光圀伝

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • / ISBN・EAN: 9784041102749

作品紹介・あらすじ

獣の宿命を背負った男―その名は光圀。
まったく新しい“水戸黄門”像の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 魅力的すぎる。
    すっかり心奪われた。
    しばらくこのまま続くのは間違いない。

    一日に何度も光圀のことを考え、口にだし、
    3日目ぐらいにはまわりに失笑されるようになり
    いまはもう諦観である。
    (ある意味ありがたい)

    泰姫のかわいらしさも魅力的だ。
    たった17歳で、そんな言葉がでるものなのかと
    天性の心の美しさをみた気がした。
    末永く共に歩んでほしかったと悔しく哀しい。

    兄の大きさがすばらしい。
    「頑張れ、子龍」
    「頑張ったな、子龍」
    そのやさしい声音が届いたような気がした。

    750ページもの厚さに怯み、
    なかなか手にとれなかったけれど読んでよかった。
    本当によかった。

    350ページをすぎたあたりから
    先へ先へという思いがどんどん強まった。

    時代小説は読みなれていないので
    いつもより時間がかかった。
    なので進み具合にもどかしくなりながら読み進めた。
    余談だが、わたしがこの本を読むようにはみえなかったと言われた。
    その人がどんな本を読むのかというイメージは
    たしかに勝手につく部分がある。

    近かったらいまごろゆかりの地を巡っていただろう。
    いま、こんな人に出会ったら確実に恋におちる。

    • macamiさん
      ☆vilureefさん

      こんにちは!
      お返事が遅くてすみません<(_ _)>
      この本はすごくオススメです!
      (いまだ光圀ブーム継続中)
      で...
      ☆vilureefさん

      こんにちは!
      お返事が遅くてすみません<(_ _)>
      この本はすごくオススメです!
      (いまだ光圀ブーム継続中)
      でも四分の一ほどで挫折してしまう気持ち、
      よくわかります。
      (わたしなんて、そういう本がたくさん・・・
      なにか足りないのかもなんて思ったりします。苦笑)

      あっという間に読まれたご家族、すばらしい!羨ましい!

      「桜ほうさら」も腰がひけますね・・・
      厚さが気にならない作家さんて
      あまりいません。
      実際読めば、「読んでよかった!」と思う本も多いので
      厚さで避けるのはもったいないとは思うのですが。苦笑
      2013/08/11
    • nico314さん
      macamiさん、こんにちは!

      >魅力的すぎる。
      すっかり心奪われた。
      しばらくこのまま続くのは間違いない。
      一日に何度も光圀の...
      macamiさん、こんにちは!

      >魅力的すぎる。
      すっかり心奪われた。
      しばらくこのまま続くのは間違いない。
      一日に何度も光圀のことを考え、

      はまれる本に出会ったときのこの感じ、わかります!!
      私もここしばらく、頭の片隅に『お祭り』というか、『ブーム』というか到来しているのです!

      この本も読まねば!楽しい時間をまた過ごせそうです!
      2013/08/18
    • macamiさん
      ☆nico314さん

      こんばんは!
      続きが気になって仕方がない本、
      本であることを忘れるほど入り込めるような本、
      読了後に余韻が...
      ☆nico314さん

      こんばんは!
      続きが気になって仕方がない本、
      本であることを忘れるほど入り込めるような本、
      読了後に余韻が長々と続く本、
      などなど最高ですよね♪

      ぜひぜひ読んでみてください!
      感想、楽しみに待っています。
      2013/08/20
  • 1人の人生の重みに打たれました。

    水戸徳川家の三男として生まれた光圀の、幼少時代から世を去るまでの歴史を綴った1冊。
    テレビドラマの水戸黄門のイメージを覆す、なんとも剛毅かつ破天荒な黄門様です。
    兄を差し置いて水戸徳川家の世子となったことを不義とし、自らの義を貫こうともがく姿。
    好奇心が旺盛で、詩歌や学問を愛し、学ぶことに喜びを感じる姿。
    なんと格好よい生き様なのだろう…!

