居心地の悪い部屋

制作 : 岸本 佐知子 
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.47
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本棚登録 : 532
感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101278

作品紹介・あらすじ

うっすらと不安な奇想、耐えがたい緊迫感、途方に暮れる心細さ、あの、何ともいたたまれない感じ-。心に深く刻まれる異形の輝きを放つ短編を集めたアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳家・岸本佐知子さん編+訳の短篇集。「イヤ」「さすがヘン」という素晴らしい評判も聞きつつ、発売日に買って積読にしておりました。地味ながらお洒落な装丁。

    最初のブライアン・エヴンソン『ヘベはジャリを殺す』から、傷と痛みをともなうイヤな感じで物語が進む。淡々と、傷と痛みをともないつつ、それは二人の間では決まり切ったルールなのか、なんか甘やかさもあったりして、そこが不思議な感覚。以前読んだレベッカ・ブラウン『私たちがやったこと』(柴田元幸編訳『むずかしい愛』所収)に通じる感覚ながら、ドライな残酷さがもっと軽やかに描かれているような気がした。舞台ががらんとした(と思う)部屋で、小道具がタキシードやらチケットやらと、なんだか無機質でスタイリッシュなのが効果を上げてるのかもしれない。

    どの短編も、お約束のストーリー展開を反故にして、ゆるゆると「居心地の悪い」方向に物語が転がっていきます。ただ、意外でイヤ感はありながら、それは決して下品なゲテモノセレクトでなく、クリーンでそこはかとない知的なおかしみが漂う、そんな小説を岸本さんが選んでくださっているような気がする。人間の喜怒哀楽をつぶさにとらえた小説ばかりを選べば、「繊細な感覚を持っている」と評されるのはたやすいものだけれど、岸本さんは、そこ以外の要素をとらえるのに長けた、とても繊細な感覚の読み手だと思う。いつものとおりの明晰すぎる「訳者あとがき」では、岸本さんの読書に対するお考えのひとつが提示されており、こちらも愉しいです。

    個人的に好きなのは、先の『ヘベは―』と、ジュディ・バドニッツ『来訪者』、ジョイス・キャロル・オーツ『やあ! やってるかい!』。『来訪者』は落語『鷺とり』を彷彿とさせるものの、ハイウェイがらみのダークなイヤ加減がアメリカン・ホラー。『やあ―』は、だらだら書きの文章の裏に隠れた、シャープな物語の運びが面白いと思いました。

    読書に「ほっこり」「泣ける」「共感」を求めるかたには断固としておすすめいたしません(笑)が、苦みやえぐみを味わう読書もまた愉しいかと思いますので、この☆の数です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「苦みやえぐみを味わう読書もまた愉しいかと」
      色々あるコトが実感出来るのが素敵です(と、言いつつホラーは苦手なので、極力読みません)
      「苦みやえぐみを味わう読書もまた愉しいかと」
      色々あるコトが実感出来るのが素敵です(と、言いつつホラーは苦手なので、極力読みません)
      2012/05/15
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      nyancomaruさん:

      食べものと同じで、好きな読後感はあるにはあるんです。でも同じものばっかり楽しんでいても、好みが固定されてしまう...
      nyancomaruさん:

      食べものと同じで、好きな読後感はあるにはあるんです。でも同じものばっかり楽しんでいても、好みが固定されてしまうような気がするので、いろいろ楽しめるフットワークは保っておきたいと思っています。その結果、乱読ですけど。

      実は私もハードなホラーは苦手ですので、そういうものは極力避けています。
      2012/05/15
  • オノ・ナツメの絵がハマる気がする。
    平面描写が好きな人におすすめ。

  • 最近マイ大注目の岸本佐知子さん編集海外小説短編集。読んでうっすらと不安な気持ちにさせるような作品を集めており、読者に少しでも居心地が悪くなるような気持ちにさせたら勝利です。
    結果、しっかり不穏な気持ちになる作品が多々ありました。ホラー映画のように読んでギャーっっとなるナイトメア的(1作だけはそう感じましたが)ではなく、なんとなく不安、不穏な空気を孕んだ小説の祭りでした。
    ルイス・アルベルト・ウレア氏の「チャメトラ」、アンナ・カヴァン氏の「あざ」は好み。

  • 本読みとして「こういうジャンルの本を面白いと思えるとカッコいい感じがする」というものがあって、わたしの中ではひとつ「奇想系短編」がそれにあたるのだけれど、どうしてもハマれない。

    若い頃から何度もトライしているけれどなかなかしっくりこない。

    この本もそういう感じだったなぁ。

  • 読み終わった後になんとなくそれこそ居心地が悪くなるような短編を集めたアンソロジー。訳は岸本佐和子。
    読んだことある作家はジュディ・バドニッツ、エヴンソン、アンナ・カヴァン。やはりこのお三方の作品は飛びぬけていた。特にエヴンソンの「父、まばたきもせず」。あの一瞬(一文)ですべてがわかるという驚き。
    あとはステイシー・レヴィーンの「ケーキ」が良かった。「トパーズ」とか書いてた時のごりごりの村上龍に通じるものを感じた。高校の時めっちゃはまってたから懐かしい感じもした。

  • 11編からなる短編集。それぞれ個性的な話ばかり。読んでいる時はヌルリ、読み終えるとザラリとした感触。どこか不思議な感覚の残る作品ばかりだった。
    それにしても岸本さんは「変愛小説集」といい、今回の「居心地の悪い部屋」といい、タイトルセンスが光りまくっていて、いつも感心させられる。

  • 読めばもう二度と元の世界には戻れない。
    今とは違う世界へ誘う短編集。

    どの作品も「?」が残る奇妙なものばかりでした。
    また淡々としている印象を受けました。

    その中でも、「あざ」の急展開、「来訪者」の裏側でいったい何が起こっているのか、
    「潜水夫(ダイバー)」の何も起こらなかった感、「ささやき」の不気味さには、
    それぞれ独特なものを感じたように思います。

    ミステリ:☆☆
    ストーリー:☆☆☆
    人物:☆☆
    読みやすさ:☆☆☆

  • たしかに、居心地は悪い。
    強烈に、ではないけれど、確実に不安になる。
    でも、後味が悪いわけではない。
    これら11人12篇を編訳した岸本さん、お見事!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      岸本佐知子 の訳す本は目に付け所が、、、エッセイも変ですが。ずっと楽しみな人です。
      岸本佐知子 の訳す本は目に付け所が、、、エッセイも変ですが。ずっと楽しみな人です。
      2012/05/02
  • タイトルの通り、読み終わった後、何とも表現し難い、居心地の悪い後味、奇妙な気持ち悪さが残る。

  • 不思議なテイストの話。
    あまり好きではなかった。

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