- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041102336
感想・レビュー・書評
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白石珠が実践した文学的・哲学的尾行。
それは或る人物の実存を記録する行為に他ならないはずだったのだが。
珠の思惑を外れて物語は転がり始める。
珠が力説するようにその尾行に意味はなかったのか。
たまたま後を追った男の秘密を追っているようで
実は自分の心の奥深くに眠る物を追い求めているように思えた。
父親との確執・同棲する恋人への疑い…etc
人の心の闇は深い。
単なる恋愛小説に留まらない展開に途中で読みやめることができずに一気読み。
極めて興味深い1冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★4に近い ★3.7
感受性が強くて頭の良い女性ならあり得るかもしれないと思った。
珠(たま)は家庭の団欒を知らなかったからこそ、尾行のターゲットを彼にしたんだと思う。
珠の『本気で恋がれる相手ではなく、心が安定してて一緒に過ごして落ち着く相手』をキープしたがるという自覚。そして、相手のそうだと知っている。
内容(「BOOK」データベースより)
大学院生の白石珠は、ある日ふと、近所に住む既婚男性、石坂史郎を尾行してしまう。大学の講義で知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「文学的・哲学的尾行」が心に残っていたからだ。そして珠は、石坂の不倫現場を目撃する。他人の秘密を知ることに、ぞくぞくとした興奮を覚えた珠は、石坂の観察を繰り返す。だが徐々に、秘密は珠と恋人との関係にも影響を及ぼしてゆく―。大学教授への想い、今は亡き恋人への追慕。スリリングな展開、乱れ合う感情。ページを繰る手が止まらない、傑作長編。 -
大学院の授業で強く興味を惹かれたのが、
「文学的・哲学的尾行」であった。
私も、知の快楽とか高尚な目的でなく
単純に好奇心をそそられた他人を尾行したくなった。
ただ、根気と勇気と、時間が要りそうなので
実際行動にはうつせそうにない。
元々人間観察は好きな方で
カフェで隣にカップルなんかが居合わせたら
会話に全神経を集中させてしまう。
主人公珠の男性感に大きく共感するところがあった。
いつも同じトーンで話し、決して感情をむき出して怒ったりしない、
大海原の様な、常におだやかな人。
私が大好きな人も、ざっというとこういった性格だ。
そして、とてつもなく賢い。
私はその人を心の友と思っている。
心穏やかな毎日、それが私の望む生活だ。 -
大学院生の主人公が講義を受けて感銘したという文学的・哲学的尾行を偶然出会った近所の男性に行う。その行為は意味ある尾行であると感じながら、知らず知らずのうちに自らの生活に影響を及ぼし疑心暗儀にとらわれてしまう。尾行に崇高な意味を感じ取らせ不倫小説で終わらせないところに小池真理子ならではの筆力を感じた。
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この内容でこのページ数は、長過ぎ
間延びしている
それにしても、妄想できるって
これも一種の才能だな -
もっとぐちゃぐちゃした話かなと思ってたのになんかさっぱりしていた。
もっと好きな作者だったと思うんだけどな。 -
フランスの女性アーティスト、ソフィ・カルの「文学的・哲学的尾行」を試みる主人公の珠。「生きていくために人は思索する」「厭世的」