ナミヤ雑貨店の奇蹟

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 1500
  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101360

作品紹介・あらすじ

あらゆる悩みの相談に乗る、不思議な雑貨店。しかしその正体は……。
物語が完結するとき、人知を超えた真実が明らかになる。
すべての人に捧げる、心ふるわす物語。

感想・レビュー・書評

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  • コソ泥の3人、敦也、幸平、翔太が夜明けまで身を隠すために入りんだ、ナミヤ雑貨店。

    「誰かが郵便口から手紙を投入した。こんなに時間に、こんな廃屋に郵便が届くわけがない」誰が、なぜ、誰もいない廃屋に封書を投函したのか?そして封書の内容は悩みの相談なのであろうか?

    その理由は、すぐにわかった。
    悩みの相談郵便は、その回答が現代と未来の時空を超えて行われる。シャッターの郵便投入口と牛乳箱は、過去と繋がっている。過去の誰かが、その時代のナミヤ雑貨店に手紙を投げ込むと、現在ここにある店に届く。ナミヤ雑貨店に入ると実際の時間の流れよりもゆっくりと時が流れる。そして、家の裏口の戸を閉めると、過去のある時代にタイムスリップする。外に出ようと思って戸を開けると、現代に戻り、家の中と外の時間が同じように進む。となんとも不思議な生きているような家である。

    大変なところに隠れたものだと思わずにはいられない。家そのもののトリックもさることながら、ポストから投函される悩み相談にが答えるなんて、責任重大である。コソ泥トリオの知能では、適切な受け答えができるのだろうか?と、心配しながら、2通目を読み始める。そこで、私はこの3人が過去を経験してきた現代人であったことを思い出した。つまり過去から現在の歴史を知っている、しかも3人が知らなくてもネットで調べることができる。今の人間だからこそ書ける回答を返信することができるのだ。つまりはこの3人でも、どうにかなる、いや未来を知っているだけ、より適切なアドバイスができるかもしれない。

    他人の悩みなんて関心がなければ、誰かのためになるなんてことも考えたことなどなかった彼等が、不思議な廃屋に導かれ過去の人から相談を受ける立場になる。今まで、人に頼られたこともないであろう彼等が、自分が頼られていることがわかった時、今まで持つことのなかった責任感と思いやりが芽生えたのだろう。それ故、真剣に、わからない時は質問までして、誠意を持って対応をしている。しかも彼等の稚拙な文章は稚拙ではあるものの、著者の力で相談者がいいように理解をしながら進んでいく設定となっている。これも彼らの誠意の延長線上にある結果として捉えてしまう。

    相談者は自分の手紙が未来のしかも店主・浪矢雄治ではない人間に届き、それが未来からのアドバイスであるということは知らない。そして相談者にそれを知らせることはできない。そのことは彼等もわかっているので、「悪いことは言いません。そうしなさい。いうことを聞いてよかったと必ず思うはずです。」とか「信じるか信じないかはあなた次第です。でも信じてください。信じてくれることを心から祈っています。」と、自分たちが未来の人間であることについては説明しない。説明しても信じてもらえないと思っているのかもしれないが、説明しないことが彼等の誠意であるように思う。

    『ナミヤ雑貨店』の店主・浪矢雄治は、もともと近所の子供たちの挑発に乗り、相談箱を設置するようになった。意外と好評で店の前に貼られる相談のアドバイスを読むために遠くから人が集まってくる。子供からの些細な相談に真剣に回答する雄治の姿が、真面目すぎるが、誠実さと優しさが感じられて微笑ましい。
    そして、ナミヤ雑貨店店主・雄治が見た不思議な夢のお告げを信じて、自分の33回忌に1日だけ相談の結果についての意見を求める日を設定し、息子・浪矢貴之にたくす。なぜ、33回忌なのか、私が読み飛ばしているか、よくわからない。
    しかも病院から雄治が戻る日と33回忌が、繋がっていたのはなぜなのかというのが、よくわかっていない。

