鳴いて血を吐く

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 97
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102640

作品紹介・あらすじ

人気歌手・実菓子への取材で明らかになる旧家の秘密、過去の事件の真相-新鋭による傑作ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 内容紹介(転載)
    離婚して経済的に困窮しているギタリスト・多聞のもとに、人気歌手・実菓子のロングインタビューの仕事が舞い込んだ。多聞と実菓子は幼いころ同じ家で育ち、しかも多聞の亡父と亡兄はともに実菓子の夫であった――。

    最近注目している遠田潤子。まだ他にはアンチェルの蝶しか読んでいませんが、ダークで地面に沈み込んでいくような筆致にずるずると引きずられて僕のハートも鬱模様です。前回も今回も、幼少期の壮絶な体験が原因で、大人になっても大きな傷跡となって血を噴き出している様をまざまざと見せつけられる本で、自分の生み出した人格をよくぞここまで貶め汚し痛めつける事が出来るものだと読みながら感じました。基本的に幸せな本が好きで、誤解を受けてどんどん憎悪の泥沼に沈んでいくような話は悲しくて見ていられないのです。
    とは言いながらもこの本、小さな村の閉鎖的な陰惨さを描いているのですが、意外とそこまで詰め切れておらず、鬼畜と叫びたくなる一歩手前で足踏みをしております。
    主人公の多聞の幼馴染の歌姫、実菓子への憎悪も根が浅く、読んでいてすぐに底が透けて見える所が有ります。人によってはもっとどろどろを!と天下一品に群がる人々のように叫ぶ人もいるかもしてませんが、僕にとっては美しさと妖しさと悲しさのバランスが絶妙にとれていてとてもよかった。
    題名何しろインパクトがあるので、相当痛みを伴う読書になる覚悟をしていましたが、仕掛けである陰惨パーツをそぎ落とした姿は青春物語なのではないかと非常に感じました。皆色情におぼれ過ぎだろうと思ったりしますが、そんな中でも清澄さを保つ実菓子が素敵。可哀想だけど美しい。
    あと、多聞がマーチンのD45の戦前のモデルと思われるサイドバックハカランダの物を手放す所から始まってびっくり。一体いくらするものなんだろうか。

  • 読んでいて「何だこりゃ」となってしまった。
    私の感覚としては登場人物の会話のやりとりなど、ちょこちょこズレてると感じたし、つっこみ所が満載という感じの本だった。
    この人の本を読んだのはこれで2冊目だけど、前の本にも感じたように、物事の真相を出し惜しみして、それで読者をひきつけようとしている感じがした。
    だけど、それが成功しているかというと、個人的には「う~ん・・・」という感じ。
    衝撃的で人をひきつけるような事を書きながら生生しい事は避けている。
    どこかスッキリしない、モヤ~ッとした書き方をする人だと思う。
    主人公の男性も前作と同じで、性格が良い人物という設定だが、私からすると考え方が暗い。
    読んでいて重くなる。

    「藤屋」と「斧屋」という2つの旧家がある村出身で、「藤屋」で生まれ育った男性が主人公。
    経済的に困窮しているギタリストの彼にある仕事の依頼が舞い込む。
    それは「斧屋」出身で、幼い頃から一緒に育った女性の自伝の本を仕上げるための仕事。
    元々旧家だった「斧屋」は落ちぶれ、女性の母親は「藤屋」の主であり、主人公の父親の愛人として「藤屋」にやってきた。
    その際、一緒に連れられてきたのが今回インタビューをする事になった女性ー実菓子。
    美しい顔立ちの実菓子は母親に虐待されていた。
    その実菓子に主人公の病弱な兄は同情し、やがて愛情を抱くようになるが、その愛が兄を破滅へと追い込んでしまう。

    読んでいて何か、ピント外れな会話をしてるな~と思う所が多々あったが、それが後半になって気分悪くなるくらいになった。
    バケツがどうのこうのという話。
    そこじゃないだろ!とつっこみながら嫌々読んだ。
    登場人物の名前だとか、設定だとか、小説だからしょせん、フィクションだから・・・と思っていてもあまりに幼稚でマンガみたいだと思う。
    読む度にしらけた。
    この人の書く本はもういいかな・・・という感じがする。

  • 月桃夜、アンチェルのダブル受賞で力み過ぎたか?三作目の産みの苦しみで行き詰まったか?…期待を胸にページを進めるもなかなか物語に入り込めない、ぐいぐいと力業で読み手を引きずり込むストーリーも見えてこない、これはどうしたことだろう。
    あまりにあちこちに伏線を張り巡らせ過ぎて回収に綻びが出てしまい絶品のハードボイルドが半熟になってしまったのは残念。書ける作家さんなのだからもっとシンプルで良いのだ。
    継承するテーマ「罪と罰」を追い求めるのはわかる、でも人間の尊厳をバケツに例えたのはあまりにも安易で下品だったのでは?
    何にしても次作がターニングポイント、好みの作風だけに是非ともリカバリーショットを期待したい

