- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041102091
作品紹介・あらすじ
震災後の日本は"見えない罠"に取り囲まれ、大きな危機を迎えている。罠は5つある。TPP、財政緊縮、沖縄基地問題、そして――。欧州から日米を30年間見つめてきたジャーナリストの日本論、書下ろし緊急出版!
感想・レビュー・書評
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ウォルフレン教授が、現在が抱える問題点を述べたもの。歴史的なトレンドから判断しているところが多いが、やや根拠の記載が少なく説得力に欠けていたり、意見に同意できない点がある。欧米人の視点ということで、参考にはなるが。
「日本のバブル経済は、製造業がその事業を継続していけるよな具体的手段を生み出すために、大蔵省と大企業の協力の下に日本の金融機関が繰り広げたゲームだったということだ。銀行のマネージャーや株主たちのふところを肥やした欧米のバブルとはわけが違うのである」p145
「マスコミがはなから好み、また重視したのは、政党内部の派閥争いという、従来となんら変わりばえのしない話題であった。彼らは政策上の大きな変化を報道するのには不慣れである」p172詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実をいうとカレル・ヴァン・ウォルフレンさんの本は読んだことがない。90年代から彼の翻訳本を文庫版含めてあちこちの書店で見かけては、興味を惹かれてはいたのだが、結局読まずに来た。「日本/権力構造の謎」とか、彼のもっとも有名な和訳書は現在絶版になっているようだ。
本書は2012年刊行、ときはまだ民主党政権であり、東北大震災の1年後である。もっと新しい、自民復活後の驚くべきウルトラ右翼政権の躍進と、とめどなく進む日本国民の右傾化、思想の喪失といった最近の諸事情を扱ったものがあれば読みたかったのだが、安倍政権下の日本を分析した本は今のところなさそうだった。
さて、そうしたちょっと「古い」本書だが、日本の行く末に関して5つの「罠」を指摘している。
(1)TPP
この話題はもう古くなってしまっている。TPPが、政治を操るまでに巨大化した米国大企業の利益を追うために策略されたものだ、ということは、日本のネット上でも盛んに言われてきたことなので、新しい見解はない。その後のトランプ大統領によるTPP放棄と独自交渉路線がなんなのか知りたい。
(2)財政緊縮
財政緊縮策が世界を席巻し、特にヨーロッパにおいて経済をどんどん破壊していく現象が、当時顕著であったらしい。財政緊縮は結局国の経済を破綻させるだけだと著者は警鐘を鳴らしている。この点、日本は今も、おそらく近い将来のあいだは、そちらには進まないだろうと思う。
(3)原子力発電問題
福島事故から1年たっての執筆であり、いわゆる原子力村の強欲に触れられている。このへんについてはもっと詳しく書いてもらいたかったが、別の本を読むべきであったのだろう。不思議なことに、この時点で著者はドイツのメルケル首相にかなり批判的である。
(4)対米隷属と沖縄問題
ここからがとても面白かった。「本土」日本人たちのあいだに広く染みこんだ沖縄への「差別」意識(無意識)、日米安保や日米地位協定など、戦後から連綿と続くアメリカによる日本支配。日本人ご自慢の「高度経済成長」もアメリカによる庇護無くしては成立しなかった。当然のようにアメリカは日本の隷従をとらえており、本書によると日米それぞれの官僚は情報交換などもおこなっているらしい。
かくして事実上日本国家には「主権」が存在しないのだが、民主党に政権交代し、鳩山由紀夫が主権国家としての自立をめざしたとき、彼は主として「アメリカによって」排除されたのである。アメリカも政治行政はかなり錯綜しており、どうやらオバマ大統領一人がいくらチェンジと言ってもどうにもならなかったし、オバマ自身も日本国の主権についてどう考えていたのか怪しいのかもしれない。
ともかく、日本を主権国家として、米国の足下から自立させまいとする強力な圧力が存在し、日本国民もまた、そのことの問題性にとんと無頓着なのである。
そしていま、辺野古をめぐって、安倍政権による完全に暴力的な蛮行がなされている。
(5)権力への無関心という怠慢
これはまったくそのとおりだ。権力を監視し、じゅうぶん調べてこれを評価・裁定をおこなうという点について、日本人ほど怠慢な国民はほかにいないかもしれない。従って日本人には、民主主義を享受する資格がそもそも存在しない。
そうした資質が、あの「ただの嘘つきバカ」でしかない安倍晋三をつけあがらせているとしか言いようがない。バカな国民にふさわしいバカな総理。日本がここまでバカな国だとは。
安倍政権について、ウォルフレンが2014年に語ったインタビューがネットにあった。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/154970 -
気になった1点のみ。
著者はソーラー発電を推しているが、ソーラー発電では夜間の発電量が下がってしまうことを考慮して言っているのだろうか?
