ナミヤ雑貨店の奇蹟

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 1464
  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101360

感想・レビュー・書評

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  • お店が閉まった後シャッターのポストに相談事を書いた手紙を入れると、翌朝店の裏の牛乳箱に返事の手紙が入っている。
    ナミヤ雑貨店の店主(ナミヤさん)が一所懸命考えて回答を書いてくれるのだ。

    1人では決意出来ないこと。
    とにかく誰かに聞いてほしいこと。
    自分の考えが間違っていないと確かめたいこと。

    身近な人には話せないことが、通りすがりの人には話せたりするけど、近所の雑貨店の人という距離も同じだろうと思う。
    しかも匿名で手紙を書いて、その手紙に真剣に答えてくれる人なんて滅多にいない。
    うらやましいなと思った。
    変なことを言ってはいけないとプレッシャーを感じながら出してくれた回答を受け取れること。
    そしてその後どうしただろう?と心配しつづけてもらっていること。
    そのどちらもとてもうらやましい。

    この物語の中にはナミヤさん以外にも回答者が登場していて、彼らの回答はナミヤさんとはかなり趣が違う。
    彼ら自身も自分の未来が見えない場所にいるから、相談者の境遇が恵まれた者の甘えに見えたりもする。
    苛立ちを表現してしまう場面もある。
    でも、ナミヤさんの回答の方が相談者にとって有益で、彼らの回答は役に立たないということではない。
    むしろ聞くのは誰でもいいんじゃないかとも思う。
    もちろん騙してやろうとか利用してやろうとか、悪意を持っている人に相談したらダメだけど。

    自分が悩んでいることを話して、人に意見も求める過程で自分がどこに引っかかっているかが見えてくる。
    もちろん相手にもそれは伝わる。
    それを踏まえて語られる相手の意見をはその引っかかりの結び目を別の視点で見せてくれる。
    きっとその視点が自分の凝り固まった視点とかけ離れていればいるだけよく見える。
    最初は反発してもいつか気付ける。
    自分が選んだ道も選ばなかった道もどちらも同じ道だったということに。

    物語の中では相談者が選んだ道が正解だったかのような書かれ方をされている箇所もあって、その道を選べたのはナミヤ雑貨店の回答のおかげと相談者は信じている。
    でも本当はナミヤさんが語っている通りで、大事なのは回答ではなくて本人の心がけなんだと思う。
    誰かの意見を聞いてその通りにしたとしても、それを行うのは自分。その道をどんなペースで歩くか、誰と歩くかを決めるのは自分なのだから。

    後悔しないために必要なことは、この道しか選べなかったと思うことなんじゃないかと思う。
    他の道もあったかもしれない、いや実際にあった。だから悩んだ。
    だけど私は徹底的に向き合って、結果としてこの道を選んだ。
    だからやっぱり私にはこの道しかなかったのだと。

    人が人に相談するのは正解が知りたいからじゃない。
    自分の気持ちが知りたいからなんだ。
    誰かにNOと言われても曲げられない気持ちを知りたいからなんだ。
    そう思った。

  • また東野さんのマジックにやられてしまった。
    いやいや、これは浪矢さんと皆月さんのマジックだったんだ。

    人は人生の選択をどう選べばいいのか悩む生き物だと思う。
    どっちが正解だなんて誰もわからないのに、誰かに聞いてみたくなる。

    浪矢さんの返事もありがたいけど、ここにあるほぼほぼは悪者になりきれない若者達が書いてるんだよね。
    それこそ奇蹟だわ。

  • なんとも不思議な設定の物語。
    様々な時間が交差する中で、沢山の人達の思いを読みながら感じることができる作品。
    ページ数が多いにもかからわず、あっという間に読み終わってしまいました。
    とにかく、誰かが顔もわからない誰かのために必死になって問題を解決していく姿はとても美しく見えました。
    日々の生活に疲れている人、悩みがある人、読んでみてください。
    人と人との繋がりを感じられるとても温かい作品になっています。
    読み終えた後は心がふわっと温かく包まれるような感覚になると思います。☺️

  • 著者が帯に「一か八かの大勝負でした」と書いていますが、確かに(少なくとも、僕が読んだ東野作品の中では)挑戦的で新鮮な作品でした。色々なコトが色々な場面でつながっていくので、“一気読み”したい。最後はほっこりした気持ちになります。

  • 東野さんってほんまに幅の広い作家さんやなあとしみじみ。

    ミステリ作品でもそうだけどこの人の作品はとにかく読みやすい。軽く読める。そのくせ、別段薄っぺらいわけでもない。

    東野さんでパラレルワールドといえば
    「時生」はかなり好きだったな~と。

    まあ、なんにせよ面白かったです。

  • 東野圭吾氏のこの小説も大変面白かったです。図書館で半年以上待った甲斐がありました。

    私は、この本の主人公の一人である晴美女史とほぼ同じ年齢なので、時代背景も手に取るようにわかり、懐かしい思いと共に、イメージすることができました。

    大阪万博、モスクワオリンピックのボイコット、バブル前後の日本の様子、その後に急速に発達したインターネットの世界。。。

    個人的に共感を持てたのは、晴美女史が勉強をして、起業をする過程において、私も取得した「中小企業診断士」という資格を取ったという点です。診断士というのは、取得しただけでは「お金にならない」とよく言われますが、それを活かすも殺すも「その人次第」というのも、事実だと思います。

