居心地の悪い部屋

制作 : 岸本 佐知子 
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年3月27日発売)
3.50
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  • レビュー :62
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101278

作品紹介

うっすらと不安な奇想、耐えがたい緊迫感、途方に暮れる心細さ、あの、何ともいたたまれない感じ-。心に深く刻まれる異形の輝きを放つ短編を集めたアンソロジー。

居心地の悪い部屋の感想・レビュー・書評

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  • 翻訳家・岸本佐知子さん編+訳の短篇集。「イヤ」「さすがヘン」という素晴らしい評判も聞きつつ、発売日に買って積読にしておりました。地味ながらお洒落な装丁。

    最初のブライアン・エヴンソン『ヘベはジャリを殺す』から、傷と痛みをともなうイヤな感じで物語が進む。淡々と、傷と痛みをともないつつ、それは二人の間では決まり切ったルールなのか、なんか甘やかさもあったりして、そこが不思議な感覚。以前読んだレベッカ・ブラウン『私たちがやったこと』(柴田元幸編訳『むずかしい愛』所収)に通じる感覚ながら、ドライな残酷さがもっと軽やかに描かれているような気がした。舞台ががらんとした(と思う)部屋で、小道具がタキシードやらチケットやらと、なんだか無機質でスタイリッシュなのが効果を上げてるのかもしれない。

    どの短編も、お約束のストーリー展開を反故にして、ゆるゆると「居心地の悪い」方向に物語が転がっていきます。ただ、意外でイヤ感はありながら、それは決して下品なゲテモノセレクトでなく、クリーンでそこはかとない知的なおかしみが漂う、そんな小説を岸本さんが選んでくださっているような気がする。人間の喜怒哀楽をつぶさにとらえた小説ばかりを選べば、「繊細な感覚を持っている」と評されるのはたやすいものだけれど、岸本さんは、そこ以外の要素をとらえるのに長けた、とても繊細な感覚の読み手だと思う。いつものとおりの明晰すぎる「訳者あとがき」では、岸本さんの読書に対するお考えのひとつが提示されており、こちらも愉しいです。

    個人的に好きなのは、先の『ヘベは―』と、ジュディ・バドニッツ『来訪者』、ジョイス・キャロル・オーツ『やあ! やってるかい!』。『来訪者』は落語『鷺とり』を彷彿とさせるものの、ハイウェイがらみのダークなイヤ加減がアメリカン・ホラー。『やあ―』は、だらだら書きの文章の裏に隠れた、シャープな物語の運びが面白いと思いました。

    読書に「ほっこり」「泣ける」「共感」を求めるかたには断固としておすすめいたしません(笑)が、苦みやえぐみを味わう読書もまた愉しいかと思いますので、この☆の数です。

  • 読み終わった後になんとなくそれこそ居心地が悪くなるような短編を集めたアンソロジー。訳は岸本佐和子。
    読んだことある作家はジュディ・バドニッツ、エヴンソン、アンナ・カヴァン。やはりこのお三方の作品は飛びぬけていた。特にエヴンソンの「父、まばたきもせず」。あの一瞬(一文)ですべてがわかるという驚き。
    あとはステイシー・レヴィーンの「ケーキ」が良かった。「トパーズ」とか書いてた時のごりごりの村上龍に通じるものを感じた。高校の時めっちゃはまってたから懐かしい感じもした。

  • 11編からなる短編集。それぞれ個性的な話ばかり。読んでいる時はヌルリ、読み終えるとザラリとした感触。どこか不思議な感覚の残る作品ばかりだった。
    それにしても岸本さんは「変愛小説集」といい、今回の「居心地の悪い部屋」といい、タイトルセンスが光りまくっていて、いつも感心させられる。