    人生の節目節目で、光圀に訪れる気付きの時が印象的でした。
    現在20代の私はとにかく目の前のことでいっぱいいっぱいなのですが、壮年・老年を迎えたときには、世の中を後生に託すという心境に至れるのでしょうか。
    読みながら、光圀から「お前はどう生きている?」と問いかけられているような気持ちになり、思わずしゃきっと背筋が伸びました。

  • 冲方丁の歴史物2作目。
    なんとも雄渾な、力強い作品です。
    水戸黄門のモデルとなった水戸藩主、徳川光圀の伝記小説。
    「天地明察」とほぼ同時代で、暦の件もあの人物も出てきます。

    水戸藩は徳川御三家の中では家禄が低いが、江戸に近く参勤交代を免除され、江戸藩邸に藩主は常住だった。
    そのため、副将軍と呼び習わされたとか。正式な役職ではないのですね。
    初代藩主は将軍家光と年齢が近く、信頼されていた。

    光圀は初代藩主の三男なのですが、この父親というのが苛烈な男。
    大勢の側室を抱えながらなぜか正室をおかず、子供をなかなか嫡子と認めない。
    父は光圀に会ってもつぎつぎに試練に晒し、跡継ぎにふさわしいか試すかのよう。
    優秀な兄がいるのに、ややこしい成り行きで嫡男となった光圀は割り切れないものを抱え、その事情も小説の興味を引っ張ります。
    後に、兄の子を自分の跡継ぎに据えることに。
    義を貫いた人だったのですね。

    父親譲りか?光圀自身もはげしい気性。
    もはや戦乱のない時代に、武士がどう生きるかを模索するのでした。
    なんと詩で天下を取ろうと高言、京都の冷泉家とも交流を持ち、ついには認められる。
    儒家に学び、伯父が大事にしていた日本史をまとめる事業を引き継ぐ。
    立派すぎるほど才能と意志とエネルギーに溢れた男。

    それでも、何よりの人生の花は、皇族から迎えた正室の泰姫。
    感じのいい女性で、心和むひと時を過ごすのですが、残念ながら早世してしまいます。
    以後、正室を娶ることはなかったそうです。
    泰姫の侍女との信頼関係も、印象的。

    光圀は生存中から名君伝説はあったそうですが、「大日本史」の編纂のために家臣を諸国へ視察にやったことなどが、江戸時代後期からの黄門様の話の元になったよう。
    読み応えがありました!

  • 生きた証を見せてもらった一冊。

    序盤から虎に例えられた光圀の姿に惹きつけられた。

    幼き頃よりひたすら義を探求し、大切なものを犠牲にしてでも大義を全うする、そのゆるぎない志を、彼の真の心の中を最後の最後まで文字で辿る時間。

    まさに冲方さんの手で光圀の生きた証を余すことなく見せてもらった、そんな思いが喜びとして心に沸き起こった。

    別れも悲しみも、全て彼の大義の血潮となっていたのだろうか…そう考えずにはいられない。

    良かった、読んで良かった。
    こうした形で歴史上の人物に触れられ、興味を持つ、これもまた読書の楽しみの一つだ。

  • 感想
    光圀の己の存在意義から、友や妻、師など数々の死別を経て、史書編纂を成し遂げた思いが身に染みる。

    遂に、左近とは何もなかったのだろうか?心で支え合っていたからこそなのか。

    最後の死者の列に加わったという表現が印象的。

    良い作品だった。700ページを超える大作だが、スルッと読めた。

    あらすじ
    水戸光圀の一生。物語は光圀が67歳で家老を殺害するところから始まる。謎は明かされないまま、幼少期へ。第三子の自分が兄を差し置いて、嫡男となった疑問について、天然痘にかかったことをキッカケに考える。

    無事に快癒した光圀は大きくなり、江戸で傾奇者としてふらふらしている時に、仲間に囃し立てられ、無宿人を斬り殺してしまう。その時に、宮本武蔵と沢庵と出会い、モノの見方に変化が生じる。

    光圀もこれを機に、勉学を始める。ある居酒屋で坊主を論破して調子に乗っていたが、林羅山の息子の読耕斎に論破され、彼に勝つためにさらに猛勉強する。

    詩で天下を取る、という目標を掲げて精進する。

    京の冷泉為景とも親交を深める。叔父の義直が危篤になり、自分の出生の秘密と嫡男になった理由を聞かされる。光圀は嫡男ではない自分が義に従う行動をするためには、自分の子を成さず、兄から養子を取り、血を戻すことで義を貫こうとするが、京の近衛家より嫁取りの話が持ち上がる。

