光圀伝

著者 : 冲方丁
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年9月1日発売)
4.30
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  • 522レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (751ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102749

作品紹介

獣の宿命を背負った男―その名は光圀。
まったく新しい“水戸黄門”像の誕生!

光圀伝の感想・レビュー・書評

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  • 半年待ってようやく手元にきたこちらの本。
    でも、黄門様ごめんなさい。
    夏バテで読書意欲わかず、分厚すぎるこの本を開かず返却するところでした。
    読みだしたら面白くて、さすが評判の光圀伝。
    しかし猛暑のこの夏にこれ読むと、暑さに拍車がかかったかも(笑)
    光圀公、暑苦しいくらいに義の漢でした。
    その迫力に終始圧倒されました。

    「これは大義か?」
    「大義だ」
    父の要求に応えようと必死だった幼少期。
    そして兄を差し置いて世子となった自分は不義なのではないかと思い悩み、悪友達と放蕩し、一方では詩で天下をとると詩作と学問に溺れる青年期。
    理解しあえる友と、柔らかな心をもつ最愛の妻を得て、落ち着く場所を見つけ、大義のために動き出し、いよいよこれからというとき。
    不条理に襲う病で大切な人を次々に亡くし、失意のどん底に落とされる。
    それでも師を得て、歴史書の編纂をし、理想とする国造りをしながら、自分亡きあとのことを託せる次世代を育てる壮年期。
    そして序盤につながる、ずっと育ててきた者を自らの手にかけるまでのいきさつ…。

    今よりもずっと死が身近にあったこの時代、自分亡き後のことはずっと真摯に考えざるを得なかったのだろう。
    あの「黄門様」は、艱難辛苦を経た後の、本当に最後のひと時だったのだな。
    穏やかでいつも光圀を見守ってくれている兄、京都から嫁いできた天真爛漫で包容力ある泰姫、遠慮のない意見をぶつけ合える無二の友・読耕斎。周りの人もそれぞれがいい。
    何よりもやはり、光圀公の破天荒で、そして真っ直ぐ芯の通った骨太な生き様が魅力的だった。

  • 魅力的すぎる。
    すっかり心奪われた。
    しばらくこのまま続くのは間違いない。

    一日に何度も光圀のことを考え、口にだし、
    3日目ぐらいにはまわりに失笑されるようになり
    いまはもう諦観である。
    (ある意味ありがたい)

    泰姫のかわいらしさも魅力的だ。
    たった17歳で、そんな言葉がでるものなのかと
    天性の心の美しさをみた気がした。
    末永く共に歩んでほしかったと悔しく哀しい。

    兄の大きさがすばらしい。
    「頑張れ、子龍」
    「頑張ったな、子龍」
    そのやさしい声音が届いたような気がした。

    750ページもの厚さに怯み、
    なかなか手にとれなかったけれど読んでよかった。
    本当によかった。

    350ページをすぎたあたりから
    先へ先へという思いがどんどん強まった。

    時代小説は読みなれていないので
    いつもより時間がかかった。
    なので進み具合にもどかしくなりながら読み進めた。
    余談だが、わたしがこの本を読むようにはみえなかったと言われた。
    その人がどんな本を読むのかというイメージは
    たしかに勝手につく部分がある。

    近かったらいまごろゆかりの地を巡っていただろう。
    いま、こんな人に出会ったら確実に恋におちる。

  • 1人の人生の重みに打たれました。

    水戸徳川家の三男として生まれた光圀の、幼少時代から世を去るまでの歴史を綴った1冊。
    テレビドラマの水戸黄門のイメージを覆す、なんとも剛毅かつ破天荒な黄門様です。
    兄を差し置いて水戸徳川家の世子となったことを不義とし、自らの義を貫こうともがく姿。
    好奇心が旺盛で、詩歌や学問を愛し、学ぶことに喜びを感じる姿。
    なんと格好よい生き様なのだろう…!