    が、とにかく自分が真剣に向かい合った結果について、気にするほど、雄治の真剣さが伺える。
    そして、雄治にとって初めての大人の相談・不倫の相手との子供の出産についての女性からの相談について子供からの意見がある。これを読んだ時、作者から雄治への最後のプレゼントのように感じた。

    相談者の殆どが、「丸光園」との関わりがある。これが相談者のキーワードである。

    慰問演奏に来た松岡克郎は、「丸光園」の火事で、セリという少女の弟・タツユキを助けに行き亡くなった。セリは、その後、天才女性アーティストとして人気を博し、克郎のオリジナル曲「再生」を歌い続ける。
    和久浩介は、親の夜逃げ中に逃げ、藤川博として保護されて「丸光園」に入所する。そこに武藤晴美がいた。
    武藤晴美は、コソ泥トリオの助言により、成功した。晴美は、丸光園の再建を考えていたが、コソ泥トリオが、世間の噂を信じ晴美の家にコソ泥に入る。そして、彼等もまた丸光園出身であった。
    「ナミヤ雑貨店」と「丸光園」の不思議なつながりを考えるほど、絶対に雄治が操っているように思える。

    そして、雄治が32年前に受けったら白紙の手紙、それは彼等が雑貨店を後にするときに何気なく投函したものであった。時を越え、未来から白紙の手紙を受け取った雄治は、「白紙の地図を手に、道も目的地もわからない人からの悩み相談」として返事を返したことが印象的であった。

    「あなたの地図は、まだ白紙なのです。だから目的地を決めようにも、道がどこにあるかさえもわからないという状況なのでしょう。
    地図が白紙では困って当然です。誰だって途方に暮れます。
    だけど見方を変えてみてください。白紙なのだから、どんな地図だって描けます。すべてがあなた次第なのです。」

    人は人生の中で必ずいくつかの岐路に立つ。その時にどうすべきかということを教えてくれる物語であった。

  • 店じまいした古い雑貨屋に、コソ泥3人組が忍び込んだ夜。
    どういうわけか店のポストに悩み相談の手紙が届き、過去と未来が繋がって。。。
    奇蹟のような一夜を、心から祝福したくなります。

    奇蹟の発端となったのが、ナミヤ雑貨店の「ナミヤ」を「ナヤミ」と
    読み違えた小学生からの可愛らしい悩み相談を
    店主の浪屋さんが受け流さず、親身になって答えてあげたこと。
    その一件をきっかけに、彼は数えきれないほどの悩み相談を受けることとなるのですが
    他愛のない相談から生死にかかわるような深刻な相談まで
    ひたすら丁寧に返事を書く、この浪屋さんが素晴らしい。
    生協の白石さんに、昭和の恥じらいと勤勉さをさらに加えたような。

    浪屋さんが、なんの見返りもないのに、時には夜を徹して返事をしたため
    相談者がその後、不幸になっていないか気を揉み
    自分の死後のことまで事細かに気を配ってくれたおかげで
    繋がるはずのなかった縁が繋がり、ある女性は未来に救われ
    自暴自棄になっていたコソ泥たちは、自分たちが変えた過去に救われるのです。

    平凡な日々の中で、その時その時、自分ができることに骨身を惜しまず
    丁寧に生きた、ただの雑貨屋の主が起こした美しい奇跡。
    素敵です。

    • だいさん
      >生協の白石さんに、昭和の恥じらいと勤勉さをさらに加えたような。

      これ、笑っていのかどうか?悩みます。
      >生協の白石さんに、昭和の恥じらいと勤勉さをさらに加えたような。

      これ、笑っていのかどうか?悩みます。
      2013/08/21
    • まろんさん
      だい▽さん☆

      あらまあ、だいさんを悩ませてしまいましたか!
      できましたら、誰もいないところで密やかに笑ってみてください♪
      私も、だいさんが...
      だい▽さん☆

