散り椿

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 215
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101193

作品紹介・あらすじ

かつて一刀流道場の四天王の一人と謳われた瓜生新兵衛が、山間の小藩に帰ってきた。一八年前、勘定方だった新兵衛は、上役の不正を訴えたが認められず、藩を追われた。なぜ、今になって帰郷したのか?新兵衛を居候として迎えることになった甥の若き藩士、坂下藤吾は、迷惑なことと眉をひそめる。藤吾もまた、一年前に、勘定方であった父・源之進を切腹により失っていた。おりしも藩主代替わりをめぐり、側用人・榊原采女と家老・石田玄蕃の対立が先鋭化する中、新兵衛の帰郷は、澱のように淀んだ藩内の秘密を、白日のもとに曝そうとしていた-。

感想・レビュー・書評

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  • 大河ドラマや水戸黄門などテレビの印象で歴史ものって何だか古臭いというイメージをもってしまうのはもったいないなといつも感じます。
    司馬遼太郎的なものはそんな感じもありますが、最近の葉室麟や阿部龍太郎、山本兼一の歴史ものは作者なりの考察が新しくて面白いと思います。
    単に古い時代の物語というだけでなく、虫や花や香りなどが織り込まれてのクライマックスのさっぱり感は葉室麟独特のものなのでしょうが、本書も期待以上でした。

  • 武士の世。権力に翻弄され自死た父の死後、若者らしい心を失いかけていた藤吾が自らの道を信じることができるようになったのは、疎ましいと思っていた叔父(新兵衛)の生き方だった。現代の世も自分の信じる道を進むことは難しい。人生の最後に満足できる生き方とはどんな生き方か、考えさせられた。幸せは自分の心が決める・・・

  • 泣きそうになりました。

  • 花弁が一片ずつ散っていく散り椿。美しくも切ない時代小説。本作品に込められた思いは”大切な人を守る”。上役の不正を訴えたばかりに藩を追われる事になった実直な剣豪が主人公。苦労をかけた愛しき病弱な妻の最期の願い。それは故郷の散り椿を見に行って欲しいと。18年ぶりに訪れた故郷が待ち構えていたもの、それは権謀術数渦巻くお家騒動。更にそこには過去の忌々しい事件の真相が一片ずつ浮き彫りになっていく。それにしても葉室作品の特徴は派手な描写はなく淡々と物語を進め、時々の心理描写が絶妙。例えば和歌をさり気なく使いこなし物語に彩りを与える。教養の成せる技だな~。本作品加えてミステリー要素が幾重にも織り込まれ最後まで飽きさせません。それにしても後半の亡き妻の回顧録。目頭があつくなりました(^-^;)

  • 13/03/12 終わりは少し寂しい気がするが。

  • 江戸時代の地方藩を舞台にした武士の生き様の時代小説。

    武士の友情や愛情を藩内の権力闘争をからめて見事なエンターテイメントに仕上げられて描かれています。
    一部の悪役の腰ぎんちゃくたち以外はキャラの背景も丁寧に描かれ、それぞれの思惑に絡み取られた哀愁を感じました。
    やはり作者は、このような歴史的有名人物でなく一介の武士の物語に真骨頂が発揮されると思います。

  • 武士を描く長編。
    正義を見失いかけている若者と、正義を貫いて敗れたことのある大人と、二人を支えて共に立ち向かう女性の話。
    本筋は、藩の中に潜む陰謀に多くを背負ったかつての若者たちが葛藤を振り切って立ち向かう、という定番のもの。
    人物が多く、時系列も人間関係も少々複雑になっている。
    が、拗れた権力争いに絡む、失われた恋や深い愛情が、複雑ながらも切なく清々しくて美しい。
    そして同時に展開される、若者の恋模様が、初々しくも力強く一途でいとおしい。
    恋愛小説としても、青春小説としても、愛情や友情をひっくるめて、「誰かを想う」ということの苦しさと素晴らしさが端正に書かれている。

    ちょっと仮面ライダー響を思い出した。

  • かつて藩を追われた男が妻との約束を守るため戻ってきた。
    瓜生新兵衛やその甥藤吾をはじめ、亡き妻や友人それぞれの凛とした生き方に感じ入りました。
    武士として生きること。その妻であること。
    この小説で味わう奥ゆかしさは格別です。
    終盤のそれぞれの思いの深さには涙があふれました。

    ただ、この作品を読んでいる時、物語と別にずっと意識していたことがありました。
    それは武士の世の、なんと窮屈で生きづらいことだろう…という思いです。
    職務に忠実に、身分の上の者には絶対逆らわない。時に己を殺してでも。
    お家や藩のために不祥事は葬られ、建前や面子がまかり通る。
    正義の心を持った人物が藩を追われたり、妻や子は主人に従う立場で生きるほかない。あ〜、人を斬ったり斬られたりもいやだし、農民は苦しいし、小説でよかった。
    でも根っこのところは脈々と続いていないでしょうか??
    今の世も十分生きづらい…。
    お家騒動や権力争いの思惑が複雑な小説は、猛暑で弱った身に少しもやもやを残しました。

  •  主人公の藤吾は、伯父の新兵衛のことを軽蔑していたのですが、この新兵衛と同じ行いをしなければならない状況に陥ってしまいます。藤吾は母に対して、「馬鹿なことだと承知だが、わたしはあの愚かな新兵衛と同じことをいたします」と宣言するのですが、ここでおもわず、目頭が熱くなってしまいました(p308~309)。馬鹿なこと、愚かなことと言いながらも、その台詞からはどこか、誇り高いものを感じたのです。このとき藤吾は、心から新兵衛のことを認めたのかもしれません。
     人が人を思うとはどういうことなのか。
     美しく切ない物語でした。

  • 歌と、共に。
    沁みましたぁ。

    心を澄まして生きたい。
    と。思わせてくれる。
    お話でした。

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