    この本の登場人物を対象に含めていいのかわかりませんが、診断士という資格を上手に活用している人が、私が愛読している一人である「三橋氏」につづいて二人目だったので、この本は印象に残るものになると思います。

    この本は昨日(2013.4.25)から読み始めて、あっという間に読み終わりました。2013年度のGWの始まりにふさわしい、「私へのご褒美」を与えてくださった東野氏に感謝します。

  •  東野圭吾はわりと好きな作家なので、できるだけ古い作品から年代順に追っかけて読んでいるのだけれど、何しろ数が多い。頑張って読んでいるつもりでももちろん他の本だって読むからなかなかはかどらず、その間にどんどん新刊が発売される。まさか読むよりも書く方が速いなんてことはないよな、と以前冗談に書いたことが冗談ではなくなっている。とにかくこういう分の悪いいたちごっこを続けているといつまでたっても話題の新刊を読めないので、ちょっとズルをして間を飛ばして読んだのが今回のこれ。読んでみればズルするほどのものでもなかったかなと思うけど。バチが当たったか(笑)。 
     東野圭吾っぽくない、と大して読んでいないぼくがいうのも何だけど、こういうのは宮部みゆきじゃないかなあやっぱり。ストーリーはよくできているし、3人組の泥棒が偶然廃屋に入り込んで超常現象に出くわすところから始まる初編から、一見独立した5つの物語がお互いに連関している構成もなかなかうまいと思う。キャッチコピーにある「心ふるわす物語」ほどのものかどうかはともかく及第点といっていいだろう。ただ、宮部みゆきならもっとうまく書くだろう、彼女に書いてほしかった、という感がぬぐえない。何が違うのか。一言でいうと文章力だ。宮部の文章のうまさはこのブログになる前のWebmaster日記時代から何度も何度も書いている。本当に感心するくらいうまい。それに比べられては東野圭吾といってもかすんでしまうのは仕方ないところだが、前にも書いたように彼の文章は時折練れていないというか書きっぱなしの雑なところがある。読んでいてほんの少しなんだけどざらつく感じが引っかかる。この人推敲が足りないんじゃないだろうか。売れっ子の多作家だから仕方ないのか。そんなことないよな。文章は作家の命だろうに。惜しいと思うな。

  • (No.12-61) ミステリなのかな?

    時にがっかりすることもある東野作品ですが、出たらやっぱり読んでしまう。それは私にとってのヒット率が高いからです。100パーセントではなくても、かなりの高率で面白く読めるから。

    この作品は、時を跨ぐ不思議な出来事がおき、ちょっとずつ登場人物が絡み合いながら最後に全部がきれいに繋がる構成でした。こういうのは大好き。いくつもの出来事が、それぞれ感動的でした。

    なさけない男を書くのが大変上手い東野さん。主役の3人、翔太、敦也、幸平は、考えも浅く衝動的で、犯罪に手を染めてしまっても、まともにやることも出来ないというなさけない若者。その3人が一生懸命ない知恵を絞って人のために考える、という意外性がすごく良かったです。彼らの思いつく解決策が、普通の悩み相談の回答者などとはかなり違うのですが、真実を点いています。まあ時を跨いでいるので、かなりずるいところもありますが。
    そして一生懸命考えた経験は、最後には自分たちを救うことになったと思います。

    気持ちの良い読書が出来ました。読んで良かったです。

  • これは、新しい東野圭吾かもしれない。

    沢山では無いですが、東野さんの著書を好んでいます。しかし、今まで「ナミヤ雑貨店の奇跡」に似たものは無かったと記憶しています。あれば是非、教えて頂きたいです。

     少し驚いています。ミステリーじゃ無いし、SFでも無い。どちらかと言うとファンタジーかな?

     私の感想としては「こんな面白いの、文庫化されるまで待てないよ!」です。

    色々と書きたいのですが、あえて書かないレビューは以上!

    • ohsuiさん
      気になってきました、、!
      気になってきました、、!
      2012/05/22
  • 東野さんの新刊です。つくづくファンなんだなと思います。今回は今までにはないほど、ファンタジーなミステリーで、過去の科学的なミステリーとは一線を引く作品でした。著者も「一か八かの」と語っているように今までの作品にはないストーリーで、読者としても新鮮な世界観を楽しめました。

    作品のキーワードの1つを「手紙」だととらえれば、この本も1つの手紙です。そこからこの本も今の自分、新入社員である私に対するメッセージを捉えました。「今のあなたは白紙の状態です。何も恐れることはなく先に進むのみですよ」と。白紙の地図、まだ何も書かれていない、何も知らない状態が今の私だということです。

    イギリスの哲学者、アメリカの独立にも影響を及ぼしたジョン・ロックは「タブラ・ラサ(白紙)」という思想を展開しました。これは経験主義の見地から、生まれたての子供は何もかかれていないキャンバスを埋めるように知識を身に付け成長していくということですが、今の私は社会的に白紙の状態で、これに共通していると考えました。恐れることはないと、ただ先をみて進むのみ。

    本編のネタバレはしたくないいのでこのくらいしか書けないですが、今のタイミング、会社の新人研修が終わった日に読み終えたことは恵まれていたと思います。

著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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