日本を追い込む5つの罠 (角川oneテーマ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102091

作品紹介・あらすじ

震災後の日本を追い討ちする"本当の危機"を直視せよ!

感想・レビュー・書評

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  • ウォルフレン教授が、現在が抱える問題点を述べたもの。歴史的なトレンドから判断しているところが多いが、やや根拠の記載が少なく説得力に欠けていたり、意見に同意できない点がある。欧米人の視点ということで、参考にはなるが。
    「日本のバブル経済は、製造業がその事業を継続していけるよな具体的手段を生み出すために、大蔵省と大企業の協力の下に日本の金融機関が繰り広げたゲームだったということだ。銀行のマネージャーや株主たちのふところを肥やした欧米のバブルとはわけが違うのである」p145
    「マスコミがはなから好み、また重視したのは、政党内部の派閥争いという、従来となんら変わりばえのしない話題であった。彼らは政策上の大きな変化を報道するのには不慣れである」p172

  • 実をいうとカレル・ヴァン・ウォルフレンさんの本は読んだことがない。90年代から彼の翻訳本を文庫版含めてあちこちの書店で見かけては、興味を惹かれてはいたのだが、結局読まずに来た。「日本/権力構造の謎」とか、彼のもっとも有名な和訳書は現在絶版になっているようだ。
    本書は2012年刊行、ときはまだ民主党政権であり、東北大震災の1年後である。もっと新しい、自民復活後の驚くべきウルトラ右翼政権の躍進と、とめどなく進む日本国民の右傾化、思想の喪失といった最近の諸事情を扱ったものがあれば読みたかったのだが、安倍政権下の日本を分析した本は今のところなさそうだった。
    さて、そうしたちょっと「古い」本書だが、日本の行く末に関して5つの「罠」を指摘している。
    (1)TPP
    この話題はもう古くなってしまっている。TPPが、政治を操るまでに巨大化した米国大企業の利益を追うために策略されたものだ、ということは、日本のネット上でも盛んに言われてきたことなので、新しい見解はない。その後のトランプ大統領によるTPP放棄と独自交渉路線がなんなのか知りたい。
    (2)財政緊縮
    財政緊縮策が世界を席巻し、特にヨーロッパにおいて経済をどんどん破壊していく現象が、当時顕著であったらしい。財政緊縮は結局国の経済を破綻させるだけだと著者は警鐘を鳴らしている。この点、日本は今も、おそらく近い将来のあいだは、そちらには進まないだろうと思う。
    (3)原子力発電問題
    福島事故から1年たっての執筆であり、いわゆる原子力村の強欲に触れられている。このへんについてはもっと詳しく書いてもらいたかったが、別の本を読むべきであったのだろう。不思議なことに、この時点で著者はドイツのメルケル首相にかなり批判的である。
    (4)対米隷属と沖縄問題
    ここからがとても面白かった。「本土」日本人たちのあいだに広く染みこんだ沖縄への「差別」意識(無意識)、日米安保や日米地位協定など、戦後から連綿と続くアメリカによる日本支配。日本人ご自慢の「高度経済成長」もアメリカによる庇護無くしては成立しなかった。当然のようにアメリカは日本の隷従をとらえており、本書によると日米それぞれの官僚は情報交換などもおこなっているらしい。
    かくして事実上日本国家には「主権」が存在しないのだが、民主党に政権交代し、鳩山由紀夫が主権国家としての自立をめざしたとき、彼は主として「アメリカによって」排除されたのである。アメリカも政治行政はかなり錯綜しており、どうやらオバマ大統領一人がいくらチェンジと言ってもどうにもならなかったし、オバマ自身も日本国の主権についてどう考えていたのか怪しいのかもしれない。
    ともかく、日本を主権国家として、米国の足下から自立させまいとする強力な圧力が存在し、日本国民もまた、そのことの問題性にとんと無頓着なのである。
    そしていま、辺野古をめぐって、安倍政権による完全に暴力的な蛮行がなされている。
    (5)権力への無関心という怠慢
    これはまったくそのとおりだ。権力を監視し、じゅうぶん調べてこれを評価・裁定をおこなうという点について、日本人ほど怠慢な国民はほかにいないかもしれない。従って日本人には、民主主義を享受する資格がそもそも存在しない。
    そうした資質が、あの「ただの嘘つきバカ」でしかない安倍晋三をつけあがらせているとしか言いようがない。バカな国民にふさわしいバカな総理。日本がここまでバカな国だとは。
    安倍政権について、ウォルフレンが2014年に語ったインタビューがネットにあった。
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/154970

  • 気になった1点のみ。

    著者はソーラー発電を推しているが、ソーラー発電では夜間の発電量が下がってしまうことを考慮して言っているのだろうか?

    無論夜間の電力量を原子力並みに供給する必要は無いだろうが、原子力の代替としてソーラーを使うのであればその点は考えなければならないのでは?
    また、夜間という毎日の問題以外にも日本には梅雨がある。東北地方など冬は雪の日も多い。本当にソーラーで大丈夫なのだろうか?
    夜間や悪天候な日の分の電力を蓄電する施設まで作るのであればかなり広大で高コストなソーラー発電施設を作る必要があると思え、こういった点は地熱発電などよりも劣るところだと思うのだが。
    ※僕は原子力推進派ではないが強固な脱原発派というわけでもない。念のため

