週末カミング

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.10
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  • 本棚登録 :277
  • レビュー :55
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041103388

作品紹介・あらすじ

いつもより、少しだけ特別な日。週末に出逢った人たち。思いがけずたどりついた場所。あなたの世界が愛おしく輝く、8つの物語。第143回芥川賞候補作「ハルツームにわたしはいない」収録。

感想・レビュー・書評

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  • 高確率でジャケ惚れする作家、柴崎さん。「週末」がテーマの短編集らしく、週末のささやかなハッピー感が滲んでいる、素敵な表紙写真だなと思いました。
    「日々淡々系」と一部で称されているようだが、一見盛り上がりのない、何てことない日々の連続、他愛ないエピソードの積み重ねが、何だか妙に共感できるのだよな。微妙な感情のアップダウンが、自分の日々とリンクするかのようだ。あとがきで柴崎さんが述べていた「小説を書いたり読んだりする現実のわたしたちと同じ街にいる誰かの話と思って描いているので」という部分に、深く納得。
    知らない光景だけど、なんか見覚えがある。初めて訪れる街を歩いているときの心もとなさ、そんなときにふと感じるデジャヴ。柴崎さんの小説を読んでいると、そんな感覚に捉われる。そして、近いような遠いような、ある意味中途半端な、人と人との距離感を描くのもうまいなと。柴崎さんの文章が醸し出す曖昧さが、心地よいのだ。
    どの話もそれなりに好きだけど、一番好きなのは1話目の「蛙王子とハリウッド」。単純に、舞台となっているアート色の強い古本屋さん、行ってみたいと思えました。

  • 週末がテーマの短編集。

    それぞれの週末が、たんたんと書かれています。そして、突然終わる。
    こういう雰囲気大好きです。

    あまりにもサラリとしすぎていて、思い出そうとしても思い出せない。
    これってダメなヤツじゃん、という気もしますが、もう1度、パラパラと読み直そうと思います。(汗)

    後半の3編が好きでした。
    ところどころにクスッと笑えるポイントがあったり、いいなと思うフレーズがあったり、好き嫌いが分かれるようですが、私は好みでした。

    あえてつながりを作ってないけれど、別の話に通じているところがあると言うようなことがあとがきにありました。
    ひとつ見つけたのですが、他にもあるのかな~

  •  週末、というかオフの日を過ごす人たちの日常を描いた8編の短編集。
     1編を除いて若い独身女性が主人公ではあるが、柴崎作品はだらだらしたモノローグが続くことがないので、安心して読める。普通なら感情表現で埋めつくされるページが、客観的な描写と会話でどんどんつながっていくので短編映画のようだ。まわりの光景、物の色、人の会話が、目の前で起こっていることのように感じる。
     とはいえ、書かれているシチュエーションは自分にとっては少し距離のある世界のことなので、主人公に感情移入するほどではなく、そのギャップがまたよかった。
     仮に、ここに登場する主人公たちが柴崎作品を読んでも理解できないような気がする。それでも著者は、そういう人たちを親しみを込めて書いている。

  • 『携帯電話が振動したので鞄から取り出した。先週、iPhoneに変えた。使い方が把握できず、すでに五回も間違い電話をかけた。画面を何度かつついて、やっとメールが読めた。友達から、今晩の誘いだった。今晩は予定があった。返信すると、遅くまでやってるし来れたら適当にでいいから、と返ってきた。いいよ、と返事した。最初からある用事も、今誘われたのも、内容は似たようなものだった』-『ハルツームにわたしはいない』

    柴崎智香の魅力はなんだろう。随分前から彼女の本を読み継いできているというのに、新しい本を手にする度にそんな思いがふっとわいてくる。刺激的なものがあるというわけでもない。ぐっと迫ってくるとも言い難い。大抵、ここではないどこかの街で、何も特別というわけでもない人々が今日という日を生きているという話。でもここではないはずの街はいつもすぐとなり街のように見え、見知らぬ人である筈の主人公はいつもの通勤電車で会う名前も知らない顔なじみのようにも思えてくる。そんな感慨にとらわれている内に自分の思考はふらふらと漂ってしまい、さらさらと頁を繰ることが適わなくなる。その状態がいやではないのだ。