    光圀は義の話を婚姻の日に妻となった泰姫に話し、姫の持ち前の素直さで全てが受け入れられる。光圀は妻を同志を手に入れたかのような心持ちになり、安らかに時を過ごす。

    江戸大火と林家の史書の焼失を経て、光圀は史書編纂の決意をする。その後、泰姫や読耕斎との死別により、編纂事業への思いを強くする。

    やがて両親を亡くし、藩主になるに当たって、兄の子供を養子にして義を成すことを成し遂げる。その後、明国の朱舜水を師として招き入れ、様々な改革事業に着手する。

    光国から光圀へ改名。

    最後は、自分の秘蔵っ子の紋太夫の野望を阻止するため葬り去る。

  • 「生涯に、この本と出会って良かった」と思える本の一冊!700頁余の大部で、読み終えるのに一苦労かと思ったが、光圀の世界に浸り、次々に読み進み、最後の頁をめくるのも惜しくなる、もっと光圀と付き合っていたい、そんな気持ちにさせる良書である。光圀といえば、助さん格さんを従えた水戸黄門、あるいは大日本史の編纂者ぐらいの知識しかなかったが(葉室麟の「いのちなりけり」の冒頭に光圀の紋太夫上意打ちの場面があり、光圀の別の面のある予備知識はあったが)、この作品によって初めて光圀の全体像を知った。類まれな資質に恵まれた光圀は、さらに良き理解者、優れた仲間に囲まれる。頼房、頼重、泰姫、読耕斉、保科正之、等々。なかでも、左近のなんて魅力的な女性なことか、思わずほれぼれしてしまう。そしてひたすら大義に邁進する。しかし、多士済々に恵まれながらも、やがて彼らと幽明境を異にせざるを得ず、ひたすら死者を見送るばかりの後半生。光圀の哀しみ、そして苦悩、光圀の心持はいかばかりか。読みながら、無人の泰姫の部屋の場面では、光圀とともに思わず涙した。
    比類なき才能の渋川春海、豪放磊落大義のひと水戸光圀。何ともスケールの大きな英雄を、我々に呈示してくれた冲方丁氏は次にはどのような人物を登場させてくれるのか。

    • しをん。さん
      >「生涯に、この本と出会って良かった」と思える本の一冊!

      凄いですね♪今、映画化されている天地明察の冲方丁さんですよね(●^o^●)
      私は...
      >「生涯に、この本と出会って良かった」と思える本の一冊!

      凄いですね♪今、映画化されている天地明察の冲方丁さんですよね(●^o^●)
      私は、天地明察か、光圀伝どちらから読むかを迷っていたのですが…。
      hongoh-遊民さんのレビューを読んで面白そうなので早速図書館で予約します(笑)
      2012/10/11
  • 流石、冲方丁という歴史に基づく人物像の描き方が秀逸でした。

  • 「こちらにおわすは、先の副将軍、水戸光圀公であらせられるぞ。 頭が高い。 控えおろう」
    なーんて言われてカッカッカッと笑うお偉いさん、、、という印象だった徳川光圀。
    実はものすごく魅力的な偉人だった。宮本武蔵や天地明察の渋川春海も登場!私の中では、司馬遼太郎の『龍馬がゆく』に並ぶお気に入りの歴史本となった。

    (以下ネタバレ 備忘録)

    家康の孫にあたる光圀。徳川御三家の水戸藩の二代目藩主である。徳川御三家は幕府の閣僚ではないから幕府が変なことにならないように見守るお目付役のような相談役のような役割りもあった。

    時は戦がおわり泰平の世へ様変わりした江戸時代。戦国武将そのままのおっかない父親の三男として生まれた光圀が父親に認められることが全てだった幼少期から物語は始まる。

    のちに次男は亡くなり長男が病を得たことからお世継ぎとなるが、兄の病が完治したことから「自分が兄を差し置いて」と苦悩する。(この兄との関係もいいんだよなー。)ずっと後、光圀が藩主となった後には兄の子を養子に迎え三代目とした義の人である。

    光圀の青年時代。武士であるのに戦がない。これはこれでジレンマがかなりあったよう。そんな中、光圀は詩や史書、要するに文学で自らを高めていこうとする。町の居酒屋や色町に身分を隠しては繰り出し世に云う傾奇者と交遊を広げたりもする。この頃、宮本武蔵と出会う事件もあり。

