光圀伝

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.29
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本棚登録 : 2992
レビュー : 536
  • Amazon.co.jp ・本 (751ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102749

感想・レビュー・書評

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  • ひたむきな姿勢を貫く人間には心揺さぶられる。そしてそんな人間を描くのが、この作者はうまいなと思った。前半は、悩みもがきながら己が義を探す若さ溢れる勢いが魅力的。後半は、やっと見出した義をつかむ一方で、次々に向き合わねばならなくなった幾多の死と、追い求める側から追い求められる側へシフトする中で生じた、「ずれ」とも呼べる思考の飛躍がもたらした悲哀に引き込まれた。出会ってもすぐにすれ違う関係もあるというのに、愛し合い、時に暗い感情を芽生えさせる縁はどこまでも濃く、その業の深さにため息が出る。
    外面的には光圀は完全無欠に近いヒーロー型だが、その人間性は非常に味があり、また周りの人物も愛しく感じられる者ばかりなので、読んでいてとても心地よかった。久しぶりに『天地明察』を読み返したくなった。

  • こ、これが「天下の副将軍水戸光圀公」の一代記か。
    ひたすらに「義」の何たるかを求め、それを貫いた、乱世から泰平への繋ぎとなった時代の稀代の大名の一代記だ。
    一代記であるが故もあって、見送る人々が多いのが悲しい。
    終章にも記されれいるが、幕末にあって会津と水戸が辿った道がすべて得心のいくような物語であった。

  • 光圀伝読了。歴史を紡ぐ物語、という話になると思いきや、徹頭徹尾水戸光圀という、一人の人生を描いた物語だった。異形ではあるが、その人生を通してみることで、異形の人は「義」の一字を貫こうとして生きてきたことが伝わる。

    「天地明察」は歴をなす、という一つの目的を持った人間として晴海が描かれた。一方の「光圀伝」は,水戸光圀がどのような目的を持ったか、というレベルではなく、まさに彼の生を描いた作品。だからこその750ページだし、読み終えても分かりやすい答えはない。ただただ、冲方がみた光圀が描かれるだけ。

    史実に基づく分、奔放さで言えばやはり、過去の冲方作品には及ばない。がしかし、光圀とその父親、強烈な個性を持ち苛烈さを持つ男を描くからこそ、歴史小説でありながら冲方丁という作家の個性が生きたのだろうなぁ。

    そして、親友たる読耕斉や山鹿、最後まで「兄貴」であった頼重などが、本当に気持ちの良い人間たちで。それが鼻につくところもあったのに、読めば読むほど彼らの存在が大きくて。後半の藩主としての光圀の姿を見ていると、余計にそう思ってしまう。

    作品として素晴らしいのが、少年であった光圀が、藩主になるまでの間、読んでいて自然に歳を重ねているのだ。傾奇者として江戸を渡り歩く時期の話が好きなのだが、自然と落ち着きを持つようになっている。それ以降の月日の流れが早いのは仕方ないが、未熟ながらもまっすぐ歳を重ねていく光圀の姿がいい。

    とにもかくにも、冲方丁の歴史小説デビュー作は「天地明察」ではなく「光圀伝」だ!と、声を大にして言いたい。これが冲方丁ならではの時代小説なのだと思う。

    …実は、光圀伝を読んでいて思い出したのが桜庭一樹の「荒野」。これも、主人公の歳のとり方がすごく自然に感じられた作品だったし、何か終着点がある話でもなかった。どちらも、丁寧に主人公の人生を追った作品。

  • 水戸黄門こと徳川光圀の一生を描いた物語。
    TVで放送される黄門様像が創られたものだとは知っていたが、こうも違ったのかと驚かされる。

    豪快で強く、詩歌を愛し、義を貴ぶ。
    そんな新たな光圀像を見つけることができた。

    長くを生きた光圀は多くの出会い、別れと共に学び、成長していく。
    光圀のキャラクターはもちろん魅力的なのだが、光圀を支える妻、友人もまた魅力的な人物達で、物語を彩ってくれる。

