポップカルチャーの世界に生きている人にとっては、いくつになってもこのシステムはすんなり受け入れられるものなのだろうが、オタク・ヤンキー文化の両面とも「通過儀礼」として「過去化」してしまった人間にとって、どれほどの意味を持つのだろうか?ありきたりの言葉ではジュネレーションギャップだが、もはや生物学的な意味での「ジェネレーション」ではないだろう。

     相田みつをや木村拓哉を通過儀礼として、少なくとも個人的には消化してしまった人に取って、形を変えて新しく出現してくる「ヤンキー的なもの」や「オタク的なもの」は、もはや意味を持たない。

     筆者の論調で言えば、橋下徹を支持する人の多さを考えても、「日本人の大半はヤンキー的なものを望み、求めている」のかもしれないが、一方で斎藤環は「僕は違うけどね」とも言ってるわけだ。これはずるい。その点こそ、議論して欲しいところだ。

     文化の消費、効率化、媒体としての利便化。
     文化を楽しむには、面倒くさい道筋が必要である、または必要そうに見えること。本来、資本主義とは別の回路で動いていること。
     ヤンキーと江戸っ子の違い。伝統芸能を時代にあったものに変えて行くために、文化の担い手たちが行っている努力。
     私は、この書物を通して、むしろそういう純粋培養されているものの現在と未来の姿を想像するようになった。

  • ヤンキー、というものについての語り。
    ヤンキーについての語るなら、どうしてもユーモアを孕まざるを得ないだろう。筆者のユーモアと真面目な考察がバランスよく、あっというまに読んでしまった。
    フェイク、作られた偽の「伝統」、気合とアゲ、家族仲間思いでマザコン、やたら熱い正義感、ファンシーグッズ。確かに、ヤンキーは女性的だ。

    個人的なことだが、これを読んで様々な謎が氷解した。。。なぜ私は、かくも相田みつを憎んでいるのか。説教くさい歌詞や泣かせ邦画や、頑張れば出来るとか夢は叶うとかいう言葉が嫌いなのか。全てはそのヤンキー臭が、私に激しい嫌悪を催させるのだ。
    そもそも、私ぐらい、気合に乏しい人間もいないだろうが、でもそれでよかったのだ。私はヤンキーを嫌悪する側の日本人なのだ。
    そして、ヤンキーを無視できず、過剰に反発するあたりもまた、私がベタな日本人である証拠なのかもしれない。

  • 帯文:”《待望のヤンキー論》” ”第11回角川財団学芸賞受賞作” ”朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、共同通信、週刊文春等各方面で大反響続々!”

    目次:第一章 なぜ「ヤンキー」か、第二章 アゲと気合、第三章 シャレとマジのリアリズム、第四章 相田みつをとジャニヲタ、第五章 バッドテイストと白洲次郎、第六章 女性性と母なるアメリカ…他

  • 後半は、ヤンキーと伊勢神宮の構造、
    ヤンキーと古事記の登場人物などとが比較され、
    理解するのが難しかった。
    前半は、笑いながらスーッと読める。

    ヤンキーって、日本国民のそんなに多くが当てはまる性質?
    まさかと思いつつ、その傾向や志向を聞く限り、
    思わず説得されてしまう本。

  • 読むのしんどくなった。

  • 「ヤンキー」的なものに関する分析。
    経歴がヤンキーではなくても、考え方なりが「ヤンキー」的なものを取り上げている。
    なんで読んでみようと思ったんだったか…。
    熱血教師ものにおける海外作品との違いの部分はなるほどと思った。

  • 参考文献をちょいちょい検索していたんですけど、「MUSASHI-GUN道-」には驚きました。

  • おもしろい。
    ヤンキーつながりで他にも読んでみたくなった。

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著者プロフィール

1961年岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学など。

「2016年 『ひとはなぜ戦争をするのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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