    成人した光圀。皇族から姫を嫁にとる。(この姫がすばらしい!聡く優しく大きい人だ)この姫との結婚は二年半で終わるんだけど光圀は死ぬまで姫を愛するんだなぁ。

    猛烈に歴史や文学を学び詩の世界でも認められていく。また平等で論理的思考をもち、観察眼に優れ、媚びず恐れない行動力から大名からの信頼を得るばかりでなく江戸っ子からも絶大なる人気を得る。(光圀は隠居までずっと江戸暮らしなのね)その人気が、のちに将軍から疎まれる理由になっちゃうんだけど。

    光圀の偉業は、日本の史書を作ったことなのね。それまで画一的で面白みのない記録だったものを、未来の人間が楽しみそこから学べるものを残そうと出版社みたいな図書館みたいなものを事業として始める。わたしたちがいめこうして歴史本を楽しんでいるのも黄門様のお陰かもしれないんだなぁ。


    とにかく、光圀かっクイーン!
    友情、兄弟愛、夫婦愛、家臣との絆、光圀の人間臭さ、知力、胆力。
    楽しむとこ満載の一冊だった!

  • 一代記を読むと魂抜かれたようになる……。非常に面白かった。
    カリスマ性と義侠心を備えた眉目秀麗の殿様の話とか、単純な骨子だけで既に面白いのだが。

    『水戸黄門』でお馴染み、二代目水戸藩主徳川光國の生き様を描いた作品である。ちなみに光圀は隠居語の名前。
    初代藩主頼房の三男として生まれながら、優秀な長男を差し置いて世子に選ばれた光國は、人生の中で何度も「なぜ自分なのか」と問うことになる。自らを不義と考え、懊悩の年月を過ごすが、かねてから儒教の考えを尊び、よく学んだ光國は、その教えの中に自分の大義を見つけ、それを実現せんと決心する。

    『水戸黄門』で培われた好々爺のイメージは『天地明察』で豪快な男に取って代わり、また『光圀伝』によって、詩文を究めんと欲した文事の豪傑というよくよく面白いイメージになった。もう白髪をたたえた尉面のようなイメージには戻れない(笑)。

    最初のシーンが衝撃的なので、光國が殺戮を繰り返すシーンが度々出るのかと恐々読みはじめたが、思ったより詳細な殺戮の描写はなく、それより精神的な描写が中心でよかった(と、安心できたのは終盤になってだったが。笑)。
    この最初のシーンで出てくる名前もまた衝撃的で、いつ現れるのか、現れたらなぜこの人間が、と謎はずっと残る。

    心優しい兄頼重、よき同朋読耕斎に、正室泰姫とその侍女左近など、登場人物たちはとても魅力的だ。ちなみにかの有名な宮本武蔵に、同作者の著書の主人公で一躍有名になった安井算哲も登場する。
    だが、歴史上の人物である以上、その生死は不条理である。
    光圀の交遊関係の広さでは自ずと親しい人々を沢山見送らなければならず、その場面は毎回苦しい気持ちになった。そのせいか為景との邂逅のシーンは輝くように幸せに感じられ印象に残った。
    光國と為景の互いの尊敬する気持ちの和やかさに癒され、近すぎる為景を窘めてあげる読耕斎のつっこみに笑った。
    登場人物たちの輝きが強ければ強いほど、その灯が消える場面に於ける光國の寂しさを強く感じる。『光圀伝』最大の輝きを放った光圀の灯が消えた時も、たくさんの人がそれを強く心に刻み、悼み、寂しさを覚えたのだろう。

    ところで伯叔の兄弟が、伯父・叔父の語源なんだろうと気付いた。光國が、兄と西山に住み暮らすことに憧れた場面は、なんだかむしょうに切ない気持ちになった。

    感じたこと全てを書くのは無理なのでここで終わる。

  • ボリュームがあったが、最後まで楽しめた。
    水戸の黄門様としての場面は最後に少しだけ。
    義に対する熱い気持ちの持ち主とわかった。
    『天地明察』ともリンク。
    作者は一生を賭けて何事かをなす人物の造形が上手い。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「義に対する熱い気持ち」
      私達が失いかけているモノを、書いてくださっているんだ。。。早く文庫になると良いなぁ~
      「義に対する熱い気持ち」
      私達が失いかけているモノを、書いてくださっているんだ。。。早く文庫になると良いなぁ~
      2012/12/18
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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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