    光圀の取り組んだ「大日本史」編纂の大事業。その重さ、歴史を知ることは今を生きることに繋がっている。

    多くを学んだ老齢の光圀が語る「明総浄机」と、進行している成長の過程が交錯していく展開が面白い。
    再読すればまた新しい発見があるのだろう。

    冒頭の紋太夫の謎も、最後には成程と思わせ、途中「天地明察」と同じように難しく感じる部分もあったが、読んで良かったと心から思える一冊だった。

  • なんともすごい大作です。
    水戸光圀の生涯が書かれたこの作品、まさに大河小説と呼ぶにふさわしいと思います。なんという読み応え、読む醍醐味が十分に堪能できて満足の一冊です。1週間かけて読了しました。

    幼少期から引き込まれます。兄への複雑な思いが切ないし、父への畏れもリアルでした。
    青年期も良かったなぁ。
    光圀の破天荒ぶり、もやもやする心のうちはとても興味深かったし、江戸の街で若く滾るパワーや人との出会いが格別に面白かったです。
    がむしゃらな学問への探究もよし、光圀の人物像にはとても惹き付けられました。
    知識人たちとの語らう知の世界には心が震えました。
    自分が学問をするわけではないのに(^ ^;)、宇宙を臨むような広がり感じられました。感動!

    壮年期がまたじっくり楽しませてくれました。
    光圀が歴史に残る人物となっていく生き様が、濃く深く描かれていて力強く圧巻でした。
    周囲を取り巻く大きな渦のような政治の世界と人物たちを通し、光圀が成長していくなかで、不思議となにか自分にも教えられることがあるように感じました。人から何かを学んでいく光圀の明晰さ、柔軟さ、心の強さがいい。一方、伴侶を得ての光圀の真っ直ぐさも楽しく読みました。

    そして未曾有の火災、多くの死別を経験した光圀の、晩年の思いは胸に迫るものがありました。若い頃には思い至らなかったことにふと気づいたり、ある時は自分の父は昔どんな思いでいたのかと考えたり、懐かしさを感じたり、若き立場には帰れない自分を思う。
    涙が出そうになった場面が何度もあった。
    光圀が人の世は…。と感じたように自分も人の生きることの移ろいを感じずにはいられませんでした。
    大河のような光圀の人生がずっしり迫り、なんとも重厚な小説でした。
    見事に書ききった冲方丁さん、本当にすごいことだと思います。

    PS. 電車では本が重くて腕がつらかったです。上下分かれていても良かったのでは?

  • 歴史小説が苦手なので、正直挫折しそうになる。
    でも、天地明察の面白さを思い出し、とにかく読み進める。
    しんどかったのは最初の方だけで、
    後半に進むにつれて、どんどんと惹きこまれる。
    読後は最後まで読んで本当に良かったと思える。

    『水戸黄門』というテレビドラマからくるイメージ。
    老人、聖人君子、旅。
    本作品を読むと、そのイメージが変わる。
    父親に対する思い、水戸家の世子という立場の葛藤、
    さまざまな苦しさから逃げて、やんちゃをした青年が、
    自分の夢や目標を見つけ、素晴らしい人との出会いがあり、成長していく。

    人との出会いがあれば、その分だけ人との別れがある。
    現代との違いは、その別れの形がほぼ確実に死であること。
    長生きであった光圀が、詩と言葉をもって大切な人々の死に向き合う姿に、涙が出た。

    安井算哲との絡みもあり、天地明察を読み返したくなる。

  • ヤング黄門様、あのTVシリーズで固定された水戸光圀像をくつがえす作品。読み応え満点です。

    次男の身ながら世子と育った不可思議に悩み苦しむ青春時代。
    父の考えがわからず、父母の愛に飢えながらも貪欲に己れの姿を探し求め、武芸よりも学問の世界に深く踏み込んで行く姿が力強い。