    人生の節目節目で、光圀に訪れる気付きの時が印象的でした。
    現在20代の私はとにかく目の前のことでいっぱいいっぱいなのですが、壮年・老年を迎えたときには、世の中を後生に託すという心境に至れるのでしょうか。
    読みながら、光圀から「お前はどう生きている?」と問いかけられているような気持ちになり、思わずしゃきっと背筋が伸びました。

  • 冲方丁の歴史物2作目。
    なんとも雄渾な、力強い作品です。
    水戸黄門のモデルとなった水戸藩主、徳川光圀の伝記小説。
    「天地明察」とほぼ同時代で、暦の件もあの人物も出てきます。

    水戸藩は徳川御三家の中では家禄が低いが、江戸に近く参勤交代を免除され、江戸藩邸に藩主は常住だった。
    そのため、副将軍と呼び習わされたとか。正式な役職ではないのですね。
    初代藩主は将軍家光と年齢が近く、信頼されていた。

    光圀は初代藩主の三男なのですが、この父親というのが苛烈な男。
    大勢の側室を抱えながらなぜか正室をおかず、子供をなかなか嫡子と認めない。
    父は光圀に会ってもつぎつぎに試練に晒し、跡継ぎにふさわしいか試すかのよう。
    優秀な兄がいるのに、ややこしい成り行きで嫡男となった光圀は割り切れないものを抱え、その事情も小説の興味を引っ張ります。
    後に、兄の子を自分の跡継ぎに据えることに。
    義を貫いた人だったのですね。

    父親譲りか?光圀自身もはげしい気性。
    もはや戦乱のない時代に、武士がどう生きるかを模索するのでした。
    なんと詩で天下を取ろうと高言、京都の冷泉家とも交流を持ち、ついには認められる。
    儒家に学び、伯父が大事にしていた日本史をまとめる事業を引き継ぐ。
    立派すぎるほど才能と意志とエネルギーに溢れた男。

    それでも、何よりの人生の花は、皇族から迎えた正室の泰姫。
    感じのいい女性で、心和むひと時を過ごすのですが、残念ながら早世してしまいます。
    以後、正室を娶ることはなかったそうです。
    泰姫の侍女との信頼関係も、印象的。

    光圀は生存中から名君伝説はあったそうですが、「大日本史」の編纂のために家臣を諸国へ視察にやったことなどが、江戸時代後期からの黄門様の話の元になったよう。
    読み応えがありました!

  • 「生涯に、この本と出会って良かった」と思える本の一冊!700頁余の大部で、読み終えるのに一苦労かと思ったが、光圀の世界に浸り、次々に読み進み、最後の頁をめくるのも惜しくなる、もっと光圀と付き合っていたい、そんな気持ちにさせる良書である。光圀といえば、助さん格さんを従えた水戸黄門、あるいは大日本史の編纂者ぐらいの知識しかなかったが(葉室麟の「いのちなりけり」の冒頭に光圀の紋太夫上意打ちの場面があり、光圀の別の面のある予備知識はあったが)、この作品によって初めて光圀の全体像を知った。類まれな資質に恵まれた光圀は、さらに良き理解者、優れた仲間に囲まれる。頼房、頼重、泰姫、読耕斉、保科正之、等々。なかでも、左近のなんて魅力的な女性なことか、思わずほれぼれしてしまう。そしてひたすら大義に邁進する。しかし、多士済々に恵まれながらも、やがて彼らと幽明境を異にせざるを得ず、ひたすら死者を見送るばかりの後半生。光圀の哀しみ、そして苦悩、光圀の心持はいかばかりか。読みながら、無人の泰姫の部屋の場面では、光圀とともに思わず涙した。
    比類なき才能の渋川春海、豪放磊落大義のひと水戸光圀。何ともスケールの大きな英雄を、我々に呈示してくれた冲方丁氏は次にはどのような人物を登場させてくれるのか。

  • 「こちらにおわすは、先の副将軍、水戸光圀公であらせられるぞ。 頭が高い。 控えおろう」
    なーんて言われてカッカッカッと笑うお偉いさん、、、という印象だった徳川光圀。
    実はものすごく魅力的な偉人だった。宮本武蔵や天地明察の渋川春海も登場!私の中では、司馬遼太郎の『龍馬がゆく』に並ぶお気に入りの歴史本となった。

