二重生活

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.25
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感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102336

感想・レビュー・書評

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  • 白石珠が実践した文学的・哲学的尾行。
    それは或る人物の実存を記録する行為に他ならないはずだったのだが。
    珠の思惑を外れて物語は転がり始める。

    珠が力説するようにその尾行に意味はなかったのか。
    たまたま後を追った男の秘密を追っているようで
    実は自分の心の奥深くに眠る物を追い求めているように思えた。
    父親との確執・同棲する恋人への疑い…etc
    人の心の闇は深い。

    単なる恋愛小説に留まらない展開に途中で読みやめることができずに一気読み。
    極めて興味深い1冊でした。

  • 好きでした。タイトルの意味をどう受け取ったらいいのかがちょっともやもやしたままですが、これは私の問題で。フランス文学専攻の大学院生、珠は、ゼミのテキストで知った文学的・哲学的尾行をしてみようと近所の石坂(夫)さんの後を付ける。すると石坂は不倫をしていた。そのことが同棲中の自分の彼、卓也の浮気への妄想を駆り立てる。石坂は珠のした尾行の意味が理解しがたかったけど、私にはよく理解できました。ただ、珠は結局ばれてしまって文学的・哲学的尾行とは言えなくなったけど。私もやってみたいと思ったり。珠の心の動きが手に取るようにわかり、ちょっと官能的で、良かったです。

  • ★4に近い ★3.7
    感受性が強くて頭の良い女性ならあり得るかもしれないと思った。
    珠(たま)は家庭の団欒を知らなかったからこそ、尾行のターゲットを彼にしたんだと思う。
    珠の『本気で恋がれる相手ではなく、心が安定してて一緒に過ごして落ち着く相手』をキープしたがるという自覚。そして、相手のそうだと知っている。

    内容(「BOOK」データベースより)
    大学院生の白石珠は、ある日ふと、近所に住む既婚男性、石坂史郎を尾行してしまう。大学の講義で知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「文学的・哲学的尾行」が心に残っていたからだ。そして珠は、石坂の不倫現場を目撃する。他人の秘密を知ることに、ぞくぞくとした興奮を覚えた珠は、石坂の観察を繰り返す。だが徐々に、秘密は珠と恋人との関係にも影響を及ぼしてゆく―。大学教授への想い、今は亡き恋人への追慕。スリリングな展開、乱れ合う感情。ページを繰る手が止まらない、傑作長編。

  • 大学院の授業で強く興味を惹かれたのが、
    「文学的・哲学的尾行」であった。

    私も、知の快楽とか高尚な目的でなく
    単純に好奇心をそそられた他人を尾行したくなった。

    ただ、根気と勇気と、時間が要りそうなので
    実際行動にはうつせそうにない。

    元々人間観察は好きな方で
    カフェで隣にカップルなんかが居合わせたら
    会話に全神経を集中させてしまう。


    主人公珠の男性感に大きく共感するところがあった。
    いつも同じトーンで話し、決して感情をむき出して怒ったりしない、
    大海原の様な、常におだやかな人。
    私が大好きな人も、ざっというとこういった性格だ。
    そして、とてつもなく賢い。
    私はその人を心の友と思っている。
    心穏やかな毎日、それが私の望む生活だ。

  • 変わった切り口で面白い!と思ったのだけど、厳しめのレビューが多いのが意外。ちょっと癖があるから、好みは分かれるかな?設定は非現実的?なのに、対象者と自分を重ね合わせて勝手にあれこれ心配してしまうあたりは結構リアルな感じがしたけど。尾行がバレた後の展開は、現実にはそうはならないだろうけど、割と好きだった。男性よりは女性が好きそうな本。

  • 大学院生の主人公が講義を受けて感銘したという文学的・哲学的尾行を偶然出会った近所の男性に行う。その行為は意味ある尾行であると感じながら、知らず知らずのうちに自らの生活に影響を及ぼし疑心暗儀にとらわれてしまう。尾行に崇高な意味を感じ取らせ不倫小説で終わらせないところに小池真理子ならではの筆力を感じた。 

  • 妻子ある中年男性を尾行する大学院生の女性の話。
    ・・・となると、不倫?恋愛関係のもつれ?ストーカー?などとパッと思ってしまうけど、これはそのどれでもない。
    彼女の尾行には目的がない。
    称して、文学的・哲学的尾行。
    ある小説を題材にとった大学の講義でその言葉を知った彼女はある日見かけた男性の尾行を始める。
    彼は彼女が住むマンションの向かいの家に住む男性。
    出版社勤務で妻と一人の子供がいる。
    どこにでもいるような人物を尾行していく中で見えてくる男性の秘密。
    それはますます彼女を尾行にのめり込ませて-。

    まるで得にならない事に時間と労力を使う主人公。
    こんな話がちゃんと小説として成り立っているというのがすごい。
    文章がちゃんとしてなかったら、忽ち陳腐なストーリーに成り下がっていたと思う。

    この本に流れているのは、哲学的、そして文学的、かつ上品で静かな雰囲気。
    尾行という一歩間違えると犯罪・・・下世話な行為となるものから全くそういうものを感じさせない。
    それは主人公の女性の性格や雰囲気による所も大きいと思う。

    「他者の後をつける」という行為により「自分を他者と置き換える」。
    主人公の女性には同年代の恋人がいるが、尾行をする事によりそれまでは疑問に思わなかったような事が見えてくる。
    彼女は尾行という行為を通して第3者の目を得たのではないかと思う。
    人の日常を客観的に見ること、それは即ち自分を客観的に見る事にもつながっていく。
    彼女はその目でもって、現在の自分だけでなく、家庭環境、過去の恋人なども思い起こしてゆく。
    いつもながらさすがな文章力だと思いました。

  • この内容でこのページ数は、長過ぎ
    間延びしている

    それにしても、妄想できるって
    これも一種の才能だな

  • もっとぐちゃぐちゃした話かなと思ってたのになんかさっぱりしていた。
    もっと好きな作者だったと思うんだけどな。

  • フランスの女性アーティスト、ソフィ・カルの「文学的・哲学的尾行」を試みる主人公の珠。「生きていくために人は思索する」「厭世的」

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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