    柴崎智香の小説を評して、何も起こらない話、という人もいる。自分も何となくそういうイメージを持っていたりもするけれど、実は彼女の小説の中で流れる時間の長さでその間に掬い上げられた小さな出来事の重さを割ってみると、案外と密度が濃いようにも思う。この短篇集に収められた話では、特にその印象が強い。ライブに行って難聴になってしまったり、知り合いではない人の結婚披露宴に行ってみたり、街角で血を流しているおじさんを目撃したり、と、主人公たちは意外と非日常的な出来事も経験してはいる。それなのに、やはり何も特別なことが起こっているいるようにも思えないという辺りに、柴崎智香の文章の特別なところがあるように思えるのだ。それをものすごく単純に言おうとすると、身体的感覚が研ぎ澄まされた人の文章と言えるような気がする。

    でも彼女の書く文章に接して、読む人によってはとてもディストラクトされた思考だと捉えるかも知れないし、ついさっきまで話していたことと、今ここで出てきた言葉には何の関係があるの、と思ってしまうかも知れない、とも思う。その意味不明にも見える展開を柴崎智香が完全に俯瞰した視点から把握した上で、敢えて書いている訳でもないとは勘ぐるけれど、彼女の思考の束の中では、はっきりとした繋がりがあるということだけはきちんと意識されていることは窺える。そしてこれは珍しいことだと思うけれど、そのあいまいな確信を(と書くと、とても可笑しな感じにはなるけれど)主人公に語らせたりもしている。感慨と描写が同じ顔つきのままに立場を入れ替える。その不思議な味わいが独特の余韻となる。

    しかし、一つだけ気にかかることがある。柴崎智香はこの先もずっとこの世代の登場人物を描いていくのだろうか、と。今、彼女が描く主人公たちは、ある意味で人生のモラトリアムにいるようにも、極端な視点からすれば見えないこともない。たとえ職に就き、友達もいて、社会と繋がっているように一応見えたとしても、彼女の描く主人公たちはどこか世の中から切り離された空気を自分の周りにだけキープしながら生きているようにも見えてしまう。逆に言えば、柴崎智香は作家として非常に自分自身の生活から生まれてくる感覚に正直なのだろう。そのことは決して負の印象で受け止めるべきことではなく、信頼感にも繋がる要素ではあるのだけれど、あまりにも自分自身を語るかのような言葉に危うさも感じることもある。

    もちろん、そういいながら、使い古された言葉ではあるけれど等身大の主人公を描く柴崎智香の小説には、やはり魅かれるものがあるのは事実であるし、今のところ、他の誰よりも常に新刊が待ち遠しい作家ではあるのだけれど。

  • 日常の、週末の、いくつかの短編。
    普通の話なんだよね。主人公の思考がぽろぽろこぼれている。
    その人の目線になって、その世界を見させて貰っているような感じ。

    あとがきで、「小説を書いたり読んだりする現実のわたしたちと同じ街にいる誰かの話と思って書いているので」って文章があって、だからこんなに近いのかなぁと思った。
    その続きで「ある小説に出てきた人物が別の小説の誰かと知り合うということも、現実と同じように起こるんだろうな、と思います。『世間って狭いよね』みたいな感じで。」というのがあって、なんかそういうのって面白いなって思いました。小説の中で人は生きているんだなぁ。

    あと「ハルツームにわたしはいない」で「でも、ほんとうに通じたかどうか、確かめることはできない。言葉でわかったと言っても、わかったような感じを共有できても、確かめることはできない。言葉でわかったと言っても、わかったような感じを共有できても、わかりあえた感動が訪れたとしても、ほんとうにそれが同じことなのか、確かめることはできない。絶対に。」という箇所。
    ちゃんとそういうとこ見なさいよって言われてる気分に勝手になって怖くなった。
    でもそうなんだよね。確かめられないんだ。私のそれとあなたのそれがおんなじものかなんて、取り出して確かめることはできなくて、だから人は言葉で補おうとするし、違っていることを怖がって何も言葉にできなかったりするんだろうかと考えた。

  • 日常の中で感じてる事
    わちゃわちゃした空間 空気
    ありふれた日常の 色んな人達 気持ち
    些細な事の感じ方捉え方
    自分も本の中の登場人物な様な感じがした。2016.2.11

  • 色んな人の、非日常的なようで日常的な週末。
    風邪で寝込んでいた正月休みに会社の先輩がやってくる話と、女三人でドライブしていたら車が故障する話が好きだなあ。

  • ぼんやりと読んだ感じですが、光も感じますし嫌いではないですこういうの。ぼんやり読んだ、と言いつつ、心にカリリとひっかかる言葉も所々にあって、でもつるつるとすべっていきます。なさそうでありそうな日々。白い日、という表現も好きでした。

  • 掲載元/Ginza 2013年1月号
    G's BOOK 豊崎由美のワンダーブック3
    にて紹介。

  • それぞれの週末。学生、学生だった人、もうここではないところ。週末カミング

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