      あらまあ、だいさんを悩ませてしまいましたか!
      できましたら、誰もいないところで密やかに笑ってみてください♪
      私も、だいさんがくふふ、と笑っている姿を想像して
      こっそりうれしがりたいと思います。
      2013/08/23
  • お店が閉まった後シャッターのポストに相談事を書いた手紙を入れると、翌朝店の裏の牛乳箱に返事の手紙が入っている。
    ナミヤ雑貨店の店主(ナミヤさん)が一所懸命考えて回答を書いてくれるのだ。

    1人では決意出来ないこと。
    とにかく誰かに聞いてほしいこと。
    自分の考えが間違っていないと確かめたいこと。

    身近な人には話せないことが、通りすがりの人には話せたりするけど、近所の雑貨店の人という距離も同じだろうと思う。
    しかも匿名で手紙を書いて、その手紙に真剣に答えてくれる人なんて滅多にいない。
    うらやましいなと思った。
    変なことを言ってはいけないとプレッシャーを感じながら出してくれた回答を受け取れること。
    そしてその後どうしただろう?と心配しつづけてもらっていること。
    そのどちらもとてもうらやましい。

    この物語の中にはナミヤさん以外にも回答者が登場していて、彼らの回答はナミヤさんとはかなり趣が違う。
    彼ら自身も自分の未来が見えない場所にいるから、相談者の境遇が恵まれた者の甘えに見えたりもする。
    苛立ちを表現してしまう場面もある。
    でも、ナミヤさんの回答の方が相談者にとって有益で、彼らの回答は役に立たないということではない。
    むしろ聞くのは誰でもいいんじゃないかとも思う。
    もちろん騙してやろうとか利用してやろうとか、悪意を持っている人に相談したらダメだけど。

    自分が悩んでいることを話して、人に意見も求める過程で自分がどこに引っかかっているかが見えてくる。
    もちろん相手にもそれは伝わる。
    それを踏まえて語られる相手の意見をはその引っかかりの結び目を別の視点で見せてくれる。
    きっとその視点が自分の凝り固まった視点とかけ離れていればいるだけよく見える。
    最初は反発してもいつか気付ける。
    自分が選んだ道も選ばなかった道もどちらも同じ道だったということに。

    物語の中では相談者が選んだ道が正解だったかのような書かれ方をされている箇所もあって、その道を選べたのはナミヤ雑貨店の回答のおかげと相談者は信じている。
    でも本当はナミヤさんが語っている通りで、大事なのは回答ではなくて本人の心がけなんだと思う。
    誰かの意見を聞いてその通りにしたとしても、それを行うのは自分。その道をどんなペースで歩くか、誰と歩くかを決めるのは自分なのだから。

    後悔しないために必要なことは、この道しか選べなかったと思うことなんじゃないかと思う。
    他の道もあったかもしれない、いや実際にあった。だから悩んだ。
    だけど私は徹底的に向き合って、結果としてこの道を選んだ。
    だからやっぱり私にはこの道しかなかったのだと。

    人が人に相談するのは正解が知りたいからじゃない。
    自分の気持ちが知りたいからなんだ。
    誰かにNOと言われても曲げられない気持ちを知りたいからなんだ。
    そう思った。

  • とてもいい感じでした!
    どなたにも、オススメできます~。
    この作者にしては珍しい?画期的ほのぼの系(変な表現ですが)
    といっても‥

    どんな悩みの相談にも乗るナミヤ雑貨店。
    その仕組みとは‥?
    ナミヤ雑貨店の主人・浪矢老人が、店名との洒落で始めた事だった。
    子供からの無邪気で調子のいい相談が多かったのだが。

    ある夜、金を盗んで逃走中の若者3人組が、廃屋に逃げ込む。
    雑貨店だったらしい建物の中には、40年も前の雑誌などがあった。
    郵便受けに「初めて相談します」という手紙が投げ込まれ、面白半分に返事を書いて牛乳箱に入れる。
    すぐに返事があり、それもとても真摯に受け止められていた‥
    不思議に思いつつも、また返事を書きたくなる彼ら。

