小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない

  • 角川書店 (2012年7月31日発売)
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102527

作品紹介・あらすじ

実際の作品を扱った「受講生作品講評」収録で、実践的なポイントが分かる!

エンタメ小説界のトップを走り続ける著者が、作家になるために必要な技術と生き方のすべてを公開。
十二人の受講生の作品を題材に、一人称の書き方やキャラクターの作り方、描写のコツなど小説の技術を指南。さらにデビューの方法やデビュー後の心得までを伝授する。
エンタメ系小説講座の決定版!

感想・レビュー・書評

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  •  メモ
     
    ミステリー「江戸川乱歩賞」「日本ホラー小説大賞」
    時代小説「松本清張賞」
     毎日10〜20枚は書く
     会話で主人公の性格(キャラクター)を立てていく。
     視点の乱れを無くす(一人称の場合)
     (例)〇〇は真っ赤になって怒った
       〇〇は真っ赤になって怒って見えた(正解)
      
     主人公説明
     ✕私はまた頬を染めた→頬が熱くなった
     自分の表情をわざわざ「何々してみせる」とは言わない
     ✕不機嫌そうに眉根を寄せてみせると→◯不機嫌に言った。

     主人公の年齢に見合った視点で書く。

    夢、漫画、小説、芝居でも何でも感動した事はメモ帳に書いておく。

     楽しい体験よりも悲しいこと、腹が立つこと、惨めなことの方が良い。

     惨めな人の周囲をどんどん黒く塗りつぶす方が読者には惨めさが伝わる。

     人間観察は人間描写に役立つ。

     嫌な人間=自分を嫌な人間とはおもっていない。

     最初から嫌な人を書こうとしない
     嫌な人に見えなかった人間がだんだん嫌な奴に見えてくる。ならざるを得ない感じにする。読者にじわじわ嫌な感じが広がっていく。

     面白い小説=キャラクターとストーリーが上手く繋がっている。
    ストーリーを支えるのはキャラクター
     
    重複は避ける(文字)。

     第三回
    【強いキャラクターの作り方】 
     数字や固有名詞に頼らずその人物を描写する
     できるだけ具体像を思い浮かべる
     具体像=雰囲気
     その人物のイメージを明確に喚起させるような言葉を探す
     有名人を思い浮かべるのは◯だが実際の実名は使わない。
     主役のキャラではなく、ヒロインと敵役の造形に重きを置く。
     (例)どんな魅力的なヒロインを出すか、どんな印象の悪い悪役を登場させるか
     彼らがその物語に登場する理由は?
     この場面に登場する人間にはそこにいる理由があることを踏まえて配置する。
     →この理由は必ずしも物語に出てくる必要はない。
     より具体的にリアルに人物設定をする
     個性を持っているか
     キャラクター表を作って、一人ひとりの登場人物について思いついたことをどんどんメモする。

     ストーリーの進行によってキャラクターに変化を生じさせる。ストーリーが登場人物を変化させてゆく。この変化に読者は感情移入する。
     
    例えば恋愛小説だと出会いから始まってしまうとパターンだなと思ってしまう。
     失恋から始めるのも良い。物語をどこから始めるのかは作者の自由。
     意外性を持った人物
     悪人が実は善人という方が物語に深みを与え、読者にも濃い印象を残す。
     視線の先を見るとその人が何をかんがえているのかが分かる。
     靴、ネクタイを観察する→から考えられる事は?
    激しい感情に襲われた時、その人物はどんなリアクションをするのか。
     主人公の行動が変わる時はどんなときか
     理論は一貫性を持つべき
     登場シーンの少ない人間ほどインパクトは必要
     全てのキャラクターの厚みが増えるほどストーリーを支える部分がどっしりと大きくなる

     回想シーンは会話にする!
     うまく合いの手を入れてくれる相手を作る
     相手「なにか心にひっかかっていることがあるんじゃない?」
     主人公「実は…」
     もう一つの方法「会話」→地の文(補足)→「会話」
     物の見え方は作者と同じではない。

     年齢、性別ではなくてものの考え方、よって立つ所、思想、個性、そこから決める。
     職業=特技
     なんの役にも立たないと思っていた特技ご思わぬところで生きてくる。
     特技を活かす場面を作ってやる。
     
     ミステリー=基礎知識
     何かを失い何かを得る
     カタルシスはキャラクターとストーリーあってこそ
     
     物語の長さとストーリーには重要な関係がある
     例:長編は平坦に山があっても読者は納得しない
      短編でその書き方はオッケイ

     八〇枚(原稿)まずは六〇枚のストーリーを作る
    「本格推理」名探偵は変化しない
     →キャラの変化よりもトリック
    「ハールドボイルド」は主人公は変化する
     
    取材で大切な事はものすごく細かい部分と幹の部分を聞く
     どんでん返しの成功=伏線が大事。早い段階で伏線を貼っておくこと。
     小さな伏線を四分の一の段階に一本でも張っておく。伏線強化の為に真ん中あたりにもう一本張る。
     伏線が足りなければあとから足しても良い。