無論夜間の電力量を原子力並みに供給する必要は無いだろうが、原子力の代替としてソーラーを使うのであればその点は考えなければならないのでは?
また、夜間という毎日の問題以外にも日本には梅雨がある。東北地方など冬は雪の日も多い。本当にソーラーで大丈夫なのだろうか?
夜間や悪天候な日の分の電力を蓄電する施設まで作るのであればかなり広大で高コストなソーラー発電施設を作る必要があると思え、こういった点は地熱発電などよりも劣るところだと思うのだが。
※僕は原子力推進派ではないが強固な脱原発派というわけでもない。念のため
このソーラー推しから孫正義べた褒めへの流れは読んでいてどうしても引っかかった。 -
うーん、内容が頭に入ってこない。なんなのだろう。説明がくどい割には話があっちゃこっちに行くからか、比喩がしっくりこないからなのか、訳本だからなのか、なんなのでしょうね。
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取り上げられているテーマは実に興味深い。論の進め方も悪くはないようにも思えるが、如何せんデータの裏付けが何一つ提示されていないのが寂しい。多少煩雑になろうとも、何かしら数字なり何なりの裏付けデータが添えられていれば、もっと説得力のある本となったであろう。資料を用意せず記憶の範囲で書き飛ばした本だと思われても仕方ない。
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第一の罠:TPPの背後に潜む権力の素顔
第二の罠:EUを殺した緊縮財政という伝染病
第三の罠:脱原子力に抵抗する非公式権力
第四の罠:国家泣き対米従属に苦しむ沖縄
第五の罠:権力への無関心という怠慢
TPPを推進しているのはアメリカ国民ではない。
「市場原理」を推し進めるアメリカの巨大企業は、物事を「市場任せ」などにはしない。
「思想の自由市場」という愚かなメタファー
日本人は”国(nation)"の一員であるという強い自覚に対し、”国家"に所属しているという意識は漠然としたものでしかない。
沖縄は日本の一部か?宗主国の一部となりながら、アメリカの植民地となっている。 -
ウォルフレンは初めて読んだ。反米の立場の人なんですね。他の著書も読んでみたいと思った。ギリシャの財政破綻についてのところが興味深かった。日本では単にだらしないギリシャという報道だったが、ヨーロッパ他国の銀行との関係があるという報道は日本ではさほどされていなかったのではないか。物事は多面的に見ないといけないなというのを改めて認識させられる一冊。
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文字通り、TPP、財政緊縮、沖縄基地問題などの日本を追い込む5つの問題について記述した一冊。
オランダ人の評論家ということでどんなもんかと思ったけど、実際に読んでみるとかなり的確に感じた。
また、偏向報道の日本のマスメディアに対する批評などもあり、目から鱗だった。 -
◼TPP
①経済協定ではなく、政治協定である。
②米国の巨大企業の権力についての取り決めである。
③政府は、自国企業に有利な取り扱いをしてはならない【MAI】
④新自由主義・新植民地主義
⑤金融危機を生み出した、金融機関に、更なる権力を与える
⑥著作権の拡大解釈を可能にする
⑦米国内でも、評判が、悪い
⑧農業帝国主義
⑨市場主義を米国の大企業の都合に合わせる協定である
10.オバマの再選資金10億ドル?は、米国の巨大企業から出た?反対できる筈がない
11.米国は、有権者重視から、富裕層優先の国家へ変わった。中産階級は没落した。 -
国民が疑問に及ばないくらいに罠にはまってます。ヨーロッパのほうが危ないというのは知らなかったので勉強になりました。TTPについては汗顔の至り。
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