「アラブの春」の正体 欧米とメディアに踊らされた民主化革命 (角川oneテーマ21)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041103296

作品紹介・あらすじ

本当に訪れたのは「春」ではなかった-大手メディアが伝えない「革命」の真実。

感想・レビュー・書評

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  • 「アラブの春」の陰には欧米メディアの陰謀が働いていたというのが概要。しかし,裏付けとなる理論が弱く,筆者の想像の範囲を超えない記述ばかり。情報源が明示されず,事実関係が不明確。特にシリアに関する項目は信頼性を欠く。

  • マニアックなイスラームの歴史や伝統でもなく、一つの町の限定された個人的な悲劇の現在でもなく、中東の今を理解できる。アラブに住む人にとっては常識なのではないだろうか。そういう基本をまず、知りたい。包括的で勉強になった。

    ・儲けたお金は毎年ある一定の割合(財産の2.5%)で、社会に還元しなくてはならない。それが「ザカート(喜捨)」。「ラマダン(断食)」にもセルフコントロールを学び、貧しい人の気持ちを理解できるようにという意味がある。イスラム教では一生に一度はメッカに巡礼することが好まれているが、巡礼では真っ白いシーツのみを身体に巻く。神の前では皆同じ、という考えを元にしており、社会主義的な平等精神に通じる。共産主義と宗教であるイスラムは敵対的と思うと、意外と相性が良い。

    ・アルジャジーラは中東のプロフェッショナルなジャーナリスト集団というイメージがあるが、そもそもはカタール国王が設立したもの。人口60万人程度のアラブでも存在感の薄い国で、隣のサウジアラビアに併呑されるのではないかとの危機感から、国際的な存在感を増すために設立されたのが始まり。
    カタールも(カダフィの)リビアも天然ガス輸出国。最大輸出国はイランだが、その後を追うロシアとカタールは産出量や価格をコントロールしようと協力しており、エキセントリックなリビアを抑える利害関係があった。

    ・リビアのカダフィは西部の大部族のリーダーの血筋。経済の中心は東にあり、デモや暴動がおこったのも東部のキレナイカ。

    ・シーア派の語源は「アリー派(シーア・アリー)」。ムハンマドの娘婿アリーの血筋だけに指導者(イマーム)の地位を認めるという立場。
    スンニ派の語源はムハンマドの時代の慣行(スンナ)を守る人、というもので共同体での話し合いで指導者を決めようとした人たち。

  • 「アラブの春」と聞いて、あぁあの中東で起きてる民主化革命ね…と言えるのならまだまし、「何それ?」という日本人も多いんじゃないかと思う。
    物理的にも精神的にも遠くて遠い、アラブの国々。
    私も中東といえば石油・イスラムのイメージしかなく、国それぞれの違いなんて考えたこともなく、本書を読んでいかに海外情勢に疎いかを思い知らされた。

    本書は、革命の起きた国々の選挙の結果、メディアが伝えている「アラブの春」と実態との乖離、真実を捻じ曲げて国家に介入する西欧諸国の思惑、アラブの報道を一手に引き受けるアルジャジーラの信用性などについて、わかりやすく解き明かしている。
    (国名がどんどん出てくるので、あれ、どこの何がどうだっけ?と何度も混乱は生じてしまうのだけれど。)
    特にリビアのカダフィ政権、シリアのアサド政権は、日本でも報道されていたなぁというおぼろげな記憶があるけれど、筆者いわく、民衆の蜂起は国内外の勢力に利用されて戦争を引き起こされた側面があり、決して報道されているとおりではない、と。
    日本の中東に対する無関心・無知な状況に、筆者は憂いと憤りをもっているのだと思うけれど、一貫して冷静で中立的な語り口で非常に好感を持てた。