    「なぜ俺が世子なのか」に対する光國なりの答えを見いだした後は、治世の難しさ、人の命の儚さに苦しみながらも泰平の世を恒久的なものにしようと力を尽くす姿が描かれる。
    そして最後に、冒頭の紋太夫手打ちの顛末がやってくる。
    その真相は、残酷にも学問に力を注いできた光圀の限界を明示する。

    大胆な創作であろうが、戦国の世を勝ち抜くべく教育された武士が泰平の世に適応すべく苦しむ光國像は立体感がある。

    途中、天地明察の安井算哲との場面が出て来る。映画でのこのシーンは、原作の“天地明察” よりも、こちらの光圀伝の方に沿うている様子。 もういちど“天地明察”を読み直したくなる。上手いなぁ。

    《追記》本屋大賞2013 11位は 長かったせいでしょうか。
    大河ドラマにはなる。小栗旬でどうでしょうか。

    • hongoh-遊民さん
      冲方丁の作品は、「天地明察」「光圀伝」どちらも、魅力ある主人公!次はどんな英雄を我々に呈示してくれるか、楽しみですね。
      冲方丁の作品は、「天地明察」「光圀伝」どちらも、魅力ある主人公!次はどんな英雄を我々に呈示してくれるか、楽しみですね。
      2012/10/12
    • adagietteさん
      hongoh-遊民さん、コメントありがとうございます。 光圀も算哲もホントに瑞々しく魅力的でしたね!(光圀伝は小栗旬で大河ドラマを予想してま...
      hongoh-遊民さん、コメントありがとうございます。 光圀も算哲もホントに瑞々しく魅力的でしたね!(光圀伝は小栗旬で大河ドラマを予想してますww)
      友達情報によると次は清少納言なんだとか!? 沖方さん、目が離せません♬
      2012/10/14
    • hongoh-遊民さん
      光圀伝がドラマになったら、必見ですね。
      光圀伝がドラマになったら、必見ですね。
      2012/10/15
  • 読み応え満載。
    歴史にずっと興味がなく過ごしてきたけれど
    最近とっても歴史小説を面白く感じる。
    こんな風に過去の出来事と触れ合えていたら、
    学生だったあの頃もっと楽しく学べたのに・・・
    凄く勿体なかったと痛切に思う。

    テレビの「水戸黄門」しか知らなかった私には
    衝撃的で鮮烈な印象を残した。
    まだ読んでいない天地明察も是非読みたいと思う。

  • 一言、壮大だった。天地明察にも劣らぬ内容で、死を隣にあるものとして生きる時代の者たちの人生が如何に熱く、信念をもって生きていたか伝わった。義を真っ当しようとした光圀はもちろん素晴らしいが、心が最も震えたのは泰姫が光圀の義を理解し、子の取り替え案を告げた瞬間だ。また泰姫臨終の際の生きたいという言葉には涙なくしては見れなかった。そして読耕斎、左近、頼房、頼重、ことごとくあっぱれな生き様の人物たち。賞賛は尽きないが、この本は人生において出会って良かったと思える一冊となった。

  • 751頁、読み切りました。
    あまりの分量に、面白くなかったら、ショックが大きいだろうな!と思っていましたが、一気に読ませてくれました。プロットが嫌みなくらい、完璧。
    読ませる技術もたけている。これは、凄い才能だ。きっと誰もが感じるだろう。
    これだけ長いストーリーをぶれずに書ききるとは恐るべし、義の持ち主である。
    是非大河ドラマでみてみたい、と思わずにはいられない。頼むから商業映画ではみたくない。
    泰姫、左近とのくだりが、よい意味で、アクセントになっていて、この尋常ならざる巨人の人間味を感じることができる。
    しかし、これだけのストーリーテラーは次にどんなものを描くのだろうか?
    まずは彼のこれまでの小説を読んでみて想像しよう!楽しみが増えた。

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著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

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