雪と珊瑚と

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 1878
レビュー : 373
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101438

感想・レビュー・書評

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  • 働く女性、子供のいる女性、日々の生活に疲れてる女性、夢がある女性、そんな女性に読んで貰いたい一冊です。

    シングルマザーの珊瑚、そしてその娘の雪の物語。珊瑚が子供を育てながら働いて生きることの難しさに直面しているところから物語は始まります。そこで出会うのが、くららというお祖母ちゃん。このお祖母ちゃんは元修道女で、作者の梨木さんっぽい登場人物。くららと出会うことでゆっくりと珊瑚の人生が動き出して、ついにはお惣菜屋さんを開業します。その過程での珊瑚のゆっくりとした心の動き。多くの女性が共感するんじゃないでしょうか。

    途中で美知恵っていうとにかく性格の悪い女が登場するのですが、私は彼女のストレートな思い(というか悪意といっても良いかも)にもっとも共感してしまった。この女性は珊瑚に出会った先から敵意むき出し。とにかく性格が悪い。
    それは「シングルマザーの何が偉い?」っていう本当にストレートな負の感情から来ているのだけど、そんな美知恵に対して馬鹿正直な潔さを感じた。隠そうとしない悪意。すごく良く言えば正直。
    そんな美知恵の直截な悪意に晒された珊瑚はそこで初めて自分を客観視します。
    わたしはこの物語ではこのシーンが一番好きです。

    賛否両論だと思うけど、くららとの出会いで得たものが珊瑚の光だとしたら、対照的に美知恵との出会いで得たのは珊瑚自身の影の部分。でも嫌な出会いだからって本人に負の影響があるわけじゃありません。光と影、両方の自分を知ることで人は大きく成長できるんです。

    地味な作品だけど色々考えさせられました。

    • nico314さん
      kanakoyoshidaさん、はじめまして。
      フォローありがとうございます。

      >賛否両論だと思うけど、くららとの出会い で得たもの...
      kanakoyoshidaさん、はじめまして。
      フォローありがとうございます。

      >賛否両論だと思うけど、くららとの出会い で得たものが珊瑚の光だとしたら、対照的 に美知恵との出会いで得たのは珊瑚自身の 影の部分。でも嫌な出会いだからって本人 に負の影響があるわけじゃありません。光 と影、両方の自分を知ることで人は大きく 成長できるんです。

      そうですね。
      確かに、関係の良好な人だけと暮らしていけたらよいけれど、現実には難しい。
      本人が良い人だからこそ、却って妬まれてしまうこともありますよね。

      美知恵はなぜあのような行動に出たのか、説明はなかったけれど、彼女に強い負の感情を起こさせた原因がとても気になりました。
      現実にもわけもわからず不条理な行動をとられることもありますし・・。
      2013/02/01
    • cecilさん
      >nico314さん

      おおお!こちらこそフォロー有難うございます!
      そしてコメントまでいただいてしまって本当に嬉しいです。

      そういえば美...
      >nico314さん

      おおお!こちらこそフォロー有難うございます!
      そしてコメントまでいただいてしまって本当に嬉しいです。

      そういえば美知恵については詳しく書かれていませんでしたね。美知恵の背景にどんな出来事や感情があるのか気になってきてしまいました。ぜひ美知恵を主人公にスピンオフ作品を出してほしいですねw
      私は小説とかだとよくヒールに注目してしまいます。あと悪人が主人公の暗めの小説とかも嫌いじゃないです。
      ヒールの思考や感情に興味深々です。
      2013/02/04
  • シングルマザーの珊瑚という女性が、くららという不思議な、素敵な女性と出会い、カフェを開店させながら自己の心や環境と向き合って進みゆく話。
    全体的に出来過ぎてる感じが大きかった。まぁ、お話なのでそれで良いのだと思いますが(笑)
    くららの作る食事のシーンは、食べることの大切さや素晴らしさを実感することが詰まっていた気がする。
    こんなお店は周りにないけど、たしかに近くにあれば行ってみたい気持ちになった。

    ただ、もう一つ何か盛り上がりが欲しかったなぁ。再読はしないかな…

  • 良かったんやけど、
    雪のかわいさと珊瑚の悩みみたいなんはすごい共感できるんやけど、
    こだわりのカフェをするっていうのいる??
    てゆうか簡単に実現しすぎじゃない?
    ゴハンにたいするこだわりもたいしてなかったのに
    いきなり専門的に主体的にカフェなんてできる?
    むー。他の人に頼りまくるのはキャラクターの性格やから良いとしてもするするいきすぎて拍子抜け。
    いろんなことを一つの話に詰め込んだ感があって、
    中途半端に入りきれずに終わりました。
    むー。残念。好きやから残念て感じー。