     【第四話】会話の秘密
     ある程度は実際の会話に近い会話をしつつ、実際の会話並みの無駄なやり取りはのぞく。
    会話は一度自分で読んでみる。
     キャラの造形と合わせてふさわしい話し方、口調を考える。

     ミステリー:物語前半犯人を隠す
           物語八割終了犯人を分らせる会話

     隠す会話→沈黙
          「…」ではなく沈黙や答えないことを表現するような地の文
     登場人物を必要以上に饒舌にしない
     話をそらすのも良い
    「隠す会話」のトリック
     登場人物全員が主人公の協力者ではない
    会話を一度で終わらせないように工夫する
     →物語はどんどん複雑化し、話を前に進めてくれる。
     例:XをAに渡してYを得る
     
     会話の口調が変化すると二人の人間関係の深まりを表現できる。
     例:敬語→タメ口
     言葉を変えなければ人物の感情、背景、人間関係の障害になるものを伏線として使える。
     人物ごとに喋りそうなセリフをどんどん書き出していく。やがて「この場面でこの人だったらこれしか言わない」という決定的なセリフが必ず出てくる。
     具体的で個性的なキャラクターを作れる。
     キャラを対比させる
     例:熱血漢とですますで話す冷静な人
     男女を逆転して組み合わせたり年齢を思いっきり変えてみても良い。
     
    「隠す会話」2種類
     ①黙っていたり話をそらしたりする
     ②作者が物語をひっくり返す

      会話はなりきることが大切。
    ヤクザでもやらざるを得ない組織の論理や立場があり、家族や恋人がいて飯を食ったり、子どもと遊んだりしている。
     その人物の私生活、人生を想像し、細部までとことん考える。
     その人物に知りようのない情報を書いてはだめ。

    【第五回】プロットの作り方
     こういう小説を面白いと思うはずたと信じて書く。
    「変化を読ませる」
     ハラハラドキドキさせる。
    「謎を解き明かす」
     変化を読ませていって最後に謎が解ける。
    「謎」というものをどんなふうに物語に置いていくかが、プロット作りの大きな鍵になる。
    「自分の書く謎」をはっきりと明確にする。 
     「自分が書く作品の形に対する確信を持つ」
     →どこに戻ればよいかはっきりと自覚できる。
    「通過点を決める」→起承転結の四か所でもかまわない。
     決めた通過点を真っ直ぐ進む小説は面白くない。
     「承」から「転」をいかにダレずに読ませるか。
    全く別人の視点から始まっても良い。
     プロローグとエピローグをくっつけても良い。

     新しい登場人物を出したら古い人物を整理する
     登場人物を増やしすぎない。増えた分は整理する。

     【第六回】小説には「トゲ」が必要だ
    武器を持って続ける
     最初から最後まで他人事で終わる小説にする。
     だから何?
    あり得ない状況を作って主人公を追い込む
    描写にメリハリを
     その小説で一番大切なのは何なのか
     (背景ではなく入れ物)
    「天,地,人,動,植」
     何枚かに一回は山場を作る。

  • こんなにふせんを張りまくった本は、久しぶりだろう。
    本、文章術、作家論、全てのジャンルを網羅している素晴らしい一冊。

    のっけから、初版4000部、定価1700円、印税10%とした場合の
    手取り額68万円という事実が出される。
    いくら力作を書いてもこの程度と言う現実、そして
    本書で語られているように、プロはそれでも書き続けて”売れる”
    作品を出すことが条件ということ。

    作家としてデビューすることは簡単、ただしプロとして
    続けていくことは別物、は本書を読んで納得した。
    「本を一冊出すために、どれだけ多くの人が労力を使ったかを
    感じなければならない」
    「本書を手に取ってくれるかもしれない、見えない読者のことを考えて
    決して疎かな作品を作らない」

    安易に作家デビューを考えてしまいがちだが、
    売れている作家はすごいんだ、ということを実感させられた。

    本書は講義形式で、プロ志望の方々の作品も解説、批評しながら
    進んで行くが、読む限りおそらくこの中からはデビューできた人は
    いないんじゃないかと思った。
    やっぱり、それくらいプロとそれ以外の差は大きい。

  • 小説を書く上でどのようなことを考えるべきなのかよく分かる書籍でした。

  • これは素晴らしかった。文筆の経験はないし、特にそれを目指している訳でもないんだけど、本書に惹かれ、手に取った一番の目的は、小説を読むに当たってのポイントを教授されたかったから。物語をより深く味わい、楽しむために、ひいては優れた読み手たらんがために。そして本書は、かなり高水準でそれが達成されるものといえる。散々繰り返される、人称や視点人物への徹底した留意をはじめ、なるほどと思わされる箇所満載でした。将来小説を書くなら、是非改めて紐解きたい書物。

  • もちろん、こういう本を読んだからといって、小説を書いてみようなどという大それたことに挑戦しようことでは毛頭ない。
    「新宿鮫」シリーズをずっと読んできて、それを書いた作家が小説を書くということをどのようにとらえているのか(コンセプト)ということに興味があったことと、実際に文章を書くときにどんなことに注意して書いているのだろう(技術)ということを知りたかったのである。
    文章を書き、それを自らの生業にしているというのは、あらためて大変なことだと実感させられた。