    このソーラー推しから孫正義べた褒めへの流れは読んでいてどうしても引っかかった。

  • 2018212
    『人間を幸福にしない日本というシステム』で有名な著者の最近の作品。(2013年)リーマンショックから連鎖したEU危機の直後に書かれたものであり、資本主義の腐敗が政治に組み込まれたアメリカとヨーロッパの酷い状況を伝えてくれる。そんな中、日本は金権主義に陥っておらず、下記5つの罠に陥らなければ希望のある良い状況になるだろうという著作。
    TPPや沖縄問題などアメリカに関わる問題は、彼らに恩恵を与えるよう巧妙に仕組まれていることは理解できる。強さに屈して、政治家、官僚、メディアも現実を何も言わないようにしている。無関心を装うのが手腕である。しかし、一個人としては、外交政治の力点を押さえたいし、情報ソースとして裏どりをできるくらい精通したい。具体的な策として、①日本経済新聞をより批判的な目で読む。②政治論の本を読み、過去事例や共通行動を学ぶ。③ニュースにアンテナを張り、自分なりの味方、意見を持ち、信頼の置ける友人や師の意見とぶつけてみる。

    日本社会の構造をスケルトン化して、伝えてくれる著者。
    官僚主義の日本の現代はどのような構造か?
    会社の組織も同じなのか、自分が採用すべき生き方とは?

    5つの罠
    ①TPP
    ・力のある多国籍企業が1番恩恵を受ける。
    →米国企業→米国政治を乗っ取っている
    ・著作権法の共通化
    →米国の更なる利得
    ↔︎一方で、日本の興行は輸出有利になるという議論もあり得るか?少なくともルール作りのテーブルに早期に乗るのは重要。

    ②財政緊縮
    ・EU
    ・サブプライムローンの損失負担→ギリシャ
    ・通貨統合はあったが、財政統合できなかったEU→ギリシャを救わず財政緊縮策
    ・国債の買い手のほとんどが国内である日本→金融政策の余地はあり、インフレや国債の利率変動にも強い

    ③脱原子力
    ・原子力推進派の派閥
    ・発電は一部解放されているが、送電が解放されない限り、大手電力会社の覇権は続く

    ④沖縄
    ・米軍基地
    ・自民党と民主党とアメリカ政権の関係
    →アメリカの傘を被る自民党と官僚
    →思いやり予算を払ってまで隷属する理由があるか?アメリカは日本を搾取しようとしている。中国や韓国と交流を深めることを1番恐れるのはアメリカであろう。

    ⑤無関心
    ・権力への無関心→怠惰
    ⑴idea
    ⑵institution
    ⑶power
    ・金権政治に陥るアメリカとヨーロッパ
    ・日本は金権政治では無いが、官僚の説明責任を促す政治家やジャーナリストが機能していない

  • うーん、内容が頭に入ってこない。なんなのだろう。説明がくどい割には話があっちゃこっちに行くからか、比喩がしっくりこないからなのか、訳本だからなのか、なんなのでしょうね。

  •  取り上げられているテーマは実に興味深い。論の進め方も悪くはないようにも思えるが、如何せんデータの裏付けが何一つ提示されていないのが寂しい。多少煩雑になろうとも、何かしら数字なり何なりの裏付けデータが添えられていれば、もっと説得力のある本となったであろう。資料を用意せず記憶の範囲で書き飛ばした本だと思われても仕方ない。

  • 第一の罠:TPPの背後に潜む権力の素顔
    第二の罠:EUを殺した緊縮財政という伝染病
    第三の罠:脱原子力に抵抗する非公式権力
    第四の罠:国家泣き対米従属に苦しむ沖縄
    第五の罠:権力への無関心という怠慢

    TPPを推進しているのはアメリカ国民ではない。
    「市場原理」を推し進めるアメリカの巨大企業は、物事を「市場任せ」などにはしない。
    「思想の自由市場」という愚かなメタファー
    日本人は”国(nation)"の一員であるという強い自覚に対し、”国家"に所属しているという意識は漠然としたものでしかない。
    沖縄は日本の一部か?宗主国の一部となりながら、アメリカの植民地となっている。

  • ウォルフレンは初めて読んだ。反米の立場の人なんですね。他の著書も読んでみたいと思った。ギリシャの財政破綻についてのところが興味深かった。日本では単にだらしないギリシャという報道だったが、ヨーロッパ他国の銀行との関係があるという報道は日本ではさほどされていなかったのではないか。物事は多面的に見ないといけないなというのを改めて認識させられる一冊。

  • 文字通り、TPP、財政緊縮、沖縄基地問題などの日本を追い込む5つの問題について記述した一冊。

    オランダ人の評論家ということでどんなもんかと思ったけど、実際に読んでみるとかなり的確に感じた。
    また、偏向報道の日本のマスメディアに対する批評などもあり、目から鱗だった。

  • ◼TPP
    ①経済協定ではなく、政治協定である。
    ②米国の巨大企業の権力についての取り決めである。
    ③政府は、自国企業に有利な取り扱いをしてはならない【MAI】
    ④新自由主義・新植民地主義
    ⑤金融危機を生み出した、金融機関に、更なる権力を与える
    ⑥著作権の拡大解釈を可能にする
    ⑦米国内でも、評判が、悪い
    ⑧農業帝国主義
    ⑨市場主義を米国の大企業の都合に合わせる協定である
    10.オバマの再選資金10億ドル?は、米国の巨大企業から出た?反対できる筈がない
    11.米国は、有権者重視から、富裕層優先の国家へ変わった。中産階級は没落した。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1941年、オランダ・ロッテルダム生まれ。「NRCハンデルスブラット」紙の東アジア特派員、日本外国特派員協会会長等を務め、世界の各紙誌に寄稿している。

「2012年 『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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