オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101964

作品紹介・あらすじ

数年ごとに起きるオカルト、スピリチュアルブーム。繰り返される真偽論争。何年経っても一歩も進まないように見える世界。なぜ人は、ほとんどが嘘だと思いながら、この世界から目をそらさずに来たのか?否定しつつ惹かれてしまう「オカルト」。-いま、改めて境界をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • ドキュメンタリーの映像作家でもある著者が、超能力者や超常現象について自らの体験をベースに考察した本。

    日常でよく聞く「オカルト」という語だが、本書のまえがきに相当する「開演」では、「オカルトの語源はラテン語『occulere』の過去分詞『occults』で、意味は隠されたもの。」であることを初めて知った。
    また、同じ「開演」内でオカルト現象は「現象そのものが人の視線を嫌うという印象を僕は持っている。」と書いているところに深く納得。

    著者はその「隠されたもの」を何とか明るみに出そうと、聴力者や超心理学研究者、超常現象が起きた場所へと取材を試みている。

    著者の姿勢はそのような現象を猛進するわけでもなく、かといって頭から否定するわけでなく、超能力や超常現象が、トリックである可能性をできるだけ排除したうえで誰にも明らかな形として紹介できないかという立場。
    そのことは、自らトリックを使っていると明言してパフォーマンスを行うメンタリストにも及んでいることからもうかがえる。

    しかしながら、取材を重ねてみても結局真相は明るみに出ず、依然として隠れたまま、あるいは隠されたままで結論は出ずじまい。

    それでも著者はあとがきにあたる「終演」の項で、「説明できないことや不思議なことはいくらでもある。確かにそのほとんどは、錯誤かトリックか統計の誤りだ。
    でも絶対にすべてではない。淡い領域がある。あいまいな部分がある。そこから目を逸らしたくない。見つめ続けたい。」とその決意を表明しているので、さらなるオカルト探求の旅の模様が知らされるのを楽しみに待つことにしよう。

  • どの作品にも流れている森さんならではの感覚がとても好きだ。本書の六章七章で、森さんの前世を透視した「霊能者」が、森さんという人の方向性として「だめなものを良くしたいというような願望。でも森さんの場合は、そのだめなものの中に自分も入れている」と言っていて、そうだよねえ、当たってるじゃん!と思ってしまった。

    きっと賢明な人はこういう分野には近づかないんだろう。少し危なくて、たっぷり胡散臭くて。出来るかぎりの取材をしよう、でもきっと何もわからないんだろう、という著者の苛立ちやら諦めやらもどかしさやらが行間から立ち上る。

    読みながらずっと、立花隆氏が書いた「臨死体験」を思い浮かべていたら、第16章でそのものが出てきた。立花氏も結論としては森さんと同じだ。「十分信頼に足る証拠は何故か出てこないが、否定することの出来ない現象があることは間違いない」。でも、文章から受ける印象はかなり違う。立花氏ははっきりと面白がっている。興味津々という感じだ。森さんは…、困惑している?半ばうんざりしている?

    うまく言葉に出来ないが、他でもない自分の問題として苦悩しているところが、森さんの真骨頂だろう。この人は立花氏のような正統派ルポライターにはきっとなれないんだろう。そこが好きだ。

    • じゅんさん
      あぁ、たまもひさん!
      なんて素敵なレビューでしょう!!
      うんうん、森さんはあえて胡散臭いものに近寄っり、しかも、自分の問題として苦悩して...
      あぁ、たまもひさん!
      なんて素敵なレビューでしょう!!
      うんうん、森さんはあえて胡散臭いものに近寄っり、しかも、自分の問題として苦悩してしまう…。そうですね、立花氏のような“頭の良さ”は持っておられない気がします。
      そして、私もそこが好きです!(*^_^*)
      2012/06/12
    • たまもひさん
      森さんってどういうわけかバッシングや揶揄の対象になりやすいようですね。言ってることのブレを指摘されたりもする。でも私はだからこそかえってシン...
      森さんってどういうわけかバッシングや揶揄の対象になりやすいようですね。言ってることのブレを指摘されたりもする。でも私はだからこそかえってシンパシーを感じてしまいます。
      思想信条が先に立つ、という風ではない男性の(反体制)知識人って珍しいと思うんです。
      いつも嬉しいコメントをありがとうございます(^o^)
      2012/06/12
  • 著者はとても自分に正直な人だと『A3』を読んだときから感じていた。
    世間の声と少し違っていても、自分の感じたことの方を信じずにはいられない。
    あくまで真実を知ろうとする姿勢は、この本からも感じられた。
    様々な超常現象を前にしても著者はそのまま信じないし、逆に失敗続きでも(ダウジングのとき)その能力は嘘だったと決めつけはしない。
    あるともないとも言い切れない。
    超常現象とはもともとそういうものなのだ、と著者は思っている。

    そういうスタンスの著者だからこそ、メンタリストDaiGoの章は純粋にすごいと感じた。
    トリックや仕込みなしで、あんなに人の心を操れるのか…?

