- 本 ・マンガ (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041101421
作品紹介・あらすじ
幼い頃、島根半島の裏によく出かけていた水木少年は、自分や先祖がかつて出雲に住んでいたのではないかとの思いにつきあたり、大きな衝撃を受けた。以来80年以上、天才がついに出雲古代史の謎を解き明かす!!
感想・レビュー・書評
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島根との境に位置する鳥取県境港市の出身で、出雲とも縁深い水木しげるは、30年ほど前から、夢に出てくる古代出雲の青年にこう言われつづけてきたという。
《「水木よ、我々出雲族の物語りを描くのだ。我々滅ぼされた出雲族のことを皆に知らしめるのだ」》
本作は、その声にようやく応えたものなのである。
国産み・神産み、アマテラスとスサノオの話、ヤマタノオロチや因幡の白兎の話など、日本神話・出雲神話の代表的エピソードが、紀記の記述に忠実にひととおり描かれる。
飄々としたユーモアをたたえた味わい深い絵で表現される神話は、それ自体十分魅力的だ。
たとえば、アメノウズメが天岩戸の前で踊り、胸をボイーンとはだけると、まわりの男神たちが「うわーッ!! スゲーッ!!」と大喜びする場面など、もう爆笑ものである(言葉で説明しても面白さが伝わらないだろうが)。
しかし本作の魅力は、日本神話のよくできたマンガ化というだけにとどまらない。随所に水木本人が登場し、神話の背後にある古代日本史について独自の解釈をくり広げるところが、もう一つの大きな魅力になっているのだ。
たとえば、オオクニヌシによる「国譲り」の神話について、作中の水木は言う。
《「実際にはこんなキレイ事じゃなかったんだろう。容易には渡せないと思うな。自分が苦労して造った国をはいどうぞ……とそんな簡単に引き渡すわけにはいかないだろう」(句読点は引用者補足)》
そして水木は、大和に滅ぼされた出雲王朝(※)の悲しい終焉とオオクニヌシの深い無念を、力を込めて描く。
それを見届けた夢の中の出雲青年は、「水木よ、私の思いをわかってくれてありがとう。私はもう二度と現れることはないだろう」と告げて消えていくのだ。
※もっとも、出雲神話の史実性については、邪馬台国同様論争が絶えないようだが。
水木の古代史への深い造詣が土台となった、かつてない面白さの「マンガによる日本神話」である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マンガの良さを見いだした。古代のお話は神様の名前がまず読みにくく(どこで切るのかもわからない),読めない→覚えられない→物語の登場人物が混乱する→なんのこっちゃ?,となってしまう。しかし,マンガで表現されると絵で人物が維持されるため,頭の中の表象中に維持する必要がなく物語が理解できるようになる。もちろんマンガにすることで勝手な補足や省略などは起きるのだろうけど,そんなことは少ない知識の者には小さな問題である。そして,マンガは繰り返し読むことが苦痛ではない。日本がどういう風に作られてきたのか,物語レベルだけど,それが残っているという意味を知るためにも多くの人に記紀の世界を知ってもらえるとよいなぁ。出雲に行きたくなった。九州,出雲,畿内,伊勢,ここら辺の知識と体験を関連づけて,日本の面白さを堪能したいものだ。
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水木しげる氏が考える国譲り伝説。
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古事記の漫画化にとどまらず、大陸や別の国家との交流(鉄の伝来、奪いあい)も描いていて面白い。出雲は日本列島の正面玄関だった。国譲りのときのオオクニヌシの涙、汗の表情、出雲大和の戦闘シーンは印象的。
因幡の白兎とスクナビコナがかわいい。
肥の河上流タタラ族のトップが一つ目なのはなぜ… -
古事記の子供向け版を図書館で読んでから手に取りました。しかし、それではすまされませんでした。奥が深いです。
この漫画、『古事記』や『出雲風土記』などの神話や史実を交え、オオクニヌシの視点で出雲の盛衰が書かれておりまして。聞いたことのある因幡のウサギの話では、終わりません。スサノオとどうつながっていくのか・・・ハラハラドキドキしながら読みました。出雲行きたいです! -
出雲大社へ行く予習で読みました。
神様の名前ってなんでこう読みづらく覚えづらいのでしょうかー…漫画なので神様を見分けやすく、理解はしやすかった。
何回か読み直して深く理解したい一冊です -
オオクニヌシとか悲惨だよな…
だからこその出雲大社ということか。 -
白うさぎかわええ
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日本神話の、世界ができてから大国主が国を譲るまでを漫画化した本。水木ファンとしては「ポークショ」や「ポア~」などの書き文字によろこび、スクナビコナやクエビコの神のキャラクターデザインに和んだ。女性を描くのが苦手な水木しげるが、頑張ってたくさんの女神を描き分けているのも面白い。
水木しげるはけっこう長いこと「古代出雲の漫画を描く」と言っていたので、気づいたら描き終わっていて意外でもあり安心もした。第一章以外描き下ろしって、どういうことっていう気もするけれど。
著者プロフィール
水木しげるの作品





