- 本 ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041103203
作品紹介・あらすじ
「この国のキンタマは“食”なんすから」そうのたまい、一介の鮨職人から、外食産業の帝王に成り上がった男・徳武光一郎が自殺。長年彼に尽くしてきた金森は、独房の中でその報を聞くが……。
感想・レビュー・書評
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小説だからこそ読むことができた「握る男」の半生。
すし職人の世界や飲食店のあれこれが面白い。
さらに、ただの職人にとどまらず、外食産業でのし上がり、そのうえ権力を振るう人間になっていく過程がバブルの時代とともに描かれている。
気が利いていて、頭がよく、人に好かれる好人物である一方で、どこか裏のある素顔をもち、野心もあった。
そら恐ろしさを感じて、波立つような心持ちで読んだ。
成り上がった彼は思い通りの生き方ができたのかもしれないが、心から満足することはできただろうか?
彼の右腕だった語り手の男が彼を思い、すし職人だった頃を懐古するラストが哀しい。
人生でいちばん輝いていた時代の光景はけっして色あせることはない。
そのことが切なく心にしみた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016.9.19
文庫が出てるのを見て、もっとポップな感じかと思って読んでみたら全然!予想とは違ったけどテンポよく読めた。
成り上がっていくスピード感、スマホどころか携帯さえ全員が持っていなかった時代での会社の成長、いつの時代もあるであろう男女の中。人の弱みを握り、使い、裏切り者はどこまでも追い詰める。幸せとは?成功とは?考えてしまった。やっぱり女性には男性にない怖さがあるなあと思いつつ。
余韻の残る小説やった。 -
寿司屋の弟子時代からの後輩と寿司屋を乗っ取り、その後外食産業、食品産業に影響するほど大きな複合企業を作る社会派フィクション。
寿司屋時代の話は面白かったが、企業作りの話になってくると軽さが鼻につくようになってしまった。スピード感は有るが内容は軽くなってしまったのは残念。一代でのし上がり、周りの人間を駒としか見ないような企業。まあ有りそうな話しかなとは思う。ITバブルの時なんか本当に良くあった話しな感じ。全体的には面白いが、物悲しい読書感。 -
しなくていい事をやり
ついつい後ろを気にするようになり
それでも頭を下げる
ふ~~~~ん -
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「この国のキンタマは“食”なんすから」そうのたまい、一介の鮨職人から、外食産業の帝王に成り上がった男・徳武光一郎が自殺。長年「番頭」として彼に尽くしてきた金森は、刑務所でその報を知る。人、金、権力。全てをその手に握った「食王」に、一体何が起こったのか。
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冒頭で、徳武光一郎(通称ゲソ)の自殺が知らされ、その後、そこに至るまでの一部始終が語られる。語るのは、ゲソの腹心・金森であり、ゲソの死の知らせを聞いたのは刑務所である。一体彼らはどんな関係で、なにがあったのか。読者の興味はいやが上にも増すのである。ゲソは、謎の多い少年だったが、人当たりが良く、才覚もあって、同じ寿司屋の修行の身であり先輩である金森を瞬く間に追い越して、取り立てられるようになる。誰にでも愛想の良いゲソだが、裏の顔は大きすぎる野望のためには手段を選ばない非道さも秘めている。いつの間にか金森はゲソに着いていかざるを得ない状況になり、二人で日本の職を牛耳るという野望を実現すべく行動を起こすのである。ゲソのやり口に憤りながらも、どこまで上り詰めるかに興味を惹かれ、ラストに向かって、ありがちな罠に陥るゲソを複雑な思いで眺めることになった。本店の親方の堅実さが唯一ほっとさせてくれる救いで、あとは、もどかしくやるせない思いで満たされる一冊である。 -
16歳で、寿司職人として、のしあがる"ゲソ"。それに、ついていく金森。
上り詰めるためには手段を選ばないゲソ。「人間のキンタマを握る」やり方がえげつないぐらいに展開されていき、はまりにはまってのしあがっていく。
しかし、その中にある「悲しさ」と「空しさ」が最後に去来して、金森の止められない涙となったのかもしれない。 -
ゲソの魅力と小気味良いリズム感があって、楽しんで読み進めました。
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人を騙して、利用して掴んだ栄光に満足したのだろうか?哀しいね。
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果てしない階段を上っていたと思ったら、実は奈落へ向かっていた。実に恐ろしいのは女性なり。
著者プロフィール
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