    (以下ネタバレ 備忘録)

    家康の孫にあたる光圀。徳川御三家の水戸藩の二代目藩主である。徳川御三家は幕府の閣僚ではないから幕府が変なことにならないように見守るお目付役のような相談役のような役割りもあった。

    時は戦がおわり泰平の世へ様変わりした江戸時代。戦国武将そのままのおっかない父親の三男として生まれた光圀が父親に認められることが全てだった幼少期から物語は始まる。

    のちに次男は亡くなり長男が病を得たことからお世継ぎとなるが、兄の病が完治したことから「自分が兄を差し置いて」と苦悩する。(この兄との関係もいいんだよなー。)ずっと後、光圀が藩主となった後には兄の子を養子に迎え三代目とした義の人である。

    光圀の青年時代。武士であるのに戦がない。これはこれでジレンマがかなりあったよう。そんな中、光圀は詩や史書、要するに文学で自らを高めていこうとする。町の居酒屋や色町に身分を隠しては繰り出し世に云う傾奇者と交遊を広げたりもする。この頃、宮本武蔵と出会う事件もあり。

    成人した光圀。皇族から姫を嫁にとる。(この姫がすばらしい!聡く優しく大きい人だ)この姫との結婚は二年半で終わるんだけど光圀は死ぬまで姫を愛するんだなぁ。

    猛烈に歴史や文学を学び詩の世界でも認められていく。また平等で論理的思考をもち、観察眼に優れ、媚びず恐れない行動力から大名からの信頼を得るばかりでなく江戸っ子からも絶大なる人気を得る。(光圀は隠居までずっと江戸暮らしなのね)その人気が、のちに将軍から疎まれる理由になっちゃうんだけど。

    光圀の偉業は、日本の史書を作ったことなのね。それまで画一的で面白みのない記録だったものを、未来の人間が楽しみそこから学べるものを残そうと出版社みたいな図書館みたいなものを事業として始める。わたしたちがいめこうして歴史本を楽しんでいるのも黄門様のお陰かもしれないんだなぁ。


    とにかく、光圀かっクイーン!
    友情、兄弟愛、夫婦愛、家臣との絆、光圀の人間臭さ、知力、胆力。
    楽しむとこ満載の一冊だった!

  • 一代記を読むと魂抜かれたようになる……。非常に面白かった。
    カリスマ性と義侠心を備えた眉目秀麗の殿様の話とか、単純な骨子だけで既に面白いのだが。

    『水戸黄門』でお馴染み、二代目水戸藩主徳川光國の生き様を描いた作品である。ちなみに光圀は隠居語の名前。
    初代藩主頼房の三男として生まれながら、優秀な長男を差し置いて世子に選ばれた光國は、人生の中で何度も「なぜ自分なのか」と問うことになる。自らを不義と考え、懊悩の年月を過ごすが、かねてから儒教の考えを尊び、よく学んだ光國は、その教えの中に自分の大義を見つけ、それを実現せんと決心する。

    『水戸黄門』で培われた好々爺のイメージは『天地明察』で豪快な男に取って代わり、また『光圀伝』によって、詩文を究めんと欲した文事の豪傑というよくよく面白いイメージになった。もう白髪をたたえた尉面のようなイメージには戻れない(笑)。

    最初のシーンが衝撃的なので、光國が殺戮を繰り返すシーンが度々出るのかと恐々読みはじめたが、思ったより詳細な殺戮の描写はなく、それより精神的な描写が中心でよかった(と、安心できたのは終盤になってだったが。笑)。
    この最初のシーンで出てくる名前もまた衝撃的で、いつ現れるのか、現れたらなぜこの人間が、と謎はずっと残る。