  • 何とも焦れったいストーリーだ。なかなか読み進めなかった。読了し、ふーっという感じ。

  • もしかしたら遠田さんはわたしが知っているとはいいがたいけれど、少しは接点がある方かもと思えてくる。作家になる前にどこかでお会いしていませんか。

     展開は今一つ。でも、もう少しお付き合いをしていきたい。

  • 旧家のしきたりの中で、
    もがき苦しむ兄弟と女。
    ドロドロドロドロでした。
    最後、良い感じで終わって良かった。

    おもーいおもーい
    まさに、
    鳴いて血を吐く
    本でした。

    実菓子の歌声を聴いてみたいなーと、
    思いました。

  • 遠田さくひんの中で一番暗い感じがしますが、面白いです。

  • ギタリストの主人公・青鹿多門。たった一人の兄・不動を亡くし、幼馴染で兄の妻・実菓子を恨んでいる。
     丹羽谷村という村に藤屋と斧屋という旧家がある。とうに寂れた斧屋(静谷家)、今でも村に大きな影響力を持つ藤屋(青鹿家)。その青鹿家に生まれた多門、村人たちからは一目置かれているが家庭では傍若無人な父、体の弱い兄にかかりっきりな母、家族の中で疎外感を感じつつ兄だけは多門を優しく受け入れてくれた大切な存在だった。
     その藤屋に斧屋の生き残り・鏡子と実果子母子が客分としてやってくる。鏡子は父の愛人で、その女を同じ家に住まわせるというのだ。多門小5、実果子小4、不動中1の時だ。鏡子失踪、母は離婚して家を出ていき、実果子は16歳の時で父の後妻となる。初めて会った時から実果子に夢中の兄、多門もかなりショックを受けたのもつかの間、結婚式を済ませた初夜、父は腹上死する。残された3人、兄・不動は父の一周忌後、実果子と事実婚し、彼女をモデルに絵を描き、彼女はその歌声が評価され、多門をギタリストに指名、3人は世に知られることになる。だが幸せは長く続かなかった。兄は創作のアトリエとして改装していた蔵に籠り、餓死したのだ。死の真相と複雑な家族環境、旧家ならではのしがらみ、いろんなことが絡み合い、3人の関係を複雑にしていた。蔦の様に絡みあったその因縁を死をもって絶った不動。実果子も同じように死を選ぶしか道はないと思っている。いいとこのボンボン、世間知らず、優しい兄に守られ、今更ながらに事の全容をやっと理解した多門はこれからどう生きていくか、どうか実果子と共に前向きな人生を送ってほしいと思った。

  • それだけ魅力的なのかね、美菓子。
    人の人生を狂わせてしまうほどに。
    過去に引きずられているの? これほどの過去に影響されない人なんていないか〜。

  • 丹羽谷村は周囲を山に囲まれた小さな盆地。
    村の東はずれ、一番の高台にあるのは藤屋と呼ばれる青鹿家。西の山の麓にあるのは斧屋と呼ばれる静谷家。
    過去からの因縁浅からぬ二つの旧家の確執は、静谷家が廃れた今も村に深い影を落としている。。。
    斧屋の最後の子供である実菓子は、その類稀なる美貌と、聞く者の心を掴んで離さない歌声で一躍有名になった。
    実菓子の自伝を出版するためのインタビューを依頼されたのは、藤屋の青鹿多聞。
    彼は、兄青鹿不動を死へと導いた実菓子を激しく憎み、拒否したが、断り切れず3日だけという約束で村へと向かう。
    そして、不動、多聞、実菓子の子供時代の出来事が語られるとき、嘘に固められた過去の事件の恐ろしい真相が明らかになる。。。
    重かった。つらかった。
    でも、読むのを止められなかった。
    横溝正史を彷彿とさせる、田舎の旧家を取り巻く閉塞感。
    首吊り、餓死、虐待、腹上死、、、これでもかというほど、陰惨な出来事が語られる。
    否定され、無視され、虐げられ、人としての尊厳を奪われた者たちが思うのは、「言葉などなければいいのに・・・」ということ。
    他ならぬ家族に徹底的に損なわれた者たちの心の叫び。
    ラストに向かって、どんどん伏線が回収されて、真相が明らかになるとき、もう、瞬きをすることも、息をすることも許されない気持ちで読みふけった。
    言葉をもたない実菓子の痛いほどの思いが胸を突き上げ、泣きそうになる。
    暗く辛い長い夜を越えてやっと朝がくるような、最後に見えたほのかな光だけが救いだった。

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著者プロフィール

一九六六年大阪府生まれ。関西大学文学部卒。二〇〇九年、第二一回ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー。一二年、『アンチェルの蝶』で第一五回大藪春彦賞候補となる。また、『雪の鉄樹』が本の雑誌増刊「おすすめ文庫王国2017」第一位、『冬雷』が本の雑誌2017年上半期エンターテインメント・ベスト10 第二位となる。その他の著書に『あの日のあなた』『オブリヴィオン』『カラヴィンカ』。

「2018年 『蓮の数式』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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