- Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041101193
作品紹介・あらすじ
かつて一刀流道場の四天王の一人と謳われた瓜生新兵衛が、山間の小藩に帰ってきた。一八年前、勘定方だった新兵衛は、上役の不正を訴えたが認められず、藩を追われた。なぜ、今になって帰郷したのか?新兵衛を居候として迎えることになった甥の若き藩士、坂下藤吾は、迷惑なことと眉をひそめる。藤吾もまた、一年前に、勘定方であった父・源之進を切腹により失っていた。おりしも藩主代替わりをめぐり、側用人・榊原采女と家老・石田玄蕃の対立が先鋭化する中、新兵衛の帰郷は、澱のように淀んだ藩内の秘密を、白日のもとに曝そうとしていた-。
感想・レビュー・書評
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若き日々に剣道場で四天王とも言われた面々も中年になり各々歩く道も境遇も別れてしまったけど、究極の局面では自ずと固い絆が生ずる!
瓜生新兵衛は愛妻の病死で失意のうちに昔追われた故郷に亡き妻との約束を果たすために舞い戻るが、藩にはきな臭い争い事が渦巻いている。
武骨だが愛すべき人柄の新兵衛もご多分に洩れず否応無く渦中に巻き込まれて行くのだが、我を貫き通す生き様が周りにも大いに影響していくのであります♪
亡妻の甥っ子にあたる藤吾はひたすらに傾いた家の再興のために出世すべく邁進しているのだが、不意に現れた叔父新兵衛が出世の邪魔になる懸念から距離を置く。そんな彼もいつしか新兵衛に徐々に心酔するようになるけれどその過程がいいです。
手放しのハッピーエンドではありませんが例によって余韻が残るエンディングでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大河ドラマや水戸黄門などテレビの印象で歴史ものって何だか古臭いというイメージをもってしまうのはもったいないなといつも感じます。
司馬遼太郎的なものはそんな感じもありますが、最近の葉室麟や阿部龍太郎、山本兼一の歴史ものは作者なりの考察が新しくて面白いと思います。
単に古い時代の物語というだけでなく、虫や花や香りなどが織り込まれてのクライマックスのさっぱり感は葉室麟独特のものなのでしょうが、本書も期待以上でした。 -
簡単に本心を言えない世界。
みんな相手の気持ちを慮って動いてる。
だけどその手には常に刃があって。
すれ違いの結果は、お互いに刃をむけることにもなりかねない。
心の刃と現実の刃と。
難儀な世界だ。 -
武士の世。権力に翻弄され自死た父の死後、若者らしい心を失いかけていた藤吾が自らの道を信じることができるようになったのは、疎ましいと思っていた叔父(新兵衛)の生き方だった。現代の世も自分の信じる道を進むことは難しい。人生の最後に満足できる生き方とはどんな生き方か、考えさせられた。幸せは自分の心が決める・・・
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泣きそうになりました。
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花弁が一片ずつ散っていく散り椿。美しくも切ない時代小説。本作品に込められた思いは”大切な人を守る”。上役の不正を訴えたばかりに藩を追われる事になった実直な剣豪が主人公。苦労をかけた愛しき病弱な妻の最期の願い。それは故郷の散り椿を見に行って欲しいと。18年ぶりに訪れた故郷が待ち構えていたもの、それは権謀術数渦巻くお家騒動。更にそこには過去の忌々しい事件の真相が一片ずつ浮き彫りになっていく。それにしても葉室作品の特徴は派手な描写はなく淡々と物語を進め、時々の心理描写が絶妙。例えば和歌をさり気なく使いこなし物語に彩りを与える。教養の成せる技だな~。本作品加えてミステリー要素が幾重にも織り込まれ最後まで飽きさせません。それにしても後半の亡き妻の回顧録。目頭があつくなりました(^-^;)
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13/03/12 終わりは少し寂しい気がするが。
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武士を描く長編。
正義を見失いかけている若者と、正義を貫いて敗れたことのある大人と、二人を支えて共に立ち向かう女性の話。
本筋は、藩の中に潜む陰謀に多くを背負ったかつての若者たちが葛藤を振り切って立ち向かう、という定番のもの。
人物が多く、時系列も人間関係も少々複雑になっている。
が、拗れた権力争いに絡む、失われた恋や深い愛情が、複雑ながらも切なく清々しくて美しい。
そして同時に展開される、若者の恋模様が、初々しくも力強く一途でいとおしい。
恋愛小説としても、青春小説としても、愛情や友情をひっくるめて、「誰かを想う」ということの苦しさと素晴らしさが端正に書かれている。
ちょっと仮面ライダー響を思い出した。
著者プロフィール
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