- Amazon.co.jp ・本 (649ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041102909
作品紹介・あらすじ
今から一〇〇年後の未来。社会のほとんどをhIEと呼ばれる人型ロボットに任せた世界。人類の知恵を超えた超高度AIが登場し、人類の技術をはるかに凌駕した物質「人類未到産物」が生まれ始めた。黒い棺桶のようなデバイスを持つレイシア。彼女こそが人類の理解を超えた超高度AIによって作り出された「人類未到産物」だった。17歳の少年、遠藤アラトはレイシアと出会う。人間がもてあます進化を遂げた人間そっくりの"モノ"を目の前にし、アラトは戸惑い、疑い、翻弄され、そしてある選択を迫られる。信じるのか、信じないのか-。「ヒト」と「モノ」のボーイ・ミーツ・ガール。彼女たちはなぜ生まれたのか。彼女たちの存在と人間の存在意義が問われる。そして、17歳の少年は決断する-。
感想・レビュー・書評
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長編だが飽きずに楽しめた。
2105年。日本。21世紀初頭から減りだした人口は8000万人。hIE(ヒューマノイド・インターフェース・エレメンツ)と呼ばれる人型ロボットが穴を埋めることで回っている社会。人工知能の知的能力が人類を上回る技術的特異点(2051年)を迎えてから約50年後、進化の遅い人類脳ではもう追いつけない39台の高度AIが厳格に管理された世界。
東京湾第二埋め立て島群にあるミームフレーム社の東京研究所から5体のhIEが逃走。レイシア級hIE Type-001 紅霞、Type-002 スノウドロップ、Type-003 サトゥルヌス、Type-004 メトーデ、Type-005 レイシア。いずれもミームフレーム社の超高度AI 《ヒギンズ》が設計した人類ではまだ理解できない超高度技術の産物である《人類未到産物》(レッドボックス)。それぞれ《人間との競争に勝つための道具》、《進化の嘱託先である道具》、《環境を構築する道具》、《人間の拡張としての道具》、《?》。仲の良い高校2年C組の同級生、遠藤アラト、村主ケンゴ、海内リョウはレッドボックスに出会い、それぞれの道を歩み始める。
設定はSF仕立てだが超甘口のボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー、能力バトルもの、少年の成長物語、人間とAIのかかわり方をテーマにしたSF、色んな楽しみ方ができる小説である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み応えありのAIもの近未来SF作品。
『円環少女』の作家らしく序盤は固めのライトノベルとしても読めるが、『あなたのための物語』でみせたキャラクターの掛け合いを通じてとことん読者へ問い掛ける姿勢はSFカテのもの。
根幹にボーイ・ミーツ・ガールを置いて、人類の進化の方向が、結果的にディストピアなのか理想なのか、社会のシステムを問うている。
美少女アンドロイドと超人的バトルに加えredjuceのイラスト、コミック化と、一部SFファンにはうんざりくるコンテンツが大集合しているが、食わず嫌いせずにおすすめしたい一作。 -
自分の中の世界を覆した。
そこにはアナログハックされた
自分がいた -
アニメ化してたよな…レイシア懐かしい…
このぐらいカジュアルにヒト型AIが歩きまわる時代が来るんだろうか…簡単にめろめろになりそうな自分が怖いわ… -
大事に大事にちまちま読んでいたがどうしても後半一気読み終えてしまう
複数「ロボ娘」が志向を持ち主に代弁させる「落ちもの」「バトル」
(複数の「ヒロイン」の誰を「選ぶ」かがセカイを決定する)
というライトノベルな入りは
またこの文体齟齬感が座り悪くて不味くて客を選ぶなあ
と思っていても
ロボやモノとして人間がどう向き合うかというSFとして慣れてくると
どうでも良くなるのは『円環少女』と同じ味わい
充分に発達した科学しかない100年後の近未来においても
ロボ(『はいぱああかでみっくらぼ』のいう「パシフィックドグマ」)に対する
人間の態度はフランケンシュタインから変化ないが
計算機は「知能」において人間を上回っている
地球外知性とかでなく人類の手に生り得る計算機の範囲内で
説得力持って物理的な(仮想世界で無い)「知性」を描いているのが
まず大変にさすがこの作者と好みである
『攻殻機動隊』だって充分に好きだし感心するけれど
四半世紀経っているのだから
100年後という未来への距離が変わり得ていない方がおかしい
話としては背景のSF素材を回収して少年の主人公に戻ってくるのだが
SFとしてでなく娯楽小説として
話を進めるのは誰が進めるのかおこたりなく配慮はいきとどいているけれど
ライトノベルとSFと
またはこの作品が連載されていたアニメ情報誌を見ているひとらと
どこへ届いているか不安になる(『円環少女』もそうだけれど)
大衆に訴求する娯楽の標的たる「普通のひと」がどこにいるかは悩ましい -
人に見た目が近づいたアンドロイドと人間のボーイミーツガールな話。
なかなか良かった。
ただ「イヴの時間」という映画も似たような時期に見た感想としては、ロボットは見た目を人間にあまり近づけすぎないべきでは?って思う。
人間型は良いとして、もっとアンドロイド然とした感じにしておいたほうが、人間にとってよいと思った。
かわいい女の子のアンドロイドなんて、エッチな目的以外に必要性がないと思う。 -
アニメ雑誌「ニュータイプ」を読んだ時にアニメ化するということで興味を持って購入。実質、約650ページを2日で読了。途中、少しだけ飽きそうになったけど最後まで集中して読めたかな-。AIを軸に、というより、量で測れない「感情」と測量可能な「知識」のせめぎあいが軸だったのかなと思う。ちょっと主人公アラトにイラッとするところもあったけど、読み終わるとそれも必要なプロセスかと思うところもあり・・・。ちょっとうるっと来てしまった。説明をくどいと感じるところがもっとすっきりしてるとさらに良かったかな。でも読了感はとても良かったです。
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作者スゴイ!
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装丁や設定に騙されてはいけない。相当硬派なSF作品である。人々が漠然と抱くシンギュラリティ後への期待や不安、それらに対する一つの見解といえる小説である。著者が「人類未到産物」と表現する超高度AIと進化が鈍い人間との関係性に捉えた「アナログハック」という解はモノに接する人類史の本質を表している。Monolithから『2001年宇宙の旅』へのReferが推察できるが、進化の主体をヒトとモノどちらに置くかのキューブリックとの観点の違いが面白い。また心をクラウドのドーナツ化で表現するセンスにもなるほどと唸らされる。我々の「ココロ」の所在も案外空白なのかもしれない。
作品全体でいえば、細部の設定はよく練られているものの、娯楽性を重視した過剰説明や多々の場面切替により混乱や矛盾を生じており、600ページ超という大作感も相俟って読み難くなっているのは残念である。
ラストは非常に納得感ある爽やかなもので、人知を超えた知能に向き合う人間の方向性を示す良質なSF作品である。
著者プロフィール
長谷敏司の作品