  • オカルトとは…?という話の中に、ちょいちょい怖い話が入ってて、なかなか読み進まない(笑)
    怪談本なら心と時間(夜中を避けるとか)の準備が出来るのだが、突然怖いので。
    テーマや内容は興味深く面白い。が、まだまだ道半ば・・・。

  • 「わからない」をこんなに追及できる人ってあまりいないと思う。わからないことをわからないままにしておくってすごいしんどい。イエスかノーに決めたほうがずっと楽。でもしんどくても安易にイエスやノーに偏らないこの人の姿勢がとても好きだ。

  • 配置場所:1F電動書架A
    請求記号:147||Mo 45
    資料ID:W0168458

    なぜか夏になると、特番が増える、エスパー、イタコ、幽霊、UFO・・・本当なのかインチキなのか、著者の体当たり取材をまとめた1冊。虚実の狭間を翻弄させられる、もどかしさが楽しいです。はっきり証拠が掴めればいいのに、と思う反面、よくわからないまま、隠されたままだから、面白いのではないかな、とも。(S)

  • 私はすっごい怖がりだし、基本的に自分の目で見たもの以外は信じないという頑固者だし、ということで、超能力という世界はSF的面白さを抜きにすると、ほとんどご縁がないものだったのに…。


    それが「職業欄はエスパー」で、胡散臭さをも含めた存在価値、というか、自称・エスパーたちのよくも悪くも落ち着きぶりにやられてしまって。
    たぶん、ホントのインチキ(って変な言い方だけど)も多々あるんだろうし、失礼ながら御病気の方もおられるのでしょう。
    でも、自分には理解できない世界だからと言って、のっけから全否定、っていうのもなんか違うんじゃないか、うん、それって人生損してる・・・・んじゃない?なんて思い始めたのは、森さんの結論を出さずに、公平に公平にと多角的に考察するといういつもの手腕に、いつものように転がされちゃった、っていうことなんでしょうね。(*^_^*)

    私が森達也という人を好きなのは、個々の人間として生きていきたい、大きな力や集団の論理に巻き込まれることなく、自分の頭で考えて、自分の言葉で語りたい、という根っこのところが、実は私が一番大事に思っているところだから、だと思うんですよ。

    そしてそれは、伊坂幸太郎さんの小説にも多々感じることで、だからこそ、のお2人の仲のよさなんでしょうね。この「オカルト」の帯を伊坂さんが書かれていて、

    「(前略)しかも フェア でありたい、という思いが伝わってくるからか、読んでいるこちらも 頼む! 超能力、成功して! と祈らずにはいられませんでした。青春小説のように、もしくはホームズの冒険のようにも読めて、とにかく面白いのです」

    なんて、最高の惹句だよね。(*^_^*)

    今回の目玉は、なんと言っても、オカルトそのものの意思、というか、あえて擬人化してみせ、またその危うさをも自ら指摘する、という、おいおい、森さん、やりすぎでしょうよ、と言いたくもなる、オカルトの「隠れたがり&出たがり」性についての“常識”。

    ここ一番!という時に、カメラが別のところを向いていたり、機材にトラブルが起こったり、というのは、学者にしろ、ジャーナリストにしろ、あまりにもよくあることでわざわざ言うまでもないこと、だったらしいのだけど、(だからこそ、インチキ、とか、言いわけだ、とかの罵倒をも受けてきたわけなんだね)そこをあえて前面にだして、それはなぜなのか、という考察を淡々と書き連ねる、という面白さ。

    • たまもひさん
      これこれ!読もうと思ってるんです。伊坂さんの帯は嬉しくなりますよね!森さんの書かれるものを読むといつも「フェアであること」の大事さ・難しさを...
      これこれ!読もうと思ってるんです。伊坂さんの帯は嬉しくなりますよね!森さんの書かれるものを読むといつも「フェアであること」の大事さ・難しさをかみしめることになります。
      じっくり読もうと思ってます。
      2012/04/27
    • じゅんさん
      >たまもひ様
      そうなんですよ、「フェアであること」を大事にする森さんと伊坂さんのつながりが嬉しくて!(*^_^*)偏りのない考え方ってとて...
      >たまもひ様
      そうなんですよ、「フェアであること」を大事にする森さんと伊坂さんのつながりが嬉しくて!(*^_^*)偏りのない考え方ってとても難しいとは思うのだけど、少なくともそう心がけて生きていきたい、と思います。
      2012/04/27
  • 科学か、インチキか、それともオカルトか。
    何年経っても決着がつかず、ただただ繰り返される真偽論争。
    一方で、なぜ嘘ばかりと思いながらも、惹かれ続けるのか。
    数年ごとに起きるオカルト、スピリチュアルブーム、っそして繰り返される真偽論争。
    何年経っても、いつまでたっても一歩も進まないように見える世界。
    その理由は何なのか?
    当にそれが、オカルト(隠されたもの)の所以かもしれません。

  • 否定も肯定も留保するところは相変わらずだが、題材が題材なだけにワイドショーノリがどうしても出てしまうという森監督としては甘いというか、そもそも本腰入れていないというか。一見下世話な題材でも「FAKE」で見せた人間をむき出しにする手法がない。連載という紙面の問題もあろうが、ならば何回でも分けて深堀して欲しかった。永田町の陰陽師の項は諦観という意味では最も掘り切っていない。刀すら抜いていない。それでも一番面白かった。
    照れを忍んでいえば森達也の作品の根底にいつも流れているものは人間に対しての原初的な前提としての「愛」だ。どんなに胡散臭かろうと、間違っていようと一方的な批判や攻撃は決してしない。
    オカルトという白黒つけることが、是非の立場をいっそう明らかにすることが強制されるジャンルについても変わらない。その隠されたコミットメントが本企画の主幹なのではないかとも思えてしまった。

    ギャグはかなりの水準で笑えるのも嬉しい。

  • ノンフィクション
    サブカルチャー

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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