  • 現在、さして売れていない作家がこんな題名の本を書くべきではないし、仮にも作家の立場から「この本を読んで、何度か投稿して芽が出なかったら作家をあきらめろ」なんてことを言ってほしくなかった(売れるまで苦労している人だからそういう部分、もっと応援的かと思っていたのに……)。しかも、そんな画期的な内容ではないし、全般的に古い。これをそのまま実行しても、今の読者は振り向いてくれない。これを騒ぎ立てて取り上げている作家志望者や編集者には、明るい未来はないと思う。デビューできても、たぶん売れないでしょう。そしてこの本をそのまま真に受けて、作家をあきらめる人がたくさん出てきたら、それは出版界にとって大きなマイナスじゃないでしょうか。ただでさえ、あんまり明るい業界ではなくなってきているんだから、もっと前向きになれるようなメッセージを発信してほしかったな。

    そういうわけで、私は作家志望者にこの本を薦めません。これは『売れる作家の全技術』ではなく、『売れた作家の全技術』です。
    私は作家志望者であり、すでにこの作者のいう「作家をあきらめなければならないライン」に到達していますが、これに反論するためにこれから作家になりたいと思います。

  • 前から少し思ってはいたけど、大沢在昌ってすごく上から目線の言い方が多いよね。もう確定的なのはこの本で新宿鮫の絆回廊がWEB新聞で連載されたいきさつを喋っているとき。
    WEB読者の女性をつかまえて「・・そんなことも知らなかったのかよ」呼ばわりですよ。相手は読者/お客様なんですよ。

    まあでもそういう貪欲でケチでお金に汚いところが無いと大沢在昌とは言えないのだろうねwww。
    俺の本が面白くてたくさん売れてんだから文句わねえだろ! はい、おっしゃるとおりです。ごめんなさいオオサワおやびん。

    加えて、宮部さんと京極さんという超売れっ子作家二人を自分の事務所の所属にしてしまっていることも大きな疑問を伴う驚きです。
    やっぱ宮部、京極のおふたりとも何かの弱みをあくどい大沢代官に握られているのかしらぁwww
    でもさ新宿鮫のエピソド「ロケットおっぱいの晶」ってのがこの本にも出てくるけど、わたしはそれ何回聞いて読んでもも只々笑ってしまうだけなのですけど。すまんこってす。すごすご。

  • 一貫したメッセージとして感じたのは、まさに「デビューだけで満足してはいけない」。現在の出版業界の厳しさ、デビュー後に良質な作品を書き続けることの大切さを何度も強調しているのが好印象だった。きっと従来の出版ではないアウトプットの仕方は模索しなければいけないのだろうな。

    大量の本を読むこと、何がなんでも書き続けること、など著者自身のプロ意識が垣間見えたのも読んでいて良かった。著者が実施した講義内容を書き下ろした形式だからか、通常の本よりも文の端々に思想が滲み出ていたように感じる。

    ノウハウ部分でいうと、キャラクターのセリフを書き出す、人物を一言で表現する、が刺激になったかな。特に後者はまさにコンセプトで、人物だけでなく幅広く使いたいところ。

    ただノウハウ部分はしっくりこなくて読み飛ばすところも多かったので、レーティングでいうと星3。手元に置いて繰り返し読む本ではないけれど、読む価値がある(わたしは図書館で借りた)。

  • 「新宿鮫」で知られるハードボイルド作家の大沢在昌氏が講師となった作家教室。「野生時代」での連載の単行本化。
    デビューの素質がある力のある受講生を選び、本腰を入れた本気の講座集です。
    現役作家ということで、自身の経験を交えながら実践的な解説を行っていく様子は本格的。
    編集者も数名交え、講師と受講者の本気がほとばしるガチンコ勝負のような講座が毎回繰り広げられていきます。

    キャリア30年の大御所である著者ながら、大作家の偉さを見せつけることもなく、受講生に添削と指導を行う様子などから、真摯に取り組んでいる様子が伝わってきます。

    彼のようなゆるぎないプロの作家でも、状況に甘んじることなく常に努力し続けており、その姿勢が彼が作家たる所以にもなっています。紹介されるさまざまな技法上のコツは本編に任せて、彼の創作姿勢が何より印象的。受講生にとって大きな刺激になったものと思います。

  • 単に「小説の書き方」を教える本ではなく、デビューのその先を見据えて、筆者が作家として培ったノウハウを惜しみなく晒してくれた一冊。
    実際に講義をおこなったようで、課題として生徒たちが書いた小説のあらすじや、それに対する評価も書かれている。

    さらりと斜め読みできる内容ではないので、読了に時間がかかった。
    どこをひらいても「なるほど」と思える内容のオンパレード。
    作家としての本当の力が試されるのはデビューしてから。それを理解したうえで作家を目指せ。若くしてデビューしたからと言って、そのあとも本を出せるとは限らない。
    ――ごもっともである。

    個人的に特に役立ったのは、
     第五回 プロットの作り方
     第六回 小説には「トゲ」が必要だ
    ようやく欲しい言葉をもらえて、一歩踏み出せるようになった。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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