- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041101407
作品紹介・あらすじ
結婚願望を捨てきれない女、現状に満足しない女に巧みに入り込む結婚詐欺師・古海。だが、彼の心にも埋められない闇があった……父・井上光晴の同名小説にオマージュを捧げる長編小説。
感想・レビュー・書評
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結婚というタイトルから勝手に夫婦の話かな〜なんて思ってたらなんと、結婚詐欺師の話でした。
ちょっと登場人物が多くて頭の中で整理がし辛かったけど、いつもながらに井上さんの文章には引き込まれました。
次から次に騙されていく女性たちを見てるとやっぱ切ないですね、同姓として。みんなどこにでもいそうな普通の女性なんですもん。騙されたなんてバカだねーなんて言ってられないくらい自然なんですよね。
だけど、みんなどこか疲れてるというか、寂しい気持ちを抱えてるんですよね。うぅ、さらに切ない…。
騙している男も何故か憎めなかったな。彼は最後どうなるのだろう。明るい未来ではないことは確かですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全国を旅する宝石商をしながら結婚詐欺師を働いている男の物語だ。
語る視点は、男に騙された女、男、その男の周囲にいる女、騙された女を知っている男、とさまざまに変わる。
ただの悪辣な詐欺師かと思えば、その内実はどうにも抜け殻のような無気力感があって、惰性で歪んだ方向へ進んでしまう、そのだらだらと嫌な感じが、内容はまったく異なれど『だれかの木琴』を思わせる。
しかし井上荒野と結婚詐欺師というネタは似合いすぎて怖いなぁと思う。このひとの描く胡乱な感じ、人の裏側を皮肉に見せる感じがよく出ていて、嫌な感じなのに不愉快じゃない。
絶対爽やかじゃない、ってわかっているのに、この人の物語はクセになる。 -
結婚てなんなのかしら、と。
なんかしみじみと考えてしまいました。
井上さんは不安定さを出させるとすごいなーって思う。
なんていうの、すっごく大きくて圧倒的な絶望とかじゃなくて。
日常に潜んでいるような不安が引っ張りだされる。
するすると周りに絡んで、その気配に心がざわざわする。
この物語は誰に感情移入するわけでもなく読んだけど、
そういう不安なものをはいどうぞって常に提示されているようだった。
それがなんかうっすらと怖かったなぁ。 -
こういう気持ちの悪さ(褒め言葉)を描かせたら著者は一級だと思う。『潤一』の悪い版というか(笑)
2章まで読んで、ああこういう話が続くのか...と思っていたら、いい意味で覆された。気分のいい終わり方ではないものの、それも含めた完成度だと思う。こんなタイトルで、すっきりと垢抜けた装丁。なのに中身は黒々。 -
2025.2.12 読了
結婚詐欺師の古海(うるみ)とその妻、
数々の騙された女たちの視点で
物語は進んでゆく。
読みやすかったけど、
どういうオチなのか
なにが言いたかったのか
よく分からなかった。
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現状に満足できない女達。その心に巧みに入り込む結婚詐欺師がいた。だが、彼の心にも埋められない闇があった…。
父・井上光晴の同名小説にオマージュを捧げる長編小説。
結婚詐欺師と翻弄される女という、波瀾万丈さを想像させる設定のわりにおとなしい印象。
登場人物達が冷静に自己分析しているせい?騙したり騙されたり、愛憎が入り混じる心も、もて余したり壊すこともなく、客観的に見ているような冷静さを感じました。
著者プロフィール
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