    私たちはまさにメディアの掌の上で踊らされているのだなぁということを実感し、それを実感できただけでも読む価値はあったと思う。

  • ベイルート生まれのジャーナリスト重信メイによる中東革命の裏側。日本や欧米のマスコミは勿論、アルジャジーラですらかなり偏ったバイアスを掛けた報道をしているようです。「ジャスミン革命」に代表される、"FacebookやTwitterによって民衆が革命を起こした"という分かりやすいストーリーが様々な政治目的に利用されているのが現実。リビアやシリアのクーデターはジャスミン革命とは程遠く、内戦を煽る事でその地域での戦略的優位を確保したい欧米と露中の駆け引きにすぎないと。またバーレーン、カタール、イエメン、モロッコなどで起きた出来事はほぼ無視され続けている事も、私達がいかにアラブ世界から遠いのかを教えてくれます。報道の読み方というものはつくづく難しいですね。

  • アラブの春と聞いた時最初は一箇所の話かと思っていたが複合的で絡み合っているのだと理解できた。

    アラブの春のポイントとしてメディア戦争がある。
    これはアラブだけの話ではなく日本にも通じる部分があると筆者が指摘しており、自分も受け身ではなく記事の裏を読み解くように知識を蓄えたいと感じた。

  • 内容もさることながら、著者の経歴に思わず目がいってしまった

  • アラブの春が一体何だったのか?各国でどんな影響があったのかについて並列的に説明されていた。大まかな流れを掴むには◎ それぞれの国を深く掘り下げていないので、ここを入門にして勉強していくのがいいのだろう

  • 2012年の出版から5年、今のアラブがどうなってるのか気になります。

  • 2012年刊。
    著者はアラビア語に堪能なフリー・ジャーナリスト。ついでに著名人の娘でもある。

     2011年より(前史は10年)中東を席巻した「アラブの春」。しかし、その内実と性格とは国毎で大きく違い、また報道で広く開陳されることなく潰されたものもある。
     本書は①チュニジア、②エジプト、③リビア、④サウジアラビア他アラビア半島諸国、⑤シリアとに分けて、2010~12年までの各国政治状況を、欧米やアラブでの報道の問題点に切り込みつつ解説する。

     結論的には、思った以上に良い出来栄えの書と言える(ただしシリアを除く)。
     それは、
    ⅰ) 革命前の各国政権の功罪両面を歴史に遡り広く分析する点、
    ⅱ) 「アラブの春」の内実を、各国毎の政治・宗教・社会の状況を踏まえ区分して解説する点、
    ⅲ) イスラム同胞団の国毎での多義性・多様性を明快にした点、
    ⅳ) BBCなど欧米報道機関に加え、「アルジャジーラ」の問題点を、彼らへのスポンサーの解読と、その報道内容の不自然さから読解く点、
    ⅴ) 報道にもドキュメンタリーにも出ないサウジアラビアに切り込む点、
    ⅵ) イスラム保守派政権が、革命後各国に生まれた事情を、選挙と宗教の地域的拠点の観点で論じる点にある。

     逆に、かような功罪両面を論じるのが本書の買いであり、そういう意味で上記ⅰ)が甘く、アサド政権の罪を明示しないシリア論は全然ダメということになる。

     なお、興味深いネタとして、まずサウジアラビアにおけるタブーに関し、
    ⑴ 現在における奴隷制度の残存、
    ⑵ 国籍を持てない=教育・医療の支援といった社会保障制度を受けられない遊牧民「ビトゥーン」の存在
    がある。

     また、リビアのカダフィのアフリカ統一通貨構想の発表後に合わせたような政権転覆劇への?。欧米の思惑如何?。
     ところで、クルド人の支配地域は⑴イラクでは油田多し。⑵シリアでは肥沃な農業適地。⑶トルコでは水資源豊富という事実は深堀すべき地誌情報かもしれない。

  • 中東に長らく在住していた方の視点という意味で、従来にない価値観を期待して読んでみました。日本に蔓延る"イスラム原理主義者イコールテロリスト""イスラムイコール男尊女卑"などのステレオタイプの打破、アラブ諸国の詳細解説など、今までサッカーワールドカップアジア予選くらいでしか知り得なかった情報の肉付けができました。しかし、ますますサウジアラビアという国に興味をそそられてしまいました。

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