都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代 (oneテーマ21)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年8月10日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041103074
作品紹介・あらすじ
ショッピングモールの手法で変わる都市と公共施設の在り方。
感想・レビュー・書評
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高速道路や鉄道網の発達によって郊外に作られたショッピングモールの形式は、都市の老化を再生するために、都市型ショッピングモールとしてそのまま利用されている。主に日本とアメリカの、ショッピングモール史とその現在についてのルポルタージュ。
文中で何度も言ってるけど、社会学者とかは消費文化の象徴としてショッピングモールを悪く言うのに慣れてしまっているけど、言うまでもなくこの本の言う「ショッピングモーライゼーション」は人類にとって最早日常の光景であって、それに対して肯定的な文章を今後書いていく必要はあるんだよねー、と思いました。
蛇足ですが、個人的にショッピングモール=NHK教育でやってたドラマ・フルハウスなので、(子供らが必ずモールに行きたがる、デートもモール)そこについて作者の人に話をしたいな!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルだけを見るとなんの本だかわからないが、要は“ショッピングモールの歴史と現状をフィルターとした都市論”である。
日本でショッピングモールというと、イオンのモールがまず思い浮かぶ。と同時に、いくつかのネガティヴなイメージが一緒に浮かんでくる。地方都市の風景を画一化し、古くからの商店街を疲弊させた、地方の貧しさの象徴としてのショッピングモール――といったイメージが……。
しかし、本書によればそうしたイメージは日本特有のごく一面的なものであり、本来のショッピングモールはアッパーミドルクラスにターゲットしたものであるという。また、「ショッピングモール=郊外の商業施設」と捉えるのも日本でだけ通用する“常識”で、「ある時期以後のショッピングモールの歴史は都市の歴史に他なりません」という。
じつは「ショッピングモール後進国」であるという日本と、他の諸外国におけるショッピングモール観にはかなりの開きがあって、著者は一つひとつその誤解を正していく。
著者はショッピングモールの歴史を遡り、その背景にある「思想と理念」を解説していく。「それは都市やテーマパークといった存在との関係性、結びつき抜きには語れないもの」であり、ウォルト・ディズニーもショッピングモールの思想に強く影響されていたという。ディズニーランドもまた、その影響から生まれたものなのだ。
そして、著者の視点は、現代の都市にさまざまな形で現れたショッピングモール化=「ショッピングモーライゼーション」にも向けられていく。
ショッピングモーライゼーションとは、「モータリゼーション」をふまえた著者の造語。
それは第1に、「都市のスペースが最大限活用されることで、“些細なものでありながら、量としては膨大な都市の変化”」を指す。たとえば、1990年代以降、日本の都市部に急増したコインパーキングだ。それは土地のすき間を利用した「些細なもの」だが、都市の景観と機能を一変させた。
第2に、「都市の公共機能が地価に最適化した形でショッピングモールとしてつくり替えられ、都市全体が競争原理によって収益性の高いショッピングモールのようになっていくという変化」も、ショッピングモーライゼーションだ。
ターミナル駅や空港、テレビ局や電波塔などを中核としたショッピングモールの誕生が、その顕著な例である。
本書は先日読んだ新雅史の『商店街はなぜ滅びるのか』の類書だが、切り口がまったく違うので読み比べると面白い。
ショッピングモールという存在と、 その根底にある新自由主義的な競争原理、ひいては「消費」という行為そのものを、著者はいずれも肯定的にとらえている(礼賛してはいないが)。その点が、本書の大きな特徴といえる。
読めばショッピングモールのイメージが一変する、すこぶる独創的な都市論。 -
ショッピングモールについて抱いていた「モヤッ」とした気持ち。どちらかと言えば否定的なそれがすうっと晴れた一冊。なるほどー!
モールの来歴、思想などなど。視野が広がれば視点も変わる。
映画ネタを引き合いにされると、腑に落ちるなぁ。うむ。 -
「ショッピングモールは、理想的なダウンタウンとして登場し、都市再生の一つの糸口になっている」という、消費社会を前提にした都市論。
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大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/658440 -
ショッピングモールについて,歴史やその功罪,利点やこれからの展望など世界的な範囲でざっくりわかりやすく書いてあり,頭の中が整理されたような感じです.
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タイトルとはちと違う中身。要はショッピングモールの在り方や変遷が述べられている。
状況はわかったが、結論が曖昧な感じ。まぁ、ショッピングモールもお国柄があるのね、ってことだけはわかった。 -
タイトルに惹かれて購入しましたが、何を言いたいのか良くわからない本でした。
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増えるコインパーキング、病院などの公共の空間に続々と進出するスターバックス、サービスエリアの民営化、そして、東京や大阪駅の「ステーションシティ」化。
これら、「公共性を帯びた都市の機能やインフラが地価という制約の下、競争原理が導入され、より収益性を高めるためショッピングモール化」していることを「ショッピングモーライゼーション」と名づけ、その源流を探る構成になっています。
ウォルト・ディズニーはもちろん、世界で最も有名なアニメスタジオの創設者として知られているが、彼の晩年の夢は「古きよきアメリカを体現した平和な都市」を作ることだった。それは「ディズニーランド」として部分的に結実したが全てではなかった。
「古きよきアメリカ」を標榜していたウォルトは非常に保守的な考えの持ち主であった。
彼が憂慮したのは都市部の荒廃、であった。
実際に、それは起きていた。
移民が流入することで、中流階級が郊外に逃げ出し、都市部は荒廃していった。
そのかつて中流階級が我が世の春を謳歌していた都市部の「ダウンタウン」を郊外に再生させるべく、ショッピングモールは始まった。
その後、アメリカ、日本をはじめさまざまなショッピングモールの考察がなされています。が、著者が最後で「いろいろ取り上げてきたが、それがもたらす社会の変化や、人々の変化についてはまだ全貌が見えていない」と言ってしまっているように、事例検討だけで終わってしまっている感が否めない。
着眼点が面白いだけに、惜しい。
著者プロフィール
速水健朗の作品






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