  • 読めばもう二度と元の世界には戻れない。
    今とは違う世界へ誘う短編集。

    どの作品も「?」が残る奇妙なものばかりでした。
    また淡々としている印象を受けました。

    その中でも、「あざ」の急展開、「来訪者」の裏側でいったい何が起こっているのか、
    「潜水夫(ダイバー)」の何も起こらなかった感、「ささやき」の不気味さには、
    それぞれ独特なものを感じたように思います。

    ミステリ:☆☆
    ストーリー:☆☆☆
    人物:☆☆
    読みやすさ:☆☆☆

  • たしかに、居心地は悪い。
    強烈に、ではないけれど、確実に不安になる。
    でも、後味が悪いわけではない。
    これら11人12篇を編訳した岸本さん、お見事!

  • で、どうなったの?
    解説してほしい。・・とモヤモヤします。
    「ささやき」とか「来訪者」は特に。
    「潜水夫」はクセの強いオヤジを懲らしめたくなるピーターの衝動があるあるですが、その後の展開がヒヤヒヤでまさにお題目通りでした。

  • 20161101
    表紙とタイトルに惹かれて読んだが、本当にただ居心地の悪くなる話が多かった。自分で言うのもどうかと思うが、わたしを持ってしてもこれほど「非倫理的でシュール」な短編集には出会ったことがない。そして面白いかと聞かれると、オチがなくて戸惑う

  • 据わりの悪い、ぐらぐらした赤ちゃんの首のような短編集。
    不安になる。

    冒頭、「へべはジャリを殺す」のなんとも不穏で、それでいて共犯めいた二人の関係がいい。

    どれもこれも粒ぞろいの気味の悪さ。
    「来訪者」が一番気持ち悪かったかも。
    「えっ?ど、どうなったの!!」て思った……

  • 奇妙な物語の奇妙な設定って、言葉を尽くして説明されればそれでも腑に落ちるとは思うんです。あ、そういう変な設定の世界観なのね了解ですー、って。
    ところが本作に収められた短編達は、そんな世界観の説明を一切していません。不親切なくらいに言葉を尽くしません。容赦ないくらいに、読者に無理解のままで奇妙な世界観に興じることを求める作品群です。

    「何これ意味わかんないんですけど」

    と徹底的に白けるか、

    「何これ意味わかんない面白い!」

    と理解できないことそのものを楽しめるか。

    読む人を選ぶというよりは、読む人の読書の楽しみ方のメジャーが試される作品と言えるかもしれません(どっちが正しいとか優劣があるとかいうことではなく)。

    うーん、本ってほんとに色々あって楽しいね〜(浅


    【内容まとめ:とも言えないような箇条書き】

    ◉へべはジャリを殺す…まぶたを××男、××××男。延々と続く、理不尽な暴力の予感。

    ◉チャメトラ…銃撃で友人の頭にポッカリと空いた穴からポロポロとこぼれ落ちる夢と記憶、それを食べる俺と犬。

    ◉あざ…優秀なのに、決して一番にはなれない彼女と同じあざが、何故「地下牢に幽閉された人物」の手にあったのか。

    ◉来訪者…いっこうに到着しない両親に何が起こったのか?

    ◉どう眠った?…2人の男が延々と自分の見た夢を建造物に見立てて会話する。

    ◉父、まばたきもせず…義理の娘の死体を埋める男の話。

    ◉分身…ある朝、目をさますと、足が取れていた。

    ◉潜水夫…故障した船の修理のために助けを依頼した男との暴力の予感を秘めた駆け引き。

    ◉やあ!やってるかい!…って言ってるだけの青年の末路。句点のないリズム感は、ジョギングのリズム?

    ◉ささやき…俺のいびきはどうやらうるさいらしい。恋人に指摘され、確認のために寝ている時に録音をすることにしたが、テープに収録されていたのは、何者かの「ささやき」だった。

    ◉ケーキ…まんまると太るために、部屋の壁にケーキを並べた女が直面した思わぬ障害。

    ◉喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ…野球を題に取ったホラ話。

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