  • 単に、離婚した女の人がカフェを開く、小説としては割とある話と思って読んでいたら
    294ページでどかーんとひっくり返された気分です。
    こんな率直な手紙ある?!
    もし自分がこんなもの受け取ったら、落ち込んで立ち直れないと思う。
    けど珊瑚はちがって
    逆にそれが、自分が朧気に自覚していた自分のエゴを具体的に言葉にしてくれたものと受け止める。
    なんて強い。
    これも母の力なのかなあ

    けれど、親がいようといまいと
    配偶者と別れようとそうでなかろうと
    誰かの同情や助けに全く頼らずに生きていく人なんているだろうか。

  • 珊瑚は21歳。生まれたばかりの娘・雪を抱えながら、明日生きるのに必要なお金もなく途方に暮れていた。しかし様々な人と出逢い、心にも体にもやさしい惣菜カフェをオープンさせることになる。

    最初は単なるカフェオープン物語かと思ったが、徐々に主人公の珊瑚が抱える問題へ踏み込んでいく。子供時代に母親に育児放棄され、誰にも頼らず、心を寄せることもなく一人で生きてきた。妊娠が発覚して相手の男性と結婚するがすぐに離婚し、アパートの隣室に住む助産師見習いの那美に雪を取り上げてもらった。幼いころは「母親によって傷ついた子供」である自分を通してでしか母親を見ることができなかった。
    しかし娘の雪とカフェが彼女を変えていく。自分が子供を育てる側になり、自分と雪との関係を通して、自分と母親との関係を見つめ直すことができるようになったのだと思う。
    カフェオープンに向けて多くの人と交わりながら、珊瑚は食材や料理、経営についてはもちろん、人との関わり方をも学んでいく。特殊な家庭に育ったために、他人と比べて自分は何かが欠落しているということを珊瑚は自覚しているが、卑屈になるのではなく、その穴を埋めようと前向きに物事に向き合っている。どんなことでも柔軟に受け入れて自分の糧にしようとする彼女の素直さが良いと思った。
    また周りの人々の様々な考え方に触れて成長したことで、母親とあらためて向き合う覚悟を決めることができるようになった。母親に母性がなかったのは認めざるを得ないが、その母の中に娘である自分の存在や、人として尊敬できる部分を発見し、珊瑚は過去の自分から脱することができたようだった。

  • 表向きは21才シングルマザーの成長物語。でも私はこれを素直によかったね、と読み終えることができる人が羨ましい。ハートフルストーリーを装っているけどとんんでもない。悪意が秘められている。足場が、ぐらぐら揺らめいているのが分からない? そんな不安定な土台の上で、がっしり堪えて、足を踏ん張って、生きていかねばならないんだよ。

  • いろいろな意味できれいな話だった。生活感があるようでないような、現実に近いファンタジーのような感覚。もう少し重たい話なのかと思ったけれど、さらりと読めた。
    とにかく、出てくるひとのほとんどがいいひとばかりで、こんなにうまいこといくのかなあと頭の隅で思いつつ、素敵な料理の数々に心惹かれた。出てくる料理と、野菜と、どれもおいしそうで。食というもののすごさを感じることができた。弱っている人間に対する食の持つすごさというものを見せつけられた気がした。
    人間って、自分が気付かないうちにたくさんの人間と関わってつながりあって生きていくんだなあというのも、しみじみと思った。あの手紙は、たぶんひとによって受け取り方が真逆になるんだろうなあ。

    (319P)

  • 高校中退、母は失踪
    20歳で結婚したものの21歳で離婚
    シングルマザーの珊瑚

    1歳の娘の雪を抱え
    働くために預ける場所を探していたところ
    偶然見つけた「子ども預かります」のチラシ
    出会ったのは外国帰りの初老の女性 くららさん

    くららの作るシンプルな料理に
    食べることの大切さに気づき
    様々な人との出会っていく中で
    心にも身体にもやさしい惣菜カフェをオープンする

    人のやさしさと逞しさ
    食べることって大切なんだなと感じる物語

  • 意図的なキャラクター設定かもしれないのだけれど主人公が好きになれなかった。部分部分、好きな会話とか、好きな感性が垣間見えるので、全体としては悪くもないけど、好きにもなれないという微妙な読後感でした。

  • この手の、自分でカフェをやってみたいという夢物語は、大体事業計画がなってなくて、それでもなんとなく生活できます的なものが多くて、読んでられないのですが、これはまあまあ読めました。
    でもこれで生活するのは、難しいと思う。
    甘えてるようなあ、いろんな人に。
    でも、私自立してます風なのが、ちょっと気に入らない。

著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

雪と珊瑚とのその他の作品

雪と珊瑚と (角川文庫) 文庫 雪と珊瑚と (角川文庫) 梨木香歩

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