    心優しい兄頼重、よき同朋読耕斎に、正室泰姫とその侍女左近など、登場人物たちはとても魅力的だ。ちなみにかの有名な宮本武蔵に、同作者の著書の主人公で一躍有名になった安井算哲も登場する。
    だが、歴史上の人物である以上、その生死は不条理である。
    光圀の交遊関係の広さでは自ずと親しい人々を沢山見送らなければならず、その場面は毎回苦しい気持ちになった。そのせいか為景との邂逅のシーンは輝くように幸せに感じられ印象に残った。
    光國と為景の互いの尊敬する気持ちの和やかさに癒され、近すぎる為景を窘めてあげる読耕斎のつっこみに笑った。
    登場人物たちの輝きが強ければ強いほど、その灯が消える場面に於ける光國の寂しさを強く感じる。『光圀伝』最大の輝きを放った光圀の灯が消えた時も、たくさんの人がそれを強く心に刻み、悼み、寂しさを覚えたのだろう。

    ところで伯叔の兄弟が、伯父・叔父の語源なんだろうと気付いた。光國が、兄と西山に住み暮らすことに憧れた場面は、なんだかむしょうに切ない気持ちになった。

    感じたこと全てを書くのは無理なのでここで終わる。

  • ボリュームがあったが、最後まで楽しめた。
    水戸の黄門様としての場面は最後に少しだけ。
    義に対する熱い気持ちの持ち主とわかった。
    『天地明察』ともリンク。
    作者は一生を賭けて何事かをなす人物の造形が上手い。

  • BGMはMichel Jackson

    壮大でした。
    天地明察の算哲さんも光圀の人生に登場しました。それによって、より人と人との交わりが時空を超えて広がっていくように感じました。
    学を追究し、詩で天下を取ることを追求する姿が大きくて遠かったです。

    水戸黄門というと、テレビドラマのニコニコとしたお爺さんのイメージでしたが、激情家で怪力の者という想像と全く違う姿が面白かったです。

  • ものすごく読みごたえがあります。

    たとえば光圀には兄がいたのに、彼が水戸徳川家の後を継いだこと。
    歴史の事実としては知っていたけれど、大事なのは事実を知ることだけではなく、なぜそのようなことになったのか。
    事実に関わる人々が、何をどう考えどう生きたのかそこが大事なのだということを、光圀の生き様を通して描いた小説。

    つまり、光圀が編纂を始めた「大日本史」のような、人物本位の歴史小説なのである。
    …まあ、歴史小説は、大抵人物本位ではあるけども…。

    儒教に傾倒した光圀にとって、兄をさしおいて自分が後を継ぐというのは、義に反することなのである。
    「なぜ自分なのか?」
    それがわからないから、自分に自信を持つことができない。
    常に兄に対してコンプレックスを感じなくてはならなかった少年期。

    コンプレックスを抱えたまま文武の才を伸ばしていった青年期。
    ひととの出会いに恵まれる。
    宮本武蔵。沢庵和尚。山鹿素行。林羅山とその息子林読耕斎。保科正之。藤原惺窩の息子冷泉為景。後水尾上皇。滅亡した明から逃れてきた朱舜水。
    なんと才能あふれた人たちが多発した時代であったことか。

    詩で天下をとると決めたながらも、次々にやるべきことが目の前にあり、まわり道の日々を送るのであるが、それが光圀を成長させていく。

    志半ばで世を去っていく人たちから託された思い。
    義に生きる光圀は、それらを受け止めながら自分の道を模索していく。
    自分の志と義の一致を求めて。

    ことに、終生のライバルであり友であった読耕斎との交流と、正妻の泰姫とのたった4年の夫婦生活が、どれほど光圀の心を開放し、才能を伸ばしたことか。

    泰姫と左近の関係は、のちの『花とゆめ』の定子と清少納言に似ている。できた女官と才能あふれ心豊かな姫君。なるほど、ここから発展させたのか。

    光圀が誰かを殺害するシーンから始まり、誰を何のために殺したのかを謎としながら進められるので、小説的興味も尽きないで読み進められるのだが、実はここも史実なんですよね。
    解釈が通説と逆なのに納得させられる筆力。
    いや、これが真実でいいんじゃないでしょうか。

    徳川3~5代の時を、光圀と一緒にわくわく過ごした。
    楽しかった。

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