    オリンピック出場を目指している選手だが、恋人が重い病気のため、看病に専念するかどうか悩んでいるという女性。
    歌手を目指したが目が出ず、家業を継ぐかどうか、迷っている青年。
    妻子持ちの男性の子を妊娠してしまったという女性。
    親が借金を抱えて夜逃げしようとしている男の子。
    養い親を助けるため、水商売を続けようかと考える若い娘。

    ナミヤ雑貨店の主の息子は、老いた父親にある頼み事をされる。
    三十三回忌のときに、一度だけ、悩み相談を復活してほしいというのだ。
    そして、昭和から平成へと、年月は進み、日本の様子も変わっていく‥

    不思議な連鎖が起きるエピソードのたたみかけ方が上手く、現実味のある相談と、ちょっとしたユーモアで、飽きさせません。
    すべてがハッピーエンドというわけではなく、切なさや思いがけない展開もありますが。
    読後感は良いですよ。
    人の関わり方はけっこうややこしいので、再読にも耐える内容。
    いつかまた読むのが楽しみです。

  • 東野圭吾さん初読。とてもよく出来たお話で、引き込まれた。
    どこか不思議だけど心がほっこりするような内容。どんな悩みにも(白紙にも!)誠実に返事をする浪矢さんいいなぁ。私も相談してみたい。

  • また東野さんのマジックにやられてしまった。
    いやいや、これは浪矢さんと皆月さんのマジックだったんだ。

    人は人生の選択をどう選べばいいのか悩む生き物だと思う。
    どっちが正解だなんて誰もわからないのに、誰かに聞いてみたくなる。

    浪矢さんの返事もありがたいけど、ここにあるほぼほぼは悪者になりきれない若者達が書いてるんだよね。
    それこそ奇蹟だわ。

  • 内側からは決して開かない扉の様だ。
    四方は壁に囲まれていて、窓ひとつない。
    行き場も、逃げ場も無い、空間に閉じ込められて、
    ただ、
    空回りするドアノブを必死でまわす。

    誰か、誰か、この扉を開けてください。
    外側から誰か、この扉を開けて、私をここから出してください…。

    ナミヤ雑貨店に救いを求めて訪れる人達の手紙からは、
    皆一様に、暗い部屋に監禁され、身動きひとつとれなくなっているような、そんな痛みが伝わってきた。

    そして、こんな雑貨屋が、
    この地のどこかに本当にあればいいな、と心から思った。

    見知らぬ他人の迷いやナヤミに、
    本気で耳を傾けてくれる人がいる雑貨店。

    残念ながら、その恩人とは会えないし、
    ナヤミの実体も見えない。
    助言を信じてみたところで、その後の未来もわからないし、
    私達にわかることなんて、なにひとつないのかも知れない。

    でも、ナヤミを投じると、
    その返事が必ず牛乳箱には帰ってくる。

    「みな、繋がっている」
    と、いうピンとはこない言葉を巷では良く、耳にするが、
    もしかしたら、こういう事なのかな・・・

    と、ナミヤ雑貨店の物語に触れ、ようやく
    その言葉にほんのすこし納得がいった私であった。

  • 面白かったけど、ちょっと不完全燃焼な感じ。
    敦也、幸平、翔太の3人をもうちょっと掘り下げてくれたらよかったな。

    3人の手紙の内容がかなりストレートで笑えた。
    浪矢さんに、私も相談したい!

  • 2017年に映画化された時から気になっていたけど、忙しくて読めてなかった作品。

    お気に入りのシーンは、悩み相談を受けるナミヤ雑貨店の店主が、白紙の手紙に対して、「すべてはあなた次第」「可能性は無限大に広がっています」と回答する部分。

    「この先どこへ向かえばいいのか分からない」という将来に対する漠然とした不安を抱えている人にとっては、すごく前向きな言葉に思えるんじゃないかと思います。

  • 終盤になるにつれて、ナミヤ雑貨店とある孤児院とのつながりが明らかに。
    テレビで映画が放送されてたので、それを見てから見ました。
    映画とはまた違って良かったです。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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